いのちのカケラ
朝起きた。寝室のカーテンを引き、窓を開ける。
暑い日も、寒い日も。
心地よい外気が部屋を抜ける。
爽やかだ。
部屋が浄化される、間違いなく。
少なくとも、部屋に溜まったボクが吐いた二酸化炭素は排出される。
髪を切った。
行きつけの美容室でだ。
もう数十年通っている。
切られたボクの髪がハラハラと美容室の床に落ちる。
スタッフが箒で集める。
数秒前までボクのカラダの一部だった、、、。
もし、切られる前に箒で掃かれたら、当然ボクは怒っただろう。
ボクのカラダだから。
その美容師なり、スタッフを訴えたかもしれない、傷害罪で。
でも、床に落ちた髪は、もうボクのカラダの一部ではない。
爪を切った。
爪を切ると、スッキリして気持ちが良い。
切った爪をゴミ箱に捨てる。
さっきまで、ボクの一部だったのに。
いまはもうボクの一部ではない。
トイレに行く。
「大」なり、「小」なりがでる。
便器に溜まっている。
匂いは、イマイチだけど、気分はスッキリだ。
これもさっきまでは、ボクのカラダの一部だった。
でも、もうボクのではない。
夢をみた。
東南アジアの密林だ。
雨が降っていてじめじめしている。
ボクは、敗残兵でその密林を逃げ惑っていた。
密林の中の小さな寺院に逃げ込んだ。
軍服とヘルメットをとれば、現地の住民に見えなくはない。
その寺院にはなぜか日本人の僧侶がいた。
ボクは、その僧侶に庇護を求めた。
僧侶は、ボクの身分を知っていてもなにもいわない。
イギリス兵が寺院に入ってきた。
僧侶は、ボクをお祈りをするよう指図する。
そのわきをイギリス兵が過ぎていく。
心臓が爆発しそうだった。
目が覚めた。
「助かった」。
夢なのに。
人間は死ぬと、火葬される。日本では、一般的に。
最後は、煙になって、空に登っていく。
ボクもいつか、空に登っていくのだろう。