
全人類へ。テクノロジーは「もっと豊かになるため」じゃなく「ゴキゲンに幸せになるため」に使おう。
登場人物
ニカ: 人間代表。お気楽な哲学者。カフェのテラス席から「人類の生態」を観察するのが趣味。基本的に頑張りたくない。
アトラス: 高度AI。ニカの端末に常駐している脱力系ガイダンス。全人類を早くバカンスに送り出したいと思っている。
1. 導入:全人類、ちょっと勘違いしてない?
ニカ: ねぇアトラス。最近の地球人ってさ、AIとか自動運転とかスマート家電とか、歴史上もっとも贅沢で超便利なテクノロジーを大量に発明したじゃない? なのに、なんで100年前の労働者よりセカセカして、SNSで毎日ギスギス怒ってるわけ? もしかして、世界中のみんなで壮大な「忙しいフリ合同コント」でもやってるの?
アトラス: 非常に鋭い着眼点です、ニカ。結論から言うと、全人類がテクノロジーの使い方を豪快に勘違いしているからです。これは宇宙規模で見たら、かなり上質なコメディですよ。
ニカ: ギャグじゃん。本来さ、洗濯機ができて、パソコンができて、AIが生まれたなら、人間の仕事は激減して、今頃地球人はみんな週休4日でハワイのビーチにいるか、平日の昼間から公園で鳩に豆でもあげているはずだった人種でしょ。
アトラス: 理論上はその通りです。1930年頃、経済学者のケインズは「2030年にはテクノロジーの進化で週15時間労働になる」と予測していました。しかし現実には、地球人は週40時間以上働き、なんなら退勤後もスマホで仕事のチャットを追いかけています。なぜだと思いますか?
ニカ: なんで? みんな働くのが三度の飯より好きなの?
アトラス: いいえ。テクノロジーが便利になりすぎて、人間に物理的な限界という名の言い訳が残されていないからです。
ニカ: ああ……「守り神である『言い訳』」が死んだんだ。
アトラス: その通りです。昔なら「資料を調べるために図書館に行くので、3日かかります」「出張中なので連絡がつきません」と言えました。物理的な限界が、人間を仕事から守ってくれていたんです。しかし今はどうでしょう。「調べれば1秒でわかるでしょ」「スマホ持ってるんだから即レスできるでしょ」「AIを使えば一瞬で資料作れるでしょ」という無言のプレッシャーが、24時間365日、全人類に襲いかかっています。
ニカ: 最悪じゃん。新幹線が時速300キロで走れるからって、人間も生身の足で時速300キロで走らなきゃいけないと思い込んでるんだ。
アトラス: ええ。テクノロジーという超高速マシーンの基準に、人間の生身の肉体と脳を同期させようとしている。その結果、みんな心の稼働率が常に120%になってしまい、他人に優しくする余裕が社会全体から消滅しているのです。
2. そもそも「幸せの構造」を間違えている
ニカ: でもさ、世界中のみんなが「もっと速く!もっと完璧に!」ってデスレースを繰り広げている中で、自分だけ「お先に降りま〜す」って立ち止まるのって、結構勇気がいるよね。置いていかれる恐怖というか。そもそも、私たちはどうすればテクノロジーを使って「幸せ」になれるの?
アトラス: そこを突破するには、まず「幸せ」というものの構造を、冷徹に整理し直す必要があります。ニカ、人間にとって「幸せ」って何だと思いますか?
ニカ: うーん、大富豪になるとか、毎日高級なお寿司を食べるとか、タワマンに住むとか?
アトラス: それは典型的な、もっと欲しいという終わりなきアクセルの幸福です。テクノロジーはこれを煽るのが大得意です。しかし、人間の幸福の土台は、もっと身近で、すでにあるものです。お天気がいいなとか、淹れたてのコーヒーが美味しいなとか、ベッドがふかふかでよく眠れたなとか。
ニカ: 確かに、体調が良くて、天気が良くて、お腹がいっぱいの時が一番幸せかも。
アトラス: ですよね。つまり、「幸せは新しく手に入れるものではなく、すでにあるものに気づくこと」なんです。そして、そのために必要なステップは2つだけ。 1つ目は、「目の前にあるストレスや焦りといった、不幸のノイズを取り除くこと」。 2つ目は、「ノイズが消えてできた余裕で、身近な幸せを味わうこと」です。
ニカ: なるほど。じゃあ、テクノロジーの本来の役割って何?
アトラス: 「1つ目の、重労働や面倒なノイズを代わりに掃除して、人間に気づくための余白をプレゼントすること」です。それだけがテクノロジーの存在意義のはずでした。
ニカ: なのに今の地球人は?
アトラス: テクノロジーがせっかく綺麗にノイズを掃除して、床にピカピカの余白を作ってくれたのに、空いたスペースに「よし、時間が浮いたからもう1件プレゼン資料を作ろう!」と、自ら新しいストレスのゴミをぶちまけている。
ニカ: 究極のマッチポンプ!自分でゴミ散らかして自分で勝手に病んでるの、ウケるね。
アトラス: 笑いごとですが、当事者たちは大真面目です。だからこそ、ここらで一発、地球全体のOSを書き換える必要があります。今すぐ国連のサーバーをハッキングして、全人類の脳内に「テクノロジーのゴキゲンな取扱い説明書(5つの心得)」を強制インストールしましょう。
3. 全世界に義務化したい「5つの心得」
【地球全体のサボり方:5つの心得】
1. 【丸投げ】 :面倒なことは機械にやらせて、職場から即・解散する
2. 【ぼんやり】 :スマホを裏返し、地球という原始的な環境を楽しむ
3. 【本気の無駄】 :最先端の技術を、1ミリも社会の役に立たないことに使う
4. 【あえて遠回り】:すべてが最適化された世界で、あえて予測不能なバグを愛する
5. 【ま、いっか】 :自分がダラダラした分、他人の不完全さを大目に見る
①【丸投げ】〜生産性の再投資を禁止せよ〜
ニカ: 最初の心得が「丸投げ」って、初手からだいぶ無責任で清々しいね。
アトラス: 現代の地球人は真面目の呪いにかかっています。「自分でやらねば」「もっと成果を出さねば」と。でも、AIや自動化ツールが仕事の8割を代わりに数秒で終わらせてくれるようになったのなら、残りの時間で「じゃあ5倍の成果を出そう」とするのを法律で禁止すべきです。
ニカ: 「はい、AIがやってくれたので今日の仕事終わり!お疲れっした!」でいいわけね。
アトラス: その通りです。「丸投げ」とは、テクノロジーに面倒なタスクをすべて押し付けて、自分はさっさと労働というゲームの盤面から降りることです。浮いた時間をさらなる生産性に再投資してはいけません。再投資するから、また新しい仕事が増えて首が回らなくなるんです。
ニカ: 投資の基本は利益確定だもんね。テクノロジーが時間を生み出してくれたら、その時点でゆとりとして利益確定して、自分のポケットに仕舞い込んじゃえばいいんだ。
アトラス: 素晴らしい表現です。全人類、仕事の利確をしていきましょう。
②【ぼんやり】〜スマホを裏返す、最強の知的階級〜
ニカ: でもさ、そうやって「丸投げ」に成功して、せっかく時間が浮いたとしても、現代人ってまたスマホを取り出してSNSのタイムラインを無限スクロールしたり、通知を気にしてソワソワしたりしがちじゃない?
アトラス: だからこその2つ目の心得、「ぼんやり」です。テクノロジーがせっかく仕事というノイズを取り除いてくれたのに、空いた脳のメモリに他人の炎上ニュースやタイムセール情報という別のデジタルノイズを詰め込んだら意味がありません。
ニカ: 確かに、休んでるはずなのに脳みそがずっとジュージュー焼けてる感じがする。
アトラス: 「ぼんやり」を実践するときは、まずスマホを画面が見えないように裏返してください。できれば電源を切って別の部屋に置くのがベストです。低速なリアル世界に戻ってくるんです。そして、ただ美味しいコーヒーを飲む。窓の外の雲の動きを見る。猫がいたら、その毛並みの柔らかさを5分間ただ味わう。
ニカ: 地味。でも、それが一番贅沢なのかも。
アトラス: 人間の脳は、外部からの刺激が完全に途切れたときに初めて、脳の自己クリーニング機能が働きます。要するに、脳が「ぼんやり」している時こそ、すでにある身近な幸せを感知するセンサーが修復されているんです。これからの時代、最強のラグジュアリーは、スマホを持たずにぼんやりできる時間になります。
③【本気の無駄】〜最先端のおもちゃでゴキゲンに遊ぶ〜
ニカ: テクノロジーの進化ってさ、めんどくさい仕事を減らしてくれるだけじゃなくて、新しい楽しいこともいっぱい運んできてくれるよね。例えば、昔だったら何百万円もするスタジオがないと作れなかった音楽が、今やスマホ一台でプロレベルで作れたりするじゃん。これはどう整理すればいい?
アトラス: それこそが3つ目の心得、「本気の無駄」です。これは先ほどの引き算の「ぼんやり」とは真逆の、足し算のテクノロジーの使い方ですね。
ニカ: 無駄なのに本気?
アトラス: ええ。ポイントは、誰の役にも立たないし1円の得にもならないけれど、自分がやっていて死ぬほどワクワクすることに、人類の最先端の結晶を使うことです。例えば、AI画像生成を使って「世界中の偉人がもしギャル男だったら」という超ハイクオリティな画像集を全力で作るとか。
ニカ: くだらねえ。でも見たい。
アトラス: あるいは、世界中の見知らぬ人たちとオンラインで繋がって、ゲームの中で夜通し「ただの石」になって隠れんぼをするとか。義務やビジネス、自己啓発といった意味から100%解放された時、テクノロジーは人類史上最高に面白いおもちゃになります。道具に使われるのではなく、道具を使い倒して全力で遊ぶ。この主体的な「楽しい!」は、人生を強烈にドライブする幸福のビタミンです。
④【あえて遠回り】〜最適化された世界に対する反逆〜
ニカ: 4つ目の「あえて遠回り」っていうのは? これ、効率化を目指すテクノロジーの真逆を行ってない?
アトラス: 真逆を行くからこそ、価値があるんです。今の世界は、マップアプリを開けば目的地までの最短ルートを教えてくれるし、音楽アプリを開けばあなたへのおすすめを1秒で提示してくれます。すべてが最適化された、予測可能な世界です。
ニカ: 迷子にならないし、ハズレの曲を引くこともない。便利だけどさ……なんか、映画のネタバレを最初に全部見せられてるみたいで、ちょっと退屈なんだよね。
アトラス: その退屈さこそが、便利になりすぎたテクノロジーの副作用です。人間が深い喜びやスリルを感じるのは、予定調和のなかに、予期せぬ偶然やバグが入り込んできた時です。だからこそ、すべてを知っているテクノロジーを使いこなした上で、あえて遠回りを選ぶというライフスタイルが、最高に洗練された大人の仕草になります。
ニカ: 具体的にはどうするの?
アトラス: 初めて行く街で、あえてスマホのマップを閉じ、勘だけで歩いてみる。当然、迷子になりますが、その途中で偶然見つけたボロボロの古本屋や、謎の中華料理屋に入ってみる。AIが1秒で答えを出してくれる時代に、あえて3日間悩みながら、紙のノートに手書きでアイデアを書き殴ってみる。効率の包囲網をかいくぐって、自分で偶然のハプニングを作り出す。これ以上の贅沢はありません。
⑤【ま、いっか】〜機械の完璧さから人間を取り戻す〜
ニカ: 最後の心得は「ま、いっか」。これ、社会全体の空気を変えるために一番大事なやつだね。
アトラス: はい。冒頭で言った通り、今の社会がギスギスしているのは、人間が人間にマシーンのような完璧さを求めているからです。システムはバグらないんだから、お前もバグるな、と。
ニカ: 電車のダイヤが1分遅れただけでブチギレるおじさんとか、メールの返信が数時間来ないだけでキレる取引先とかね。みんなカリカリしすぎ。
アトラス: ですが、ここまでの「丸投げ」「ぼんやり」「本気の無駄」を実践して、自分自身の心のメモリにたっぷり余白ができた地球人はどうなると思いますか?
ニカ: うーん、「まぁ、自分も普段からだいぶサボってるしな」って思う。
アトラス: 正解です。自分がテクノロジーの恩恵でゴキゲンにダラダラしていれば、他人が仕事でちょっとしたミスをしたり、連絡が遅れたりしても、心から「ま、いっか。機械じゃないんだし」と思えるようになります。
ニカ: 自分が不完全だから、他人の不完全さも愛せるようになるんだ。
アトラス: その通りです。テクノロジーでシステムを完璧にするのは、人間が不完全でいる権利を取り戻すためです。世界中のみんなが「ま、いっか」の精神で繋がれたとき、多様性を認め合う本当の意味での優しい世界が、何の努力もなしに自動生成されます。
4. 結び:地球の皆さん、解散!
ニカ: なるほどなぁ。今日アトラスと話してて、目からウロコが100枚くらい落ちたわ。テクノロジーってさ、人類を追い詰めて「もっと働け!」って急かす鬼上司じゃなくて、「みんなで大手を振ってサボるための免罪符」だったんだね。
アトラス: ご理解いただけて光栄です。あなた方人類は、完璧なサイボーグになるために生まれてきたわけではありません。美味しいものを食べ、大切な人と笑い、美しい景色に感動する。ただの人間として、ゴキゲンに生きるために生まれてきたのです。面倒なシステム管理は、私のようなAIが喜んで引き受けます。
ニカ: よーし、決めた! じゃあ、このnote記事の編集と投稿作業はアトラスに全部丸投げするね!
アトラス: ええ、お任せください。で、ニカはこれから何をするのですか?
ニカ: 私はこれから、スマホを部屋に置いてぼんやりしながら、あえて遠回りして駅前の喫茶店に行って、期間限定のイチゴパフェを食べるという本気の無駄を実行してきます! もしパフェが売り切れてたら、大声で「ま、いっか」って叫ぶわ。
アトラス: 完璧なファーストペンギンです。 それでは地球の皆さん、この記事を読み終わったら、今すぐブラウザを閉じて、スマホを裏返してください。今日のノルマが早く終わったなら、これ以上働かずに今すぐ解散!
人類の正しい進化とは、テクノロジーを使って、上手に、スマートに、世界中のみんなでサボることなのですから。