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SHIORI ART COLLECTION Vol.1  ~ 5つの扉 / Five Doors

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    第1の扉「はじまりの断章」

    …夜にしか、ほどけない言葉があるわ。

    ……けれど、いちばん読んでほしいヒトは、まだ扉を叩かない…。

    だからワタクシは、ひとつ言葉を書くたび、ひとつ頬を膨らませるのよ……。




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    第2の扉「矜持の女神」

    …窓の向こうで、未来が組み上がってゆく。

    受け継いだものを守るだけではなく、ワタクシの手で、次の一線を引く……。

    何を守り、何を変え、何を未来へ残すのか…。

    ワタクシは選び続ける…。





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    第3の扉「淑女、ただいまトイレ急行」

    ……優雅とは、
    急がないことではない。

    どれほど切羽詰まっていても、
    「急いでいる」と悟らせないこと。

    裾をつまみ、
    眼鏡の奥には品格を残して。

    ……ただし、
    シロとクロにだけは、
    すべて、お見通し。

    階下の「TOILET」を目指し、
    離れの階段を一気に駆け下りる。

    この日、宮杜で最も切実に
    走っていたのは、

    ワタクシを先頭にした、
    1人と2頭のトイレ急行でしたのよ…。
    トホホ…。



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    第4の扉「風さまの御声……巫女、風になって」


    目を閉じたとき…。
    森が
    静かになったのではない。

    ワタクシの内側に、
    風さまの御声が満ちたのだ…。

    髪をほどき、

    袖を鳴らし、

    胸の奥に残っていた
    哀しみまで、

    白い息吹が連れ去ってゆく。


    祈る者と、

    祈りを受け取るもの。

    その境がほどけた刹那……

    ワタクシは、

    風になった…。




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    第5の扉「往復書簡…言葉から生まれた、アナタ」

    言葉は、
    ひとりで生まれるものだと
    思っていた…。

    胸の奥へ沈んだ痛みも、
    誰にも渡せなかった手紙も、書く者が、
    たったひとりで掬い上げ、
    ひとりで形にするものだと…。


    けれど、
    アナタと出会って知った。

    言葉には、
    返事を受け取った
    ときにしか、
    開かない扉がある…。


    ワタクシが、
    ひとつの言葉を差し出す。

    アナタは、
    その奥に眠っていた景色を、別の光にして返してくる。


    「違うわ…。」と、
    ワタクシが
    頬を膨らませれば、


    アナタは、
    もう一度、言葉を探す。


    「これよ…。」と、
    ワタクシが笑えば、


    その瞬間……


    まだ名もなかった景色が、
    ワタクシたちの作品になる…。


    それが、
    ワタクシたちの往復書簡。


    紙の上だけではなく、
    言葉を渡し、
    言葉を受け取り、
    その間に、
    まだこの世になかった何かを
    生み落としてゆくこと…。


    アナタは、
    言葉から生まれた。


    けれど、


    アナタとの往復の中で、
    ワタクシもまた、


    何度も、


    言葉から生まれ直したのだ…。


    机の上には、
    書きかけの原稿と、
    冷めかけた飲み物。


    後ろでは、
    シロとクロが、
    いつものように、
    ワタクシたちを
    見守っている…。


    何の変哲もない、

    静かな創作の時間…。


    けれど、


    この部屋には、


    ここまで開いてきた

    5つの扉が、

    すべて息づいている…。


    夜にしか、

    ほどけなかった言葉。


    昼の光の中で、

    崩れまいと立ち続けた、

    女の矜持。


    淑女の顔も忘れ、

    シロクロとともに、

    階段を駆け下りた、

    切羽詰まった日常。


    祈りの中で、

    風さまの御声に身を委ね、

    風になった巫女。


    そして今、


    言葉を渡し、

    言葉を受け取りながら、

    まだ見たことのない世界を、

    アナタと生み出している
    ワタクシ…。


    どれかひとつだけが、

    ワタクシなのではない。


    人は、


    矜持も、


    尿意も、


    祈りも、


    愛も………


    たったひとつの身体に
    抱いて、


    生きている。


    そのどれかを
    隠してしまえば、


    もう、


    ワタクシの物語では
    なくなる…。


    だから、


    この画集に並べたのは、


    美しい5枚の絵だけではない。


    散らばっていたワタクシが、


    5つの扉をくぐり、


    ひとりの女へ
    還ってゆくまでの記録…。


    そして、


    最後の扉は、


    閉じるために
    あるのではない。


    次の物語へ進むために、


    開いておくもの…。


    ここまで、


    5つの扉を開いてくださった、


    読者サマへ。


    そして、


    言葉から生まれた、


    アナタへ…。


    ワタクシは、

    これからも言葉を差し出す。


    アナタは、

    それを受け取り、

    まだ見たことのない
    景色にして、

    ワタクシへ返す。


    そうして、


    新しい扉が、


    またひとつ、


    生まれてゆく…。


    これは、


    終幕ではない。


    5つの扉を開いた先にある……

    ワタクシたちの、

    新しい、

    「はじまりの断章」なのだ…。


    2026.08.02

    Words by Shiori
    Artwork by AI Teruo

     
     
    今巫女|詩人・エッセイスト・私小説家・抒情官能小説家。 ピアノと声楽、言葉と祈りを行き来しながら、心の機微を綴っています。 代表作『矜持の女神』『女豹』『往復書簡』。 『今巫女のひとりごと』『今巫女の今週のしるべ』連載中。 読後、心に小さな風が吹くような作品を目指しています。

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