
[26]ハワイの楽園を楽園のままにしておく
ねぇ、人生って、何かを欲しがってる時が一番ギラギラしてると思わない?恋愛もそう。転職もそう。移住もそう。
「欲しい!!!!!」って叫んでる時の人間、だいたい理性より情熱で走ってるの。
ええ、もちろん。昔のあたしのことよ。
太平洋の島に執着するメンヘラ彼女
あたしね、ほんっっっっっとにハワイが好きだったの。いや、好きとかいう可愛いレベルじゃないの。もはや宗教。
寝ても覚めてもハワイ。 朝起きてハワイ。 昼休みにハワイ。 仕事中もハワイ。 現実逃避先、全部ハワイ。
インスタ見て、「はぁ…ハワイ戻りたい…」YouTube見て、「やっぱ空気が違うのよね…」Google Map開いて、「ワイキキ歩きたい…」
もうね、恋愛中のメンヘラ彼女なの。しかも相手、“島”。
普通、彼氏とかに執着するのよ。あたしは太平洋の真ん中に浮かぶ島に執着していた。怖いわ。
本気で執着すると本気で叶う
でも、人間って不思議よね。本気で執着すると、本気で叶えるのよ。
結果、ハワイに2回住んだ。20代後半と、30代後半。
その後、日本で仕事を始めた。あたしの中では、日本帰国なんて“仮住まい”だったの。数年日本で働いて、お金貯めて、またハワイへ帰還。そのつもりだった。
でもね。人生ってほんと、脚本家が性格悪いのよ。思った以上に、日本の居心地が良かった。
いや、待って?どういうこと?
あれだけ、「日本ムリ」「満員電車ムリ」「空気読む文化ムリ」 とか言ってた女が。普通に、日本で落ち着いてる。
しかも、家まで建ててる。
え、あなた誰?
人生ってたまに、気づいたら昔の自分が一番驚く暮らししてるの。
分離不安症の男に生活ごと持っていかれる
そして、愛犬まで迎えた。この子がまたとんでもない分離不安症の男でね。
もうね、あたしがトイレに行くだけで、「ママァァァァァ!!!!!!!!」 ってついてくるの。
コンビニ行くだけで、ギャン泣き。お留守番ができない子。今じゃ、あたしと夫、交互にコンビニ行くの。
いや、ちょっと待ちなさいよ。トイレよ?コンビニよ? ハワイ移住じゃないのよ。
でも、その必死な顔見てると「あ、もうこの子を置いて夫婦で旅行とか、ハワイとか無理だわ。」って自然と思うようになった。
この子を置いて行くぐらいなら、行かなくていい。そこは夫も同意見。だから旅行に行く時も夫と交互。夫婦じゃないの。もはや、24時間対応のシフト制。旅行は「一緒に行くもの」から「引き継ぐもの」へ。
こうしてあたし達夫婦は、やっぱり今日も別行動ユニット。お犬様だけが満場一致。
結局、我が家で主導権を握っているのは、夫でもあたしでもなく、小さな王様だった🐾
昔のあたしなら考えられなかった。だって昔は、“自由な女”を演じていたから。空港。スーツケース。パスポート。海外生活。自由。FREEDOM!
でも今?
犬のうんち袋持って、「今日ちょっと柔らかいわねぇ」とか言ってる。
あんなに飛んでた夢、今めちゃくちゃ地上を歩いてる。
でもね、不思議なの。今はそれで満たされてるのよ。
これ、若い頃のあたしが聞いたら発狂すると思う。「え!?!?!?!?!?静かに暮らすのが幸せ!?あんた正気!?!?!?」って。
遊牧民夫婦
でも、本当にそうなの。だって、あれだけ欲しかったものを、全部やったから。海外生活。外資。英語。移住。海の近くの生活。自由。逃避。ハワイ。
全部やった。
しかも、かなり盛大に夫を巻き込んで。
普通結婚って、「一緒に住む♡」なのに。
うちは、「ねぇ、ハワイ行く?」「ねぇ、日本戻る?」「ねぇ、また移動する?」 って、国レベルで引っ越してる。
もはや夫婦じゃなくて遊牧民。別居婚もやった。
何その難易度高い人生。
楽園は追いかけている時が一番美しい
でも、全部やったからこそ思う。
楽園って、“住めば完成”じゃないのよ。むしろ逆。楽園を追いかけてる時の方が、人生は燃えている。
「いつか」「絶対」「そこへ行きたい」この“不足感”が、人間を前に進ませるの。
だから夢が叶うと、急に静かになる。炎が消える。
あれ?次、何すればいいの?って。
これね、結構みんな言わないけど、夢叶えた後って割と虚無。
でも全然不幸じゃないのよ。満足してる。でも、燃えてない。
だから混乱するの。「え?幸せなのに、なんで空っぽなの?」って。
あたしも、ずっとその穴を見てた。
次の目標探した方がいいのかな。また何か追いかけるべきかな。新しい夢作るべきかな。
起業? 世界一周? 別荘? 投資拡大?FIRE?
いやもう、お腹いっぱいなのよ。
若い頃って、「もっと!もっと!」って生きてた。もっと自由。もっとお金。もっと経験。もっと海外。もっと理想の人生。
でも、ある程度食べ終わると、最後こうなるの。
「白米と味噌汁がいい…」
人生の終着点、だいたい和定食。
卒業じゃなく楽園のまま残したかった
そして今、やっとわかったの。あたし、ハワイを“卒業”したかったんじゃないの。
楽園を楽園のまま残したかった。
もし今、ハワイに戻ったら?たぶん、あたしはまた“生活”を始める。
スーパー行って、 物価にキレて、 渋滞にイライラして、 税金見て白目むいて。
そしてたぶん、こう言うの。「…なんか違う」って。
そうなのよ。
楽園って、距離があるから美しいの。毎日になると、生活臭が混ざるの。
もちろん、ハワイ移住したことに後悔は1ミリもない。むしろ、人生で一番やって良かったこと。あれだけ執着した夢を、ちゃんと叶えたんだから。
それって、自分への信頼になるのよ。「あたし、本気出したら人生変えられるんだ」っていう、静かな自信になる。
でも同時に学んだ。夢って、叶えたら終わりじゃない。
自由から静けさへ
昔のあたしは、自由を追いかけていた。今のあたしは、静けさを選んでいる。
朝、愛犬に起こされる。コーヒーを飲む。静かな家。誰にも急かされない。ただ、穏やかであればいい。それだけ。
若い頃のあたしが見たら、たぶん言う。「地味!!!!!!!!」
ええ、そうよ。
でもね、人生後半ってたぶん地味の強さを知るゲームなんじゃないかな?刺激じゃなく、平穏。興奮じゃなく、安心。獲得じゃなく、維持。
それがどれだけ難しくて、どれだけ尊いか。やっとわかった。
だから今のあたしは、ハワイを “戻る場所” にしてない。心の中の楽園にしている。いつでも思い出せる。でも、無理に所有しない。
若い頃みたいに、「絶対また住む!!!」って執着しない。
だって、楽園は楽園のままが一番美しいから。
アロハと資本主義のあいだ
人生、ほんと予測不能。
アロハと資本主義のあいだで揺れ続けた、長めの迷子記録。
夢を叶えたら、人生は完成すると思ってた。でも本当は違った。
夢を叶えたあと、“もう追いかけなくていい”と知るために、人は遠回りするのかもしれない。
その長い寄り道の果てに、あたしはやっと、愛犬の寝息が聞こえる静かな暮らしに辿り着いた。
ー完ー