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『感情の国ーシロとエモノスたちー③』

    第3話 風の記憶

    風は、僕の中を通り抜けていった。
    胸の奥にずっと閉じ込めていた“何か”を、優しく揺らしながら。

    「どこへ行くの?」

    僕が問いかけると、風は音もなく囁いた。
    “記憶の方へ。色が生まれた、最初の場所へ。”

    学校では教えてくれなかった。
    色のある時代が、本当に存在したことなんて。
    でも、僕は知っていた。
    ずっと前に、誰かが歌っていた。
    “赤い夕焼け、青い空、黄色い傘”――
    それは、遠い誰かの記憶。僕のじゃない、誰かの想い。

    風は、透明な街の外へと僕を連れ出した。
    見たことのない景色。聞いたことのない音。
    そして――

    「君、泣いてるの?」

    そこにいたのは、一人の少女だった。
    髪は淡い金色、瞳はかすかに緑色。
    でも、何より印象的だったのは、
    その頬を伝う涙の色だった。

    “色”が、あった。
    世界に消えたはずの、感情の証。

    僕は思わず言った。
    「……君、感情を持ってるの?」

    少女は、少し照れたように、こう言った。

    「うん。だって私、“ナミ”だから。」

    そう名乗った彼女は、世界で僕が初めて出会った、“感情のある人間”だった。


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