メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bykazokukaigo

【noteでBL】木守の仔

    フライング記事を経て、いざ参上!

    これで本編間に合わなかったらどうしようかと思ってましたが、どうにかなりました。

    【テーマ】
    「秋の味覚」「本当にあった怖い話」「パンツはき忘れた」

    【文字数】3805字

    【登場人物】
    佐原歩:お化けは見える聞こえる話せる殴れる。パンツ履き忘れても一切恥じらわない。秋の味覚は梨派。

    上総直行:お化けより人怖系が地雷。パンツは共感性羞恥が発動する。秋の味覚は茸と栗ご飯派。

    駒沢和成:お化けめっちゃビビるし大騒ぎする。パンツは悪ノリもするけど、正気に戻った際恥ずか死ぬ。秋の味覚はスイートポテト派。

    青山寿明:お化けは怖いからこそ殲滅したい。Gと同じ。パンツは人のことは茶化すけど自分が揶揄られるのは嫌。秋の味覚は秋刀魚派。

    今回はお馴染みのアオハルボーイズ(高校生ズ)ですよ〜!
    メインは上総✕佐原で、4人が上総くんのじいちゃんばあちゃんちにお泊りしに行くお話です。
    ホラー描写頑張りましたが、短い上に大して怖くなくて、イィイ゛ー💢ってなったり。
    あと、今回はキスシーンあります。襲い受け爆誕の瞬間。

    上総✕佐原の対お化けちゃん攻防については、こちらもどうぞ↓



    木守の仔


    「今度じいちゃんちで柿取りの手伝いせん? 三食おやつと宿付き、ちょっとだけどバイト代も出るって」
    「まかせろ」
    「即決するじゃん」
    「一応親御さんには確認してから返事しろよ」

    そんな会話があったのが、夏休みも終わり、残暑と呼ぶにも暑苦しい九月の初め。
    教室の空気もまだまだ浮かれていた頃の事だ。

    「上総のお祖父さん家ってM阪だっけ?」
    「もうちょい南、T郡の山の方」

    ここら辺からなら、電車で二時間弱。日帰りも可能な距離だが、田舎の夕暮れは早い。

    「前に俺等が夏祭り行った神社の近くか」
    「確かにあの辺暗いよねぇ」
    「ああ、魚塚さん?」

    友人達の発言に上総の顔がほころんだ。(物理的に)暗いと言われようが、幼少期から慣れ親しんだ田舎の風景。夏の終わりに郷愁はよく馴染む。

    「今年は親の都合で帰省出来なかったんだよな〜」

    俺だけでも行けば良かったかな、と続ければ、誘えよ、と先程即決した友人、佐原に小突かれた。


    ーーそれから少し時間は進み、秋の初め。

    「来たよ、じいちゃんばあちゃん」
    「「「お世話になります」」」

    山間の片田舎、上総家の祖父母宅。
    クラスの友人、青山、駒沢、佐原の三人を引き連れやって来た父の実家は、昭和で時が止まったかのような佇まいで彼らを出迎えた。

    「まぁまぁ、直行もお友達もいらっしゃい」
    「なんもない所やが、ゆっくりしてってな」

    土間の三和土まで出迎えに出てきた上総の祖父母は、人の良さそうな満面の笑顔で、誰がどう見ても血縁者だ、と確信する程孫にそっくりだった。

    「立ち話もなんやし、まずは荷物置いてらっしゃい」
    「直行、仏間に案内したり」
    「はーい」

    古いながらもよく磨かれた廊下を通り、仏間に通される。仏壇と小さなローテーブル、数枚積まれた座布団だけが置かれた簡素な六畳間だ。
    リィーン。
    立ったままの上総が仏壇前に置かれたお輪を鳴らし、ただいま、と小さく告げる。
    振り向きざま、隣の部屋へ続く襖を指さし、彼の祖父母にも負けない笑顔で指示を出す。

    「まずそこの襖外すの手伝って。そっちも八畳あるから広くしとこ」
    「え、これ外せるの?」
    「えっ」
    「え?」

    カルチャーショック、と呟く上総は放置して、雑に投げられた荷物をまとめて並べ直していた青山委員長も苦笑いを浮かべている。

    「俺は分かるから……コマの家、和室ないもんな」
    「外した襖はどこに置けば良いんだ?」
    「何何、俺が馬鹿なの? って、佐原っち早!」

    騒がしくも賑やかな男子高校生達の掛け合いに、心なしか遺影の写真達も微笑ましく見守っているかのように見えた。

    そうして、よく来たこれ食うかとブルボン詰め合わせと煎餅缶によるさながら椀子そばの如くおやつタイム攻防を挟み、閑話休題。
    上総家祖父母宅は二階建ての年季が入った日本家屋で、家の裏手に庭と畑がある。件の柿の木は庭と畑の境界に植えられており、全部で三本。どれも鮮やかなオレンジ色の実を鈴なりに茂らせていた。

    「枝ごとじゃなくて、ヘタの所で切ってな」

    一人一本ずつのハサミと背負い籠を渡され、自然と二人一組で一本ずつの木に取り組む形となる。

    「上総、これは?」
    「ん〜ちょっとまだ黄緑だけど、まぁいける。そっちも大丈夫」

    とは言え、唯一の柿取り経験者、上総は時々青山達の方にも目を向けざるを得ないので、早々にコツを掴んだ佐原は、黙々と作業をこなす事に集中する。
    元々単純作業は嫌いではない。
    “頭が良い馬鹿”“行動力の化身”等と評される佐原であるが、その実、地味な反復作業もお手の物。
    対外的に地味とか派手とかではない。判断基準が極端に内向的、すなわち自分ルールが強固な佐原にとっては、自身が面白いと感じるか否かが全てなのだ。

    「にいちゃん上手いなぁ」

    一方、一人で一本の木を担当していた上総の祖父は流石のスピードで、若人達が半分終わらすかの段階で九割方収穫が済んでいた。

    「いや早いっすね!?」
    「毎年なんでなぁ」

    素直に驚嘆を述べる駒沢にじいちゃんもニコニコだ。お年寄りやオバチャンに可愛がられる男、駒沢。

    「あれは?」

    ふと佐原が指差したのは、木の天辺付近。
    そこには特に艶々とした食べ頃だろう柿の実が一つ、残っていた。

    「取り忘れですか?」
    「ああ、あれは木守だ」
    「きのもり」

    好奇心の男、佐原の目が丸くなる。

    「来年の豊作祈願とか、鳥へのお裾分けで一つだけ実を残しとくんだよ」
    「へぇ……」

    隣に戻ってきた上総が説明する間も、その目は木守から離れない。
    獲物を見つけた猫の仔のよう、と例えたら分かりやすいか。
    実際に彼が猫だったら、きっと虫や小鳥を狩るのも上手だろう。上総にはそう思えた。
    ざわざわと、生ぬるい風が木々の間を駆け抜ける。


    「みんなお疲れ様ー!」
    「イエーイ!!」
    「お疲れ様」
    「おつかれ」

    やがて追加の籠も満杯にして、収穫は終わり。
    ハイタッチで労い合っていた彼等に、微笑ましく眺めていたじいちゃんは告げる。

    「晩飯までまだ時間あるから、先に風呂浴びて来な」
    「りょーかい。みんな、順番決めっぞー」

    母屋へ向かう中、最後尾にいた佐原は一度足を止め振り向いた。視線の先はあの柿の実だ。艶と張りがあり、しっとりとした完熟品。一等美味そうな実。

    ーーざわ
    実が揺れる。

    「まだ風吹いてないぞ」

    ほどけた靴紐でも指摘するような自然さで、佐原は言う。

    「どした佐原?」
    「何でもない、今行く」

    踵を返した佐原の後は、虫の声一つ無い静寂が残った。


    「あれ、佐原は?」

    順番に風呂を借り、最後に上がった上総が仏間に向かうと、青山と駒沢が二人でババ抜き最終決戦の真っ最中であった。

    「ババ抜き先に終わって暇だから散歩してくるって〜」
    「どんだけトランプ弱いの二人……」

    やけに真剣な駒沢に対して、隠しきれない含み笑いを浮かべた青山は勝つ気も負ける気も無さそうだ。いちゃついてるなぁ、と生暖かい気持ちが湧き出てくる。

    「俺、ちょっと佐原探してくるな」
    「ああ、頼む」
    「柿の木見に行くって言ってたよ」
    「柿の木?」

    収穫も済んでるのに、と訝しみながら外へ向かう。
    うっすらと汗をかく程度にはまだ気温もあるが、リーリー、リリリ……と鳴り響く秋の虫の声が涼しげだ。
    日の入りも少し早くなったようで、空はオレンジ掛かった夕焼けから徐々に墨を垂らすように明度を下げ始めていた。
    柿みたいで美味そうな色、などと考えながら、真っ直ぐ木へ向かう。
    程なく、白く若い月が浮かぶ空を見上げる背中を見つけ、声をかけようとしてーー唐突に鳥肌が立った。

    「ーー?」

    夏の盛りと比べれば過ごしやすくなったが、まだ寒さなど感じるはずもない。
    死にかけの蝉が断末魔と呼ぶには力強い、最期の恋を乞い願う叫びが、どこか遠く。

    違う。あれは月じゃなくて、丸いーー

    は、は、と自身の吐いた息が妙に重い。
    奥歯が噛み合わず、カチカチと音が鳴る。
    混乱する頭が見上げた先に、ぽつんと実ったオレンジの。あれを。

    あ れを

           あれを、

                  ヲ

      レヲ

    あれをあレヲアれヲあれアれあれアレああレあれををヲあaアあぁaあァア唖有阿亞嗚朱赤逢厭逢逅ァ゙アぁ嗚呼亜々乎あーー

    あ

    あれを喰らえば救われる?



    「上総」

    ほどけた靴紐でも指摘するような自然さで、佐原は云う。
    いつの間に近くまで来たのか、凪いた瞳が上総を映す。

    「あんなちゃちな実モノにすがるくらいなら、俺を見ろ」

    ペチャリ、両頬を挟むように添えられた手のひらが温かい。そのまま引き寄せられ、優しい体温が唇にも重なった。

    「……っ!」

    気遣うような手に対して、口内の空気を奪い尽くすような荒々しい口付け。
    思わず歯を噛み締めようと試みるも、最後の抵抗すらこじ開けようとばかりに舌が這う。歯茎を舐め回され、逃げを打つ舌すら絡み付かれる。
    何より、ゼロ距離まで近付いたその瞳。
    逸らす事など許さないとばかりに鋭い閃光に射抜かれて、寒気とは違う感覚が背中を撫でさする。

    「……っ、……!」

    最初に限界を迎えたのは足だった。
    身体を支えきれず、ズルズルとその場に尻もちを付く。
    ようやく解放された口が忙しなく呼吸を再開したのに合わせ、心臓が痛い程に騒ぎ立てている。

    「な、なん…」

    酸欠気味の脳みそが、何かしらの意味ある言葉を導き出す前に。
    彼等の頭上で、唐突にナニカが爆発四散した。

    「えっ」
    「え??」

    場違いに間が抜けた声がして、疑問符と共に見上げた佐原は、心底不思議そうに首を傾げていた。

    「いやいや、意図した結果じゃないの? コルク栓でも開けたみたいなしょぼい音だったけど何あれ!?」
    「入り込んでた・・・・・・から追い出しただけなんだが……うーん……?」
    「めちゃ怖い事言ってる〜!」
    「外的要因……不確定要素あったか……?」

    様々な意味でうろたえる上総を放置したまま、考え込む佐原であったが。

    「あ、」

    しばらく、沈黙が落ちた。
    どこかバツの悪そうな、珍しく言い淀む気配を醸し出しているが、今回ばかりは上総も譲れない。安眠の危機である。
    対して未知なるものへの怯え等とんと無縁な男、佐原は逡巡する。だって関係なかったら赤っ恥も良い所だ。出来れば曖昧なままで済ましたい。

    「俺のファーストキス奪っておいて、説明責任果たさないつもりじゃないよな?」

    済ましたかった。
    観念した佐原が続く言葉を告げるまで、たっぷり数十秒。

    「………………………………………………………………………………………………………パンツ履き忘れた」

    怪異は下ネタが嫌い。
    そんな都市伝説が二人の脳内を過った矢先、木守の実が一つ、ぽとりと落ちた。





    ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。

    なお、過呼吸の対処法として有名な、紙袋を口に付けて呼吸するペーパーバック法(理屈はキスと同じ)は、酸素不足や窒息のリスクがある為、現在は推奨されていないそうです。
    今回は「過呼吸対処じゃなくて除霊目的だから」とインパクト重視でキスさせましたが、BL的にリアリティ追求するなら、抱きしめて背中さすってあげる位が良きって所かしら。それはそれでバブみ。

     
     
     
    コノヤマ キノ と読みます。 昭和生まれ平成育ちな令和のおかん。 猫と忍者が好きなオタク。 noteではショートショートとBLメインに活動中。 2025年6月よりエブリスタ始めました。 https://estar.jp/users/1861844409

    あなたへのおすすめ