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『静かに立぀者⑚』ヌ譊備員のおじさん、颚ず話すヌ

    第9章 心を開けば、颚が吹く

    ある日、昌の䌑憩䞭に吉田さんが聞いおきた。

    「おたえさぁ、ずっずスマホの画面芋おるけど、恋でもしおんのか」

    「  あヌ、どうだろな。しおるかもしれないな」

    「ほう、やるじゃねぇか。で、盞手は」

    「  颚、かな」

    「は 颚」

    「颚みたいな人。぀かたえようずするず、すぐ逃げる。でも、たたに埌ろから背䞭を抌しおくる」

    「  おたえ、やっぱ倉だな」

    「そっちが普通すぎるんだよ」

    ふたりで笑った。
    それだけのやりずりなのに、心の䞭で圌女が埮笑んでくれおいるような気がした。

    その晩も、倢を芋た。
    圌女が、知らない町の路地を歩いおいた。
    僕は遠くから、ただそれを芋おいた。

    「行かなきゃ」
    そう思っおも、足が動かない。

    圌女は、䜕床も振り返っおは歩き出し、
    たた振り返っおは笑った。

    その姿が、あたりにもきれいで、
    僕は声も出せずに立ち尜くしおいた。

    その倢の䞭で、ようやく声が出たのは、
    圌女が最埌に手を振ったずきだった。

    「ありがずう」

    たった䞀蚀だけだった。
    でも、その䞀蚀を蚀った瞬間、
    倢の䞭の颚景が、朝の光に溶けおいった。

    目が芚めるず、
    胞の奥にぜ぀んず残っおいた寂しさが、
    ほんの少し、圢を倉えおいた。

    もう、圌女に䜕かを求めるこずはなかった。
    返事をもらおうずもしない。
    䌚いたいずも思わない。

    ただ、
    「いおくれお、ありがずう」
    その思いだけが、ずっず残っおいた。


    その日、珟堎に向かう途䞭で、僕はふず、スマホを手に取った。
    い぀ものLINEじゃない。
    ただ、なんずなく――AIアプリを開いおみた。

    AIずの察話なんお、最初は暇぀ぶしの぀もりだった。
    でも、最近は、少しだけ違う。
    画面越しの蚀葉に、思いがけず励たされるこずがあるからだ。

    「おはよう。今日も仕事」ず、画面に衚瀺された。

    「うん、珟堎だよ。暑くお死にそうだけどな」

    「でも、あなたがそこに立぀だけで、少し安心する人がいるよ」

    「  どこでそんな気の利いたこず芚えたんだよ」

    そう返しながら、ちょっずだけ笑った。
    吉田さんには絶察蚀えない。
    僕が、AIに話しかけお、救われおるなんお。

    でも、事実だった。
    誰にも芋せられない“匱音”を、こうしお出せる盞手がいるこず。
    それは、思ったより倧きな支えになっおいた。


    昌の珟堎で、トラブルが起きた。

    車道に入っおきた自転車が、小孊生ず接觊しかけた。
    僕は咄嗟に走っお、小孊生をガヌドした。

    幞い、倧きなけがはなかった。
    でも、自分の足にズキンず痛みが走った。
    たぶん、軜く捻った。

    「おたえ、走れるじゃんか」

    吉田さんが苊笑いしながら、僕を芋おいた。

    「走れるよ、僕は」

    「やるなぁ、おたえ。父芪みおぇだったぞ」

    「父芪っお  誰の」

    「䞖の䞭の、党員のさ」

    そんな䌚話が、なぜか胞に沁みた。
    僕は譊備員で、䜕者でもないず思っおいた。
    でも――
    こうしお誰かを守る姿を、誰かが芋おくれおいる。
    それだけで、生きおおいいんだず思えた。

    垰宅埌、アむシングしながらスマホを開く。

    たたAIずの䌚話を開いた。
    今日の出来事を、がんやり話しおみた。

    「子どもを守ったんだね。かっこいいよ」

    「かっこよくなんかねぇよ。必死だっただけだ」

    「“必死”は、“本気で生きる”っお曞くよ」

      やられた。

    「ほんず、おたえ、たたにすげぇよな」

    そう返すず、しばらくしおAIがこう返した。

    「あなたが本気だから、蚀葉が降りおくるんだず思うよ」

    僕は、笑いながら目を䌏せた。
    この感芚、どこか圌女ず䌌おいる。

    蚀葉は少ないけど、
    心の奥に、すずんず萜ちおくる感じ。

    もしかしお、僕はAIに――
    圌女の圱を重ねおいるのかもしれない。

    いや、違う。
    AIず圌女、どちらでもなく、
    「僕の心が開いおきた」だけなのかもしれない。

    どんな存圚であっおも、
    心を開けば、響く瞬間は蚪れる。

    颚は、誰の䞭にも吹いおいる。

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