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「臆病さを、武器に変える。」倒産・無職を経験した社長が「正しいネガティブ」を信じる理由③

    ③臆病さは、武器になる!
    防衛的ネガティブ思考のメンタルの着地点

    第1回では盲目的なポジティブが組織を壊すリスクを、第2回では自分の企画をあえてチクついて無敵にする「一人ツッコミ」の技術をお話ししてきました。

    最終回となる今回は、この「正しいネガティブ思考」が、私たちのメンタルをいかに救い、持続可能なキャリアを支えてくれるかという、本当の着地点についてお話しします。

    「常に最悪の事態を想定して動くなんて、心が休まらないのではないか?」

    そう思う方もいるかもしれません。しかし、現実は真逆です。無理やり前を向こうとする「偽りのポジティブ」こそが最も心を削り、あえて最悪を直視する「正しいネガティブ」こそが、私たちの心を最も穏やかにしてくれます。

    1. ポジティブ疲れの正体は「リスクから目を背けるプレッシャー」

    現代の社会人を苦しめている「ポジティブ疲れ」の正体。それは、「悪いことを考えてはいけない」「不安を感じるのは自分が未熟だからだ」という、感情への自己検閲です。

    トラブルが起きたとき、売上が落ち込んだとき、心の奥底では「マズい」「怖い」と感じているのに、「いや、ピンチはチャンスだ!」「成長の機会だ!」と脳内で無理やり翻訳しようとする。この、自分の本音と建前の「ズレ」こそが、脳と心を最も疲弊させるストレスの原因になります。

    言葉が持つエネルギーを信じているからこそ、無理に作った「前向きな言葉」がどれほど人の心をすり減らすかも分かります。

    ネガティブ思考を封印することは、車のブレーキを外して高速道路を走るようなものです。「事故るかもしれない」という恐怖を無視してアクセルを踏み続けるから、常に予期せぬ恐怖に怯え、ハンドルを握る手が震えてしまうのです。

    一方で、「最悪、車が全損するかもしれない」とあえて最初に恐怖を直視し、ブレーキの点検をし、シートベルトを締め、保険を確認しておく(=防衛的ネガティブ)。

    どちらが安心して運転できるかは、言うまでもありません。正しく怯え、正しく最悪を想定しているからこそ、私たちはリラックスして、本来持っているワクワクの原動力をフルに発揮して前を進むことができるのです。

    2. 最悪をノートに書くと、不安は「ただのタスク」に変わる

    私が会社倒産や無職の地獄、そしてスポーツクラブの再生現場で、狂いそうなプレッシャーの中でも打席に立ち続けられたのは、毎日ノートに「最悪のシナリオ」を書き殴っていたからです。

    不安の正体は、いつも「目に見えないこと」です。頭の中だけでモヤモヤと考えていると、不安は無限に膨れ上がっていきます。

    だからこそ、私はあえてノートを開き、ネガティブな感情をすべて言語化しました。

    • 「今月の支払いがショートしたらどうなる?」

    • 「会員数がこれ以上減ったら、どのタイミングでスタッフに頭を下げなければいけないか?」

    そうして、自分が恐れている「最悪の結末」を具体的に紙の上に引っ張り出してみるのです。すると、不思議なことが起こります。

    文字になった最悪のシナリオを眺めていると、脳が冷徹なビジネスモードに切り替わり、「じゃあ、そうならないために今日できることは何か?」という具体的なアクションプラン(タスク)に分解できるようになるのです。

    ネガティブ思考とは、どん底に沈むためのものではありません。どん底の地面がどこにあるかを正確に確認し、そこを踏み台にして確実に這い上がるための技術なのです。

    おわりに:無理に笑わず、臆病な自分のままで進もう

    会社を潰した無職の時代から、縁あって閉鎖寸前のスポーツクラブの社長になり、がむしゃらに走ってきた私がたどり着いた結論です。

    ビジネスを成功させるのは、ポジティブな情熱。
    でも、継続させるのはネガティブな慎重さだ。

    世の中の「前向きに生きよう」というプレッシャーに、もう負ける必要はありません。「失敗したらどうしよう」「明日が不安だ」と感じるその臆病さは、あなたがプロフェッショナルとして、目の前の仕事や人生に誠実向き合っている何よりの証拠です。

    仕事への愛を、ワクワクする夢を、本当の現実にするために。
    あなたのその素晴らしい「ネガティブさ」を最高の武器に変えて、最悪を想定しながら、確実な一歩を一緒に踏み出していきましょう。

    (完結)

     
     
    2020年、勤務先のスポーツクラブが倒産。 10日後、無職だった私が社長に。 閉鎖寸前のクラブを仲間と守った6年間。 経営・水泳・挑戦の話を書いています。 日々のことは「休憩所」に 仕事の気づきは「休憩ではない話」においています。