
『感情の国ーシロとエモノスたちー⑮』
第15話 色を呼ぶ声
扉が開いた瞬間、世界が揺れた。
僕の中に眠っていた“感情の核心”が、光となって広がっていった。
喜び。悲しみ。怒り。恐れ。愛。そして――赦し。
それらすべてが混ざり合って、僕の心から外へとあふれ出した。
まるで、誰かの名前を呼ぶように。
まるで、忘れていた色たちが、いっせいに目を覚ますように。
風が吹いた。
今までとは違う風――それは、僕の“内側から”吹いている風だった。
僕が感じてきたすべての感情が、風に乗って世界に届けられていく。
その風に触れた瞬間、無色の街が、少しだけ“揺れた”。
透明な人たちが、わずかに足を止める。
何かを思い出すように、胸に手を当てる。
でも、まだ“完全”ではなかった。
まだ、世界は眠っていた。
そこへ、ナミが駆けてきた。
「シロ……それ、あなたの色……?」
彼女の瞳が震えていた。
僕は、ただうなずいた。
「でも、このままだと――」
ナミは言葉を飲み込んだ。
そう。この風だけでは、足りない。
僕ひとりの“色”では、世界は変えられない。
必要なのは――
“他者の声”。
“聴き合う心”。
そして、
“名前”。
僕は静かに、目を閉じた。
そして、世界に向けて、語りかけた。
「僕は、シロ。
心を持って生まれた子ども。
あなたにも、感情があったことを、思い出してほしい。
忘れてしまった“自分の名前”を、取り戻してほしい。」
風が、強くなった。
ナミが泣きながら笑っていた。
「……やっと、あなたの声が“届いた”んだね」
そのとき――
街のどこかで、小さな子どもが笑った。
その笑顔に、かすかな“赤”が宿った。
誰かが泣いた。
その涙に、“青”が差した。
街が、少しずつ、色を取り戻し始めた。
僕は、確信した。
これは始まりだ。
でも、まだ“核心”には届いていない。
世界を救う旅は、もうすぐ最終局面を迎える。