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【156】 ホモイとパウロ

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    (写真は蛋白石(オパール))

    さて、作中で唯一、名前を持つ主人公のホモイ。この名はどっから来たのか? 「石ッコ賢さん」とあだ名されるほど石マニアの賢治なので、鉱物由来の名律か? と探してみたが見つからず。

    ここで独自説を紹介しよう。

    キリスト教には、Homoousionホモオジョン と、Homoiousianホモイウジアン という用語がある。日本ではほとんど知られていないため、和訳が存在しない。4世紀頃に起こった宗教論争だ。

    ギリシャ語には次の接頭語がある。

    Homoホモ:同一・同質
    Homoiホモイ:相似・近似

    ホモ=人類を表し、ホモ・サピエンス=知恵のある人類。ほとんどの生物には近似の種がいるが、人類にはおらず、すべて同質ホモなのだ。

    ホモ・セクシャルとは、自分と同一ホモ性を愛す。だからゲイのみならずレズも含む同性愛。ヘテロ・セクシャルはヘテロ(異なる)性を愛す異性愛。

    さて、勝手に和訳すると、

    Homoousionホモオジョン:父子同一派
    Homoiousianホモイウジアン:父子相似派

    三位さんみ一体いったい論(Trinity)における、父と子と聖霊(Father, Son, and Holy Spirit)の父と子は、同一だ、いや相似だが同一ではない、という論争。

    このホモイではないか?

    傲慢になったホモイは、砕け散った貝の火の粉が目に入って失明する。ここで父が言う。

    「泣なくな。こんなことはどこにもあるのだ。それをよくわかったお前は、いちばんさいわいなのだ。目はきっとまたよくなる。お父さんがよくしてやるから。な。泣なくな」

    このシーンが、パウロの回心(Conversion of Saint Paul)を想起させた。

    聖パウロは、当初キリスト教徒を攻撃していた。するとあるとき神の声が聞こえて叱責され、失明してしまう。その後に回心しイエスに帰順すると、目から鱗が落ちて視力を取り戻す。新約聖書の『使徒言行録』にある逸話だ。

    賢治は熱心な法華経信者でありながら、キリスト教も信仰していた。

    ホモイ=パウロ
    父=イエス
    ホモイと父=Homoiousianホモイウジアン

    父にも似たような過去があったのかも知れない。
    回心すれば目は治ると確信している。

    などと妄想してみた。

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    『聖パウロの回心』
    (ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ)

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    Amazon Kindle でトリに関する本や写真集を出版しています。 昭和後期のサブカルチャーの研究をライフワークにしています。

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