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【小説】ゞャック・タヌに献盃

    "無意無な行為だず分かっおいおも、
    ぀い続けちたう。"
    午埌9時に仕事が終わり、電車に揺られお垰路に着く。遅い倕食を枈たせ、軜い深呌吞。倜の銖郜高速に繰り出す。
    私はトラックが埀路する銖郜高速道路を䞀呚する習慣を続けおいた。
    䞋匊の月が芋守る真倜䞭、䞀台のクルマが男の乗るクルマを远い越した。
    たったそれだけの事なのに、劙に埌ろ髪を匕くものが残る。
    そのクルマずの遭遇を気に、男の歯車が回り始めた。
    銀色の矢が私の胞を貫く時、私は私のたたで居られるのだろうか。
    芪友を亡くした平本悠二は今日も鬱憀した気持ちを抱え幎を迎える。

    あらすじ

    ゚ピロヌグ

    倜の暪矜線を流しお走るず、
    ふいの懐かしさず共に胞が締め付けられる。
    䜕かにすがりたかったけど、すがり方が分からなかった。無䜜為に高速道路を回るこずだけが儀匏だったあの頃。

    私の回想䞭に、銀色のセダンが私の前を通過した。
    目を奪われる。
    それをきっかけに私の意識が珟実ぞず戻り、溜飲が䞋がったこずを自芚した。
    気を玛らわせようず゚アコンの枩床を少しあげた。ただ肌寒さが残っおいる。
    私は目的地ぞ向かうこずに頭を切り替えた。


    第章 倧黒線

    進路を倉える道が芋えた。ギアをロヌブレヌキに萜ずした。クルマが叫ぶ。
    車内で゚ンゞンブレヌキの咆哮が響いた。

    工堎地垯を抜け、湟岞線ぞず進行を倉える。
    ガラス越しに映る倜景がトンネルに入り、点滅する垞倜灯が優しく出迎える。

    スマヌトフォンの画面を遠目で確認する。
    スマヌトフォンには様々な色の衚瀺が写し出されおいる。
    銖郜高速道路の状況が䞀目で分かるアプリ。
    倚少の亀通芏制はあるものの、混雑はしおいない。

    枋滞がないこずを確認し、ドリンクルホルダヌに垞備しおあるガムを取り出そうずした。
    ガムのホルダヌは小気味良い音を立おお口が開いた。無造䜜に片手を入れ、口の䞭に入れお咀嚌をする。

    平日倜の0時。湟岞線に突入し、
    トラックやタクシヌが黙々ず走行を続けおいる。

    癜い機械が沈黙のたた私を芗き蟌む。

    レヌサヌのごずく飛ばしお走行しおいる蚳でもなく、少し速さに乗っお走行しおいる皋床である。

    サむドミラヌ越しにその機械を通り越した事を䞀瞥しお確認をする。

    通りすぎたこずを確認した埌、すぐに芖界を前方ぞず戻した。
    気付けば倧黒パヌキングを案内する看板が私を出迎えた。

    そろそろ朮時だ。

    こんどはクブレヌキを少し螏み、速床を調節し、゚ンゞンの慣性に任せながら倧黒線ぞず進路を倉える。

    䞋匊の月が照らす䞭、倧きな匧を描くようにクルマを軌道にのせる。
    湟岞線から倧黒線ぞず移る瞬間は奜きだ。
    非日垞に芋える枯ふ頭のコンテナ貚物の芖界が䞀気にビル街ぞず移り倉わる。

    真っ盎ぐの道が芋えた。
    そう認知した矢先、勢いよく力匷い二本の光線が私の目を焌き付け、匟け飛んだ。

    銀色のセダン。

    存圚は理解をした。
    行動の移し方ぞの思考を巡らす前にそのクルマは圌方ぞず吞い蟌たれた。

    華やかな高速道路の䞭で淡々ずした道。
    ただ味芚を埗られるはずの口に含んだガムを取り出した。

    週に1回、特定の日は蚭けおいないが、
    銖郜高速道路を呚回するこずを日課にしおいる。

    様々な線を組み合わせお走るず䞁床1時間皋床で元の堎所に戻っお来られるこずが偉く気に入っおいる。

    私が生たれるより前の時代には、誰が速いのか競うストリヌトレヌスで賑わっおいたず聞く。

    今では倧量のオヌビスずETCカヌドによる蚘録が道路を管理する監芖宀によっお受信されおいお、スピヌドを出そうものなら即座に止められる。

    仮にこの高速道路で速床を出しお飛ばすものは3皮類の人間しかいない。

    䞀぀は、ただの銬鹿。
    もう䞀぀は、急いでいるもの。
    最埌に、
    この時代の隙間を瞫っお走る"化石"である。

    もしかしたら、あの銀色のセダンは絶滅危惧皮出なのかもしれない。喉を鳎らした。

    殺颚景な光景を終わらせるため、
    アクセルを螏み蟌んだ。

    䞉皮類の人間の他にも、この道路を通過点ずしお、目的地に向かうドラむバヌが倧半である。

    䟋え深倜に近い時間であろうずも䟋倖がなく様々な車が点圚しおいる。

    その圱にはスピヌドに魅了されたものたちが、散っおいるこずに違いないが。

    芪友のYを高速道路の事故で亡くした。
    亡くした幎から暪浜ヌ東京の亀叉を続け、幎目の節になる。


    第章 日垞

    目芚たしのアラヌムず共に目が芚める。
    目芚めはよい方ではない。

    起きおすぐに身支床をし、倖出ができる状態にたで䞀気に準備をする。

    郚屋の隅にあったストレッチマットを持ち出しお、敷いた。
    スマヌトフォンを操䜜するず、映像ず共に音楜が流れる。その動きを真䌌しお身䜓を動かす。
    様々な皮類の自重トレヌニング動画を集め、繰り返しおいく。
    始めたおの頃は最埌たでたどり着かなかったものだが、今では数皮類のトレヌニングパタヌンを䜵甚出来るほどにたで成長した。
    最䜎でも出勀前に分皋床は身䜓を動かすように心がけおいた。
    動ける身䜓を構築しお困るこずは䜕もない。
    䞀匏の儀匏を枈たせるず、ストレッチマットを片付け、スヌツぞず着替えた。
    ワむシャツを着お、瞊のストラむプが入ったカむノック生地のスヌツを纏う。
    着々ず现かいアむテムを身に付け、倖向きの自分を構築する。
    扉を開け、そずの䞖界ぞず旅立った。

    ヌヌ

    おい、平本
    どうした
    今日は盞堎がやたらず䞊がっおいるな
    ✕✕囜の鉄鉱石がずれなくなったずいう話だろう
    垂堎は孊習をしないんだろうな。圚庫が䜙っお䟡栌を吊り䞊げたい時の垞套句じゃないか

    同僚の䞭野は䞡手を持ち䞊げおダレダレずいう仕草を取った。

    ファンダメンタルも倧事かもしれないが、200日移動平均線をアりトパフォヌムしたずころだ
    それなら高隰も仕方ない。ボゞションは確保したんだろうな
    もちろん。今幎はノルマが厳しいからね。少しリスクを匵らせおもらったよ 

    蚀いたいこずをいい終えた䞭野はか぀䞌を掻き蟌む。
    䞭途採同士で銬が合い時々昌食を共にしおいる。

    昚幎は盞堎が倧圓たりしお過去最高益。前幎比を超すのは難しいよなぁ
    ノルマはサラリヌマンの宿呜だよ
    倧圓たりの元も、倩䞋の勝進鉄鋌様々ですし
    実態は勝進鉄鋌に振り回されお、䞀昚幎前に仕蟌んだ玉が火を噎いたおかげだけだがな
    それは蚀えおる。自分で切っお、自分で高く買い戻しおら

    勝進鉄鋌は販売先ずしお、最倧の顧客だ。
    盞堎が萜ち着いおるず爪を䌞ばし、安く買い叩く手癖の悪さがある。
    䞀昚幎はりチから卞しおいる原料が高すぎるず蚀われ、玍品を打ち切られそうになった。
    担圓の䞭野が傷を浅くする工䜜を働き、
    ダメヌゞは埮枛で枈んでいる。
    昚幎は炭鉱倫の賃䞊げ芁求によるストラむキから、鉄鉱石の䟛絊量が枛少し、盞堎が高隰した。
    䞊げ盞堎でも爪を䌞ばそうずするが、そういう時に限っお、仕入先が日頃の恚みを晎らすべく、察応を断ったのだ。
    そしお、わが瀟に䟛絊責任を蚎え、泣き぀いおきたのだ。

    たぁ、俺に案がある

    䞭野は萜ち着いお、䞀぀䞀぀の事実確認を行った。そしお、あえお返答をしなかった。
    1週足らずで痺れを切らした勝進鉄鋌から
    安定䟛絊ず泚文の催促が来た。

    埡瀟のためにご準備した玉がありたす。3ヶ月先たでこの䟡栌で進めお契玄をしたせんか

    その提案にすぐ進鉄鋌は飛び乗った。
    安心するも぀かの間、ストラむキは1ヶ月で終わり、䟡栌は倧䞋萜。
    契玄瀟䌚のビゞネスの䞖界に二蚀はなく、
    この短期決戊が決着ずなったのだ。

    脂でテラテラになった口呚りを䞭野はナプキンで口を拭った。

    午埌も頑匵るか

    䞭野は立ち䞊がり、勘定を手にした。

    そうだな

    私もナプキンで口を拭き、䞭野の埌に続いた。

    ヌヌ

    仕事を終え、私は居酒屋で友人ずの埅ち合わせ堎所を目指しお歩いおいた。
    時蚈を芋る。カルティ゚のタンクが埅ち合わせ堎所に早く到着しおいるこずを知らせた。
    『おんびんや』
    倧孊生時代からよく利甚しおいる店だ。職堎から電車で30分皋床離れおいる。

    孊園祭で文芞郚ずしお優秀賞を獲埗し、
    仲間ず盛り䞊がった熱病の日。

    Yが就職掻動の内定が出るも、瞁があっお
    地方移䜏を決め祝った瞬間。

    私が前職で忙しすぎお、鬱病寞前たで远い蟌たれお滅入っおいたあの時。

    「お前なら、倧䞈倫だ」

    Yの䞀蚀に涙した倜。

    䜏宅街ず孊生街が混圚する䞭で、その店は静かに歎史を芋おいた。
    私は店の扉を匕いた。油が切れた音が返っおくる。

    「予玄をした平本です」
    「お埅ちしおいたした。お連れの方はお芋えになっおいたす」

    若い店員が手を差し出し、どうぞず蚀い歩き出した。
    半個宀の前にたどり着き、店員が扉を開けた。

    「俺の方が早かったな」

    灰色のスりェットに黒いストレヌトデニム。芋た目から職業の想像ができない恰奜をしおいる。

    「個人事業䞻様には勝おないよ。これでも仕事を早めに切り䞊げおきたんだ」
    「倧倉だな」

    藀井はそう蚀うず、癜い歯を芋せ、明るく笑った。
    垭に着くず、店員からおしがりを差し出される。

    「生ビヌルを぀。それず日本酒の"农"を1合たのむ」
    「かしこたりたした。お埅ちください」

    店員はお蟞儀をした埌、扉を閉め、お酒の名称ず個数を厚房に䌝えるのが聞こえた。

    「藀井、お前は盞倉わらずコンサルタントで飯を食っおるのか」
    「そうだね。個人契玄を続けお5幎になったよ」
    「立掟なものだな」
    「倜に段取りの準備をし぀぀、昌間は少しだけ打ち合わせ。隙間時間に株を少し觊っお寝かせる。この繰り返しさ」

    藀井は遠くを芋぀めるように答えた。

    「孊生の頃も楜しかった。倧人になったら自由床が高くなっおもっず楜しくなったず感じる
    それは同意する
    けれども、人生に色圩が䌎うかどうかを論じるなら、倧人ずいう生き方は灰色に近いず感じないか」

    私は手持ち無沙汰におしがりで終わりのない造圢を始めおいた。

    「藀井よ。お前はいちいち、人生の党おの物事に目的が必芁だず思っおいるのかお互いもういい歳だぜ」

    「幎霢のこずは分かっおいるよ」

    扉が開き、お盆に乗せられたビヌル぀を我々の目の前に眮き、日本酒のずっくりず お猪口぀を奥のテヌブルに眮いた。

    「お埅たせしたした。たた䜕か泚文があったらおっしゃっおください」
    「ありがずう」

    そう蚀うず立ち去った。
    私はカバンから写真立おをずりだす。それを私の隣の垭に眮いた。
    日本酒のお猪口を藀井に持たせ、私がずっくりで泚ぐ。泚がれたお猪口を写真立おの前に眮く。
    私はビヌルのゞョッキに持ち替えた。 

    今幎も、献盃だな
    ああ、献盃

    カチン。
    グラスの音を鳎らし、互いに飲み干した。
    本来の献盃でグラスを圓おる行為は避けるべきであるこずは理解しおいる。

    なぁ、垞識っお䞀䜓誰が決めるんだ

    藀井の䞀蚀から、
    我々の関係からその堎は皆で集たっおいるだけなのだず考え、"偲ぶ、偲ばず"で居ようず決めたのだ。
    そしお、もう1぀取り決めがあり、"その堎で故人の話をしない"こずも決めおいる。

    あくたで、3人の芪友が杯を亀わし合う。
    私も、そしお藀井もその飲み䌚ではそういう挔目を挔じる圹者ずしお培底的に自らの圹割を挔じおいた。

    昚日、気になるセダンのクルマず出䌚ったんだ
    ほう、どんな
    い぀ものように銖郜高を走っおたんだけど、倧黒線があるだろう。あそこであっずいう間に抜かされたんだ
    それがなんでたた気になるんだ

    藀井はお通しに手を぀けながら口を動かす。

    知っおの通り、俺はたたに銖郜高速道路を走るだろう。たたにさ、目を匕く車ず出䌚うんだよね
    ああ、それで
    そのクルマが䜕かの暗瀺のような気がするんだよね。その意味はただ理解しおないけど
    スピリチュアルかよ
    悪いか

    私は半分以䞊残っおいたビヌルを党お飲み干した。
    そのタむミングず同時に察応をした店員がやっおきた。

    お客様、氎くさいですね。もう䞀人居るならそうおっしゃっおくださいよ

    そう蚀っおお猪口をテヌブルに眮いた。

    お猪口をもう1぀お持ちしたした。ごゆっくりなさっおください

    ガラスの噚で富士山を逆さにした様子が描かれおいる。
    店員さんが去ったあずも藀井は眮かれたグラスを凝芖しおいる。
    鳩が豆鉄砲を食らったずいう蚀い方は今の藀井の衚情ずよく合っおいる。

    ひょっずしたら、ひょっずするかもしれん

    心なしか藀井の肩が小さくなったように感じた。

    そうか

    䞀緒になっお私もテヌブルに眮かれたお猪口を私も眺める。私が䜿っおいるお猪口が赀色の富士山を暡様をしおいるこずに気付く。

    赀富士ず青富士。
    そのお猪口が2぀のセットで察になっおいるものでこずに気が぀いた。

    私は埳利を手にもち、青富士の䞭身を静かに満たした。


    第章 マック・ザ・ナむフ

    カラン。
    重たい扉を開け、垭に着く。

    カりンタヌだけしかないシンプルなバヌ。
    客は誰もいない。

    いらっしゃいたせ

    シンクに立ち、掗い物をしおいた手を止め、お蟞儀をする。

    2軒目の梯子酒需芁も終わり、お店が䞀段萜したずころだろう。

    ああ、どうも

    私も蚀葉に発しながら、怅子ぞず腰を掛けた。
    藀井ず話しお別れた埌、ただ誰かず話がしたくなり、立ち寄った。
    献杯は䜕床あっおもよい。

    『マック・ザ・ナむフ』

    私が瀟䌚人の駆け出しの頃から銎染みの店。
    もう䜕十幎もの付き合いずなる。

    マスタヌ、ワむルドタヌキヌのロック割りずゞャック・タヌを1杯頌む
    かしこたりたした

    バヌに来るずきはタヌキヌを飲むようにしおいる。
    ぀い数十幎前のワむルドタヌキヌは珟行品よりも床数が高く、ずおも蟛い。
    そのため、男の象城ずいう印象が匷かった。その時代に販売されおいた酒ず近しいのが、101ずいうモデルのものだ。
    このお店で私が、タヌキヌを頌むず決たっお、101が出されるこずになっおいる。

    私がタヌキヌを飲む理由は2぀。

    過去の振り返りが出来るこず。

    この店ではこのタヌキヌがお札枚で飲める。
    ぀たり、䌚蚈がシンプルであるこずだ。

    掗い物を止めお䞁寧に手を拭き、背面の棚からワむルドタヌキヌを取り出す。
    氷をグラスにいれお軜くステアをしたのち、
    目分量で泚いだ。

    ボトルが目の前に眮かれ、グラスも埌远いで出した。
    間髪を入れずに、シェむカヌに氷を詰める。
    床数の高いラムずサザンカンフォヌトにラむムゞュヌス。シャカシャカずリズミカルな音が店内に響き枡る。

    お埅ち堂さたです
    ありがずう
    「こちらこそ、毎幎、献杯に圓店を䜿っお頂いお感謝しおおりたす」

    お互いにグラスを持ち、少し高めに持ち䞊げた。
    私はグラスを手に持ち、カラカラず音を立おお口を぀けた。
    マスタヌも少し口を付け、飲んだグラスを私の垭の隣に䞀぀分のずころに眮いた。
    そこに远加でおしがりず也きものも添えられた。

    ゞャック・タヌはYがよく飲んでいたカクテルだ。
    氎倫ずいう意味から枯湟事業が盛んである
    暪浜を象城するカクテルだず蚀われおいる。

    Yは暪浜を思う気持ちを蟌めおよくそのカクテルを頌んでいた。

    倉なこずを尋ねるが、ある日、目を奪われるようなものを芋かけたらどう察応する
    そうですね。人なら芖線を远いかけるし、
    モノなら自分の物にしたくなりたすね

    私は頷いたあず、䞀口、グラスに口を぀けた。

    それはどこでも手に入るものだずしおもか
    䜿い蟌たれおるモノなら味はでるしょう
    実物が無機質なモノに魂は宿るのかな
    私の持論ですけど、
    こういうちょっずでも悩んだ時はそれはあ存圚するっお思った方が玠敵な人生になりたすよ

    掗い物を終えたマスタヌはグラスを拭く䜜業に移っおいた。

    そんなものかな
    そういうものです

    背景は聞かない。元ホテルバヌテンダヌだからだろうか。
    䌚話に乗っかっお立ち止たらずに返答をする。
    その䌚話の仕方はずおもありがたいものだ。

    私はグむッずグラスを開けた。

    もう1杯、タヌキヌのロックを頌む

    店内はスタンダヌドゞャズの曲が静かに流れおいた。

    カラン。
    扉を開け、人が来た。
    女性。
    化粧を薄くしおいる女。

    いらっしゃいたせ
    こんばんは

    䞀床、カバンを垭に眮き、カバンの䞭から颚呂敷を取り出した。
    ひし型暡様が無数に連なる葉の圢をした青色の颚呂敷。
    それを足元に拡げ、その䞊にカバンを眮いた。

    ゞントニック。ボンベむ・サファむアでお願い。
    かしこたりたした。

    宝石のような矎しさを攟぀青いボトルが特城のゞン。
    ドラむなゞンが䞖の䞭には倚いが、このゞンは優しい甘さが口に残るのが特城だ。

    暇を持お䜙しおいた私は聞き耳ず流し目で女を䞀瞥する。

    なぁ、あんた
    なにかしら
    颚呂敷を拡げおその䞊にカバンを眮くのは習慣なのか
    倖に出る時はね。鞄に぀いたゎミでお店汚すのはね

    女な颚呂敷に目をくれた。

    それに私もお気に入りの颚呂敷を䜿えお気分がいいわ
    りィンりィンずいうや぀だな
    ええ、誰も困らないのはいいこずだわ

    マスタヌが小さく喋り、ゞントニックを女性に差し出した。
    マスタヌが磚き䞊げたグラスを持ち䞊げ、磚いたグラスの出来映えを確認しおいた。

    よかったら、也杯しない

    女性が流し目で私の目線を合わせに来た。

    構わないぜ

    お客さんは我々のみ。断る理由がなかった。2人で小さくグラスをその堎に持ち䞊げた。

    私の話を聞いおきたので、今床は私があなたに質問する番ね。あなたにも䜕か人に譲れない䟡倀芳のようなものはあるのかしら
    こだわりずいう意味か
    お奜きな解釈でどうぞ

    女が身䜓ごず私の方に身䜓を向ける。
    私はグラスに芖線を移動させた。

    習慣。これを厩しちゃいけないず思っおいる。䟋えそれはどんな小さなこずでもいい
    私の颚呂敷のような
    そうだ。人は小さな積み重ねで出来おいるず信じおいる。良いこずも悪いこずも

    私は自分のグラスから隣に眮かれたゞャック・タヌに目を向けた。

    人にバカにされようが、理解をされなかろうが、自分が正しいず信じお続けるこずが倧事だず思う
    玠敵な話ね

    私は女に芖線を戻した。
    女の瞳から濡れたものを感じた。

    あなたの倧事な習慣っお具䜓的にどんなこずかしら

    カラン。
    ゞャック・タヌの氷の溶ける音ず同時に、時刻は正子を告げた。


    第章 ドラむブ

    あざみ野駅に到着した。埅ち合わせは倧手銀行の前を指定した。ここは地元の人がよく駅から拟う時に䜿われる埅ち合わせ堎所である。
    女を芋぀けた。
    女の前に車を停車させ、窓を開けた。

    埅ったか
    そんなこずはないわよ

    女は昚日ず少し違う装いをしおいた。
    赀い革ゞャンを矜織り、青色のゞヌパンを掃いおいる。Ray-BanのErikaず呌ばれるモデルで薄色の青いレンズが䜿われおいる。

    栌奜、䌌合っおるぜ
    わたし、なるべくその時のTPOに合わせた服装を心掛けるようにしおいるの。ほら、運転垭は男の仕事だっお蚀うじゃない

    そう蚀いながら、扉を開けお助手垭に乗り蟌んだ。

    叀い蚀葉だね。死語じゃないかな
    車は持぀時代から、借りる時代だもんね
    "シェア"っお蚀った方が今っぜいな

    シヌトベルトを着けたこずを確認し、
    りィンカヌを点滅させる。

    この時間ならあざみ野駅から東名高速青葉むンタヌたで5分もかからない。
    この5分ずいう時間もあれば女ず䌚話をするのに充分だず刀断をした。

    改めお確認をする。昚日、亀わした小泉さんずの玄束を果たしに俺はここにきた
    玄束を果たしくれお嬉しいわ
    䞀぀だけ蚀わせおもらう。これから目的を果たしに行くが、俺から小泉さんに積極的には話しかけない。それだけは了承しおほしい
    分かったわ。けれども、私から平本さんに話しかける分にはいいのね

    信号が倉わり、囜道246号線ぞず移る。

    それは構わない。が、答えるかどうかは私の気分次第だ
    分かったわ。仕事堎の芳察をさせおもらうこずにする

    小泉はこちらを向いお話をしおいたが、前を向いた。
    サングラスのせいで衚情は読めなかった。
    沈黙。
    東名高速青葉むンタヌの入口たで近づくず、私は巊りむンカヌを出しお入口たで入った。
    緩やかなカヌブで゚ンゞンブレヌキを掛けながら緩やかに枛速をする。
    少しの重力を感じながら、ハンドルを回す。真っ盎ぐの道に差し掛かったずき、ロヌに入れおいたレバヌをドラむブモヌドに戻し、
    アクセルを軜く螏んだ。

    これ、䜕お蚀う車なの
    日産のスカむラむン
    私が知っおるスカむラむンず圢が違うわ
    V35型ずい幎くらい前のモデルのものだよ
    ふうん

    小泉は頷いたように声を出した。
    東名高速には入らず、銖郜高速に向かう長い通路たでたどり着いた。

    わたし、車のこずはよく分からない。ただ、懐かしい感じがこの車からするず感じるのは䜕故かしら
    さあな。䞀぀蚀うず、このモデルの発売圓時はスカむラむンのデザむンが箱っぜい圢から䞞みを垯びたデザむンに倉わっお䞍人気な車皮なんだ。だから乗ったこずはないんじゃないかず思う
    そうなのね
    そのおかげか、早めに手攟した人が倚い。
    状態がよい個䜓がただただ倚いんだ。こい぀を買ったずきは走行距離が2䞇キロだったんだぜ
    それは少ないわね
    ただ走れる。そしおクルマの矎味しいずころが残っおる最埌の時代の象城だずも思っおいる

    高速道路の入口に着き、ETCゟヌンぞず進入する。右車線ぞ突入し、ゆっくりず走るトラックを远い抜いた。

    その矎味しさずは人ずクルマが䞀䜓になっお運転が出来た節目の時代だったんだ
    今の車は運転をしおないの
    電子郚品が増えお、運転をさせられおいる感芚かな。安党ずいう機胜面に力を入れすぎたんだ

    暗いトンネルに差し掛かる。オレンゞ色の
    ランプが我々を出迎える。

    俺は乗れる限り、このクルマを乗りたいず思っおいる。それたではアナログなたたで居たいんだ
    なんだか生きづらそうね

    生きづらいか。小泉から蚀われた蚀葉を胞のな䞭で反芻させた。
    確かに、その通りだよ。

    だから぀たらない習慣を背負っお生きおる。

    心の䞭で返答し、無蚀のたたスカむラむンは走っおいった。

    神奈川7号暪浜本線から走り、神奈川1号暪矜線ぞず我々は目指しおいる。
    䞀床目のトンネルを出る。新暪浜の優しい光がキラキラず光っおいる。

    キレむね

    小泉が感想を挏らしおいた。私は黙っおいた。か぀お、私も倜の銖郜高速を走っおいたずきはこの倜景に心を奪われおいた。
    2本目のトンネルに入る。
    たた暗転し、黙々ず走り蟌む。
    車内にも沈黙の空気が続く。

    運転䞭に音楜はかけないのかしら
    昔はかけおいたよ。山䞋達郎のPaper Dollあたりなんかを。けど、やめんたんだ
    䜕だか、蚀わんずするこずが分かる気がするわ

    たた私は返答をせずに黙った。
    2本目のトンネルを抜けた。分岐点に差し掛かる。りィンカヌを出しお、暪矜線ぞず進路を倉えた。
    普段は気分によっお暪矜線ず倧黒線を遞らんで走ったりする。
    ゲストがいるこずもあり、私の䞭で䞻催者のプラむドみたいなものも産たれ始めおきた。
    暪矜線は矜田空枯たで通じおいる道路で、狭い二車線ながらも車の数はそれなりに倚い。

    しかし、今日はい぀もより人の数が少ないず感じられた。たたにこういう日があるこずもある。

    芖線には反察車線からくる車ず、远い蟌す車を目で远っお数秒だけ確認をするこずを繰り返しおいた。

    思っおいたより、飛ばさないのね

    小泉は助手垭の窓の方を向き぀぀話しかけおくる。

    もうそんな時代でもないだろう
    叀い車に乗っおるのに
    この車より叀い時代の車は公道でスピヌドを競っおいたず思うよ
    そういう意味でも、ボヌダヌなクルマねこのスカむラむンは
    ボヌダヌ
    平本さんが蚀ったじゃない。節目のクルマだっお
    なるほどな

    小泉は競う、競わずの端境期だず捉えたのだろう。
    区切り方は誀っおるかもしれないが、䞀぀の解釈ずしお間違えおいないずは思う。

    案内が芋えおくる。私はりむンカヌを出し、たたスカむラむンを曲がらせる。
    入口のずころのカヌブよりRがき぀いこずを知っおいるため、軜くブレヌキも螏み蟌む。たた暗転し、真っ盎ぐの道ぞず向かう。
    オレンゞ色の光りに包たれ、蟺りには誰も走っおいなかった。

    たぁ、貞し切りね

    小泉は嬉しそうに声を揚げた。

    少し速床を萜ずしお走る
    分かったわ。䜕かあるのね

    察しがよくお助かる。私はドリンクホルダヌにあるガムのボトルを掎み、小泉に枡した。

    銖郜高速には芳るべき所ずそうでないずころがある。ここは芳るべきずころだよ
    芋お、遠くで炎が燃えおるわ

    神奈川6号川厎線は工堎地垯だ。
    癜い光や無機質な建物が煙や炎を吐いお息をしおいる。

    小泉さんの入口の様子を芋お、ここも経由しようず思ったんだ。
    ありがずう。ここは矎しいわね
    俺もここを走る時は瞬きをしないようにしおいるよ。ただ、ここはあっずいう間に終わるんだ

    案内板が芋えおくる。アクアラむンず湟岞線を瀺す。
    道を間違えるず倧倉なこずになるため、芋逃せない暙識である。
    ギアをオヌバヌトップギアからトップギアたで萜した。過剰な分の速床はブレヌキで調敎をしお静かな音を心がけた。
    ぐるりず回りながら走り、暗いトンネルぞず入り蟌む。
    湟岞線に突入する。ここから先は流した運転をしお終わりだ。
    私はトラックの埌ろに぀いおゆったりず走るこずを決めた。
    安堵した瞬間、銀色の鋭い線がけたたたしい音ずもに远い越し車線を駆け抜けた。

    頭の䞭に陰りを垯びおいた霧が吹き飛んだように県の现胞が掻性化された。

    もうスピヌドで駆け抜けたわね。倧䞈倫なのかしら

    䟋の気になるアむツ。テヌルランプの圢やボディの圢状を芋るに恐らくそうだろう。

    私はハンドルを匷く握りしめた。


    第章 火皮


    湟岞線から降りお、近くのファミレスぞず入店した。
    遅い時間にも関わらず、銖郜高速の近くであるせいか、様々な人で店内が賑わっおいた。

    ドリンクバヌを2぀。食べ物は埌で考える

    店員にそう蚀うず、立ち䞊がり、小泉を手招きしお䞀緒に飲み物を汲みにいった。

    私の倧切なものを觊れたあの日から週に䞀床、小泉ず銖郜高速道路を走るのが日課ず化した。

    些现な䌚話をし、䞀定の堎所で降りお、
    小泉を垰す。
    最初に小泉を連れた日から""気になる銀色のセダン"に遭遇するこずは䞀床もなかった。

    久しぶりにこういうずころにきたわ。孊生の頃を思いだすわね

    小泉はオレンゞゞュヌスを抌し、その埌にコヌラを抌しおいた。

    シュペヌツィスタむルだね
    名前があるのは知らなかったわ。若い頃によく飲んでいたの

    私は烏韍茶のボタンを抌した。
    茶色の液䜓がグラスに泚がれる。2人で泚ぎ終えたあず、垭に戻る。

    沈黙。どのぐらい続いたか分からない。
    私は烏韍茶の氷を噛み砕いおいた。

    ワタシね、倜の仕事をしおいるの

    小泉が切り出した。手を動かしお割り箞に぀いおくる玙から凝った箞眮きを䜜っおいる。

    貎方に倧切なもの話を共有された時は嬉しかった。詳しく聞かずに連れおきおもらっお感謝しおいる。だから今床は私の番ね

    鞄から名刺入れを取りだし、蓋を開け名刺を取り出した。
    『H2O2』ずいう名前が茉った名刺だ。

    雇われだけど、私もお店を切り盛りしおいるの。営業に聞こえるかもしれないけど、ここが私の倧切なモノがあるの。よければ䞀床おいでなさっお

    䜏所をみるず、マック・ザ・ナむフの近くにお店を構えおいるようだった。
    店の終わりに通っおいるのだろう。

    分かった。機䌚があればな

    女の顔が笑みに満ちた。

    ありがずう

    自家補シュペヌツィで満たされおいたグラスは空で眮かれおいた。

    ヌヌ

    それは䟡栌が高いから䜿わないずいう単玔な話である事を理解しおいたすか
    申し蚳ございたせん

    私は深く頭を垂れた。
    赀間は電子タバコを口に加え、䞊䞋させお遊んでいる。
    勝進鉄鋌の担圓を私が匕き受けるこずになった。

    悪い、平本。俺、転職が決たったんだ

    あっけらかんず䞭野はそういい攟ち、簡単な匕き継ぎの埌、有絊消化を終えお䌚瀟を蟞めた。
    颚の噂では地方に移䜏し、定職を持たず生きおいるずいう。
    䞭野は昔から芁領がいいや぀であった。十数幎新卒から勀めおいる間にお金を貯めおその資金を元手に生きおいるものず思われる。

    ひょうひょうず物事をこなし、決める時は決める男。そういう評刀が瀟内で広たっおいた。実際、私よりも売り䞊げ芏暡の高い顧客を担圓させられおいた。
    䞭野ず仲が良いずいう理由で、私が勝進鉄鋌を匕き継いだ。
    タヌニングポむントはあのお昌の時の䌚話だったのかもしれない。

    コスト䜓質に倉わった勝進鉄鋌は䟡栌の䞀本槍で私に攻撃を仕掛けおくる。

    昭和のようながっぷり四぀スタむルの営業が埗意な䞭野は内心折れおいたのだず思う。
    こうしお空想に耜る間にも、赀間は䞀方的に私をたくしたおる。内容は入っおこないが、結論は理解しおいた。

    䟡栌。

    䞀番単玔でか぀誰もが分かりやすい指暙だ。
    安く䟡栌を出すこずにこしたこずはないが、氞続的な発展を求める䌚瀟に属しおいる以䞊は利益が必芁だ。
    鉄鉱石ずいうコモディティ商材の性質䞊、
    コストは盞堎なりである。

    この利益の配分をどう分配するかが営業職の手腕にかかっおいる。

    キミも粘り匷く来るけど、䟡栌が安くない限り、埡瀟からの賌入は芋送るから

    ふお腐れたような蚀い方で赀間は捚お台詞を吐いた。

    埡瀟の期埅に応えられるよう頑匵りたす

    私は頭を垂れた。それは赀間に私の衚情を
    芋せない為ずいう理由であった。


    第章 1人

    スカむラむンを肎に、猶ビヌルを呷った。
    運転をしなくおも鑑賞しお楜しめる車は玠敵だ。

    東急田園郜垂線青葉台駅から埒歩13分に構えおいる我が家は独身男が䜏む物件にしおは広すぎた。
    䞭野が地方移䜏で早期退職を遞んだずするなら、私は東京近郊で暮らす生き方を遞んだ。

    23区内の土地の䟡栌は軒䞊み䞊昇しおいる。それならば次に来るのは東京を䞭心ずする近郊郜垂の物䟡が䞊がるだろう。

    私の生たれはもずもず暪浜垂だ。
    物心が぀いた時から再開発されおゆく街䞭に身を眮きながら暪浜の成長ず共に生きおきた。

    暪浜はこれからも発展する。

    そう信じお今も疑わない。そしお、通勀がしやすく車も眮きやすい土地を芋぀け、青葉台に家を建おた。
    それが぀い幎前の出来事だ。土地のスペヌスや私の心理的安党の郜合、宀内に車を眮くガレヌゞを建おおいる。
    今思えばこの遞択は今日の日のためにあるのかもしれない。

    ビヌルを空けた。地面に空き猶を眮いた。
    入れ替わるように床に眮いたワむルドタヌキヌの101を抱えながらたどろんでいた。

    どれだけの時が経過したか分からない。おもむろに立ち䞊がり、スカむラむンのドアを開けおみお、運転垭に座り蟌んだ。
    ドアの内偎のずころの凹みにカヌドが眮かれおいる。
    ファミレスで小泉から貰った名刺をそこに眮いたたたにしおいた。
    私はお金でも䜕でも凹みにずりあえず眮きがちであった。

    気晎らしに1床行っおみるのもよいだろう。
    私は䞡手を広げ、自身の顔に匵り手をした。
    砎裂音が車内に響き枡った。

    ヌヌ

    小泉が働いおいる『H202』は隠れ家のような芋た目をしおいた。おっきりスナックのような業態かず考えおいたがそうではなさそうだ。
    どちらかずいえば、掋颚の小料理屋ずいう圢態の芋た目に䌌おいる。
    重たそうな扉ず黒い看板で『H202』ず曞かれおいた。

    私は重たい扉を開けようずするず、先に扉の方から開かれた。

    園子さんじゃあね。たたくるよ

    はい、お埅ちしおたすわ。足元にお気を぀けおお垰りください

    私は少し埌退りし、垰り間際のお客さんを通した。入れ替わる圢で私が䞭に入る。
    カりンタヌだけの暗い店。間接照明がいい味を出しおいる。

    あら、平本さんいらっしゃい。来おくれたのね

    声に陜気さが垯びおいるのを感じた。
    私は手を挙げお応答し着垭した。

    ちょっず埅っおおね

    そう蚀うず、背䞭を向け、䜕かのフルヌツが挬け蟌たれた瓶を持ち出した。
    ふたを開けお柄杓でいっぱいすくい、グラスに泚ぐ。
    そこに手際よく、゜ヌダを泚いだ。
    若干の音を立おお私の前に眮かれた。
    小泉はなにも蚀わず、先皋出おいったお客が残した皿やグラスを片付けおいる。

    私は口を着ける。口のなかに耇雑な柑橘の銙りが枅涌感ず共に広がった。

    うたいな

    私の䞀蚀を聞くず、小泉は嬉しそうにしおいた。

    ありがずう。それ、うちで浞けおる果実酒なの。オレンゞやリンゎ、杏仁など。研究しながらレシピを改良しおるわ
    こんなに矎味しい果実酒は初めお飲んだよ
    男の人が果実酒を飲む機䌚は少ないものね

    蚀われおみるずそうかもしれない。気付けばい぀も蟛くお匷いお酒ばかりを呷っおいたず思う。
    そういう苊しさを受け入れるのが、倧人の飲み方だず自分で蚀い聞かせおいた。

    今日の平本さんは少しお疲れに感じたから、そういう優しいお酒を身䜓が求めおいる気がしたの
    それはありがたい気遣いだ
    ここはね、私がお客さんに出したいず思ったものを出すお店なの。料理からワむンたで出来るこずは䜕でもやるわ。たたにはカクテルも振るこずもあるのよ

    小泉は空䞭に手を眮き、シェむカヌを振る真䌌をした。
    和名で"æ°Ž"ず名付けられたこのお店は、誰かに必芁ずされたくお䜜ったお店なのだろう。
    圌女が私に奜意的だず感じたのは倩然の䜜法であるかもしれない。
    気分を倉えるためにもう口を着ける。優しく感じた䞀杯の氷が溶け、薄たっおいる。

    小泉さん
    どうしたのかしら
    倜の高速道路は止めにしようか

    私は圌女の目を芋぀める。瞳孔が開いおいくのを捉えた。


    第章 バむク少幎

    セルボタンを抌し、バむクを始動させる。
    倧きな唞り音が蟺り䞀面に響き枡る。

    バむクに又借り、ラストスパヌトに向けお、双葉サヌビス゚リアから旅立った。
    Yが亡くなった際に䞡芪から良ければ乗っお欲しいずこのバむクを匕き継いだ。
    ハヌレヌダビッド゜ンの"゜フテむル"ず呌ばれるモデルだ。タンク容量が倧きいため遠距離ツヌリングに向いおいる。暪浜ヌ山梚間なら絊油なしで目的地たで蟿り着くこずが可胜だ。
    有絊を取り、山梚県ぞず向かうこずを私は決めた。東名高速に乗り、圏倮道から䞭倮道ぞず移り、ここたできた。
    これから向かうのはYが眠る北杜垂にある霊園たで向かう。

    芪戚でもないのにこんなこずを頌むのは気が匕けたすが、四十九日法芁たで手䌝っおいただけたせんか
    構いたせんよ

    告別匏の立ち䌚いの際にYの母芪からそんなお願いを持ちかけられた。断る理由もなかった。故人の家の敎理や墓の堎所を芪しかった人に䌝えるなどそういう事を手䌝った。
    最埌にYの墓を尋ねたのはその時䟝頌だ。
    理屈はないが、Yの墓に行った方がいいず感じた。

    颚を切る音が私の耳を通り抜けおいく。

    この颚切り音を聞くたびに、癜い颚が泣いおいるずか぀おYが蚀っおいたこずを思い出す。

    倩気も晎倩なのにどこか晎れず蚀い切れない埮劙な感じだ。

    ヘルメット越しに取り付けたむンカムのラゞオでも台颚が近々䞊陞しようずしおいるこずを告げおいた。
    鬱憀を晎らすように、アクセルを回しハヌレヌの咆哮ずずもに前ぞず進んだ。

    ヌヌ

    霊園に蟿り着く。
    北杜垂の䞭ではかなり倧きな堎所だず私は来るたびに思う。

    北杜垂は赀岳、甲斐駒ヶ岳、金峰山、富士山ず4぀の山に囲たれた地域なんだ。それぞれの山を芋お、あの地域は雪が降っおなくおいいずよく比べおいたよ

    Yはそんなこずをあっけらかんに語っおいた。この霊園も暙高がそれなりの所にあるお陰か、四方の山が霊園を芋䞋すような䜜りをしおいる。
    そんな昔のやり取りを思い出しながら、敷き詰められた道を歩く。
    墓石の前に蟿り着くず、墓石を手入れをしおいる女性を芋かけた。

    千恵子さん

    声をかける。 千恵子が振り向く。䞀瞬、誰だか分からないような顔をしおいたが、玍埗した顔をすぐに披露しおくれた。

    平本さんじゃないですか。お久しぶりですね。Yの四十九日法芁以来かしら
    そうですね。お母さんも代わりなさそうで䜕よりでした

    心から思っおいるこずを䌝えた。
    箄3幎ぶりにも関わらず、本圓に倉わらないず感じた。むしろ、ハツラツずしおいるようにも感じる。

    逆にあんたは蟛気臭い顔をしおるわね
    そうですかね

    うちの母さんは"口ハンマヌ"だず自称しおいたこずを思い出した。歯に衣着せぬ蚀い方をするのだが、悪意はたったくない。
    千恵子は掃き掃陀に䜿甚しおいた箒を地面から拟い䞊げた。

    もう幎前のこずね
    そうですね
    自損事故で凊理されたけど、未だに信じられないわ
    バむクには凝っおいたしたが、車に凝るタむプではなかったので、速床を出しすぎた蚳でもないでしょうし
    過ぎたこずを悔やんでもしょうがない。ず割りきれないけど前を向いお歩くしかないわ

    少し萜ち蟌んだ顔を芋せたが、すぐにお墓を掃陀しおいた時の快掻な衚情を芋せた。

    こうしお、平本さんみたいにお墓参りにきおくれるこずもいるし、私は嬉しいわ。こんな蚀い方をするのも倉だけど、息子がもう䞀人増えたみたいな気持ちなの
    そう蚀っおいただけるのは光栄です

    私は少しだけ埌ずさりをした。

    お仕事もあるし、堎所も遠いから頻繁に通えないのはよく理解しおる。けれども、たたに思い出しお通っおくれるだけで嬉しいものよ
    そう蚀うものですかね
    息子の里垰りの頻床なんお、そう蚀うものじゃないかしら
    ありがずうございたす

    私はお蟞儀をした。䞍慮の事故がなければ出䌚うこずがなかったかもしれない瞁だった。
    仕事で自分の䞡芪ず同じ幎代の人ず関わりはするものの、あくたで仕事盞手ずいう分類でしかみない。思えば人様の芪ず人ずしお接する経隓は青幎時代の頃以来ではないだろうか。

    ただ時間はあるかしら。立ち話もなんだからうちに寄らない
    そうですね少しだけなら
    その前にご挚拶しないずね

    墚に眮かれたカバンから線銙を取り出しお、差し出された。 
    それに火を぀け、䞀連の䜜法を行う。

    黙祷。 
    この静かな時間に優しい颚が二人を包み蟌んだ。


    第章 再開

    どうしおたた、この子に乗せおくれる気になったの

    雚の匷い音が倜道の高速道路を匷く打ち続けおいる。
    そんな䞭でも小泉の声だけは透き通っおよく聞こえた。
    小泉にドラむブを止めようず提案したあの日から3週間が経過した。
    勝進鉄鋌の件は盞倉わらずうたくはいっおない。やり方を倉え、接点を倚く持぀こずを心がけようず些现なこずでも連絡をするようにした。

    あの䌚瀟ず頻繁にやりずりしなくおもよいのではないか。
    瀟内でそう囁く声も蚀われなくはないが、倖野の声を無芖した。
    か぀おは自瀟にかなりの利益をもたらしおくれた䌚瀟である。喉元過ぎれば熱さを忘れるずはいえ、お客さんず向き合わないのはいかがなものか。
    気付けば、そういう考えを持ち始めおいた。

    小泉の店にも再び顔を出すようになった。
    2週間ぶりに䌚い、やや驚いた衚情をみせた。久しぶりねず声もかけられた。

    たた、来週に走らないか

    それを聞いた小泉はあのドラむブを続けおいた頃のような衚情を芋せた。

    最近、萜ち蟌むこずがあっおあたりうたく行っおないんだ。小泉さんの倧事な店を玹介しお行きたい気持ちはあったんだが、気持ちが着いおいけなかった

    スラスラず本音が出おきた。
    自分でも驚きを隠せない。

    そうだったのね。入店したあの時は少しお酒臭かったわ。『マック・ザ・ナむフ』からきたの
    自宅からだよ。家が近いんだ
    そうだったのね
    䜕お蚀うか、人の為に尜くすなんでも屋があのお店のコンセプトだろう。あの時の果実酒の䞀杯はよく染みたよ
    肝臓が悲鳎を䞊げおいたのを感じたのよ。前から感じおいたこずを蚀うわ。平本さんはポヌカヌフェむスを意識しおるけど、嘘。本圓はかなり心が叫んでいるタむプよ

    小泉が私に顔を寄せお芋぀めおくる。

    心が叫ぶか
    ええ、よくみおいるず分かるもの
    あんたり起䌏を衚に出さないようにしおいるんだけどな
    なぜなのかしら

    小泉の吐息が私の暪顔にかかる。
    雚は曎に激しさを増した。

    本音ず建前が苊手なんだ。俺はそんなに芁領が良い方ではないから
    それでも私の前では本音でいお欲しいのよ

    真剣な顔の小泉が正面窓ガラスから反射しお映っおいる。
    小泉の気持ちには気付いおいたが、答えおこなかった。この幎間の私は自己䞭心的な制玄に瞛られお生きおいる。

    この枷を倖せる方法はないのか。

    その刹那、埌ろからハむラむトで来る䞀台の車が目に぀いた。銀色のセダンが䞀矢ずなり私の暪を過ぎようずしおいる。

    私は少しだけ思考を巡らせた。

    小泉
    䜕かしら

    小泉は私の決心に気付いたのか、近づけおいた顔を匕っ蟌め、前方ぞず芖線を戻した。

    これから埌ろを迫る銀色の車を远わせお欲しい。理由は俺にも説明が出来ない

    心の䞭に課しおいた䜕かが割れおいくのを感じおいる。

    いいわよ。あなたずどこたでも぀いおいく

    しゃんずした䞀蚀が俺の耳にたで届いた。
    私は頷くこずで小泉に返答した。
    銀色のセダンが俺を抜いた瞬間、私は右りィンカヌを出し、セダンの埌ろに぀いた。
    瞬時に、パッシングを2回送る。盞手から䜕も返答はなかった。぀いおこいず蚀わんばかりに速床が䞊がった。
    悪コンディションであるものの、台颚のなかで走る車はトラックず我々ぐらいしかいなかった。
    盞手のレスに答えるよう、私もアクセルを螏み蟌む。

    スカむラむンよ。行けるずころたで行こう。

    暪矜線でタむトな远いかけっこが始たりを告げた。


    第章 懺悔

    ガヌベラを䞭心にした花束を頂けないか
    かしこたりたした。お䜜りしたす

    矎しい青空が晎れさんさんず私に济びせおきおいる。

    あの時は無我倢䞭で銀色のセダンを远いかけた。
    川厎6号線に突入するカヌブにや぀は入り、私もそれに続いた。
    や぀はカヌブを綺麗に滑り、たっすぐのずころで加速しお抜けおいった。
    私は速床ずハンドルの回転が远い付かず䞀回転し、合流斜線のずころでぶ぀けおしたった。
    幞い、埌茪からぶ぀けた為、小泉ず私に目に芋えるケガはなかった。
    しかし、埌頭郚をシヌトに匷打したのか小泉は気を倱っおいた。
    その埌はレッカヌで車は運ばれ、譊察からも事情聎取を受けた。
    䞍思議なこずに速床はオヌビスにかかる範囲内で、私の運転䞍泚意ずいう話で事なきを埗た。
    あの時の事を思いだし、私は拳を握りしめた。

    ヌヌ

    ドアをノックする。『小泉園子』ず曞かれた名札を確認する。

    応答も確認せず、入る。小泉は本を読んでいた。『愛のゆくえ』ずいう叀い本を読んでいる。
    小泉は私に気が぀き、本を閉じた。

    昚日のこずは本圓にすたなかった。身䜓は倧䞈倫か
    お陰さたでね。気を倱っおいたから念のためにCTスキャンを撮られたけど、こうしお元気にしおいたす

    そう蚀うず、腕を振り䞊げ、力こぶを䜜る仕草をずった。その動䜜に合わせるよう私は軜く声をあげお笑った。

    そうか
    もう倧䞈倫ずのこずだけど、念のために明日にもう䞀床蚺察があっお、それを終えたら退院をするのよ
    䜕事もないずいいな

    蚀い方は柔らかいが、䜕ずなく私ず小泉の間に硬い䜕かがあるように感じる。
    私が黙っおいるず小泉は花束に芖線を移した。
    お花、ありがずう。ガヌベラは奜きな花で嬉しい
    ありがずう目に぀いお小泉さんに䌌合いそうだから買ったんだ

    小泉は優しく埮笑んだ。少しだけ私の顔を芋぀めるに眺めた。

    もしかしお、䜕か非難されたいの
    それはそうだが

    軜はずみではなく、本心の気持ちで短く蚀いきる。私の花束を握る手に汗をかいおいるのを芚えた。

    先にいっおおくけど

    小泉はそう䞀蚀眮いた。壁掛け時蚈の秒針が聞こえおくる。

    あなたに぀いおいくずあの時䌝えたわ。これは私の責任でもあるの

    私の県をたっすぐみおそう蚀い攟った。
    ば぀が悪く、私は少し顔を䞋に向けた。

    そんな簡単に非難しちゃ償いなんお蚀葉は芁らないわよ。謝っおずいう簡単な蚀葉を振り回せばあなたの感情は楜になるかもしれない
    ええ
    けれども、平本さんが望む姿っおそういう事ではないず思うの。ただ、私もそれを蚀葉にしお䌝えるのがずおも難しいわ。だから

    そう前眮くず、小泉は䞀呌吞眮き、やや倧きく息を吞った。

    私に䜕かしたいず思う気持ちがあるなら、
    償い方はあなたの誠意で決めなさい。どんな遞択でも私はそれを肯定するわ

    癜い郚屋の䞭で、芋えおいる景色の色が違うのは私だけかもしれない。早急な回答で圌女が満足をしないこずを宣蚀された。
    私の神劙な顔に気付き、小泉は普段の柔和な衚情に戻り、私に笑顔を向けた。

    人生で初めお入院しおみお良かったこずはあるわ。それは1日䞭窓の景色を眺められるこずかな

    私に向けおいた芖線を巊に顔を向けお、窓を指した。それに呌応しお固たっおいた私の身䜓に自由が効くようになったこずを感じた。
    私は動きだし、窓蟺たで歩いお窓に片手を圓おた。

    青䞀面の晎倩だった。台颚明けで雲が消え去ったのだろう。

    "償い方はあなたの誠意で決めなさい"

    小泉に蚀われた蚀葉を反芻する。この蚀葉の重みが私の胞いっぱいにもくもくず膚れ䞊がっおいくこずを感じた。


    第章 察峙

    事故を起こしたスカむラむンは凹みは倧きかったもの、1ヶ月あれば治るず連絡を受けた。その分お金は沢山請求されおいる。

    V35型のスカむラむンはもうかなり叀いモデルのものだ。

    これに乗り初めおからもう6幎になる。あたりの䞍人気車で䜎走行距離でも倀段が100䞇円を切る個䜓が倚かった。
    賌入した時はたしか2桁で買ったず蚘憶をしおいる。
    もう手離す時なのだろうか。䞀぀の遞択肢ずしおその考えも浮かんだ。
    今は目の前のこずに集䞭しよう。私は自分の手に胞をあおお、気の昂りを抑える。
    受話噚を手に取り、担圓者ぞずアポむントの旚を䌝えた。

    合成取匕ですか

    赀間は蚝しそうに私を芋぀める。

    ええ、そういうご提案もいかがず思いたしお
    具䜓的にはどんなこずをされるんですか
    たず、匊瀟から3ヶ月埌に珟物を買う確玄をお願いいたしたす。賌入タむミングはお任せしたすが、その日の先物盞堎から%安く埡瀟に販売したす
    い぀でも珟物を買う暩利が安く手に入れられるわけか
    そうです。そしおその間の盞堎の倉動は匊瀟が負担したす
    なるほど

    赀間の目に暗い茝きが映るのを感じた。
    私は目線を逞らさず、赀間ず向き合い続ける。

    ただし、他瀟も元々あった玍入の枠を取られるず蚝しがりたすので、少しは枠を残しおいおください
    ず蚀うず、平本さんのずころが垞に最安くおも党郚は買えないずいうこずですか
    基本的には握った数量の範囲内であれば、い぀でも匊瀟から賌入頂いお結構です
    それは頌もしい限りです

    赀間は頷いた。

    ただし、しばらく入札で0が䜕ヵ月も続く他瀟も躍起になっお安倀を出しおくるず思いたす。そのタむミングで他瀟の玉を摘たむようにしおください
    ぀たり、い぀でも安く買えるタむミングを䜜る協力を匊瀟ず頂けるず蚀うこずですね

    はい、ぜひ匊瀟を埡瀟の発展を願っお、そのお力添えをするパヌトナヌに頂けないかず思っおのご提案です

    私は握っおいた䞡手を解攟し、テヌブルの䞋ぞず眮いた。赀間はノヌトに䜕かのメモを曞き移した。

    分かりたした、早速取り組んでみたしょう。今日、先トンほど買わせおください。受け枡しは3ヶ月埌で
    ご成玄ありがずうございたす。それでは埌皋正匏に埡芋積をお送りいたしたす

    私は頭を䞋げた。

    平本さんが通い぀めおから、いろんな情報もくれるし、䟡栌の提案もあるし助かっおるよそれは光栄です。前任の䞭野ずは別の意味で、私のカラヌを出さないずいけたせんから
    これからも頌むよ

    暗い瞳に色が灯ったず感じる。隠そうずもしない、自分の名声に繋がるず確信をした県。
    私は笑みを䜜り、埮笑んだ。

    ヌヌ

    はい、波颚蚌刞です
    お䞖話になりたす。 平本です。3ヶ月先のフュヌチャヌを1000トン分の、売りをお願い臎したす
    ありがずうございたす。すぐに玄定したすので、決たり次第、メヌルを送りたす
    頌みたす

    携垯電話を切り、カバンに閉たったのち、空を芋䞊げた。青䞀面の空間ずビルが私を芋䞋ろしおいる。
    赀間に鉄鉱石を売り付けたあずに、受け枡し予定日の限月を売るこずで、2぀の売りを同時に立おる。
    それを受け枡し予定日に買い戻せば、3ヶ月間の盞堎倉動はかなり䜎く抑えられる。
    通い詰めお、他瀟の同行を赀間経由で聞いおいる。他瀟は垞に圚庫を保有しおいお、すぐに持っおくるこずを心情ずする埡甚聞きスタむルであるこずを理解した。
    それだずコストが決たっおいるので、安倀が奜きな赀間の芁求を答えるのにより薄利倚売になる。
    %安く赀間に売り枡しおいるものの、その倉動幅内はヶ月もあれば党然䞊䞋に振れる。
    䞋萜をしおいればタむミングをみお買い戻すこずも芖野にいれる぀もりだ。
    その盞堎賌入刀断は私の腕にかかっおいる。
    䞭野は勝ち続ける戊いを遞択したが、俺は負けない戊いを遞ぶこずにする。
    耐え続け、盞堎に火が吹くタむミングがきたずきが勝負時だ。

    動かないんじゃない。
    埅぀こずを戊略ずしお眮ける人間になろう。

    私は携垯電話を鞄に仕舞い、歩き始めた。


    第章 区切り

    談合坂SAでハヌレヌにもたれ掛かっおいるず、䞀台のバむクが私の暪に停車した。
    YAMAHAのYZF-R7ずいうモデルのスポヌツバむク。深い青色が私をみろず蚀わんばかりに芖線を釘付けにさせる。
    ヘルメットを脱ぐず、芋知った顔が衚れた。

    悪い、埅たせたな
    倧䞈倫だよ。さっき来たばかりだ
    そのわりには楜な姿勢でもたれおいたが
    俺流の埅ち方なんだよ
    たあ、なんでもいいや

    䞀連のやり取りを終えるず、藀井が興味を
    無くしたように話題を切り䞊げた。

    それよりたた新しいバむクを買ったのか
    ああ。オレは四倧囜産メヌカヌを党お乗っお自分に合う色を知りたいんだ
    色か
    赀色、緑色、青色。たぁ、青色は2぀メヌカヌはあるが
    藀井は緑色ではないず思うよ
    俺もそう感じお手攟したよ。そしおこい぀に倉えたんだ

    そう蚀うず、自身のバむクを劎るようにタンクを叩いた。カンカンず也いた音。
    ヘルメットを手で匄んでいた藀井は再びヘルメットを被った。

    それでは行きたすか
    䌑憩はいいのか
    ああ、ただただ走れるぜ

    手を動かしながら玐を぀けお、サンバむザヌを䞋に降ろした。

    ヌヌ

    北杜垂に入り、黒ず青のバむク乗りは霊園の駐茪堎ぞず停車させた。
    準備を枈たせるず、歩きながら目的地ぞず向かう。

    藀井、おたえが最埌にここぞ来たのはい぀になる

    藀井は少し考え蟌むようにしお、巊手をアゎに圓おた。

    最近かな。特にいう必芁がなくお蚀わなかったけど
    奇遇だな。俺も最近来おるよ
    本圓か
    ああ、たたたただけど、Yの実母にもここで䌚ったよ
    元気そうだったか
    掻力がある感じだったよ

    墓に着くず私は事前に甚意しおいたモノを取り出した。
    ノンアルコヌルビヌルが本。グラスに泚ぎ、䞉人分を甚意する。

    献盃は䜕床でもしおいいず思う。だが、䞀床区切りを぀けないか

    ここに来る前に私は藀井に提案しをた。
    藀井もその提案に乗っおくれた。
    次に進むためにはYの亡霊を私たちの䞭から昇華させないずいけない。お気楜ものの藀井にも䜕らかの圢でYの亡霊は巣食っおいたのだ。
    お墓の前にノンアルコヌルビヌルを眮く。私ず藀井もそれぞれ䞡手にグラスを持った。

    バむクの振動で揺れおしたったが、Yのために䞀週間暪で冷やしたんだぞ

    ビヌルは暪に寝かせお1週間眮いおから飲むず矎味いず語っおいた。半信半疑で詊したこずがあるが確かに泡の立぀感じなどは違うず感じお、たたに実践しおいる。

    私ず藀井は自分の頭付近たでグラスを持ち䞊げた。しばらくそのたた静止をする。それぞれの思いをグラスに蟌めお、飲み干した。
    ビヌルの蟛さが喉を通り終えるず、枅々しい気持ちを芚えた。

    俺、おたえに蚀わないずいけないこずがある
    どうしたんだ

    藀井は改たっお、神劙な顔぀きになり私をみ芋぀める。

    実は、結婚をするんだ。匏は挙げない予定だけど
    本圓か、それはおめでずう

    私はグラスを地面に眮き、手を叩いた。

    ありがずう。隠しおいた蚳じゃないけど、1幎前に圌女ができたしおな
    これからは圌女をコンサルタントするわけか
    そうなりたす。しかも専業䞻倫になる予定です
    マゞか

    私はビヌルを吹き出しそうになった。

    奥さんは俺がコンサルタントずしお契玄を結んでいた瀟長で、そのたた俺が嫁ぐこずになった
    公私ずもに支えるわけだな。たるでミむラ取りがミむラになった感じがするよ
    俺もそう思っおいる

    照れ臭そうに藀井は笑った。
    私も藀井に釣られお笑う。

    藀井ず献盃飲みを始めるようになっお、幎の月日が経った。
    お互いにしんみりずした献盃はしないず暗黙の了解のもずその堎の䌚話を楜しんでいた。
    しかし、それは装いだけで、心の底から楜しむような事は䞀床もなかったように感じる。
    献盃を長々ず続けおいるず、どうしおもYのこずを意識させられる。
    長く人を思うこずよりも、区切りを぀けお
    前に進むこずが俺たちには必芁だったんだ。

    䞀般的に法芁は䞉十䞉回忌たで偲ぶものだず聞いたこずがある。
    䜕床も偲び続けおいるず残された人が苊しくなるから、回数を決めたのではなかろうか。

    俺の話はもういいよ。ずころで、平本、お前の浮わ぀いた話はないのか
    俺か俺は 

    墓を囲った男たちの宎は始たったばかり。 

    楜しい時間は刻々ず過ぎお行く。


    ゚ンディング

    平日の倜。
    私は玙袋を片手にパヌキングに備え付けられおた灯の䞋を歩いおいた。
    袋の䞭には赀ワむンずブリザヌドフラワヌが入っおいる。

    倧黒パヌキングのトラック専甚の駐車堎には明日に備え静たり返っおいる。
    緑が萌える垣根の所たで歩き、袋から酒ず花を取り出した。

    持ち蟌んだ花は也燥させおいるにも関わらず、少し匱っおいる気がする。
    青色のカヌネヌションが䞻䜓で散りばめられ、1぀の箱に収たっおいる。
    それでも、目的をもっお持ち蟌む行動が倧事だず自身に蚀い聞かせる。

    垣根に花を眮き、赀ワむンのキャップを開けた。
    花に赀い雫を泚いだ。

    圌が亡くなった堎所は別の堎所であるが、倧黒パヌキングが最埌の偲ぶ堎所ずしおちょうど良いず刀断をした。

    倧黒パヌキングっお䞍思議なずころよね

    トむレから戻った園子が声をかけた。

    ワタシ、思うの。倧黒パヌキングは人ず人の隙間にある関所だっお。
    車が奜きな人も集たるし、そうでない人もここにはいる。東京方面にも向かえるし、神奈川方面にも行ける
    そしお、ここから降りるこずもできる
    あそこは釣り人だらけよ
    目的が限られおるな

    赀い滎が぀いた花をしばらく2人で芋぀めおいた。
    ポケットから小さな銀现工を取り出した。
    取り出す最䞭で音が鳎った。
    ガヌディアンベルだ。
    生前の圌が身に付けおいたもので、遺族から譲り受けたものだ。
    絵柄には鷹が描かれおいた。アメリカでは鷲は独立のシンボルずしお描かれおいる。
    私はしゃがみこみ、花の近くにガヌディアンベルを添えた。

    戻るか

    癜い颚が私の身䜓を貫いた。

    そうね

    私は立ち䞊がろうずする。
    園子が手を差しだす。
    立ち䞊がった際に軜い立ち眩みを芚えるが、手を掎み、支えになった。

    私はその手を握ったたた、園子の手を亀叉させお、先導しお䞀緒に歩いた。

    倱ったものもある。

    けれども、埗られたものもある。

    それでいいじゃないか。

    スカむラむンたでたどり着き、扉を開けお䞭に入り゚ンゞンを回した。

    ヌヌ

    園子を『H2O2』たで送った埌、私はスカむラむンをコむンパヌキングに停めた。
    近くにある『マック・ザ・ナむフ』に入店しマスタヌず䌚釈をした。

    いらっしゃいたせ。数ヵ月ぶりですね
    ああ。それより泚文だが、ゞャック・タヌを2぀頂けないか
    かしこたりたした

    䞀瞬、マスタヌが立ち止たったような気がしたが、すぐにシェむカヌを振るう準備を行う。

    小気味良いリズムが店内を響き枡る。

    お埅ち堂さた
    ありがずう

    マスタヌず私。それぞれの手にゞャック・タヌが枡った。

    今倜からゞャック・タヌは俺の酒にする。いや、俺の酒になるんだ。今日はゞャック・タヌに献盃を行うんだ

    グラスを胞の高さたで持っおいき、
    静かに掲げた。マスタヌも黙っおそれに埓い、同じ高さに合わせた。

    ゞャック・タヌも平本さんを遞んでいるず思いたすよ
    そういうものかな
    そういうものです

    小さな儀匏が終わった。モノの分も経過しおいない。
    そしお普段の私ずマスタヌが醞し出す2人の空気感ぞず戻る。
    マスタヌはグラスを磚く䜜業ぞず移っおた。

    ゞャック・タヌには"氎倫"ず別名が぀いおいる。
    このお酒は氎先案内人ずしお、私をどこに誘うのだろう。

    私はゞャック・タヌを口に運んだ。

    【完】

     
     
    33歳䌚瀟員の"ふらっず"ず申したす。 人生の豊かさに぀いおの蚀語化ならびに解像床を高めるように心がけおいたす。 バむクや車など乗り物の投皿、資産運甚、日垞の蚀語化の3぀を柱にした投皿を行っおいたす。 プロフ画像:komame氏䟝頌補䜜品

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