
休憩所|登場人物たちが勝手に動き始めた話
『泳げば尊し』ができるまで
『泳げば尊し』を最後まで読んでくださった皆さま、ありがとうございました。
今回は少しだけ、物語の裏側を書いてみようと思います。
この物語は、最初からすべての展開が決まっていたわけではありません。
もちろん、大まかなテーマはありました。
舞台はスイミングクラブ。
そこで成長する人たち。
そこを守ろうとする人たち。
水泳を通して、誰かの人生が少しずつ前に進んでいく話。
ただ、細かい展開やセリフは、最初からきっちり決めていたわけではありませんでした。
最初にやったのは、登場人物の設定を作ることでした。
それぞれのキャラクターの名前や性格、果たす役割を考えました。
そして、自分の中で「この人を演じるなら、こんな役者さんかな」とイメージするモデルも置いてみました。
すると、不思議なことが起きました。
登場人物たちが、勝手に動き始めたんです。
福島先生なら、ここで多くを語らない。
白河なら、たぶん現実的なことを言う。
葵なら、怖くても前に出る。
山形なら、空気を軽くしながら本質を突く。
湊なら、言葉よりも泳ぎで示す。
そんなふうに、キャラクターが自分の中で話し始めました。
私はそれを追いかけながら、文章にしていったような感覚でした。
書いているというより、
みんなが勝手に進んでいくのを、後ろから必死に記録している。
そんな感じです。
特に福島先生は、最初に考えていた以上に大きな存在になりました。
ただのベテランコーチではなく、
過去に後悔を抱えた人であり、
それでも子どもたちの前では変わらずプールサイドに立ち続ける人。
書けば書くほど、福島先生の沈黙や一言に重みが出てきました。
それ故、もともと倒れる予定はなかったのですが、麟太郎登場の為に、一旦退場頂いたほどでした。
葵も同じです。
最初はただの元教え子で福島から学ぶ人でした。しかし、クラブを守るために前に出る人物として葵を当てはめた時、気持ちよくパズルがはまっていきました。
「新社長は葵だ!」という気付きは我ながら驚きました。
山形海斗は、かなり助けてくれたキャラクターです。
重くなりすぎる場面でも、山形がいることで少し空気が変わる。
でも、ただ明るいだけではなく、ちゃんと物語を前に進めてくれる。
マンガに出てくる『リアクションで技や状況を解説してくれる係』という役割を担ってくれました。
書いていて、とてもありがたい存在でした。
そして麟太郎と湊。
主人公風の彼らは、過去の福島と麟太郎に重ねる存在として描きました。
湊は、あまり多くを語るタイプではありません。
でもそれは性格ではなく、思春期の男子特有の『大人には語らない』であり、本来はしっかり物事を言えるのです。
だからこそ彼に語らせる場面を作りたいと思い、最終的にそれが卒業式の答辞になりました。
麟太郎は当初、普通に福島のサポートとして登場させようとしましたが、あえて一緒に出さず、結局、最終話まで福島と麟太郎を会わせませんでした。
少し無理があるかなと思いつつ、【気まずいから会おうとしない】もまた、あるあるかなと思い、こうなりました。
その中で、麟太郎や湊が、何を受け取り、何を次へつないでいくのか。
そこを最後まで書きたかったからです。
『泳げば尊し』は、水泳の物語です。
でも、書きながら思っていたのは、
これは「場所を守る話」であり、
「誰かの言葉が、人生に残る話」であり、
「受け取ったものを、次へ渡していく話」であるということでした。
正直に言うと、スイミングクラブである必要はありません。
ただ、私のルーツであり、自分自身の経験や見てきたものが活かせるからという理由でこのような設定にしました。
創作ではありますが、完全な作り話ではありません。
自分の中にあったものが、形を変えて物語になった。
そんな作品だったように思います。
物語を作ったというより、
役者さんたちが動き出したドラマを見ていた。
そんな感覚でした。
それが『泳げば尊し』でした。
ここから先は、おまけの設定資料です。
興味のある方だけ、休憩がてら眺めてください。
最後に自分がどのような役者さんを配役したのか。
そっと置いておきます。
みなさんの予想は当たっているでしょうか?
もちろん完全に私の脳内キャスティングです。
ご本人・所属事務所とは一切関係ありません!
いったい、いくらかかるんだ?という、
そうそうたる顔ぶれで描くドラマになりました。
おまけ設定資料|人物設定
【 登場人物 】
福島 三郎 68歳
脳内キャスト:小日向文雄さん
鳳SS勤続46年。
教え子たちを笑顔で見守る名伯楽
麟太郎の全盛期に才能を見いだせなかったことに負い目
岡山 麟太郎 38歳
脳内キャスト:鈴木亮平さん
元オリンピアンで出場した当時18歳。福島の教え子
引退後はオーストラリアでコーチをやっていた
福島の体調不良を聞いて帰国。コーチ代行となる
性格はお気楽だが、コーチとしては細かいデータ分析で結果を求める理論派
福島と種目のことで意見が食い違う。福島を信じ切れなかったことを後悔
長崎 葵 24歳
脳内キャスト:松岡茉優さん
鳳SSのスタッフ4年目。専門学校卒
福島の教え子。福島に憧れインストラクターとなる
仕事はこなせてきたが、自分の指導力に不安を抱いている
鳳SSへの強い思いから社長に立候補する
山形 海人 23歳
脳内キャスト:佐野勇斗さん
大卒新入社員として春から鳳SSに入社
小学生の時、JOに出場しA決勝へ進出した経験有
泳げるが教え方はイマイチ。研修の日々。真面目で几帳面
指導を受ける中、ひそかに葵に思いを寄せていく
白河 竜二 38歳
脳内キャスト:安田顕さん
鳳SSの副支配人。福島の元教え子。麟太郎の同期
麟太郎をライバル視していた。福島のようになりたいと憧れている
平田 アキ 10歳
脳内キャスト:子役
現:鳳SSの選手コース在籍。父は福島の元教え子
父の転勤で茨城に転居。クラブも移籍
上手いが器用貧乏。抜きに出た種目が無かった
福島からのアドバイスでバタフライの才能開花
平田 陽介 36歳
脳内キャスト:佐藤隆太さん
平田アキの父。16年ぶりに帰郷。鳳SSに娘を移籍
娘のさらなる成長を想い、娘を福島に託す。
相馬 さくら 10歳
脳内キャスト:子役
現:鳳SSの選手コース在籍。気が強いタイプ
アキとはJOに向けた大会や練習を通じて良きライバルに
200m個人メドレーと50m平泳ぎでJOを狙う
伊達 湊斗 15歳
脳内キャスト:将来性のある俳優
現:鳳SSの選手コース在籍。
元々自由形100mが専門だったが、フォームの美しさとデータから麟太郎に促され1500mの選手となる
今年最後の全中出場に燃えている。努力家
会津 哲平 37歳
脳内キャスト:及川光博さん
福島の元教え子。
医師。福島が倒れた際、担当医となる。
麟太郎に福島のことを連絡し、臨時コーチに仕向けた張本人
鳳 重蔵 70歳
脳内キャスト:松重豊さん
鳳SSのオーナー。福島とは旧知の仲
自分の会社は息子に譲り、今は隠居生活
鳳 慎太郎 35歳
脳内キャスト:玉山鉄二さん
鳳重蔵の息子。会社の社長。
若松 千晃 26歳
脳内キャスト:今田美桜さん
福島の元教え子。英会話スクールの講師
以前、クラウドファンディングに携わった経験から副業でコンサルタントをしている。
鳳SS閉鎖危機の際、クラウドファンディングの手助けをする
選手コースの名簿
伊達 湊、石川 琥太郎(湊の親友)、西郷翔、中島(弟)、国見(兄)、国見(弟)、大熊、川内、
相馬さくら、平田アキ、中島望愛(中島姉)、小野、富岡、伊達 雫(湊の妹)
合計14名