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【085】 鬼龍子と鬼犾頭

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    (*写真はチドリ目カモメ科オニアジサシ属オニアジサシ:鬼鯵刺)
    日本では大型生物に「鬼」を冠するが、本来の「鬼」とは道教における死者のこと。

    女々しくて 女々しくて
    女々しくて 辛いよ
    僕の事を からかったの?
    あんなに好きと 言ったのに
    『女々しくて』(作詞:鬼龍院翔)

    「鬼龍院」という姓は実在しないらしい。

    私が鬼龍子きりゅうしと鬼犾頭きざんとうを初めて見て、知ったのは、水戸弘道館の孔子廟である。

    「【076】 朱雀大路と朱雀門」で説明したように、儒教には「子不語怪力亂神(し かいりょくらんしんを かたらず)」という言葉があって、超能力、祟り、妖怪、鬼神、呪まじないの類には言及しないという思想だ。

    であるから、孔子廟(チャイナ名:孔廟)には幻獣の絵や像は原則として出てこない。儒教は動物にも興味なし、あるとすれば人間の絵や像のみだ。しかし日本の孔子廟には鬼龍子きりゅうしと鬼犾頭きざんとうがいる。

    鬼龍子きりゅうしと鬼犾頭きざんとうはいずれも屋根上の守り神像で、元ネタとなる幻獣は以下と考えられる。

    鬼龍子きりゅうし:騶虞すうぐ or 酋耳しゅうじ
    虎に似た瑞獣だが、自然死した獣の肉しか食べない、という設定。

    鬼犾頭きざんとう:螭𧉚(読み方不明)or 鴟尾しび
    龍頭魚尾の瑞獣。消火、防火の守り神。

    螭𧉚(読み方不明) or 鴟尾しびは、鯱鉾しゃちほこの元ネタの可能性があるが、鯱しゃちは国字(日本発祥の漢字)で、実在海獣のシャチのチャイナ名は虎鯨、英名は Killer whale:殺人クジラ。

    日本にいる鬼龍子きりゅうし、鬼犾頭きざんとうは二箇所だけ。

    1690年造営 大成殿(孔子廟)(現在の湯島聖堂)
    1891年造営 水戸弘道館の孔子廟

    現在の湯島聖堂の鬼龍子きりゅうし、鬼犾頭きざんとうは明治の建築家、伊東忠太による復元であり、元々あった鬼龍子きりゅうしは、関東大震災で焼け落ちた後に国立博物館で保存、鬼犾頭きざんとうの方はどうなったのかは知らない。

    日本最古の鯱鉾しゃちほこは、鎌倉時代末期の造営と伝わる長野県青木村の大法寺厨子屋根にいる。サカナ系幻獣を屋根に置いて火事避けにする。この風習の発祥は、日本なのかチャイナなのかは分からない。

    しかしチャイナでは、「鬼」はそもそも死者であり、鬼籍に入る=死ぬ。死ではない表現としては、例えば酒鬼(アル中)、烟鬼(ニコ中)、小气鬼(ドケチ)、日本リーベン鬼子グイズなどの侮蔑対象に使われ、瑞獣、神獣に使われるとは思えない。なので鬼龍子きりゅうし、鬼犾頭きざんとうという言葉は日本発祥なのだと思う。

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    Amazon Kindle でトリに関する本や写真集を出版しています。 昭和後期のサブカルチャーの研究をライフワークにしています。

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