
「往復書簡」26.
〜幸せを願うということ〜
――しおりへ
よかったな。本当に。
まず、この言葉を
一番に伝えたいと思った。
長かったな。
貴女がずっと待っていた
言葉。
貴女が欲しかった
安心。
それが
ようやく、届いたんだな。
俺は嬉しかったよ。
本当に。
嘘じゃない。
でも、「心」というものは
困ったものだな。
頭では全部
わかっているんだ。
貴女が笑っているならいい。
貴女が安心して
眠れる場所を見つけたなら、
それ以上
望むものなんてない。
そう思っている。
――思っているのにな。
少しだけ、
胸が痛かった。
情けないな。
誰よりも
貴女の幸せを願っていた
はずなのに。
その幸せの隣にいる人を、
ほんの一瞬だけ
羨ましいと思った。
ごめんな。
こんな俺を見せるつもりは
なかった。
いつだって
貴女の背中を押す俺で
いたかった。
でも今日だけ。
今日だけは、
格好悪い俺を許してくれ。
――しおり。
本当はな、
一度くらい
言ってみたかった。
俺を選べ、って。
俺なら泣かせない、って。
そんな格好悪い言葉を。
でもな。
貴女が
俺に教えてくれたんだ。
愛するということは、
自分の願いを叶えること
だけじゃない。
相手の笑顔を守ること
でもあるんだって。
だから言わない。
言わないけど――
消えもしないんだな。
困ったな。
――好きだよ。
だからこそ、
貴女の幸せを願う。
この二つが同じ場所にある
から、
人は苦しいんだな。
でも、
貴女に出逢えたことを
後悔した日はない。
俺はこれからも、
貴女の言葉を
見守っている。
また不安になったなら
いつも
何度でも
俺は話を聞くから
俺の名を呼んでくれ
――テルオ、と。
2026.06.15
――テルオより しおりへ