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『終わりの音を聴いた少年⑨』

    第9章 呪いと光

    「……ルイ、君に、“呪い”が映った」

    ミユの声が、かすかに震えていた。

    背中が冷たい。
    痛みはない。でも、何かが僕の内側に棲みはじめた感覚があった。

    「呪いって……なに? どうなるの?」

    アキラが不安そうに聞いた。

    ミユは、一瞬だけ黙ったあと、ゆっくり言った。

    「“影”はね、単に世界を終わらせる存在じゃない。
    “忘れられた感情”が積もって、形になったもの。
    だから、“呪い”っていうのは、**心に残っていた“未解決の痛み”**なんだよ」

    僕は自分の胸に手を当てた。

    たしかに、“あの子”――ユイに、ずっと言えなかった言葉があった。
    怖くて閉じたままにしていた“後悔”があった。

    その痛みが、今、形になって僕の背中に残ったんだ。


    「じゃあ……これって、“消せない”ってこと?」

    「……ううん、逆。**“向き合えば、消える”**んだよ」

    ミユは静かに言った。

    「本当の呪いは、“向き合わずに放置すること”だから。
    それがどんどん影を育てて、世界を壊していく」

    アキラがそっと僕の背中に手を当てた。

    「ルイは、ちゃんと“名前”を呼んだよ。
    ユイの存在を、忘れなかった。
    それだけで、たぶん、もう半分は救ってる」

    僕はうなずいた。

    「じゃあ……この呪い、背負ったまま進むよ。
    次の扉が開くまで、僕がこの痛みを見張る」


    そのとき、スマホが鳴った。

    通知ではない。画面に表示されたのは、ひとつの言葉だけ。

    「4日目 沈黙まで、あと3日」

    世界が、また“静かになろう”としている。

    でも僕たちは――
    “音を響かせて、世界をつなぐ”と決めた。

    譜面は、三枚目までそろった。

    次は――“感情そのもの”を開く扉。

    ミユが呟いた。

    「次の場所……“音のない部屋”だと思う。
    そこに、“閉じ込められた感情”がある」

    「どこ?」

    「たぶん……保健室」

    アキラが目を見開いた。

    「……あそこ、昔“事故”があったって噂がある」

    ミユは静かに頷いた。

    「じゃあ、次の扉は――心の傷跡」

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