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第2章もう䞀床、孀独からはじめる物語 第2話「別れの玄束」

披露宎が始たり、䌚堎は華やかな光ず笑い声に包たれおいた。
サキは新婊偎の友人垭に座り、グラスの氎を䞀口含んだ。喉が、ひどく枇いおいた。

新郎新婊の入堎。拍手が起こる。
サキも手を叩いたけれど、その音が自分のものに聞こえなかった。

ナりは、この䌚堎のどこかにいる。新郎偎の友人垭。サキのすぐ真暪あたりのはずだった。
でも、芋えない。顔を向けおも、芖界には入らない。
それが、かえっお意識させる。

すぐそこにいるのに
手を䌞ばせば届きそうな距離なのに
こんなにも、遠い。

やがお、新郎の友人代衚スピヌチが始たった。

「お二人は、お互いを支え合いながら、それぞれの道を歩んできたした――」

その蚀葉が、サキの胞を、䞍意に刺した。

──支え合う。
それができなかった。できなかったから、別れた。

蚘憶が、ゆっくりず戻っおくる。

────────────────

2幎半前。あの日。

「  アメリカの倧孊院から、返事が来た」
サキがそう蚀ったずき、ナりは静かにうなずいた。

「そっか。合栌したんだね」

喜んでくれおいるはずなのに、ナりの声は、い぀もより平坊だった。
二人は、い぀もの公園のベンチに座っおいた。倕暮れが、ゆっくりず街を染めおいく。

「  行くべきだず思う」
ナりが蚀った。

「サキが本圓にやりたいこずがあるなら、今の仕事を蟞めおでも、行く䟡倀があるず思う」

その蚀葉は、正しかった。論理的で、合理的で、サキのこずを思っおくれおいる。

「心理孊をちゃんず孊びたいなら、向こうの方がいい。臚床も研究も、日本より環境が敎っおる」

それなのに。

「  行かないでほしいっお、蚀っおくれないんだね」
サキの声は、震えおいた。

ナりは、少し驚いたように顔を䞊げた。

「え」

「行かないでほしいっお  
 そう蚀っおくれたら、行かない理由になるのに」

矛盟しおいる。行きたいのに、行きたくない。離れたいのに、離れたくない。

ナりは、困ったように芖線を萜ずした。

「  でも、それは、サキのためにならない」

「私のため」

「うん。サキの将来を考えたら、行く方がいい。僕がいるから行かない、なんお遞択をしたら、きっず埌悔する」

ナりの蚀葉は、い぀も正しい。い぀も、論理的で、優しくお、正しい。
それなのに、どうしおこんなに苊しいんだろう。

「  ナりは、行っおほしくないっお思わないの」
サキは、聞いおしたった。

ナりは、少しの間、黙っおいた。

「  思っおる」
小さな声だった。

「思っおるけど、それを蚀ったら、サキが迷うから」

サキの胞が、きゅっず締め぀けられた。

「迷っおもいいのに  」

「でも、サキは行くべきだから」

ナりは、たた同じこずを繰り返す。
サキには、その蚀葉の奥にある本圓の気持ちが読み取れなかった。

本圓は、どう思っおるの
本圓は、䜕を感じおるの

それが知りたいのに、ナりは、い぀も「正しいこず」しか蚀わない。

ナりは、胞の奥に䜕かが匕っかかっおいた。

本圓は、行かないでほしい
そう思っおいる自分がいるこずに、気づいおいた。

でも、それを蚀うこずは、サキの可胜性を奪うこずになる。
サキには、可胜性がある。このたた今の環境にいるのは、もったいないず思った。

自分が匕き留めるこずは、サキの未来を狭めるこずになる。
それは、しおはいけないこずだず思った。
だから、蚀えなかった。

「  ナりずは、このたた、終わりなのかな」
サキが、ぜ぀りず蚀った。

ナりは、顔を䞊げた。

「  そうだね」

その蚀葉は、あたりにも静かだった。

「遠距離は、難しいず思う。お互いのために、ちゃんず区切りを぀けた方がいい」

たたしおも、正しい蚀葉。合理的な刀断。

サキは、もう䜕も蚀えなかった。
涙が、ぜろぜろず溢れおきた。止めようずしおも、止たらなかった。

「  ごめん」
ナりが、小さく謝った。

「泣かせたくなかったのに」

サキは銖を暪に振った。

「違う  違うの。ナりが悪いんじゃない」

でも、䜕が悪いのか、わからなかった。
誰も悪くないのに、こんなに苊しい。

サキは、震える声で蚀った。

「  空枯たで、来おほしい」

ナりは、少し驚いたように顔を䞊げた。

「空枯」

「うん。最埌に  芋送っおほしい」

サキの声は、必死だった。

ナりは、少し考えるように芖線を萜ずした。

「  ちょうど実隓の山堎で。その日は、たぶん難しいず思う」

別れを決めた以䞊、芋送りに行く必芁があるのか。
ナりは、そう思っおいた。それに、研究は本圓に倧事な時期だった。

「そっか  」
サキの声が、小さくなった。

「倧䞈倫。䞀人で行けるから」

──倧䞈倫。

それは、い぀もナりがサキに蚀っおいた蚀葉だった。

サキが䞍安そうにしおいるずき、ナりは「倧䞈倫」ず蚀っお、安心させた。

その蚀葉を、今、サキが自分に返しおいる。

ナりの胞が、ざわ぀いた。

「  うん」
それだけ答えるこずしかできなかった。

────────────────

数日埌。研究宀。

ナりは、研究宀で実隓デヌタず向き合っおいた。でも、頭の䞭は、別のこずでいっぱいだった。
サキは、明日出発する
わかっおいた。別れは、もう決たったこずだ。

それなのに、胞の奥に、䜕かが匕っかかっおいた。

ふず、ある蚘憶が蘇った。

倧孊3幎の秋。
ナりは、マラ゜ン倧䌚に向けお緎習しおいた。

䞀人で黙々ず走るこずが、奜きだった。
誰ずも話さず、ただ自分のペヌスで走る時間。

でも、その幎は少し無理をしすぎた。
緎習を詰め蟌みすぎお、䜓調を厩しおしたった。

熱が出お、䞀人暮らしのアパヌトで寝蟌んでいたずき。
サキが、来おくれた。

「ナり、倧䞈倫」

サキは、買っおきたおかゆずスポヌツドリンクを眮いお、額に手を圓おた。

「熱、すごいね。病院行った」

「  ただ」

「ちゃんず行かないずダメだよ」

サキは、少し怒ったように蚀った。
でも、その目は心配そうだった。

「䞀緒に行こう。今から」

サキは、ナりの手を匕いお、無理やり病院に連れお行っおくれた。

その埌も、数日間、サキは毎日のように様子を芋に来おくれた。

「ナりっお、自分のこず埌回しにしすぎだよ」
サキは、困ったように笑った。

「もっず、ちゃんず自分を倧事にしおね」

ナりは、その蚘憶を思い出しおいた。

サキは、い぀も僕のこずを気にかけおくれた

実隓が忙しくお連絡を忘れたずき。
研究に没頭しすぎお食事を抜いたずき。
サキは、い぀も心配しおくれた。

  やっぱり、行くべきだ

別れを決めた以䞊、芋送りに行く必芁はないかもしれない。
でも、サキがしおくれたこずを思うず、最埌くらい、ちゃんず芋送るべきだず思った。

ナりは、スケゞュヌルを確認した。
実隓の合間を瞫えば、䜕ずか間に合うかもしれない。ギリギリだけど。

「  行こう」
ナりは、そう決めた。

────────────────

出発の日。

空枯に着いたサキは、チェックむンを枈たせ、出発ロビヌぞ向かった。
時蚈を芋る。あず1時間。

  来ないよね
わかっおいた。「難しい」ず蚀われおいた。

それでも、心のどこかで、期埅しおいる自分がいた。

搭乗アナりンスが流れた。

「本日の○○䟿は、機材敎備のため、玄30分の出発遅延ずなりたす」

サキは、小さくため息を぀いた。

もう少しだけ、ここにいられる

その時。

「  サキ」

聞き芚えのある声が、背埌から聞こえた。
サキは、振り返った。

ナりが、立っおいた。息を切らしお、汗をかいお、走っおきたのがわかる姿で。

「  来たんだ」

サキの声が、震えた。

「うん。実隓の合間に抜けおきた。ギリギリだったけど。飛行機が遅れおくれお、間に合った」

サキは、涙が溢れそうになるのを必死でこらえた。

来おくれた
本圓に、来おくれた

二人は、しばらく黙っお立っおいた。
やがお、最終搭乗のアナりンスが流れる。

「  行かなきゃ」
サキが蚀った。

「うん」
ナりは、うなずいた。

サキは、最埌に䌝えたいこずを、必死に蚀葉にした。

「ナり  」

「うん」

「マラ゜ン、続けおいおほしい」

ナりは、少し驚いたように目を芋開いた。

「ナりが䞀人で、黙々ず走っおる姿、私、奜きだったから。
だから  もしもい぀か、たた䌚うこずがあったら、走るこずを蟞めおない人でいおほしい」

それが、サキにできる、粟䞀杯の願いだった。

ナりは、しばらく黙っおいた。
それから、小さくうなずいた。

「  わかった」

その声は、い぀もより少し䜎く、䜕かを飲み蟌むようだった。

「玄束する」

サキは、もう䜕も蚀えなかった。
涙が、ぜろぜろず溢れおきた。

「  ありがずう」

それだけ蚀っお、サキは、ゲヌトぞ向かった。
振り返らなかった。振り返ったら、行けなくなるず思ったから。

ナりの姿が、芖界の端からゆっくりず消えおいく。
サキは、ただ前だけを芋お、歩き続けた。


気づけば、スピヌチが終わっおいた。拍手が起こる。
サキは、慌おお手を叩いた。

ナりは、今も走っおるのかな
  あの日の玄束、芚えおるのかな

それを確かめたいような、確かめたくないような、耇雑な感情が、胞の䞭で枊巻いおいた。

披露宎が進むに぀れ、サキの心は、過去ず珟圚の間を圷埚い続けた。

空枯での別れ。ナりの静かな声。
「玄束する」ず蚀っおくれた、あの蚀葉。

それでも。
今、この堎所で、再びナりず同じ空間にいる。
それは偶然ではなく、䜕か意味があるような気がした。

もう䞀床、話せるだろうか
今床こそ、本圓のこずを蚀えるだろうか

サキは、グラスを握りしめた。
その手が、小さく震えおいるこずに、自分でも気づいおいた。


次回、第3話ぞ続く

第1章・第1話が気になる方はこちらからどうぞ👇

第2章・第1話が気になる方はこちらからどうぞ👇

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あいさん💗Iカりンセリングルヌム セラピスト 臚床心理士×公認心理垫支揎歎16幎・2,000名超 もし、応揎したいず感じおいただけたら。 その気持ちを、そっず眮いおいただけたら嬉しいです🕊 あたたかな応揎を、ありがずうございたす。