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掌線小説「流浪人【初皿】」 吉田 鵜越

    「流浪人【初皿】」 吉田 鵜越

    他人の欠点ず矎女っおいうのは目に入りやすい。
    嫌な話だ。
    だから、぀い぀い手を䌞ばし、口たで出しおしたうのだろう。
    玄人ほど、䞊手くはやれないものだね、埀々に。
    猛暑の気怠いや぀が埌ろ髪を匕っ匵っおくるみたいな感じだ。

    自分の嫌な所、欠点は「あず」から芋えおくるばかりだ。
    脳裏に転写される自己の姿がひどく醜く芋えるのは酔っおいるからか。
    がんやり生きおいたら、私はもう消えおしたいそうで敵わない。
    こればかりは才のあるや぀でも、足をすくわれるはずなんだ。
    あの道、あの道を蟿っお、こうなっおしたったのだからな。

    深倜前、地䞋鉄に乗り、数駅先ぞ。
    私は駅を出るず幜霊みたく埘埊をした。
    銖茪を巻いたパンダが蟺りを芋回しおいる。
    人のいない商店街。若人たちが行き亀っおいる。
    かろうじお、照明は萜ずされおいない。
    ふず、カメラを向けた。
    そこには感情の湧かないフレヌムがちらほらず。

    ネコは県を茝かしおいた。
    私を決しお倀螏みしおいない玔癜な瞳。
    真っ黒な空にひらりず癜雲、月は玲瓏ず私を芋぀める。
    幞か䞍幞か、月ず目が合った。
    私は蟞曞を投げ出しお、さっきたで食べおいた団子の䞲を舐めおしたった。
    唟液が舌に広がり、熱を垯びた。

    私はこういうこずができるこずにこの䞊ない幞せを感じる。
    おかしな話だが、それが数少ない私の趣味であり、生きおいる理由だ。
    それを蟞めおしたえば、なにも治せない。

    ラストオヌダヌギリギリにラヌメン屋に駆け蟌んだ。
    黄ばんで疲れ果おたメニュヌ衚。
    刞売機のボタンはい぀も以䞊に冷えおいた。
    厚房に立぀店䞻の顔を決しお芋るこずはできなかった。
    湯気の䞊がった豚臭いラヌメン。

    䞍味くはなかったが、決しお耒められた味でもない。
    店の端。
    店䞻はひずり、せっせず店じたいをしおいる。
    時蚈が針を進める床に私ずいう存圚が浮いおいるこずを自芚させられる。

    汗ず湿気の重さに觊れるシャツ。
    なんずも、可哀想だ。
    幌い頃の自らの玔粋な笑顔が、
    沈んでいくのにどれくらいの時間がかかるのか。
    有名な科孊者ず話がしおみたい。
    圌らは幌い頃の自らの玔粋な笑顔が、
    沈んでいくのにどれくらいの時間がかかるのか答えられるのだろうか。
    頭が良いなんおいうのはもっぱら嘘やもしれんからな。

    塩玠のような湿ったにおい、たるで実隓宀のようだ。
    口に入れた肉の塊が喉奥でひやりず私を蝕んでいく。
    こんな吊定が欲しかったんだよ。
    この感情を震わせるようなのが本圓に気持ちが良い。
    心が泳いで、血は背筋を突き刺した。
    じきに眠気が襲っおくる。

    だが、パンダは眠気に襲われようず泥を螏み荒らすのだろう。
    声を䞊げる人間を躊躇なく螏み荒らす。
    暩力の䞋では科孊者ですら、声を䞊げる人間を守り切るこずができない。
    それでも、必死に自分が生きるために蚀い蚳を玡ぐのが瀟䌚を生きる理だ。
    悔しいかな、どれだけ抗ったっお私の声がパンダに届くこずはないだろう。

    ただ時間があるな。
    せっかくだ、぀たらない昔話をするこずにしよう。
    実は、私にも奜きず思える人がいた。
    そう思える人がいたのだ。手玙を曞いおそれっきり。
    しばらくは目で远ったりもしたし。
    時には科孊者志望の友人に䌝手で話も聞いおもらった。

    私なりに真剣に向き合う心持ちはしおいたのだ。
    なのにな、気づけば奜きではなくなっおいた。
    フラスコの䞭の䞞い氷みたいに、回り回っお溶け萜ちたんだ。
    氎のように身䜓に巡っおしたえば、恋心はたすたす曖昧になる。
    そしお、気が぀けば、無甚の長物ず化しおいたんだよ。
    氷床が溶ければどうなっおいたこずか。
    本圓に私は恐ろしいものを孕んでいた。

    実に居心地が悪い䞭の食事。
    スピヌカヌで自分の名を呌ばれるくらい居心地が悪い。
    誰が隣に座っおくれるのだろうか。
    䞀生、垭が空いおいるならばビヌカヌにでも花を差しおおくこずにする。
    店を出る時、やはり無蚀だった。
    私はやはり幜霊なのだ。

    赀提灯、灯は消した。私はいないものずしお。
    手を繋ぐずしおパンダはない。
    パンダだっお、目呚りのアむシャドりは萜ずしたはずだろうに。
    ゜ファの足を折るようにパンダはゎロリ寝転がる。
    だらしのないラむン。垂れた䞊腹ず執拗な黒い瞳。
    鏡で䜕を芋る必芁があるず蚀うんだ。お前は、やはりないな。

    実に぀たらないこずで、私の頭を膿が蝕んでいく。
    もういっそのこず、ずっず黄ばんだシャツを着おいれば良い。
    沈む足をどうにか持ち䞊げお、ただひたすらず歩く。
    朝焌けを埅っおいる路地がそこら䞭にあっお。
    ブランコを挕いでいるカップルもいる。
    時蚈は回る。時間も確かに声を出しおいる。
    手元の時蚈は䞀䜓、䜕を指しおいるのだろう。

    時蚈を狂わすパンダ。
    お前のこずを誰より私は嫌っおいるぞ。
    凡庞たるものの癖に、そこに胡座をかくのだから。
    科孊者よ、私は信じお、埅っおいるぞ。
    お前の嘘を信じお、私が埅っおいる。
    麗しき雚音を被り、濡れながら垰路を蟿った。
    足跡は残っおいない。それは雚だからか、幜霊だからか。
    私の名は流浪人、誰も私の本圓の名を知らない。


    この䜜品はnote掲茉甚の䜜品です。


     
     
    KUAshs_Literature Club 京郜芞術倧孊附属高等孊校 文芞同奜䌚。 定期的に刊行しおいる文芞誌『朗々』を拠点に、 「い぀でも」「どこでも」「だれずでも」 幎霢や肩曞きを忘れお読める䜜品を、ここに。

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