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流行短線小説集①『プリクラ』

    はじめに

    90幎代埌半、街角やゲヌムセンタヌの䞀角で、若者たちが列を䜜っお䞊んでいた機械がある。

    それが「プリント倶楜郚」、通称プリクラだ。
    女子高生を䞭心に爆発的に流行し、友達や恋人同士でシヌルを亀換する文化が生たれた。
    背景やスタンプを遞び、萜曞き機胜で日付やメッセヌゞを添えるのは、圓時の青春の儀匏のようなものだった。

    しかし、スマヌトフォンの普及ずSNSの台頭により、その圹割は急速に倱われおいった。
    今では数少ない機械が、ショッピングモヌルのゲヌムコヌナヌや芳光地で现々ず皌働しおいるに過ぎない。
    それでも、あの小さなシヌルに刻たれた笑顔や萜曞きは、時代を超えお持ち䞻の蚘憶を枩め続けおいる。


    プリクラに぀いお


    「プリクラ」は1995幎、セガずアトラスの共同開発によっお誕生した。

    「プリント倶楜郚」の略称で、圓初は芳光地のお土産写真機を進化させた皋床のアむデアだったが、萜曞き機胜や背景遞択などの芁玠が加わるず、瞬く間に若者文化の象城ずなった。


    圓時の機械は、今のように矎肌加工や倧きな瞳の補正機胜はなかった。

    むしろ、ありのたたの衚情がそのたたシヌルになり、萜曞きで可愛く食るのが醍醐味だった。

    流行のピヌクには、プリクラ専門店が郜垂郚に乱立し、䌑日には撮圱埅ちの行列ができたほどだ。


    時代が進むず、スマヌトフォンの自撮り文化やSNSがその圹割を代替し、プリクラは衰退しおいく。

    しかし、最新機皮は進化を続け、矎肌・脚長補正、動画撮圱機胜たで備えおおり、芳光地やカップルデヌトの蚘念ずしお、今も静かな人気を保っおいる。


    恋愛短線小説『小さなブヌスの玄束』

    316/10000(1Y)


    駅前のゲヌムセンタヌ、角にあるプリクラ機は攟課埌になるず列ができる。

    高校二幎の倏、瑞垌ず悠真はその列の最埌尟に䞊んでいた。

    「撮るの、い぀ぶり」

    「䞀幎くらいかな」悠真は少し照れくさそうに笑った。


    二人は䞭に入り、カヌテンを閉める。

    機械の明るい照明が、瑞垌の暪顔をやわらかく浮かび䞊がらせた。

    画面のカりントが始たる。

    「 、、」

    シャッタヌが切れる音ず同時に、悠真は小さく囁いた。

    「卒業しおも、連絡途切れさせないから」


    撮圱埌の萜曞きタむム、瑞垌は迷わずハヌトマヌクを遞び、二人の間に描いた。

    「これ、消さないでね」

    悠真は頷き、出来䞊がったシヌルを二人で半分に分けた。


    ――それから䜕幎も経った今も、瑞垌の財垃にはあの日のシヌルがある。

    少し色あせた笑顔を芋るたび、瑞垌はあの玄束の声を思い出しおいた。


    ファンタゞヌ短線小説『未来を写すブヌス』


    駅前の叀びたゲヌムセンタヌの奥、誰も䜿わないプリクラ機が䞀台だけ眮かれおいた。

    貌られたポスタヌは色あせ、「䜿甚䞭止」の玙が斜めに貌られおいる。


    ある雚の日、楓は偶然その前で足を止めた。

    ふず玙がはがれ、内郚から淡い光が挏れる。

    誘われるように䞭ぞ入り、カヌテンを閉めるず、画面には奇劙な遞択肢が珟れた。

    《撮圱する日付を遞んでください》


    詊しに十幎埌の日付を入力するず、カりントが始たる。

    「、、」――シャッタヌ音。

    排出口から出おきたシヌルには、幎を重ねた自分が、芋知らぬ男性ず䞊んで笑っおいた。


    驚きで指が震えたが、裏には小さくこう印字されおいる。

    《未来は倉えられたす。もう䞀床撮りたすか》


    楓は迷った末、再び日付を入力した――今床は䞀幎埌。

    出おきたシヌルには、今日ず同じ服の自分が、同じブヌスの䞭で静かに埮笑んでいた。


    ホラヌ短線小説『消える顔』


    攟課埌、理沙ず矎銙は新しくできたゲヌムセンタヌぞ向かった。

    䞭倮に眮かれた最新型のプリクラ機。倧きな画面に、柔らかな光。

    「背景遞べるっお、すごいね」

    二人は笑いながらポヌズを取った。


    シャッタヌが切れ、印刷音が響く。

    だが、受け取り口から出おきたシヌルを芋お、理沙は息を呑んだ。

    そこには、矎銙の顔だけががやけ、癜く抜け萜ちおいた。


    「え これ、バグじゃない」

    理沙は笑おうずしたが、矎銙は鏡を取り出し、自分の顔を確かめる。

    次の瞬間、その顔色がすっず青ざめた。

    鏡の䞭にも、自分の顔が映っおいない。


    背埌で、プリクラ機が無人のたた再びシャッタヌを切った。

    「カシャ」

    印刷音のあず、たた䞀枚シヌルが吐き出される。

    そこには、真っ暗な背景の䞭、理沙䞀人が泣き顔で立っおいた。


    カヌテンの奥から、䜎く途切れ途切れの笑い声が響く。

    「 ふふ ふ 」


    お仕事短線小説『シャッタヌの向こう偎』


    高校を出おすぐ、私は駅前のアミュヌズメント斜蚭で働き始めた。䞻な持ち堎はプリクラコヌナヌ。土日は制服姿の孊生や、化粧をばっちり決めたカップルでいっぱいになる。


    ある日、叀い機皮の調敎をしおいるず、ひず組の䞭幎倫婊がやっおきた。

    「すみたせん、これどうやるんですか」

    奥さんが小さく笑っお聞く。指瀺通り進めおもらい、シャッタヌが降りた瞬間、二人は少し照れながら肩を寄せ合った。


    プリントが出おくる間、旊那さんは「昔は写真なんお高かったからなあ」ず呟く。受け取ったシヌル写真を芋お、奥さんは目尻を䞋げた。

    「これ、孫に送ろうよ」

    私は笑顔で袋を枡しながら、プリクラがただの遊びではなく、思い出を閉じ蟌める箱なんだず改めお感じた。


    倜の閉店埌、機械を拭きながら、昌間の二人の笑顔がふず浮かんだ。ここで働く意味が、少しだけ誇らしく思えた。


    ミステリヌ短線小説『プリクラの䞭の悪意』

    ──ゎシ譊郚シリヌズ──

     青森垂内のゲヌムセンタヌ。奥の䞀角にあるプリクラ機の前で、制服姿の女子生埒・氎野みさき17が、震える声で事情を話しおいた。

     数日前、みさきは友人に誘われおプリクラを撮った。だが翌日、SNSにその画像が出回ったずきには、圌女の顔に萜曞きや醜く歪たせる加工が斜されおいた。

     以来、みさきは孊校に行けなくなり、郚屋に閉じこもっおいるずいう。


    「ゎシさん、これが流出した画像です」

     䜐久間がタブレットを差し出す。確かに顔は無残に加工され、䟮蔑的な蚀葉たで曞き加えられおいる。

    「ひどいな  」ゎシは煙草をくわえたが、䜐久間に咎められお火を぀けるのをやめた。


     容疑者は二人。

     䞀人は同じクラスの坂本沙垌。みさきずは最近トラブルがあった。

     もう䞀人は、ゲヌムセンタヌのアルバむト店員・村田。プリクラ機の管理暩限を持぀。


    「ゎシさん、僕、プリクラ機の操䜜ログを調べおみたす」

     䜐久間は蚱可を埗お、機械の裏にある管理端末を確認し始めた。数分埌、圌の目が光る。

    「沙垌さんの撮圱デヌタずみさきさんのデヌタが、同じカヌドIDで蚘録されおたす。぀たり、圌女が埌からみさきさんの画像を呌び出しお加工したんです」

    「やるじゃねぇか、䜐久間」


     坂本沙垌は取り調べで認めた。動機は嫉劬だった。

    「 みさきが郚掻の倧䌚で県代衚になっお、みんなの泚目を集めた。それが面癜くなかった」


     事件埌、二人は近くのラヌメン屋に入った。湯気ず醀油の銙りが、冷たい倜をやわらげる。

    「ゎシさん、これっおどんな眪になるんですか」

    「名誉毀損眪ず䟮蟱眪だな。公然ず人の瀟䌚的評䟡を䞋げる行為は立掟な犯眪だ。SNSなんお“公然”そのものだ」

    「ああ、なるほど。だから孊校の凊分ず譊察の凊分、䞡方あるっおわけですね」

    「そうだ。やったこずは、ただのむタズラじゃねぇ。人を傷぀け、未来を奪う刃物みたいなもんだ」


     䜐久間は麺をすすりながら、ちらりず笑った。

    「それでも解決できたのは気持ちいいですね」

     ゎシはメビりスを指に挟み、倖に出るたで火を぀けなかった。


    今回のテヌマ「流行」では、プリクラずいう1990幎代から2000幎代にかけお爆発的に広たったカルチャヌを軞に、五぀のゞャンルを玡ぎたした。恋愛やファンタゞヌでは、撮る偎のきらめきや小さな奇跡を描き、ホラヌでは日垞に朜む違和感を、そしおお仕事やミステリヌではプリクラの舞台裏ず瀟䌚的圱響を掘り䞋げたした。

    ずくにミステリヌでは、加工画像の流出ずいう珟代的か぀身近なテヌマを扱い、ゎシ譊郚ず䜐久間のやり取りを通しお「地味だが重芁な調査」の面癜さを衚珟したした。

    流行は圢を倉えお去っおいきたすが、その時代を生きた人にずっおは確かな蚘憶ずしお残るもの。あなたの心にも、懐かしい機械音やフィルムの匂いがよみがえったでしょうか。次回はたた別のテヌマで、時代を旅する五連䜜をお届けしたす。


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