
[12]ハワイの海と夕陽と減っていく残高
ハワイで銀行員として働き始めた頃の話し。
あたし、毎日17時に帰宅してたのよ。いや、“帰宅できてた”と言った方が正しいかもしれない。
日本で働いてた頃の感覚だと、17時退勤って都市伝説なの。 でもハワイ、本当に終わるのよ。17時。スパーン!って。
しかも誰も、“まだ残って頑張ってます感” 出さない。
日本ってさ、仕事終わってるのに、なぜかPCカタカタしてる人いるじゃない?あれ、もはや伝統芸よね。
でもハワイ、みんな帰る。 なんならオフィスから閉め出される。あなたがいると、鍵閉められないからって。
潔い。
「See you tomorrow〜!」以上。終わり。
人生、会社だけじゃないですよ。って空気がデフォルトなの。
17時退勤でまだ空が青い衝撃
最初は衝撃だった。だって、17時に外出たらまだ明るいのよ。 空が普通に青い。
日本だと、平日の空って、だいたい会社の窓越しに見るものだったから。
で、問題はここからなの。
17時に仕事が終わる。
↓
まだ人生が残ってる。
↓
「どっか行く?」になる。
毎日。危険。
しかもハワイって、行きたくなる店が多すぎるのよ。
オープンエア。海風。薄暗い照明。謎に美味いマグロ。なんでもアヒにする文化。
あと、モクテル。 そう、あたしお酒飲めないのよ。でもハワイって、飲めなくても雰囲気だけで参加できちゃう怖い土地。
キラキラな夕方と巨大ラヴァフロー
夕方になると、海沿いのバーが全部キラキラし始めるの。
ヤシの木が揺れて、ウクレレみたいなBGMが流れて、 空がピンクとオレンジの間みたいな色になって。
もう、脳が言うの。「今日は何か飲まなきゃ」って。で、飲めないあたしが頼むのが、モクテル。ヴァージンラヴァフローとか。
あの、“南国の糖分を液体化しました” みたいなやつ。
パイナップル、ココナッツ、イチゴ、のグラデーション。もはやジュースなのよ。でも値段だけ、普通にカクテル。しかも絶対変な花とか傘とかが刺さってる。
あと、無駄にデカい。 アメリカって、飲み物のサイズ感、毎回ちょっと様子おかしいのよ。
で、あたしはその巨大ラヴァフロー片手に、毎回ご満悦。 完全に南国に浮かれた観光客。
行きたいのも払うのもあたし
いや、きっと夫も楽しんでたと思うのよ?実際、美味しいし。景色もいいし。
でも、提案してるの、毎回あたし。
「今日あそこ行きたい」 「サンセット綺麗らしい」 「新しい店できたって」
全部あたし。
そして会計も、あたし持ち。 だって、行きたいのはあたしだから。
仕事終わりに、「今日ちょっとだけ行かない?」って。
その “ちょっとだけ” が毎回チップ込みで、 財布の中身が波にさらわれる砂浜みたいに消えていくの。
しかもハワイって、夕陽が全てを正当化するのよ。 会計直前まで、人間を幸せにしてくれる。
で、カード切った瞬間だけ急に現実。 「...え?」ってなる。
でもまた翌日、夕陽が綺麗。 学習しない。 人類、夕陽に弱すぎる件。
夕陽が全て
しかも当時のあたし、まだ今ほどFIRE脳じゃない。資産形成?キャッシュフロー?知らん。
夕陽が綺麗。それが全て。
今のあたしが当時のあたしを見たら、肩掴んで揺さぶってると思う。
「お前そのウニパスタ、未来のNVIDIAだった可能性あるぞ!!」って。
でも当時は違うの。 毎日ちょっと浮かれてた。だって仕事終わりに、海見ながらディナーよ? 脳、バグるって。
しかもハワイの怖いところは、“全部バケーションっぽく見える”ことなのよ。平日なのに、ビーチサイド、パームツリー、ハイビスカスなの。
だから金銭感覚が徐々に壊れる。
最初は、「今日は特別ね」なの。でもそれが、 週3になり、 週5になり、 気づいたら通常営業。
クレカの請求だけ、異常事態。
しかもハワイって、静かに高いのよ。 空気も人もゆるい。でも会計になると突然、現実をぶん殴ってくる。
「Mahalo〜♡はい、$200ね♡」って笑顔で殺しにくる。
あと地味に危険なのが、チップ文化ね。
日本人って、税込価格に魂預けて生きてるじゃない? でもアメリカ、最後に“追い課金”があるの。
ディナーチップ20%とか普通。
毎回、「え?あたし今、チップで軽くランチ食べれる額払ってる?」ってなる。
それでも夕陽が綺麗
でもね、夕陽が綺麗なのよ。 結局そこなの。
海沿いの席で、オレンジ色の空見ながら、 風がふわっと吹いて、隣で夫がご飯食べている。
そしたらもう、脳が言うの。 「人生ってこういうのでよくない?」
危険思想。 資本主義社会でその思想、かなり危ない。だって翌月、普通にカード請求がくるから。
しかも銀行勤務って、お金の現実を毎日見る仕事なのよ。 融資。資産。残高。返済能力。
散々、数字の世界見てるのに。 なのに自分は毎晩、ラヴァフロー飲みながらアヒだのステーキだの食べてる。 説得力ゼロ。
「せっかくだし」の罠
しかもね、ハワイって「せっかくだし」が発動しやすい土地だと思わない?
「せっかくだし海見える席」「せっかくだしデザート」「せっかくだしもう一品」
その“せっかくだし”の積み重ねが、後にクレカ明細で巨大化する。
資本主義版モアナよ。 波が呼んでるんじゃない。カード会社が呼んでるの。波みたいに請求がくる。
浪費だったけど革命でもあった
でも不思議なの。あの頃、すごく幸せだったのよ。
もちろん、今思えば浪費も多かった。もっと投資できた。もっと貯金できた。もっと賢く生きられた。
それは本当にそう。
でも、17時に仕事が終わって、 平日に夫と夕飯食べながら笑って、 海沿いを歩いて帰る生活って、あたしにとっては結構革命だった。
日本にいた頃、平日って“耐える日”だったの。 週末のために生きる感じ。
でもハワイでは、平日そのものが生活だった。それが新鮮だった。
資産には出ない人生の豊かさ
もちろん、今のあたしは知ってる。あの生活、かなり金がかかる。
あと人間、収入があると普通に使う。
特に、“時間の余裕” と“南国”が合体すると危険。 財布のヒモが溶ける。
でもね、青い空の色とか、海風の匂いとか、 夫と「今日どこ行く?」って話してた時間って、たぶん人生の豊かさだったのよ。
資産額には出ないタイプのやつ。
いや、出てほしかったけど。むしろ減ってたけど。