
看護師さんに優しくしたい
看護師さんって、大変な仕事だなと思う。
僕には怪我で1ヶ月間ほど入院していた時期がある。その間、暇なので看護師さんの仕事ぶりを見ていたら、うわうわ…、これは自分じゃ耐えられないな…、と思う場面をいくつも目にした。
まず患者さんが、基本的に不機嫌なのだ。
人間、体が弱っているときは上機嫌でいられない。それは仕方ないとはいえ、不機嫌な人の相手をするのはつらい。
「来るのが遅い!」とおじいさんに怒鳴られている看護師さんがいた。ニコニコ接していたけれど、心は泣いているように見えた。
そのうえ夜勤で生活リズムは乱れやすいし、家に子どもがいる人もいるだろうし、なにより人の命に関わることだからプレッシャーも相当なはずだ。
だから僕は、看護師さんには最大限優しく接しようと心に決めている。
💉💉💉
入院とは別のある日、僕は健康診断で市内の病院を訪れていた。
採血があるのでお腹はペコペコ。早く終わらないかなと思いながら待っていると、僕の順番になった。
「袖をまくって腕を出してくださいね」
担当してくれたのは、女性の看護師さんだった。同い年くらいだろうか。
(お仕事お疲れさまです)
心の中で小さく感謝しながら、僕は左腕を採血台に乗せた。その時、
「あら?」
と看護師さんが口に手を当て、目を丸くした。そして、こう続けた。
「この静脈の形…。あなた、前にもウチで採血してますよね?」
驚いた。最近の看護師さんは、静脈認証まで出来るようになっているみたいだ。
…でも、ごめんなさい、僕がその病院に来たのは、初めてなんです。だから、看護師さん。あなたの静脈認証は間違っています。
けれど看護師さんに優しい僕は、こういうのをいちいち指摘したりはしない。
「はい、そうなんです。よくわかりましたね」
僕がうなずくと、看護師さんは「やっぱり」と笑って、針を刺した。