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「なぜあの人は、何もないのに自信満々なんだろう」〜自信の正体は、実力でも性格でもなく、ひとつの"ズレ"だった

何の裏づけもないのに、堂々と振る舞える人がいます。かと思えば、十分な実力があるのに、いつまでも自分に自信が持てない人もいます。容姿やスタイルに恵まれているだけで、なぜか自信ありげに見える人もいます。バラバラに見えるこの現象、実は根っこはひとつです。自信とは、脳の中にある「ものさし」のようなもの。そのものさしが、正確に調整されている人もいれば、甘めにズレている人、厳しめにズレている人もいる。ただそれだけなのです。今日は、このものさしが、いつ、どうやって狂っていくのか、そして、どうすれば正しく調律し直せるのかを、脳科学や心理学、進化の歴史、そして世界中のスピリチュアルな知恵まで交えながら、一緒にたどっていきたいと思います。

⚫︎自信とは、脳の中の"ものさし"
まず、はっきりさせておきたいことがあります。自信とは、実力そのものではありません。「自分はこれくらいできそうだ」という、脳が計算した見積もりのことです。
ロンドン大学の脳科学者スティーブン・フレミングは、この見積もりの仕組みを長年研究しています。彼の研究によれば、「実際にどれくらいうまくできるか」と「自分はどれくらいできそうだと感じるか」は、脳の中では別々に計算されているのだそうです。つまり実力が高くても、見積もりがズレていれば、自信は過大にも過小にもなります。逆に、実力がそこまで高くなくても、この見積もりの精度そのものは、鍛えることができるのです。
自信がないというのは、能力がないということではありません。多くの場合、このものさしが、まだうまく調整されていないだけなのです。

⚫︎そもそも、人間のものさしは、少し甘くできている
では、このものさしは、なぜ人によってこんなに違うのでしょうか。実は、そもそも人間のものさしは、生まれつき、やや甘めに作られています。
オックスフォード大学の研究者ドミニク・ジョンソンらは、ゲーム理論を使ったシミュレーションで、興味深いことを示しました。相手の実力がよくわからない状況では、少し自信過剰でいるほうが、生き残りやすいというのです。堂々と振る舞う個体は、相手を怯ませたり、実力以上の成果を引き寄せたりしやすい。だから進化の過程で、人間の脳には、もともと「ちょっと甘めに見積もる」クセが、標準搭載されてしまったというわけです。
このクセが特に強く出るのが、いわゆる「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる現象です。能力が低い人ほど、自分の能力を正しく判断するために必要な力そのものが不足しているため、実際以上に自分を高く評価してしまう、というものです。ただし、最近の研究では、少し違う見方も出てきています。心理学者ギラックらは、この効果の一部が、統計的なクセ(極端な自己評価が、測り直すたびに平均へ近づいていく現象)で説明できると指摘しています。「能力が低い人は必ず自信満々になる」というほど単純な話ではなく、ものさしのズレ方には、もっと個人差がある、ということです。それでも、根拠なき自信をもとから持ちやすい人が一定数いること自体は、間違いありません。

⚫︎ものさしは、家庭の中で、最初に調整される
生まれつきの傾向に加えて、ものさしは、育った環境の中でも、大きく調整されていきます。
オランダの心理学者エディ・ブルメルマンらの研究チームは、子どもを長期間にわたって追跡調査しました。すると、親が子どもに、条件なしの愛情や関心を注ぐ「温かさ」で接していた場合、子どもには、何かができてもできなくても揺らがない、健全な自尊心が育ちました。一方、親が子どもを「特別で、誰よりも優れている」と過大評価して育てた場合は、自尊心ではなく、常に優れていることを確認していないと不安になる、誇大的な傾向が育ってしまったのです。
同じ「褒める」という行為でも、ありのままを認めるか、実際以上に持ち上げるかで、育つものさしはまったく違います。前者は正確に調整され、後者は甘めにズレていく。この最初の調整が、その後の自信のクセの、土台になっていきます。

⚫︎見た目もまた、ものさしを動かす
もうひとつ、ものさしを外側から動かす要因があります。それが、容姿やスタイルです。
心理学者エレン・バーシャイドらの古典的な研究は、「ハロー効果」と呼ばれる、興味深い思い込みを明らかにしました。人は、外見的に魅力的な相手を見ると、無意識のうちに、能力や誠実さ、知性までも高く見積もってしまう、というものです。身長についても、経営学者ティモシー・ジャッジらの大規模な分析が、身長の高さと、職場での評価や収入との間に、一貫した相関があることを示しています。
ここで大事なのは、これは「見た目が良ければ自動的に自信家になる」という単純な話ではない、ということです。容姿に恵まれた人は、幼いころから、周囲の大人や友人たちから、一貫して好意的な反応を受け取り続けます。この積み重ねが、ものさしをじわじわと甘めに調整していくのです。つまり見た目による自信も、何もないところから湧いてくるものではなく、他者からの反応という、もうひとつの形の実績なのです。だからこそ、この自信も、外見という条件に支えられている以上、年齢を重ねたり、環境が変わったりすると、揺らぎやすいという弱さを、同じように抱えています。

⚫︎大人になってからも、ものさしはズレ続ける
こうして作られたものさしは、大人になってからも、ズレたままになることがあります。しかも、ズレの方向は、人によって正反対です。
ここまで見てきたような、甘めのズレの持ち主は、根拠のない自信を持ち続けます。しかしその逆に、厳しめにズレたまま、大人になる人たちもいます。心理学者ポーリン・クランスらが名づけた「インポスター症候群」は、自分の成功を、実力ではなく運や偶然のせいだと感じてしまう心理のことです。皮肉なことに、これは特に、真面目に成果を出し続けてきた人ほど陥りやすいことがわかっています。有能であるほど、自分に求める基準は高くなり、まだ足りない部分にばかり目が向いてしまうからです。
根拠のない自信を持つ人と、根拠があるのに自信の持てない人。この二人は、正反対に見えて、実は同じ問題を抱えています。どちらも、ものさしが、実態からズレてしまっているのです。

⚫︎世界中の伝統が、同じことを、別の言葉で語ってきた
ここまでは、脳科学と心理学の言葉で、ものさしの話をしてきました。ですが実は、同じことを、まったく違う言葉で語ってきた伝統が、世界中にあります。
インドのヨーガの伝統では、みぞおちのあたりに「マニプーラ・チャクラ」と呼ばれる、意志の力を司るエネルギーの中心があるとされています。同じくインドのアーユルヴェーダ医学では、体内の「アグニ(火)」が、意志力や自信、変容の力を担うとされ、この火が弱すぎれば無気力に、強すぎれば支配的になる、と考えられてきました。中国の道教や気功の伝統では、へその少し下の「丹田」が、行動の源とされ、日本の神道では、前へ踏み出す力を「荒魂(あらみたま)」と呼んできました。西洋でも、占星術では太陽が、自我や確信の力を象徴する天体とされ、錬金術の伝統でも、太陽は生命の核となる火として描かれてきました。
インド、中国、日本、西洋。互いに影響し合っていないはずの文明が、示し合わせたかのように、お腹の中心にある「火」や「エネルギー」を、自信の源として語ってきたのです。これは、脳の中の、あのものさしの話と、驚くほど重なります。自信が持てないと感じるとき、お腹のあたりの火は小さくなり、代わりに、頭の中の思考(「大丈夫だろうか」)ばかりが騒がしくなります。逆に、根拠のない自信を振りかざす人は、この火が外へ外へと燃え広がりすぎて、内側で静かに燃え続ける力を、失っている状態とも言えます。
では、この内なる火に、どうやってもう一度、薪をくべていけばいいのか。ここから先で、今日から始められる4つの具体的な方法と、世界中の伝統が指し示してきた、支配ではなく調和としての自信のあり方を、順番にお伝えします。

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