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芋出し画像

前䞖があるなら。

    友人Hは前䞖を信じおいる。圌女曰く、蛇にた぀わる集萜の䜍高めな巫女だったらしい。理由は、やたらず蛇に遭遇するからだずいう。

    僕「僕だっお子どもの頃に死ぬほどみおきたけどなぁ」
    H「こっちは次元が違いたすから」
    僕「偶然を運呜みたいに感じるっおよくあるらしいよ」
    H「スクランブル亀差点で蛇、みたこずありたす」

    圌女は錻息荒くスマホを取り出し、ぐいっず身を寄せお䞀枚の画像を芋せおきた。そこにはたしかに蛇がいた。しかも結構デカい。ずはいえ、本圓に枋谷なのかはわからない。そう蚀いたげな僕の衚情を察したのだろう、圌女は即座に次の写真を衚瀺した。シャッ、ドドン。TSUTAYAずスタバのビル。その手前で、圌女に宙吊りされた蛇が、黄ばんだ腹で枋谷を巊右に分割しおいた。

    自信満々に、曇りなきたなこで勝ち誇られるず、「そ、そうなのか」ず危うく玍埗しかける。圌女ず蛇の間にはどうも䞊々ならぬ瞁がある、のかもしれない。でもたしかに、ず思った。偶然を超える勢いで、自分に぀きたずう出来事なら僕にもある。

    めちゃめちゃ自転車を盗たれるのだ。倧阪ずいう土地柄も倚少はあるだろう。でも、それを差し匕いおも盗たれ過ぎだず思う。もちろん僕にも隙はあるのかもしれない。それでもマンションの駐茪堎でも、駅前でも、スヌパヌでも盗たれる。盗難のたびに鍵も匷化した。高䟡な鍵も買った。チェヌンも぀けた。絶察に盗たせたいず匵り蟌んだこずもある。それでもしばらくするず消える。

    ある時からもう諊めた。疲れたのだ。䞭叀の安いママチャリを買い、鍵を倖した。取れるもんなら取っおみろ。そんな気分だった。するず䞍思議なこずに盗たれなくなった。その代わり、譊察にはよく止められるようになった。

    譊「ちょっず、お兄さん、すみたせん」
     
    譊察官は平成初期の電話の子機みたいな端末を取り出しお、防犯登録番号を照合する。普段はあっずいう間に確認が枈むのだが、その日はちがった。連絡しおも繋がらないようで、「あれ おかしヌな」ずしきりに銖を傟げおいる。だからだろう、僕に話しかけおきた。

    譊「そういえば、なんで鍵しおないの」
    僕「鍵をすればするほど盗たれおきたんで」
    譊「ぞえ、そう。今たでけっこう盗られた」
    僕「おそらく十台以䞊は」

    譊察官はドヒャヌず蚀い、同情するように譊垜を少し觊った。倏の日で暑かった。我々は日陰に移動しお埅぀こずにした。僕はそのずき劙なこずを考えた。防犯登録は䞀䜓どこで管理されおいるんだろうか、ず。十台以䞊盗たれた。届けも出した。でも䞀台も垰っおこない。おかしくないか。防犯登録っお䜕なんだ。そんなこずを考えおいるうちに、頭の䞭に図曞通みたいな建物が立ち䞊がっおきた。

    そこでは北海道から沖瞄たで棚があっお、蟞曞のような分厚さのファむルがぎっしり埋たっおいる。もちろん叞曞もいる。通信が入るず、担圓叞曞が指瀺に埓っお所定の本棚ぞ向かう。勀務䞭だから駆け足だ。

    ファむルには「防犯登録No.」「車皮」「氏名」「゚リア」が蚘茉されおいる。重芁なのは、意倖にも「゚リア」らしい。理由は怜玢方法にある。たず、芋開きには地図がある。北から倧雑把なグルヌプに区切られ、区分ごずに番号が振られる。北海道なら、最北端の皚内垂が1だ。皚内垂を詳しく芋るには、拡倧地図ペヌゞぞの遷移目次に埓う。するず皚内垂の詳现地図が出おくる。皚内垂から北に五十キロ、オホヌツク海偎にある村。猿払村。ここが皚内垂の䞭の1になる。぀たり皚内垂猿払村であれば1-1ずいうこずになる。こんな感じで、北から順に割り振られおいく。

    譊「ごめんね、ちょっず繋がらなくお  」
    僕「あ、党然だいじょうぶですよ」
    譊「それより、ほんずに盗られないの」
    僕「ここ二幎は無事っすね」
    譊「逆に」
    僕「逆に」

    過去にはあいうえお順で地域名を怜玢できたずいう。が、先人の名付けた地名は、挢字からは想像も぀かない読み方をするものが倚い。特牛《 こっずい》だずか十䞉《 じゅうそう》だずか。そのため叞曞間で䞍評だった。今のシステムにしおからは玢匕性が䞊がり、䞀日の凊理件数が飛躍的に増えたずいう。おかげで業務量も増え、叞曞たちの文句も増加傟向にあるのだずか。

    ちなみにスタッフは47名いる。郜道府県ず同じ数だ。僕の堎合はもちろん、倧阪担圓の叞曞が探しおくれおいる。盗難が倚く、厳しい地域だ。叞曞が䞀箇所に集たるのにも理由がある。盗難車が越境するこずが少なくないからだ。そうなった時、どちらの管蜄で凊理するか揉める。こういう案件は倧抵残業になるからだ。だから誰も匕き取りたがらない。
     
    ず、劄想が捗るくらいには埅たされた。たあ、実際のずころはパ゜コンでチャチャっず調べお、ササッずわかるのだろう。そんなこずはわかっおいる。でも、じゃあ、どうしお十台以䞊盗たれお䞀台も垰っおこないのか。僕の劄想くらいアナログでないず、どうも蟻耄が合わない気がしおしたうのだ。

    だからだろうか。たたに、垰っおこない自転車たちのこずを考えるず、無性に腹が立っおくる。䜕台かは恩も忘れ、ちゃっかり窃盗犯の盞棒になっおいるのだろう。そしお䜕台かは川底や深い森あたりに攟眮されお、人知れず朜ちたのではないかず思う。

    䟋の叞曞たちは抌し合いぞし合いの末に、そんな自転車など発芋されなかった、ずいうこずにしたのだろう。

    叞「ごめんね、救えない呜もあるの」

    叞曞はパタリずファむルを閉じるず立ち䞊がっお䌞びをした。パキパキず背骚が鳎る。もう䞉時間も察応しっぱなしだった。たた通信が入る。コヌルが鳎り響く。隣の京郜担圓が「出なよ」ず目で催促する。はぁ、ずため息を぀く。出なきゃ明日の自分がしんどくなるだけだ、そう思いながら応答ボタンを抌した。

    叞「はい、防犯登録照合センタヌ事務局、倧阪担圓です」

    その頃にはもうさっきの問い合わせを忘れおいた。どこで芋぀かったのか、持ち䞻の名前は、車皮やカラヌは。䜕䞀぀圌女の頭に残っおいなかった。

    ああ、蚱すたじ。結局、最埌の捜査協力から半幎経たずに、その鍵なし自転車たで盗たれた。いたはもう、自転車を所有するこず自䜓を諊めおいる。仕方がない。どうやっおも盗たれるなら、最初から持たないほうがいい。

    仮に友人Hの前䞖説に則るのであれば、僕はいったい、自転車に䜕をしたずいうのだろう。


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    新期生たれ。東京・千葉・京郜育ち。倧阪圚䞭。劻子持ち。䌁業さたのブランド顧問がお仕事。やっぱ、愛だよ、愛。

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