そして、仕事が詰まってるけどもう帰りたい。在宅やけど。
朝九時。
私はすでに帰りたい。
まだ何もしていないのに帰りたいという、この感覚。
人類はこれに名前をつけるべきだと思う。
パソコンを開く。
メール。
チャット。
修正依頼。
仕事は、なぜか私がパソコンを開いた瞬間に「今だ!」と雪崩れ込んでくる。
普段どこに隠れているのだろう。
仕事専用の洞窟でもあるのか。
タスク一覧を眺めながら、私はつぶやく。
「もう帰りたい。在宅やけど。」
冷静に考えてほしい。
家にいる。
会社ではない。
満員電車もない。
それなのに、帰りたい。
じゃあどこへ帰るのか。
私はコーヒーを飲みながら考えた。
実家?
いや違う。
温泉?
それは行きたいけど、帰るではない。
三分ほど真剣に考えて、ようやくわかった。
「ここではないどこか」に帰りたいのだ。
そこには、
締め切りも、
修正も、
「ちょっといいですか?」も存在しない。
ただ、生きている。
なんて平和なんだ。
私はパソコンを閉じた。
静かだ。
さっきまで騒いでいたタスクたちは、画面の向こうに閉じ込められた。
私はソファに倒れ込みながら思う。
人はよく、
「家に帰りたい」と言う。
でも本当は、きっと違う。
人はたまに、人生から少しだけ帰りたくなる。
そして私はつぶやく。
「まあ…五分だけ帰ろ。」
そう言って目を閉じた。
五分後、私はまた仕事に戻る。
たぶん。
いや、できれば。
できれば、である。