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第3匟フリずテヌマ——逞脱は、基準がなければ存圚しない

    「ズレおいる」ず蚀うためには、「ズレおいない状態」が芁る

    前回の宿題から始める。ボケは䜕からズレおいるのか。

    逞脱ずは、距離だ。「ズレおいる」ずいう刀定は、単独では成立しない。ズレずは二点間の距離のこずで、「ズレおいない状態」——基準線——があっお初めお枬れる。基準のない堎所では、逞脱は存圚できない。

    ぀たり、ボケが機胜する条件は、ボケの倖偎にある。芳客の頭の䞭に、基準線が立っおいるこず。

    この基準線を立おる䜜業を、挫才では「フリ」ず呌ぶ。地味な仕事だ。ボケは花、ツッコミは華、フリは土。誰も土を耒めない。でも土のない畑に花は咲かない。僕はネタの勝敗の半分くらいは、この土の段階で決たっおいるず思っおいる。

    そしお、ここで蚀葉を䞀床きちんず分けおおきたい。挫才を語るずき、僕らは「テヌマ」ず「フリ」をほずんど同じ意味で䜿っおしたう。でも機胜で芋るず、基準線には調達先が䞉぀ある。混ざりやすいのはここだ。

    基準線の調達先①——䞖間から借りるテヌマず、ロヌカルなフリ

    䞀぀目は、䞖間に既にある基準線を借りおくる調達だ。そしおこの「䞖間借り」の䞭に、スケヌルの違う二぀がある。

    倧きいほうが、テヌマだ。ネタ党䜓が乗る、䞀番倖偎の基準線。「おかんが奜きな朝ごはんの名前を忘れた」。4分間ずっず有効で、䞀本に䞀぀。これは個々のボケのためのフリではなく、すべおのフリを束ねる芪フリだず考えるずいい。あなたが「䞀番初めのフリがテヌマなのか」ず問うなら、答えは順番ではなく階局だ。テヌマは最初に来るフリではなく、スコヌプが最倧のフリ。時間的な先頭ずは限らない。

    小さいほうが、いわゆるフリだ。個々のボケ䞀発のためだけに、盎前に立おるロヌカルな基準線。䞀本に䜕十個もある。テヌマが畑党䜓の土なら、フリは䞀粒ごずに掘る穎だ。

    ミルクボヌむの「コヌンフレヌク」が史䞊最高埗点を出せた理由は、この調達がうたかったからだ。コヌンフレヌクの基準線——甘い、カリカリ、牛乳、朝、ちょっず頌りない——は、芳客党員の頭の䞭に最初から建っおいる。ミルクボヌむは基準線を自分で建おず、䞖間の既蚭品を借りた。だから4分をたるごず、基準ず逞脱の埀埩に䜿えた。あの密床は、フリを䞖間に倖泚した密床だ。

    だからテヌマ遞びの第䞀の問いは、こうなる。この題材の基準線は、芳客の頭の䞭にもう建っおいるか。

    では、誰も知らない䞖界はどうするのか——男性ブランコの音笊運び

    ここで、僕自身がこの理論に投げたくなる反䟋がある。M-1 2022の男性ブランコ、「音笊運び」だ。

    音笊を運ぶ仕事。こんな基準線、誰の頭にも建っおいない。䞖界のどこにもない職業だ。なのにあのネタは爆発した。基準線理論は、ここで死ぬのか。

    死なない。むしろ深くなる。あのネタを芳た芳客の頭の䞭で、実際に䜕が動いおいたかを思い出しおほしい。八分音笊の「はた」が倖れお、刃物みたいに飛ぶ。党音笊は重くお䞞い。芳客にはそれが芋えた。マむムしかない舞台で、なぜ芋えたのか。音笊の圢を、党員が正確に知っおいるからだ。音楜の授業が、囜民党員の頭にあの蚘号の基準線を建おおおいおくれた。重いものを担ぐ身䜓、割れ物を扱う手぀き、䞞いものは転がるずいう物理。芳客が䜿った基準線は、党郚、既蚭だった。

    ぀たり男性ブランコは、䞖界をれロから建蚭しおいない。既蚭の郚品を、「音笊は運べる物質だ」ずいう嘘䞀個で接続したのだ。

    䞖間借りには、二぀のやり方がある、ずいうこずになる。

    たるごず倖泚。題材の基準線を、そっくりそのたた借りる。ミルクボヌむ型がこれだ。基準線を建おる工事がいらないぶん、いちばん速く、確実に笑いぞ入れる。 郚品倖泚䞀点接続。題材自䜓は架空でも、郚品(圢、身䜓知、物理、あるある)は党郚既蚭のものを借り、自前で甚意するのは接続の嘘ひず぀だけ。男性ブランコ型。コント挫才が䞖界を立ち䞊げるずきにやっおいるのは、これだず思う。れロからの建蚭に芋えるものほど、よく芋るず郚品は借り物で、オリゞナルなのは接続だけだ。

    だから問いは、正確にはこうなる。この題材は、既蚭の基準線(の組み合わせ)で建぀か。接続に必芁な嘘は䜕個か。 嘘は䞀個が理想だ。䞀個なら芳客は乗る。二個䞉個ず芁るなら、工費はネタの䜓力を超えおいく。

    基準線の調達先②——ネタが、自分で建おる自家補フリ

    二぀目の調達先は、倖ではなく内だ。ネタ自身が、進みながら基準線を建おおいく。

    挫才が始たっお数十秒、最初のボケが䞀床りケお確定する。その瞬間、起きたこずを思い出しおほしい。さっきたで存圚しなかった「この人物はこういうや぀だ」「この蚭定はこういうルヌルだ」が、ネタの䞭の新しい基準線になる。䞀床同意された逞脱は、消えずに土ずしお残る。以降のボケは、䞖間の基準からだけでなく、ネタが自分で建おた基準からも逞脱できるようになる。

    これを僕は自家補フリず呌んでいる。䞖間から借りた基準は工事費がかかるが、自家補フリは䞀床りケた笑いがそのたた土になるので、工費がほがタダだ。コヌルバック(䌏線回収)はその兞型——序盀の䞀発を終盀でもう䞀床䜿うのは、自分で建おた基準線の再利甚にほかならない。

    この自家補フリが、ネタ党䜓の䞭でどう効いお、どう「埌半の爆発」を生むのか。そこは䞀本のスケヌルの話になるので、第6匟でたずめお扱う。ここでは「基準線は借りるだけでなく、自分で建぀」ずいう事実だけ眮いおおく。

    基準線の調達先③——挔者そのものから借りる぀かみ

    䞉぀目が、䞀番芋萜ずされる。挔者ずいう、既蚭の珟実。

    ぀かみを考える。倚くの挫才は、テヌマに入る前に䞀発笑いを取る。あの最初の䞀笑いの基準線は、どこから来おいるか。テヌマからではない。テヌマはただ始たっおいない。基準線は、芳客がその二人に぀いお既に持っおいる珟実——名前や経歎のような知識のこずもあれば、もっず盎接的に、いた目の前に芋えおいる挔者の身䜓そのもの、ずいうこずもある。

    M-1 2023の最終決戊、什和ロマンの「ドラマ」の頭が芋事だった。テヌマ(クッキヌ工堎が自動車を䜜るドラマ)はただ䞀行も始たっおいない。くるたはたず、盞方ケムリの顔をいじる。髭ずもみあげが顔の呚りをぐるりず䞀呚぀ないでいる——これは芳客党員に、いた芋えおいる既蚭の事実だ。工事はいらない。指させば党員の頭にもう建っおいる。

    面癜いのは、その䞀個の事実を、くるたが距離を䞊げながら呜名し盎すこずだ。顔を毛で囲わないず、自分ずスタゞオの境目がわからなくなるから、ず確定させる。すかさず、顔でもんじゃを䜜っおるわけじゃなくお、ず畳む。髭が土手で、最埌に混ざっおしたう、ず。基準線は䞀぀(髭の茪)のたた動かさず、そこに重ねる像だけが、境目→もんじゃ→土手ず䌞びおいく。

    この぀かみが凄いのは、この連茉でここたで䜜っおきた道具が、ほが党郚䞀床に動いおいるからだ。基準線は挔者の身䜓ずいう最も既蚭の珟実(調達先③)。同じ事実を別の像で呜名し盎すのは、自家補フリの即垭運甚(調達先②)であり、埌で扱う倩䞌・かぶせそのものでもある。テヌマに入る前の数十秒に、挫才の䞻芁な操䜜が凝瞮されおいる。

    (぀かみの基準線は、身䜓だけでなく経歎からも借りられる。前幎王者が王者ずしお登堎する、ベテランがベテランずしお珟れる——芳客がその二人に぀いお既に持っおいる知識も、立掟な既蚭の基準線になる。身䜓か、経歎か。どちらにせよ、぀かみはネタの倖から基準線を調達する。)

    そしお぀かみには、もう䞀぀倧きな圹目がある。本線が始たる前に芳客を䞀床笑わせ、「この二人は笑わせおくれる」ずいう信甚を取り付けおしたうこず。次回の蚀葉を先取りすれば、぀かみは、同意を先に少しだけ取り付けおおく動きだ。

    敎理——基準線は䞉぀の方角から立぀

    たずめる。逞脱が成立するには基準線が芁る。その基準線は、(1)䞖間から借りる(テヌマ芪フリ、ロヌカルなフリ)、(2)ネタが自分で建おる(自家補フリ)、(3)挔者そのものから借りる(぀かみ)、の䞉方角から立぀。「テヌマ」ず「フリ」が混ざっお芋えたのは、この䞉぀を䞀語で呌んでいたからだ。

    ここたで「基準線」ず呌んできたものには、実は孊術の先行がある。挫才を蚀語孊から分析した関綟子や安郚達雄は、ズレが起きる軞を「転回軞」「共通の条件」ず呌んだ。既成の抂念が、その軞に沿っお回っお別の抂念に倉わる——圌らの蚀う転回軞は、僕の基準線ずほが同じものだ。独立に同じ堎所ぞ着いた、ず蚀っおいい。ただ、圌らがそれを䞀本の軞ずしお扱ったのに察しお、僕はその軞がどこから調達されるかを䞉぀に割った。䞖間から借りるのか、ネタが自分で建おるのか、挔者から借りるのか。基準線があるこず自䜓は、先人が芋おいた。その出どころを䞉぀に分けるのが、僕の付け足しだ。

    ずころで、フリは基準線を立おるだけでなく、芳客に小さくうなずかせおもいる。「おかんが朝ごはんの名前忘れおもうお」に、客はあるあるず頷く。䞀床頷いた基準がズラされるから、他人事ではなく自分事ずしお笑う。

    ——この「うなずき」は、䜕なのか。フリにうなずき、ボケでズラされ、呜名で確定しお、芳客は笑う。その䞀連で、芳客は䜕をしおいるのか。次回は、舞台の倖偎——あなたの話をする。

     
     
    奜きなこずを、考えおいたす。

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