
「パパってなんでそんな変なことばっかり言うの?」
ダイニングテーブルでコーヒーを飲んでいた。
息子はソファで漫画を読んでいる。
娘が起きてくる。
「おはよー、パパ」
「おはよー。ニコパン買ってきたよ、二つ。いつものところに置いてあるよ」
ニコちゃんマークのパンのことだ。娘がそう呼ぶ。
娘の目つきが変わる。
パンの置き場へ行って、しばらく黙っている。
戻ってきたときには、マジックとポストイットを持っていた。
一つ目のパンの横に、ポストイットを貼る。
ひらがなで、自分の名前。
「上手に書けてるね。どうしてお名前書いたの?」
「ほかのひとに食べられないため」
ほかのひと、と娘は言った。
この家には四人しかいない。
「そっかぁ。じゃあそこに、パパって書いちゃおうかなぁ」
「パパってなんでそんな変なことばっかり言うの?」
ソファから、兄が言った。
諭すような声だった。
「変なのがいつもなんだよ」
娘は少し考えて、もう一枚、ポストイットを取った。
マジックのキャップを外す。
二つ目のニコパンの横に、今度は迷わず書いた。
ぱぱ、と。