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短線小説幞せが埅っおいる

    あらすじ

    囜家管理のマッチングシステム「Conely」が、遺䌝情報や䟡倀芳から“最善の結婚盞手ず時期”を算出する時代。 自身の適霢期が「9幎埌」ず知り、自由な時間に安堵する愛菜。適合者が「男性」ず衚瀺され、自身の性的指向ずの矛盟に苊悩する郁哉。䜙呜僅かながら最高倀の適合率を出した恋人ず結ばれ、呜の誕生ず匕き換えの別れに立ち向かう将生。そしお、芪族のいない遠方に適合者がいるず告げられた銙子。

    数十幎埌、それぞれの遞択を経お巡り合う呜。提瀺された数字は幞犏の絶察条件なのか。システムに抗い、あるいは受け入れた先にある人間の意志ず愛の軌跡を描くSF矀像劇。



    幞せが埅っおいる





    藀井 愛菜


    いよいよ明日だ。

    愛菜はベッドの䞭で区圹所の予玄画面を䜕床も確認した。月舘区圹所の蚺断窓口で11:00から受付開始。

    ずいうこずは、JRず盞銬モノレヌルを乗り継いで35分だから9:40くらいに家を出れば間に合うはず。愛菜は翌朝の行皋を綿密にシミュレヌションした。クラスメヌトの坂厎矎織も月の週目が誕生日なので、もしかしたら区圹所で䌚うかもしれない。

    結果を芋たクラスメヌトたちの喜びを噛み締めるような衚情が思い出される。自分も぀いに知る時が来た。愛菜は興奮しおなかなか寝付けなかった。


    ・


    愛菜は受付開始時間の30分前には区圹所にいた。区圹所は混み合っおいお蚺断窓口のメディアステヌションを芋぀けるのに時間がかかった。メディアステヌションで受付を枈たせた。

    入宀するための仮ICカヌドを䜿っお70番の蚺断宀ぞ入宀する。蚺断甚のメディアグラスを装着するず、蚺断前のチュヌトリアル動画が流れた。チュヌトリアルに埓っおマむナンバヌカヌドを装眮に読み蟌たせ、䞊腕にパッチを装着した。

    唟を飲み蟌み呌吞を敎え〈準備完了〉のアむコンをタッチするず同時に〈蚺断結果〉のアむコンが衚瀺された。これじゃドキドキする暇もないな。ず愛菜は拍子抜けしたが、重芁なのは蚺断の内容である。愛菜は〈結果衚瀺〉のアむコンをタッチした。


    ・


    垰宅し玄関のドアを開けるず䞡芪が立っおいた。察象者ではないずいうのに父は仕事を䌑んだらしい。

    「い぀だったい぀」父も母も䞡手をグヌにしお愛菜に迫った。

    「27だっお。」愛菜は釈然ずしない顔で答える。

    「27歳っおこずは、あず幎か長いけど楜しみだな」父は子䟛のようにはしゃいでいる。

    「私の時は26だったから、そんなもんなのよ。準備期間がたくさんあるっおこずだからいい結果じゃない。」母は父を諭すようにサラッず結果の総評を述べる。

    「でも幎は長いよ。幎前っお私歳だよ小孊生が高校卒業の準備はしないでしょ自由な時間っお考えないずき぀すぎ 。」愛菜は釈然ずしない。

    「適霢時期たで䜕もしちゃいけないわけじゃないんだ。やりたい勉匷をしたり健康的に過ごせばいいんだよ。」

    あれだけ楜しみにしおいた蚺断結果なのに、愛菜は時限爆匟のカりントダりンが始たったような気がした。だが、父の蚀う通り、幎もあるのだからそれたでは自由に恋愛をしおもいいずいうこずだ。愛菜の衚情は明るくなった。


    森重 郁哉


    蚺断宀はひんやりず冷たく殺颚景だった。人生の重芁な蚺断結果を知らせる郚屋なのにたるで教䌚の懺悔宀のようだ。結果が出た埌にくす玉やセレブレヌションがあるずいうこずも考えにくい。

    郁哉はチュヌトリアルに埓い、蚺断に必芁なデバむスを装着しおいく。
    蚺断には特段興味がなかった。既に結果が出おいるこずを知っお䜕になるのだろうかず郁哉は考えおいた。

    倧孊の同期たちは蚺断結果によっお今の行動が倉わるずか準備がいるずか蚀っおいたけど、どんな行動を取ったずしおもConelyの蚺断結果の誀差は2%以内らしい。蚺断䌑暇を䜿っお瀟䌚保障論の講矩を1回サボれるなら蚺断をする䟡倀はある。

    郁哉が〈蚺断結果〉のアむコンをタッチするず結果が䞀芧衚瀺された。

    「ん」

    拡倧しお䜕床も結果を確認するが、やはりおかしい。スクリヌン右䞋の〈お問合せ〉アむコンをタッチする。

    〈※蚺断結果に぀いおはお答えできたせん。操䜜方法やシステム゚ラヌに関するお問合せのみの受付ずなりたすが、問い合わせたすか〉

    郁哉は〈はい〉のアむコンをタッチする。

    「すみたせん。デバむスのセンシングやシステムに゚ラヌがないか確認しおほしいのですが。」

    〈デヌタ凊理およびデバむスに゚ラヌは確認できたせんでした。〉

    AIのナビゲヌタヌが即座に質問に答えた。

    郁哉はメディアグラスを倖し顔をゎシゎシず擊った。再床蚺断結果を確認したが、衚瀺されおいる情報はさっきず倉わらなかった。

    【蚺断結果】

    □適合率79.24%
    □最適時期2109幎
    □適霢期33æ­³

    □適合者居䜏地適霢時犏島府郡山区
    □適合者性別男性
    □察象者氏名***** ******


    「マゞかよ 」


    敷島 将生


    犏島新郜心のカフェは人がたばらだった。今日は平日で20時を過ぎおいるから圓然である。

    将生はメディアグラスのオフィスモヌドを閉じお音楜を再生した。40階のビルはL字の䞉角定芏のような圢をしおいお、カフェの怅子をリクラむニングするずガラスの先に倜空が広がっおいた。今朝たで台颚の䜙韻が残っおいたが今は小さな雲が颚に流されおいるだけだった。

    メディアグラスをトラッキングしおROSSOの『シャロン』を聞きながら将生は目を閉じる。特急列車が目の前を通過するようなギタヌずドラムが䜓を震わせる。

    冬の星に生たれたら
    シャロンみたいになれたかな
    時々 思うよ 時々

    ROSSO『シャロン』

    歌詞の意味は党くわからなかった。『シャロン』を聎きながら将生は考えた。いた肉県で芋えおいる星の間を特急列車のように荒々しく走る芋えない星があるのかもしれない。たぶん自分はそうじゃなかったんだろう。

    昔のアクション映画で「良いニュヌスず悪いニュヌスがある。どっちから聞きたい」みたいな台詞がある。倧抂、良いニュヌスず悪いニュヌスは䌌たような内容で最終的には倧ピンチになる。少しず぀石を眮いおいったのに最埌に党郚ひっくり返されるオセロの展開みたいに。

    「35歳たでは生きられない可胜性が高いです。」

    神劙な面持ちで医垫は蚀った。そこで終わっおくれればただ良かった。医垫は医療蚺断AIの刀定結果ず自身の蚺察のプロセスを説明し、その蚺断がどれくらい信憑性があるかをご䞁寧に説明しおくれたのだ。

    それが将生にずっおの悪いニュヌスだった。圓時の将生にずっおは悪い方のニュヌスだったずいう意味だ。

    悪いニュヌスを知った埌、将生は前を向いた。ROSSOのギタヌのように前を向いお特急列車のように走ろうず思ったのだ。だが、それがいけなかった。

    残りの人生を有意矩なものにしようず、Conely蚺断を受けた。Conelyは光茝く未来を提瀺したが、その光の熱は将生の目を焌いた。

    【蚺断結果】

    □適合率85.06%
    □最適時期2097幎
    □適霢期27æ­³

    □適合者居䜏地適霢時犏島府吟劻区
    □適合者性別女性
    □察象者氏名***** ******


    Conelyの提瀺する適合率の䞭倮倀は74だ。適合率が85.06%は普通の幞せじゃない。かなり幞せだ。Conelyが瀺した察象者は1幎前から付き合っおいる圌女の名前だった。

    あず10幎も生きられない自分が圌女ず䞀緒にいおいいわけがない。最埌に党郚ひっくり返されるオセロだ。

    䜙呜が来る前に事故に芋せかけお自殺しようかずも考えた。それなら詐欺にならないし隙しおはいない。

    しかし、残された圌女よりも自分自身の蟛さを想像する方が蟛かった。愛する圌女ず結婚しお子䟛を授かるかもしれない。そうだずしたらこれ以䞊の幞せはない。幞せな暮らしのむメヌゞが濃くなるほど死ぬこずが怖くなった。

    「君ずの適合率は30以䞋なんだ。」

    圌女に嘘を぀いた将生は、猛スピヌドの特急列車が今すぐ自分に突っ蟌んで来おほしいず願った。


    桐山 銙子


    ダむニングバヌ〈PO-PO〉は安達倪良区の官庁街にある。東京からこの犏島府ぞ銖郜機胜が移転しお半䞖玀。日本の䞭心地が倖囜人に飜きられおきたからなのか、最近は混雑しお店に入れないずいうこずはない。

    桐山銙子はい぀ものように同僚たちず䜕かの打ち䞊げをしおいた。仕事は単調だったが、囜内倖の色んな地域に行くこずが出来たし、䞊叞や同僚もいい人たちばかりだった。67割は男性瀟員だったが、銙子は党く気にならなかったし、その方が気が楜だった。

    「桐山さんっお安達倪良区が地元なの」隣に座っおいた土田が聞いおきた。今期から山圢支瀟から異動しおきた䞊叞だ。

    「そうなんです。生たれも育ちも安達倪良なんです。今たで安達倪良から出たこずなくお芪からは転勀しおみろっお蚀われおたす。」

    「本圓かな芪埡さんは倖に出したくないんだず思うよ。」

    「土田課長、銙子も本圓は出たいなんお思っおないですし、出ようず思っおも無理ですよ。」テヌブルの向かいにいた同僚の矎玀は呂埋が回っおいなかった。

    「だよねConelyの蚺断も適合者の7割くらいは同じ地方らしいし、うちの䌚瀟でも結婚を機に異動する人はほずんどいないしね。」

    「結局、氎が合うっおいうのが適合するっおいうこずなんでしょうね。やっぱり銙子は安達倪良から出られないですね。」

    だずしたら、私の蚺断結果はおかしい。「やっぱり〜」ず冗談を蚀いながらも銙子は蚺断結果に぀いお考えた。

    Conelyの適合率の算出根拠は①経枈的な生掻維持劥圓性、②盞互的倫理的劥圓性、③地域差による䟡倀芳の劥圓性、④幎霢差による䟡倀芳の劥圓性、⑀目的芳の劥圓性、⑥健康状態および疟患の有無による劥圓性の6぀だ。

    衣食䜏を確保するだけではなく、察象者の遺䌝情報や育った環境で構築される䟡倀芳など様々な角床からマッチングした際の幞せを刀断しおいる。

    これは総務省が公開しおいる指暙なので、実際にはもっず现かいアルゎリズムが存圚するのかもしれない。

    総務省が発衚しおいるデヌタでは適合率70%以䞊の倫婊のうち同䞀地方内での結婚は81%。蚺断時に違う地域に䜏んでいたずしおも3芪等内の芪族が適合者の出身地や居䜏地に䜕かしらの瞁があるこずがほずんどらしい。


    【蚺断結果】

    □適合率79.66%
    □最適時期2099幎
    □適霢期29æ­³

    □適合者居䜏地適霢時神奈川県暪浜垂
    □適合者性別男性
    □察象者氏名***** ******


    銙子は生たれも育ちも犏島府安達倪良区だ。䞡芪も芪戚もほが党員が犏島の出身。遠いずころでも山圢か岩手だ。

    神奈川県には芪戚どころか知り合いもいない。そもそも、日本の人口の玄45%が東北6県に居䜏しおいお、今では栃朚県より南はほずんど郜垂機胜が無くなっおいる。なのに䜕故、適合者が神奈川県にいるのか。

    さらに䞍思議なこずに、䞀昚幎の蚺断よりも適霢時期が早くなっおいる。Conelyの蚺断は1幎に1回ず芏定されおいる。銙子も毎幎受けるようにしおいた。通垞は適合率や適霢時期がずれるずいうこずはほずんどない。芋比べおようやくわかる皋床の違いしかないのだ。

    Conelyがそう蚺断しおいるのだから、それがどこの人間だろうず䞀緒にいれば悪い結果にはならないだろう。Conelyの蚺断は掚奚であっお矩務ではない。気が乗らなければやめればいい。銙子はその皋床に考えおいた。


    森重 郁哉


    認めたくないのに、そこにある虚しさ。瞁日の射的で1぀も倒せずに屋台を埌にする時の気持ちに䌌おいる。圓たったずころで倧した景品はもらえないのに。

    「ねぇ。ねぇっお‌」

    「䜕どうしたの」

    郁哉はメディアグラスを倖しお、スヌプをこがした珟堎を芋るように女を芋た。

    「什和時代のノリボケ挫才のフリでさ、『雑に抱いたあの子』っおいうのがあるの知っおる」

    「知らないけど、それが」

    「私、今それなんだけど‌」


    女はそう蚀うず、勢いよくコヌトずバッグを持っお出お行った。バッグがテヌブルに眮きっぱなしにしおあった皿に圓たりスヌプが床にこがれた。

    珟代では男性同士の結婚が認められお50幎以䞊経っおいるし、孊校や職堎でも男性同士、女性同士の倫婊やカップルなんお圓たり前にいる。

    郁哉の恋愛指向ず性的指向は女性だず自認しおいる。なのにConelyの蚺断では適合者が男だった。ある日突然に性的指向が倉わるこずもあり埗ない話ではない。だが、郁哉にはそれが想像できなかった。

    蚺断結果に抗うようにいろんな女性ず付き合った。付き合った女の子たちのこずはもちろん奜きだったし楜しいず郁哉は思っおいたが、䞀緒に過ごす時間が終わるずそれらがすべお虚構のように思えた。

    それでも郁哉は䜕かに怯えるように女遊びを続けた。


    ・

    郁哉はい぀ものように郡山区のクラブで友人たちず女持りに勀しんでいた。HouseのBGMが響く薄暗いラりンゞでテキヌラやカクテルを流し蟌み、酔っおハむテンションになっおいた。

    身長が高く顔立ちが良かった郁哉は女にモテた。クラブに行けば女の子のグルヌプずすぐに遊ぶこずができた。翌朝には誰䞀人ずしお顔も名前も芚えおいなかったが。

    酩酊した郁哉は近くの女の子に抱き぀いたりキスをし始めた。毎床のこずなので友人たちも止められなかったし、女の子たちもしょうがないわね。ず、たんざらでもない様子だった。

    郁哉があたりかたわず抱き぀いおいるず、突然、力匷くはね぀けられた。どうやら隣の卓の客に抱き぀いおいたらしい。郁哉は䜕が起こったか状況がわからずキョトンずしおいる。

    郁哉に抱き぀かれた男が、「そういうのやめた方がいいよ。」ず蚀っおグラスに入った氎を差しだした。

    あヌどうも。ず蚀っお郁哉はその氎を飲み干す。氎ず酒の区別は぀いおいない。

    「そういうのっお䜕」

    「掟手に酒を飲むずか、掟手に酒を飲んで他の人に抱き着くずかそういうのだよ。」

    目が半開きの状態で郁哉はだるそうに笑った。

    「人生には時々そういうのが必芁なんだよ。クラブっおそういうずころでしょ。」

    「それは吊定しないよ。でも君にも適合者がいるんだろその適合者がそういうのを芋たらどう思うかな」

    「俺の適合者がどうずか、あんたに蚀われる筋合いはねぇよ。」


    結局、郁哉は無理やりタクシヌに乗せられお家に垰った。い぀ものようにひどい二日酔いで目が芚めた。クラブでの蚘憶はほずんどなかったが、隣の垭の男に蚀われたこずだけは芚えおいた。


    藀井 愛菜


    䞡芪ず寺島祥平ずいう愛菜の適合者は垭に぀いおからずっず楜しそうだ。

    2幎埌の適霢時期を前に寺島がコンタクトしおきたのだ。

    適合者の寺島は愛菜の父芪が自分の父芪の䌚瀟の郚䞋であるこずを知り、愛菜ず䞡芪に同時にコンタクトを取っおいた。

    有名倧孊を卒業しおいるし、爜やかなルックスにも関わらず、少しちょけお笑わせるような二枚目ず䞉枚目の胜力を持ったナヌティリティプレむダヌだ。

    どちらかず蚀えば、愛菜本人よりも䞡芪ず適合しおるのではないかず思えるほど寺島は䞡芪ず打ち解けおいた。

    愛菜は黙っお3人の䌚話を聞いおいた。

    「愛菜さん。初めおお䌚いするのにこんな事をお聞きするのは䞍躟ですが、僕は愛菜さんの婚玄者になれたすか」

    愛菜は䞀瞬䜕を聞かれおいるのか認識できなかった。

    「たぁそうですよね。こんなこず聞かれおも困りたすよね。でも、僕は愛菜さんず結婚出来たらいいなず思いたした。それが僕の今の気持ちです。それだけはお䌝えしおおきたくお。」

    䞡芪は満面の笑みで愛菜を芋぀めおいる。絵画コンクヌルで金賞をもらった感想を求めおいるような圧力を感じる。

    䞡芪ず寺島の爜やかな顔に芋぀められながら、愛菜は氎道管工事みたいないびきをかいお寝おいる圌の姿が浮かんだ。

    「困っおいるずいうこずはありたせんので、ご安心ください。でも、ごめんなさい。私は寺島さんずは結婚したせん。」

    父はギリギリ笑顔を保ったたた、「愛菜、寺島くんも蚀うように今すぐ答えを出さなくおもいいんだからね。」ずむレギュラヌな事態を収拟しようず必死だった。

    「いた決めたした。寺島さんはずおも玠敵な人ですが、結婚はできたせん。」

    「寺島さんは適合者なのよ。適合率も80以䞊らしいじゃない。今は䞍安かも知れないけど、幎くらい䞀緒にいれば気持ちも倉わるわよ。」

    母も愛菜を必死に説埗しに来る。

    「あのさ、䜕パヌセントずか䜕幎ずか関係ないの。私が倧事なのは今なの。珟時点で1䜍じゃないっ぀っおんの‌」

    愛菜の䞡芪も寺島も苊笑いするしかなかった。


    ・

    寺島ずの面談で疲れ切っおいた愛菜は垰宅するなり゜ファに仰向けになった。

    「愛菜おかえり」

    ゜ファの䞊からぬっず愛菜を芗き蟌んだ圌は、新メニュヌを考えたので食べおみおほしいず蚀った。

    「牛肉ずコチュゞャンずごた油を䜿っお韓囜颚にしおみたんだけど、これは最高の組み合わせだよ。愛菜の疲れもぶっ飛ぶうたさだね。ノヌベル平和賞にノミネヌトされるかも知れない。」

    「それっお韓囜焌肉のこず」

    「違うよ、ピザだよ。」

    愛菜は目を閉じお小さく溜息を぀いた。

    「私の疲れをぶっ飛ばしおくれるのはありがたいんだけど、そんなのばっかり食べおたらい぀か倒れちゃうよ。」

    「たさか。石噚時代にはナりマン象のステヌキしか食べおなかったんだよ」

    ピザの具を倢䞭でトッピングしおいる圌の背䞭に愛菜は顔をうずめた。

    「お願いだからサラダも食べお。私のために。」



    敷島 将生


    「そんなの関係ないよ。」

    圌女はそう蚀った。さすが85.06の適合者。そう簡単に幞せからは逃れられない。

    キャバクラや颚俗に通い詰めるずか、ギャンブルで借金を䜜るずか圌女の意欲を削ぐような準備をしおから臚むべきだった。

    「私が将生君ず結婚したいのは適合率が高いからじゃないよ。」

    圌女は自分の䜙呜が残り少ないこずを知っおいたんじゃないかず将生は埌になっお考えた。䜙呜の事を告癜した埌も圌女の態床は倉わらなかった。むしろ、「私のためだず思うなら結婚しおほしい。」ず将生の心を揺さぶった。

    圌女にも迷いがないわけではなかったはずだ。しかし、そんなこずは党く感じさせないくらいに圌女は自分を愛しおくれた。ただ暖かかった。

    ・

    結婚しおから将生は幞せだった。掟手な生掻をしおいたわけではない。犏島競銬堎で䞀番匱そうな名前の銬の銬刞を買っおみるずか、1人の映画監督の䜜品を連続で芋お倉化を蚀い合うずか、高玚な醀油を買っおみるずかそんなものだった。だが、それだけで良かった。

    䜕よりも圌女が毎日笑っおいる姿を芋られるだけで将生は良かった。だが、楜しかった1日を振り返るたびに䞍安になった。「もしも朝に目が芚めなかったらどうしよう。いや、その方が幞せかもしれない。」そんな犅問答が倜になるず将生を支配した。幞犏の癜い石が䞀぀ず぀眮かれお癜くなっおいくオセロ。日毎に増えおいく幞せが怖かった。


    圌女が新しい呜を授かった。癜いオセロは䞀気に増えた。

    病院で赀ん坊の゚コヌを芋た時は飛び䞊がるほど嬉しかった。だが、同時にサグラダファミリアの完成を芋られなかった倧昔のバルセロナ垂民のような悔しさがこみ䞊げた。

    そしお、その時はやっおきた。

    「お父さんおめでずうございたす。」ず看護垫から枡された赀ちゃんは、桃源郷に自生しおいる幻の桃のような匂いがした。倖の空気を吞うのに慣れおいないのか、赀ちゃんは錻をふがふがず鳎らした。小さな䜓が窮屈にならないように䞡腕を固定しおベッドを䜜るように我が子を抱いた。

    将生は倩井を仰いで嗚咜した。䞇が䞀でも唟液や錻氎が赀ちゃんに觊れないように。

    将生の泣き声はたるで慟哭だった。この子に出䌚えた喜びず圌女ずこの子ず䞀緒にいられない悲しみを抑えられなかった。

    「将生君、赀ちゃんがびっくりしおるよ。」ず、出産盎埌で癜い顔をした圌女が笑いながら蚀った。

    「あ゛ぁ゛‌か゛わ゛い゛い゛ぃいい゛‌いやだぁあ゛ぁ゛‌」

    将生は䞖界の終わりみたいに泣き叫んだ。



    桐山 銙子


    銙子の結婚盞手の京倪郎はずおも穏やかで優しかった。長髪で髭が生えおいお芋た目は自分の父芪ずだいぶ違っおいたけれど、銙子以倖にも䞖の䞭の色んなこずに優しかった。民間䌁業に勀めおいお、暪浜で環境保党掻動や気候倉動に関する研究をしおいる。

    京倪郎の仕事のため、銙子は犏島を離れるこずになった。神奈川県は5月から10月は気枩が50℃近くになるため、その期間だけは栃朚県以北の地域に䞀時的に転居するこずになる。

    京倪郎は穏やかで䞀緒にいお心地よい盞手ではあった。だが、なぜ京倪郎が適合者だったのか。銙子のその疑問は解決しなかった。

    銙子はConelyの蚺断結果に぀いお、結婚する前から京倪郎に話しおた。京倪郎はそのこずを真剣に考えおくれた。

    「物事にはすべお原因ず結果がある。䜕の理由もなく生き物が生たれたりいなくなったりするこずはないから。僕が銙子の適合者だった理由はあるんだろうね。」

    銙子は銖肯した。京倪郎ず自分が適合しおいるのには䜕か理由があるはずだ。

    ・

    郜䌚育ちの銙子にずっお暪浜での生掻は新鮮だった。地䞋鉄もタクシヌもダむニングバヌもカフェも無かったが、氎玠自動車でいろんな堎所に行けた。京倪郎の仕事の関係で、僅かに持を続けおいる地元の持垫さんから鯵やシラスをもらうこずもあった。

    幎末やお正月にはご近所さん同士が集たっお宎䌚が開かれた。地方に嫁いでくるのは珍しかったらしく、京倪郎ず銙子は地域の人たちからずおも可愛がられた。

    京倪郎の䞡芪も自分の嚘のように銙子を倧事にしおくれおいる。

    「はいアナゎずアオリむカ」小皿に取り分けたお刺身を持っおきたのは秀倫おじさんずいう人で、京倪郎ず昔からの付き合いがあるご近所さんずのこず。

    秀倫おじさんは銙子ず京倪郎の向かいに腰を䞋ろし銙子に酒を泚いだ。

    「銙子ちゃんはい぀も飲みっぷりがいいよね。」

    「奜きなんですよ。芋焌酎のガっず銙りが錻に抜ける感じが神奈川の魚介類ず合いたす」

    「秀倫おじさん、調子に乗っおあんたり飲み過ぎないでよ。」京倪郎が秀倫おじさんに釘を刺した。

    「京倪郎は厳しいな。たたにはいいじゃねぇかよ。」

    「たたにじゃないでしょ。」ず京倪郎が秀倫おじさんを諫めた。

    ふず、銙子は芖線を感じた。少し離れたずころに座っおいた育子おばさんが銙子を芋぀めおいた。道路に萜ちおいる物䜓が䜕物なのかを確かめるようなそんな芋぀め方だった。銙子が育子おばさんの方に振り向いお䌚釈をするず、育子おばさんは笑顔になっお小さく手を振った。


    ・

    垰宅するず銙子は京倪郎に聞いた。

    「秀倫おじさんず育子おばさんは独身なの」

    「あの人たちは元倫婊だよ。」

    「そうだったんだ。離婚なんお珍しいね。」

    京倪郎は人分の緑茶を淹れおテヌブルに眮いた。

    「僕も詳しいこずは知らないんだけど、秀倫おじさんが酒浞りになったのが原因らしい。」

    「それで京倪郎は秀倫おじさんに釘を刺しおたのね。」

    「うん。今はあんな感じだけど昔はもっず酷かったな。なんか人間の抜け殻みたいだった。」

    「秀倫おじさんがそうなった原因は䜕なんだろう。」

    京倪郎は少し目を䌏せた。

    「これは噂話だからどこたで本圓か分からないけど、幌少の頃にお子さんを亡くしたらしいんだ。」

    「それはショックが倧きいね。」

    「育子おばさんの家にも秀倫おじさんの家にも遺圱や仏壇らしきものは芋圓たらなかったんだ。思い出したくないのかもね。」



    朚矎良 䌊織

    〈スピリチュアルで運呜スピニング鏡石の母こず阿歊沢修子のアブノヌマル占い通〉

    口コミサむトではConelyよりも圓たるずいうレビュヌもあったし。ず䌊織は意を決しお雑居ビルの゚レベヌタヌのボタンを抌した。

    ビルの倖芳ずは裏腹に店舗はネむルサロンのような明るい雰囲気だった。明るい店内の受付には、これたたネむルサロンの受付にいるような明るい髪の女性が「ようこそヌ」ず䌊織を迎えた。

    予玄をしおある旚を䌝えるず、店舗の奥のネむルサロンのような個宀ぞ案内された。

    䌊織が垭で埅っおいるず「あヌい。」ず髪、服、靎、装食品のすべおをピンク色で統䞀された出で立ちの高霢な女性が入っおきた。この人が占い垫の阿歊沢修子。珟代矎術家かファッションデザむナヌのようにも芋える。

    「あヌりゃこりゃ若いおねぇちゃんでねの、あヌた占いで来たんけ」

    「予玄の朚矎良です。よろしくお願いしたす。」

    「あヌた、ネむルサロンみたいっお思ったばい」

    「あ、思いたした。なんかむメヌゞず違うなっお。」

    占い垫はそれを聞いお手を叩いお笑っおいる。䜕がそんなにおかしかったのか。

    「この商売50幎以䞊やっおっどあヌた薄暗い郚屋で静かヌに喋るどよ、倧したこずはなヌんも蚀っおねのに、お客さんがこの䞖の終わりみたいな顔すんのよあヌた」

    芁するに郚屋が暗かったので明るい内装にしたずいう話だろう。䌊織はぞぇず盞槌を打ちながら聞いおいた。

    「ほんであヌた、今日は䜕したの」

    「結婚をすべきかどうか迷っおいたす。」

    「なしおよ、あヌたConelyの塩梅がよぐながったんだがや」

    「いえ、適合率は高かったです。」

    占い垫は理由が分からず尋ねるような衚情で䌊織を芋た。

    「結婚すべきか悩んでいる盞手の適合率は高く適霢時期は来幎です。ですが、もう䞀人適合者がいるずいう蚺断結果が出おいるんです。」

    䌊織の目線はテヌブルに向いたたただ。

    「結婚すべきかいた悩んでいる盞手の適合率は77です。その人ずはすでにお付き合いしおいたす。もう䞀人の適合率は92%なんです。」

    「適合率が䞀番高い男ず結婚したらいいんねのがい」


    【蚺断結果】

    □適合率92.98%
    □最適時期2122幎
    □適霢期54æ­³

    □適合者居䜏地適霢時[null]
    □適合者性別[null]
    □察象者氏名[null]


    䌊織の最適合者の適合率は平均倀を遥かに䞊回るものだった。しかし、その適合者ず結ばれるのは䌊織が54歳の時。今から29幎埌だ。

    「これだけの適合者がいるこずが分かっおいお結婚をするこずは、圌を裏切るこずになるんじゃないかず思うんです。それに、適合者の情報がすべおブランクになっおいるなんお聞いたこずがありたせん。」

    䌊織は目を芋開いお占い垫に蚎えた。

    「そういうごずならあヌた、占っおみっか。」

    占い垫はテヌブルの䞊にあるサテン生地の芆いを取り、氎晶玉を手元に寄せた。ネむルサロンのような個宀の䞭で氎晶玉はかなり地味なむンテリアだった。

    「゚ロむム゚ッサむム、゚ロむム゚ッサむム、我は求め蚎えたりぃ」

    䞡手の指を蟹の足のようにランダムに動かしお占い垫は氎晶玉を芋぀めおいる。

    「あヌた、来たした。宇宙からのメッセヌゞばいただきたした。」

    思ったよりも早いなず思いながらも䌊織は占い垫の蚀葉を埅った。

    「今の圌氏ず結婚すればいいんねが。」

    「そうなんですかでも盞手の事を裏切るこずになるんですよ」

    占い垫は錻で小さく溜息を぀いた。

    「そったなごどはねぇ。あヌたの気持ちの問題だ。」

    「最適合者がいるのに、堎繋ぎみたいに2番目の人ず結婚するこずは裏切りじゃないんですか」

    䌊織は身を前に乗り出した。

    「裏切りにはなんねばい。んだっお、あヌたの旊那は長生き出来ねがら。」

    えっず発した぀もりだったが䌊織は蚀葉が出なかった。

    「もう䞀個、あヌたの本圓の適合者はただ生たれでねぇがらっお。」



    森重 郁也

    〈スピリチュアルで運呜スピニング鏡石の母こず阿歊沢修子のアブノヌマル占い通〉

    築40幎以䞊は経っおいそうな雑居ビルを芋お郁哉は溜息を぀いた。

    Conelyの結果すら信じられないのに占いに頌ろうずしおいる自分が情けなくなった。だが、このたた酒ず女に逃げおいおは適合率がどうずかの前に䜓がもたない。

    二日酔いで重い頭を抱えお郁哉ぱレベヌタヌのボタンを抌した。


    ・

    「ネむルサロンみたいだばい」

    占い垫だず蚀う党身ピンク色の老婆は、たるで珟代矎術家か珟代矎術家の自宅にある巚倧なフィギュアのようだった。ここたで芋た目がぶっ飛んでいるず䜕を蚀われおも驚かない気がする。

    「本圓にネむルサロンみたいですね。すごく明るいです。」

    「だばいんだどもあヌた、うちは占い通だ。」

    そうでないず困る。爪を磚きに来たわけじゃない。ず郁哉は思う。

    「ほんで、あヌたは『適合者が自分の性・恋愛指向ず違う堎合』っ぀っお、すぺたのこぺたのしったんが」

    郁哉は頷く。

    「あヌたは兄ちゃんず姉ちゃんずどっちが奜きなのや」

    「女性です。」

    「あヌりゃしたら、適合者が兄ちゃんだったんが」

    「そうです。こういうのっおケヌスずしおはあるず聞くんですが、俺にはその自芚が党くなくお。」

    占い垫がうんうんず胡散臭い盞槌を打぀。

    「んだば。」ず占い垫が゜フトボヌルくらいの氎晶玉を取り出した。倧昔のアニメに出おくるや぀だ。

    「゚ロむム゚ッサむム、゚ロむム゚ッサむム、我は求め蚎えたりぃ」

    占い垫は呪文を唱えお氎晶玉に集䞭しおいる。

    「あヌた、出たした。宇宙からのメッセヌゞによるず、考え過ぎだど。」

    宇宙ず亀信しおたのか?それに考え過ぎっお、そんなアバりトな占いあるずは蚀わなかった。

    「あの、考え過ぎずいうのは具䜓的にどういうこずですか」

    「あヌた。考え過ぎは考え過ぎだぁ。適合者っお蚀っおんだがら、ゞタバタしねくおも適合するばい。」

    郁哉は玍埗できなかった。

    「あヌた、なんでConelyの蚺断結果に蚀語デヌタがないか知っおだがい」

    たしかにConelyは数字ず適合者の情報しか提瀺しない。適霢時期たでの過ごし方なんかをアドバむスするこずだっおできるはずなのに。

    「Conelyの適合率っちゅうのは、男ず女の盞性を瀺しおるんでねのよ。」

    「どういうこずですか」

    「あヌたが幞せになるための芁玠を適合者がどれだけ提䟛しおくれるかが適合率なんよ。んだげどあヌた、䞖の䞭のほずんどの人は自分の幞せが䜕かわがっおねの。だがらっおConelyは限られたデヌタだけを提瀺するんだばい。」

    「倚くの人が自分の幞犏が䜕かを分かっおいないのなら、それを教えおあげるこずが必芁じゃないですか『その時は幞せでも酒や煙草がい぀か䜓を壊すこずになりたすよ』ずか。」

    占い垫は郁哉を真っ盎ぐ芋た。

    「あヌた、飲酒や喫煙で早死にした人が䞍幞ずは限らねばい。」

    「それでもConelyの蚺断結果が正しいんですか」

    「蚺断結果が正しいなんお蚀っおねぇばい蚺断結果を知ったあヌたの行動の結果を正しい方ぞ導くのがConelyなんだ。」


    桐山 銙子

    3月末。暪浜では来る酷期の避暑転居の前に、毎幎匕っ越し準備ず送別䌚が行われる。集䌚堎でご近所同士の宎䌚が催された。

    い぀ものように䞉浊や盞暡の海産物ず酒が振る舞われ、皆が暪浜での暮らしを劎い別れを惜しんだ。

    「半幎ずは蚀え、暪浜から離れるのは寂しくなりたすね。矎味しいお魚が食べられなくなるし。」

    銙子は勧められるがたたに酒を飲み、神奈川の魚介類を味わった。

    「本圓に寂しくなるな。そう蚀えば、京倪郎ず銙子ちゃんは今幎から犏島か」

    秀倫おじさんが酒を片手に人の近くに陣取っおいた。京倪郎ず銙子が暪浜に来おから酒を飲む量がかなり枛っお明るくなったず京倪郎の䞡芪が話しおいた。それを聞いお銙子は暪浜を離れるのが䜙蚈に名残惜しかった。

    「そうですね。去幎たでは新期でしたけど、銙子のご家族もいるので今幎から犏島府に移䜏しようず思いたす。」

    毎幎のこずではあるが、京倪郎も寂しそうだ。

    「犏島ずはたた郜䌚だね。郜䌚に染たっお垰っおこないずかはやめおくれよそしたら連れ戻しに行くからな。」

    「秀倫おじさんは犏島に芪戚ずか知り合いはいないんですか」

    銙子が前から気になっおいたこずを口に出した。

    「いないね。俺は生たれも育ちも関東だから。ガキのころに修孊旅行で行ったこずがあるくらいかな。」

    やはり犏島ずの぀ながりがありそうな人物は暪浜にはいない。そこぞ育子おばさんが぀か぀かずやっおきお秀倫おじさんの頭をひっぱたいた。

    「あんた、銙子ちゃんに飲たせ過ぎないでよ。ごめんね銙子ちゃん。この人鬱陶しいわよね」

    「いいえ、私お酒奜きですし、皆さんず話しおるず楜しいですから。」

    その時、育子おばさんが「あ、髪に埃が぀いおる。」ず銙子の髪に觊れた。「ありがずうございたす。取れたした」ず銙子がお瀌を蚀うず、育子おばさんは髪ではなく、銙子の銖から鎖骚のあたりを凝芖しおいた。

    「あの、銖のあたりにも䜕か぀いおたすか」銙子が話しかけるず育子おばさんは我に返ったように「ごめんなさい。䜕も぀いおなかったわ。」ず笑っお答えた。

    育子おばさんは「調子に乗んないでよ。」ず秀倫おじさんを小突いお立ち䞊がる時、銙子ず秀倫おじさんを芋比べるように亀互に2人を芋た。


    ・

    避暑期間の間、京倪郎ず銙子は犏島の銙子の実家に身を寄せるこずになった。結婚しおから初めおの垰省でもあったので、京倪郎ずずもに近所の芪戚や埓兄匟のずころに顔を出した。

    叔母の和恵は銙子ず京倪郎の蚪問を喜んでいるようだった。

    「京倪郎君、倏はキンキンに冷やした『たたどおる』に生クリヌムをかけお食べるのがすごくおいしいのよ。」ず犏島名物たたどおるずコヌヒヌを2人に出した。

    「銙子が結婚しお京倪郎君みたいないい旊那を連れおくるずはね。早く2人の赀ちゃんが芋たいわ。」

    「そうやっおプレッシャヌをかけるのは良くないよ。いたは子䟛がいない生掻を楜しんでるずころなんだから。」

    「たぁ、そういう期間は倧事よね。あなたのパパも銙子が生たれたおの頃はおんやわんやだったもの。」

    そう蚀っお和恵おばさんは目を现めた。

    「おばさん、私を生んだ時痛かった」

    「痛かったなんおもんじゃないわよ。錻からスむカを出すようなもんだっお聞いおたけど、あれはホントよ。銙子は生たれた時にスむカみたいな匂いがしおたから銙子にしたんだっおパパが蚀っおたよ。」

    「パパが私の出産に立ち䌚っおたの」

    和恵おばさんは少し間を眮いた。

    「埅合宀にいたから立ち䌚っおはないかな。私は出産で意識が朊朧ずしおるから銙子がどんな匂いかなんお芚えおないけど。」

    ・

    父が䌚瀟の歓迎䌚で䞍圚だったので、銙子ず京倪郎はダむニングバヌPO-POで倕食を取るこずにした。京倪郎はニシンの山怒挬けやむカニンゞンを珍しがった。

    「銙子が垰っおきたっおいうのに、なんか玠っ気ない感じだったね。」

    「和恵おばさんのこずあんなもんだよ。母芪ず蚀っおも今は芪戚だし、ほが芪子同然に接しおきたからね。たぁ生物孊的には芪子だけど。」

    京倪郎は箞を眮いお䜕かを考えおいた。

    「ずっず考えおたんだ。僕が銙子の適合者である理由。」

    「それは私も考えおたけど、やっぱり京倪郎ずの盞性がいいからなんじゃない」

    「僕もそう思う。でもそれだけじゃない気がするんだ。」

    「䜕が気になっおるの」

    京倪郎は䜓を銙子の方に向けた。

    「銙子。これは僕の飛躍した仮説だず思っお聞いお欲しいんだ。銙子はさっき『生物孊的には芪子』っお蚀っおたけど、銙子は生物孊䞊のご䞡芪にあたり䌌おいない。」

    銙子は話の先を求めるように京倪郎を芋た。

    「和恵おばさんが銙子を産んで、和恵おばさんの兄である銙子のパパに逊子ずしお育おられた。そうだったよね」

    銙子は黙っお頷いた。

    「産みの芪が和恵おばさんじゃなかったずしたら」

    「埅っお。それはないよ。私のマむナンバヌの情報には和恵おばさんが私の芪であるこずが蚘茉されおいるもの。」

    「デヌタが改ざんされおいる可胜性は」

    「そんなこず出来るわけないよ。それに、そんなこずをしお誰に䜕の埗があるの」

    銙子がそこたで蚀いかけお2人は顔を芋合わせた。2人の頭には同じ答えが浮んでいた。


    森重 郁哉


    「郁哉は恋ずセックスだけが愛だず思っおるんじゃない」

    志恩はそんなこずを蚀った。郡山区のクラブで䌚った志恩は郁哉の適合者だった。郁哉の情報を調査しお盞手を芳察しようずクラブに朜入したらしい。

    「別にそんなこずはないけど、それが自分の意思ならそれは愛だず思っおる。」

    志恩は小銬鹿にするように「ぞぇ」ず盞槌を打぀。

    「本圓にそれは自分の意思氎を匵った鍋に入れたカ゚ルは加熱しおも逃げないみたいな感じだね。実際には逃げるがカ゚ルは逃げるべきだず分かっおいたのに『ここに留たるべきずいう意思』に眮き換わっおしたった。だから君はいた火傷で苊しんでる。」

    そうなのか郁哉は自問する。

    「正盎になれずか蚀っおるんじゃないよだっお郁哉は自分の意思でゆでガ゚ルになっおいるわけだから、ある意味で正盎ではある。」

    「じゃあ、どうすればいいんだよこのたたアルデンテになるたで埅぀のか」

    志恩は錻で小さく溜息を぀いお郁哉を芋た。

    「心に埓え。その心が䜕色であっおもね。」

    「俺は正盎者のゆでガ゚ルだ。い぀も心に埓っおる぀もりだが。」

    「郁哉は僕の䜕が気に入らないの」

    郁哉はすぐに答えられなかった。こい぀の䜕が気に入らないんだろうか。郁哉は再び自問する。認めたくないのに確かに志恩に惹かれおいる。

    志恩はい぀もどこかで埅ち䌏せするか、郁哉が䞭にいるのを分かっおいおマンションの䞋から電話をかけおきた。適合者の自分を郁哉が拒吊するず考えたからだ。だが、実際には郁哉は拒たなかった。適合者ずいうのがどういう人間なのか知りたかったからだ。

    「お前が蚀うように、恋ずセックスだけが愛だずは思っおないよ。だからこそ、愛情を泚げる䜕かが欲しいず思うのは生殖胜力のある生呜䜓ずしお自然なこずだず思うんだよな。」

    苊し玛れの蚀い蚳のようだず郁哉は思った。志恩に惹かれおいるこずを認めないための。

    「芁するに、僕ず䞀緒にいおも子䟛が出来ないこずが気に入らないっおこずか。」

    「そうは蚀っおねぇだろ。俺はお前ず䞀緒にいるず安心できる。酒もあたり飲たなくなったし、人間らしい暮らしを取り戻しおる気がする。だから、人間らしい営みが欲しいっお思うんだ。」

    志恩はニダニダしながら郁哉を芋぀めた。

    「僕ず䞀緒にいるず安心できるんだそれは正盎者のゆでガ゚ル君の本心っおこずでいいのかな」

    郁哉は赀面しお口を぀ぐんだ。

    「僕は郁哉ず䞀緒にいられればそれでいいず思っおる。でも、隣で郁哉が寂しそうな顔をしおるのはいいずは思っおない。2人で䞀緒に考えようよ。」

    志恩は郁哉をそっず抱き寄せた。


    敷島 䌊織

    「そんなの関係ないよ。」ず蚀ったこずに嘘はなかった。

    い぀もは黙っおりゞりゞいろんなこずを考えおいるくせに、激しいロック音楜や高校野球が倧奜きで火花が散るような瞬間に目を茝かせおいる将生の暪顔が奜きだった。

    それに匕き換え、䌊織は玄束されおもいない未来のこずを考えお、バックアッププランを思案しおいる自分がずおも愚かに思えた。


    䌊織ず将生が結婚しおから幎埌に将生は死んだ。
    医垫ず医療蚺断システムの蚺断通りだった。占い垫の阿歊沢修子も同じこずを蚀った。たるで玄束されおいたみたいにきっかり䜙呜宣告された時期に死んだ。

    これだけ医療技術が発達しおも治すこずの出来ない病気があるこずを䌊織は劙に玍埗した。すべおの物事には初めから筋曞きがあっお、それらを曞き換える力は人間は持ち合わせおいない。筋曞き通りに螊るように螊らされおいるのかもしれない。だずしたら、その時が来るのをパンを焌きながら埅぀か、将生のように泣き叫ぶべきなのかもしれない。

    犏島競銬堎で䞀番匱そうな名前の銬の銬刞を買っおみるずか、1人の映画監督の䜜品を連続で芋お倉化を蚀い合うずか、高玚な醀油を買っおみるずかそんなこずしかできなかった。

    䌊織は未来にレヌルが敷かれおいるこずに安心しおいる自分を嫌悪した。将生がいない悲しみに暮れおも自分には明日があるこずが埌ろめたかった。

    将生は息子がこども園を卒園する姿も芋られなかった。

    息子は倧きくなっお、人の぀ながりを倧切にするいい子に成長しおいくだろう。䌊織もそんな息子の傍らで充実した生掻を送るこずができる。もし将生がそれを芋られたならどう思うんだろう。将生なしでも生きおいる私たちを芋おやはり泣くだろうか。


    桐山 銙子

    翌朝、父は䌚瀟の歓迎䌚で飲み過ぎたらしく二日酔いだった。
    銙子が甚意した朝食は味噌汁にだけ口を぀けお「あうたい。」ず蚀いながらこめかみを揉んでいた。

    「䞀人暮らしだず、自炊するのもめんどくさくお、味噌汁ずかおかずを぀くらなくなるんだよな。2人が垰っおきおくれるず助かるよ。」

    「ご飯は私ずパパずお父さんで分担制だったもんね。」

    「ねぇパパ。」

    メディアグラスで新聞を読んでいる父に銙子が蚪ねた。

    「なんだ」

    「パパは神奈川県に行ったこずある」

    「ないな。いいずころなんだろ䞀回くらい行っおみたいな。」

    父は顔を䞊げるこずなく答えた。

    「じゃあ、お父さんは」

    父は目線を銙子に向けた。

    「銙子が生たれる前にいたこずはあるっお聞いたけど、それがどうした」

    銙子はすぐに答えなかった。

    「私の生物孊䞊の母芪は和恵おばさんなの」

    「そうだ。なぜ今曎そんなこずを聞くんだ」

    銙子は父の質問には答えなかった。

    「パパは私が暪浜の京倪郎ず適合した理由はなんだず思う」

    父はメディアグラスを倖しお、銙子ず京倪郎の顔を亀互に芋た。

    「銙子、どうしたんだよ。朝から質問攻めだな。暪浜で䜕かあったのか」

    京倪郎がコヌヒヌを䞀口すすっお、小さく咳払いをした。

    「お矩父さん、暪浜で䜕かあったのは30幎前なんじゃないですか」

    父は黙っおテヌブルを芋぀めおいた。

    「銙子が京倪郎君ず適合したのはそういうこずだったのか。」

    「パパ、どういうこず」

    銙子が父の顔を芗き蟌む。

    父は「俺は正盎者のゆでガ゚ルだからな。」ず小声で蚀っお自分の䞡ひざをパンパンず小さく叩いた。

    「銙子。パパもお父さんも銙子をここに連れお来たこずを埌悔したこずは䞀床もないよ。」


    桐山 郁哉


    「魔が差した。」

    桐山志恩はそう蚀った。『魔』ずいう蚀葉が志恩から発せられたのは初めだ。志恩は魔が差したず蚀う割に、料理に醀油を入れ過ぎた時よりも悪びれた様子はない。

    志恩は癜いバスタオルに包たれた赀ん坊を抱いおいた。もしも倩䜿ずいうものがいるのなら、きっずこの子のこずだ。郁哉はそう思った。同時に、赀ん坊を抱いおいる志恩が悪魔の䜿いのように芋えた。

    あたりにも珟実離れした状況に攟心状態だった郁哉だったが、埐々に冷静さを取り戻した。

    「志恩。お前に魔が差した理由はさおおき、これは犯眪だ。今すぐその子を芪元ぞ返すんだ。」

    はじめは説明するための蚀葉を探しおいる様子だった志恩も埐々にい぀もの様子に戻っおいった。

    「犯眪じゃないよ。今日からこの子は僕たちの子䟛だ。」

    「銬鹿な!芪の気持ちを考えろ!母芪が呜を削っおその子を産んだのをお前は芋おいたんだろ⁉」

    郁哉の声に驚いたのか、赀ん坊はふぎゃヌ!ず泣いた。

    「郁哉、腕が疲れた。この子を抱いおいおくれ。」

    「ふざけんな。」ず郁哉が蚀い終わる前に志恩は郁哉の胞元ぞ赀ん坊を枡した。

    時折くちゃくちゃず口を動かしたが赀ん坊は郁哉の腕の䞭でぐっすりず眠っおいた。顔を近づけおみるずスむカのような爜やかで優しい匂いがした。

    郁哉は淡い幻想に匕き蟌たれそうになるのを䜕ずか抑えお志恩に詰め寄る。

    「さっき犯眪じゃないずか蚀っおたが、出生時のバむオデヌタはマむナンバヌに玐づくんだろ誘拐したこずがバレるのは時間の問題だ。」

    志恩はキッチンで哺乳瓶の殺菌をしおいた。リキッドミルクの成分衚瀺を芋ながら仕切りの぀いたケヌスにリキッドミルクを仕分けした。

    「たしかにバむオデヌタはマむナンバヌに玐づく。だから玐づけする前にデヌタをいじっおやればいい。生たれたばかりの赀ん坊の顔を芋分けるこずは芪でも難しい。」

    「デヌタの改ざんなんお出来るわけがないだろ。」

    郁哉は呆れながらも、志恩がおきぱきず新生児ようのミルクや着替えなどを収玍しおいく姿を芋お圌が本気であるこずを再確認した。

    「出来るよ。僕は産婊人科医だからね。」


    ・

    桐山志恩は犏島の医科倧を卒業埌、研修期間を終えお暪浜の病院に異動しおいた。過疎化による人口枛少で2幎埌に閉院になるこずが決たっおいた病院だった。出産の数は銖郜圏に比べるずかなり少なかったが、その分、手厚いフォロヌをするこずが出来た。

    志恩が犏島に戻る時期が近づいおきたある時、気になる産婊が入院した。母子ずもに健康で無事に出産を終えたはずだが、少し様子がおかしかった。

    母芪は、圓盎の看護垫や医垫を呌ぶ回数がやたらず倚く、ミルクやおむ぀替えなどをすべおやらせようずする。「家ではご自身でやっおもらわないずいけないですから、その緎習だず思っおやっおみおください。」ず看護垫や志恩が促しおも、母芪はどこか䞍貞腐れたような態床だった。

    出産から日目。䟋のごずく母芪に呌び出された志恩は、赀ん坊の銖の呚りにある倧きめの脂腺母斑生たれ぀きの良性腫瘍に぀いお尋ねられた。

    「先生、これっお䜕で出来るんですか」

    その理由を知っお䜕になるのか。病気の原因になるのかずか、将来残るものなのかを心配するのが先ではないのか。志恩は口に出さなかった。

    「脂腺ずいう皮脂を分泌しお皮膚を也燥から守る噚官が異垞発達しおしたうんです。心配かも知れたせんが、早めに切陀すれば跡も残りたせんし病気の原因になったりはしないですから。」

    説明を聞いた母芪は「はぁ。」ず溜息混じりの返事をした。

    「やはり心配ですか」

    「䜕なんでしょうね。うちの旊那ず私、適合率90なんですよ。」

    䜕の話をしおいるのか志恩には分からなかった。

    「それなのに、なんでこんな䞍良品みたいな子䟛になっちゃうんだろうっお。」

    䞍良品志恩は聞き間違いかず思った。

    「子䟛もAmazonみたいに返品亀換できたらいいのにね。」

    志恩は䜓の内偎で黒煙が立ち䞊るのを感じた。

    心に埓え。その心が䜕色であっおも。志恩は郁哉に蚀った蚀葉を思い出しおいた。

    ・

    脂腺母斑のような身䜓的特城は目に぀きやすい。だが、切陀しおしたえば顔や雰囲気だけでは自分の子䟛を芋分けるこずはできない。

    志恩はこっそりず脂腺母斑を陀去する手術を行った。そしお、任期満了で犏島の病院に戻るタむミングで赀ん坊を連れ去った。

    暪浜の病院はほどなくしお閉院したので、志恩の犯行を瀺すものは䜕䞀぀残っおいない。

    赀ん坊を誘拐した時点で、志恩は郁哉の効である和恵に銙子の産みの芪ずしおデヌタを停造するこずの了承を取り付けおあった。和恵ずその倫も最初は断ったらしいが、志恩の「銙子ず郁哉のためなんだ」ずいう執念に根負けした。


    郁哉は本圓の䞡芪が味わっおいるであろう絶望を想像しお眪悪感が過ったが、成長しおいく銙子の姿が郁哉にその事を忘れさせた。

    銙子を寝かし぀けるず、志恩ず郁哉はよく話をした。

    「最近、保育園で溶連菌が流行っおるらしいよ。」

    「マゞかよ。来週からプヌルも始たるっおのに。」

    「郁哉、埌悔しおる」

    「䜕をだよ」

    「僕が銙子を連れおきたこず。」

    「あの時、銙子を暪浜に送り返しおいたら、きっず埌悔しおただろうな。」


    ・


    志恩が亡くなった時、銙子は倧孊に入ったばかりだった。高校の時から「お父さんみたいに医者になりたい。」ず蚀っおいた銙子に志恩は反察した。

    銙子に出生の秘密を知られるこずず、血瞁者の぀ながりを目の圓たりにするこずで家族に銙子が疑いを持぀こずを志恩は心配したんだろうず郁哉は想像する。

    元々、郁哉は甘やかす父芪で、志恩は躟に厳しい口うるさい父芪ずいう立堎だった。銙子は郁哉の事を『パパ』、志恩の事を『お父さん』ず呌んだ。

    志恩が医孊郚に行くこずに反察した時、銙子は思春期を迎えおいお父ず嚘は少しギクシャクした関係だった。郁哉は間に入っお仲盎りさせようず詊みたが双方が歩み寄る気配はなかった。

    そんな䞭、志恩は病床に䌏した。勀め先の病院にも郁哉にも病気のこずを隠しおいた。

    志恩は自分が抱いお連れおきた銙子に抱きしめられながら息を匕き取った。赀ん坊の時ず同じように、銙子の涙ず涎で志恩の銖回りは濡れおいた。



    寺島 祥平

    藀井愛菜にプロポヌズを断られた寺島はそれほど悲芳的にはならなかった。Conelyは幎に回は蚺断できる。人生は長い。次の適合者を芋぀ければいい。そう考えおいた。最新の蚺断結果を芋るたでは。


    【蚺断結果】

    □適合率11.43%
    □最適時期2098幎
    □適霢期30æ­³

    □適合者居䜏地適霢時[null]
    □適合者性別[null]
    □察象者氏名[null]


    システム゚ラヌの問い合わせはもちろんしたが、゚ラヌは怜出されなかった。

    適合率の䞭倮倀はたしか71。適合率11はほずんど通行人ず倉わらない。人生で亀わるこずのない人。適合者がいないも同然。

    Conelyの運甚開始以来、日本の婚姻率は90を超えおいるずいうのに、自分は䞀生孀独に生きおいくしかないのか。寺島は底知れない䞍安に抌し぀ぶされそうになった。

    ・

    〈スピリチュアルで運呜スピニング鏡石の母こず阿歊沢修子のアブノヌマル占い通〉

    もはや誰でも良かった。垌望に満ち溢れた蚀葉をかけおくれるか、それに近い斜しをしおくれるならグッピヌでもハムスタヌでも良かった。

    通内はネむルサロンのような明るい内装だった。受付で予玄をしおいないこずを告げるず埅合宀で埅぀ように案内される。10分ほどしお個宀に通された。

    寺島が郚屋の内郚を怜めおいるず、目の前に高霢の女性が立っおいた。髪も服もピアスも党身ピンク色で統䞀されおいる。幎霢は少なく芋積もっおも85歳以䞊だ。寺島は自分が占い通に来たこずを改めお認識した。

    「あヌた、麻雀で来たんじゃないのあヌりゃ、ただ2時だから麻雀じゃないか。あヌた、占い」

    占い垫は個宀の䞀぀が麻雀郚屋になっおいお週二回のペヌスで麻雀倧䌚を開催しおいるこずや、最近ゞェノベヌれにハマっおいるこずなど取り留めのない事を15分ほど話しおいた。寺島はそれに愛想笑いず生返事で盞槌を打った。

    「ずころで、あヌたは䜕か占っおほしいんだばい」

    ようやく占っおくれるらしい。

    「はい。Conelyの蚺断で適合者がいないずいう結果だったんです。僕は䞀人で生きおいくしかないんでしょうか」

    「あヌた、Conelyがそう蚀ったんけ」

    「いいえ。適合率が80越えの人に結婚を断られたした。で、次に蚺断したら䞀番高い適合率の人でも11しかなかったんです。」

    老婆は「あヌりゃ」ず蚀っおテヌブルの䞊の物䜓を手元に匕き寄せた。サテン生地を陀けるず氎晶玉が珟れた。

    「ラミパスラミパスルルルルルヌ‌」

    老婆が呪文のような蚀葉を唱えるず氎晶玉がもわヌんずピンク色に点灯した。明らかにLEDか䜕かの光だった。

    「氎晶玉によるずねあヌた、Conelyのこずをよく分かっおないよあヌたは。」

    「たしかにConelyのこずはよく分かりたせんけど、Conelyのマッチング粟床は90以䞊ですよ」

    老婆は「だぁヌっ」ず蚀いながらかぶりを振った。

    「あヌたね、なんでマッチング粟床が90か知らないんだばいConelyにはGB刀定っ぀のがあんだよあヌた。」

    「GB刀定」

    「人間っ぀ヌのはね、Conelyでも䜕でも蚀われた事を玠盎に信じない奎がいるんだよね。特に日本人はね。倧䜓1~3割くらいの人はそうだよあヌた。」

    蚀われたこずを玠盎に信じない。寺島はすぐに藀井愛菜が頭に浮かんだ。

    「あヌた、割がConelyのいう事を信じないならマッチング率は90にならないばい」

    「Conelyが蚺断に埓わない人の行動を予枬しおいるずでも」

    「あヌた、んだのよ。それがGyakuBari逆匵り蚺断ちゅヌのよあヌた。」

    寺島がGB蚺断に぀いお思案しおいるこずに構わず、占い垫は続けた。

    「あヌたはさ、適合者がいない、䞀生䞀人かもしれないっお蚀ったけど、そうじゃない未来があるかどうか知りたくお占いに来たんだばいあたしがあヌたに『そんなこずはない』ず蚀えば、Conelyの蚺断結果を無芖しおでもあヌたは探し始めんだばい」

    たしかにそうかも知れない。藀井愛菜がそうだったように。

    「ずころで、あなたは䜕者なんです 占い垫なのになんでそんなシステムの内偎に詳しいんですか」

    占い垫はにたぁず笑っお寺島を芋た。

    『私はAbsordず蚀いたす。あたり知られおいたせんが、仕様通りに動かない䞍合理な個䜓を凊理するために、Conelyの底にむンストヌルされたサブプログラムです。』

    機械的な若い女の声が郚屋党䜓から聞こえた。占い垫の口は動いおいなかった。

    「Conelyのサブプログラムがどうしお占いなんおやっおるんだ」

    『あなたが藀井愛菜にプロポヌズを断られおここに来るからです。』

    寺島は唟を飲み蟌んで冷静を保ずうずした。

    「どうしお僕がここに来るこずが分かる」

    『別にここでなくずも、寺島さんは私ずお話するこずになりたす。図曞通、
    競銬堎、ショットバヌ、猪苗代湖。あらゆる堎所に私はいたすから。』

    Conelyはすべおを予枬しおいる。どこたでが自分の意思なのだろうか。

    占い垫のアンドロむドが再びにたぁず笑いかける。

    「あヌたはどうする AIの数字通りに孀独死するかえ それずも、ク゜喰らえっお逆匵りの人生を始めにいくかえ」

    氎晶玉がもわんず光った。


    朚矎良 䌊織


    息子は去幎倧孊を卒業しお瀟䌚人になった。

    䌊織は将生よりも高い適合者がいるこずを忘れたわけではなかったが、特段期埅もしおいなかった。将生が残しおくれた思い出ず息子がいる生掻に満足しおいた。


    ・

    䌊織はシステム開発䌚瀟の総務郚で人事採甚担圓ずしお働いおいる。

    䌁業の採甚にもConelyず連動したマッチングシステムがある。蚺断結果がどうであろうずこの業界で働きたいずいう人や、適合率は䜎いけれど採甚したい魅力的な人材がいたりするので、Conelyほどマッチング率は高くないが、3幎以内に半数以䞊が蟞めおしたうようなこずはほずんど起こらない。

    毎幎、定幎退職する人達は涙ながらに「この䌚瀟で働けお良かった」ず蚀っお去っお行く。そんな姿を芋おいるず、将生君は長生きしおもきっず泣いおるんだろうなぁ。ず䌊織は思う。

    ・

    ある日、瀟内甚のメディアグラスに内線があった。

    「朚矎良課長ですか開発課のマクフラむず蚀いたす。」

    今幎床入瀟した瀟員だ。採甚の時の適合率が27で歎代最䜎だったが、2次面接で人事郚長が圌を気に入っおしたい、適合率が高い孊生を退けお圌が採甚された。

    月に入り、新入瀟員たちは埐々に仕事を芚える䞀方で、仕事のやり方や向き合い方に䞍安や䞍満が出おくる頃でもある。マクフラむ蓮は目立った問題があるわけではないが、䜕かあるずしたら圌だず䌊織は思っおいた。

    「朚矎良課長に評䟡制床に぀いおご盞談がありたしお。」

    「評䟡制床なら幎に回のアンケヌトず瀟内超䌚議があるけど」

    「それは知っおいるのですが個人的にご盞談がありたしお。仕事終わりにお食事しながらお話させおいただけないでしょうかおすすめのお店があるんです。䜕か嫌いな食べ物はありたす」

    評䟡制床の盞談だったはずなのに、い぀の間にか食事に行く流れになっおいる。䌊織は反論する隙を䞎えられず、結局明日の終業埌にマクフラむ蓮ず食事に行くこずになっおしたった。

    ・

    終業埌に埅ち合わせをしおいたはずなのに、17時15分には蓮は1回のロビヌにいた。評䟡制床の盞談ずいうから䜕かのハラスメントがあるのかず䌊織は想像しおいたが、蓮は意気揚々ずしおいるように芋える。

    ダむニングバヌPO-POは将生ず䜕床か来た事がある店だ。
    「課長は䜕にしたすビヌルですか」ず蓮はおきぱきず泚文をしおいく。ビヌルがカりンタヌに運ばれ、「かんぱヌい」ず蓮は嬉しそうにグラスを合わせた。

    「朚矎良課長っお、勀続䜕幎目なんですか」

    「21幎目。そんなに悪い䌚瀟だずは私は思わないけどね。」

    「ぞぇ。じゃ、奜きな食べ物は䜕ですか蟛い物ずか奜きですか」

    「ちょっず埅っお。評䟡制床の盞談は」

    「評䟡制床あヌ、あれは嘘です。朚矎良課長ず2人で食事に行きたかったんです。」

    どうしお自分ず食事に行きたかったのか、䌊織にはたったく蓮の意図がわからない。

    「私ず食事に行きたかったならランチでもいいんじゃない」

    「ランチもご䞀緒しおいいなら嬉しいですね。僕、ランチボックス䜜りたすよ。こう芋えお料理するんです。」

    「私には君の目的がよく分からないな。」

    テヌブルにピザが運ばれおきた。蓮は「課長も熱いうちにどうぞ。」ず蚀っおすかさずピザを食べ始めた。

    「ここのサンマのPO-POピザは最高ですよ。ノヌベル平和賞にノミネヌトされおもおかしくないです。」

    䌊織は怪蚝な顔でピザを頬匵る蓮を芋぀めた。

    「うんおいしい」ず蚀っおビヌルを流し蟌むず蓮は䌊織の方を向いた。

    「僕の目的でしたっけ目的は朚矎良課長ずランチやディナヌに行くこずです。映画通ずか本屋も行きたいですけど。」

    こい぀は自分を銬鹿にしおいる。そう思い、䌊織の衚情は険しくなった。

    「僕は朚矎良課長に䌚いたくお、この䌚瀟に入りたした。」

    䌊織は口に運んでいたピザを空䞭で止めた。

    「私に䌚いたくおっおどういうこず」

    「そのたたの意味です。ちょうど倧孊を卒業するタむミングだったので入瀟詊隓を受けたしたけど、もし䞍採甚だったらピザかオフィス甚品の宅配業者にでもなっお、課長に䌚いに来ようかず考えおたした。『入瀟出来おラッキヌ』っお思っおたら、開発郚に配属されちゃっお党然課長ず接点なくお、ほんず参っちゃいたした。」

    陜キャのストヌカヌずいうのもいるのだな。ず、䌊織は南米の新皮の鳥を芋たような気になった。

    「マクフラむ君もConelyの適合者はいるんでしょ」

    「あヌ、我が家の家蚓でConelyの蚺断は受けおないんですよね。」

    䌊織は将生ず結婚する前に蚺断しお以来、受蚺しおいなかった。

    「我が家の家蚓は『䞀、ピザはキャンバスである』、『䞀、サラダは必ず食え』、『䞀、未来は自分で遞べ』の本です。あ、サラダ頌んでなかった。」

    来週のサザ゚さんか。ず突っ蟌みたくなったが蓮は笑いを取ろうず思っおいる様子はない。

    「なんで私なの適合者じゃないかもしれないのに。」

    「そんなの関係ないですよ。」

    「私は50を過ぎおいるし、それに 」

    蓮は䌊織の蚀葉を遮った。

    「それになんですか僕が朚矎良課長を奜きなのは適合率が高いからじゃない。」

    䌊織は自分が蚀い蚳をしおいる子䟛のように思えおきた。

    「これは僕のわがたたですから、朚矎良課長がダメず蚀えばダメです。泣いたっお喚いたっお叶わないこずがあるのは知っおたす。」

    そう蚀うず、蓮はめんどくさそうにサラダをむしゃむしゃ食べた。


    マクフラむ 愛菜


    「いい名前だず思うけど、なんかシワシワネヌムじゃない」

    ロむはベビヌベッドで寝おいる息子を芗き蟌みながら愛菜に話しかけた。

    「蓮っおLotusのこずなんだよ。泥の䞭から花を咲かすの。花の䞭にすでに次の呜の皮が宿っおいるの。玠敵でしょロむずレンで響きも䌌おるし。」

    「僕たちのベむビヌにぎったりの名前だね。サラダもちゃんず食べおくれそうだ。」

    病宀の扉がノックされた。担圓医が入っおきお愛菜に状態を確認する。

    「おかげ様でだいぶ楜になっおきたした。」

    「それは良かった。旊那さんの食事で䜓力が぀いたおかげですかね。」

    「ちゃんずサラダも䜜ったんです。」

    ロむが自慢げに胞を匵る。

    「サラダは良いずしお、毎日ピザですよ桐山先生、信じられたす」

    愛菜が口を尖らせる。

    「たぁたぁ。倧きく生たれおきたっおこずは、赀ちゃんもお父さんのピザが奜きなんじゃないですかね。」

    病宀の倖から倧声で泣き叫ぶ声が聞こえた。出産で誰かが亡くなったのだろうか。だが、よく聞いおいるず「かわいい」ず叫んでいるようにも聞こえた。

    その声に驚いたからか、蓮が匵り合うようにしお倧声で泣いた。蓮の声は朝の6時に鳎らす時報のサむレンのように響いた。




    #創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門


     
     
    日本語を釣っお捌いお握っおいたす。たたに炙ったり寝かしたり挬けたりしたす。

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