
【シロクマ文芸部】正義の敵が目覚めた日 #風が吹く #ファンタジー #シリアス
風が吹くのは、いつだって主人公の為さ。
嘲笑うように、揶揄するように、かつて共に暮らした老人が口にした言葉が蘇る。
『主人公?』
『正義の味方、世界の抑止力。私ら掃き溜めの住民とは似ても似つかない奴らさね』
『よくわからないや』
『いつか分かるとも。坊やだって所詮はこちら側……いや、坊やならまだ……』
正義の味方とやらは格好良いけれども、僕らはそうは成れない側らしい。それが悲しいとも理不尽とも思わない程に幼かったあの日。
「ばっさまに何て答えたんだっけ」
今となってはもう思い出せない。けれども、ようやく分かった。
救国の英雄の凱旋を祝福するように風が吹く。熱狂する民衆の只中にあって、僕だけは異端だと。血の気が失せていく頭が、冷えていく心が叫んでいた。
故郷の仇敵の誇らしげな微笑みを、群衆に応えて振るう手が何を切り裂いたのかを、僕は今度こそ忘れない。
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正義の敵は別の正義なんですけどね。