
『マシュー、空気を読む。』⑥
第6章 「もったいない」に出会った朝
朝のオフィス。
給湯室で、同僚がコーヒーを紙コップに注いでいた。
最後にほんの少しだけ残ったコーヒーを見て、彼は言った。
「もったいないな」
そして、残りを自分のカップに注ぎ入れた。
マシューは首をかしげた。
“Wait… why waste? It’s just a tiny bit of coffee.”
(待って……捨ててもいいんじゃない?ほんのちょっとのコーヒーだろ?)
「無駄」と「宝物」のあいだ
アキラに聞いてみた。
「ねえ、“Mottainai”って……wasteと同じ意味?」
アキラは笑って首を振る。
「うーん、近いけど違う。wasteは“役に立たない”って感じでしょ?
でも“もったいない”は、“そこに価値があるのに活かさないのが惜しい”ってニュアンスなんだ」
マシューはメモを取りながらつぶやいた。
“So it’s not about money. It’s about respect for things?”
(つまり、お金とか効率の問題じゃなくて……物へのリスペクト?)
「Exactly.(その通り)」
スーパーで
数日後、スーパーで買い物をしていたとき。
年配の女性が、落ちてしまったリンゴを拾いながら言った。
「もったいないから、まだ食べられるわ」
マシューは心の中で驚いた。
“Wait, in my country, they’d throw it away immediately.”
(え、僕の国だったら、すぐ捨てちゃうよ。)
その言葉には、ただの節約以上の、食べ物への敬意が込められているように思えた。
マシューの失敗
ある日の昼休み。
マシューはお弁当を半分残してゴミ箱に捨てようとした。
その瞬間、後ろから声が飛んだ。
「マシュー、それ“もったいない”よ!」
みんなの視線が集まって、顔が真っ赤になった。
“Oh no… did I just disrespect the rice?!”
(やばい……僕、お米に失礼なことした!?)
その夜、彼は一粒残らずご飯を食べきる練習をした。
「もったいない」を背中に感じながら。
小さな発見
翌朝、窓際の観葉植物に水をやっていたとき。
ふと、枯れかけた葉を見つけた。
マシューはそっと指でなでながらつぶやいた。
「……モッタイナイ」
不思議なことに、その声は自分に向けているようでもあった。
“Maybe Mottainai is not only about things.
It’s about time, feelings… even life itself.”
(もったいないって、物だけじゃないのかもしれない。
時間とか、気持ちとか……人生そのものにも言えるんだ。)
【第6章 完】