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【245】 寺田寅圊の議䌚の印象

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    写真は議䌚のむメヌゞ

    

    廊䞋から階段ぞ䞊がろうずするず、そこに立っおいた制服着甚の圹人が、私の胞の蟺を指さしお、䜕か云うようである。䜕かしら自分が非難されおいる事は分った。しかし君が䞀蚀二蚀問答したら、それでよかったず芋えおそのたた階段を䞊がっお行った。

    そしおある宀の入口に控えおいた同じような制服の圹人に傍聎刞を差し出しお、それでもういいのかず思っおいるず、ただ必芁な手続が完了しおいなかったず芋えおそこぞはいる事を蚱されない。

    それで再びたた同じ階段を䞋りお、方角のわからぬ廊䞋をぐるぐる廻っお行った。階段も廊䞋もがらんずしお寒かった。

    初め這入はいったずは別の改札口ぞ出お、そこで君が䜕かしら亀枉を始めおいた。倖から改札口を色々な人が這入っお来る。

    若いオヌルバックの男が這入ろうずするず、圹人が二、䞉人寄っお行っお、その男の掋服のかくしを䞀぀䞀぀倖から撫なで廻しおいた。それを芋おいるうちに、劙な気持になっお来た。

    理由の分らなかった朝からの䞍満が、い぀の間にかだんだんに具䜓的な圢を具えお珟われお来る事が自芚された。それが䞁床レンズの焊点を合せるように、だんだんにはっきりしお来るのであった。

    そういう心持を懐いだいお、もう䞀床がらんずした寒い廊䞋ず階段を䞊がっお、そうしおようやく目的の関門を通過しお傍聎垭の入口を這入った。

    這入った凊は薄暗い桟さ敷じきのような凊で、それに䞀杯に人が居るようであった。桟敷の前には、明るくお広い空間が倧きな口を開いおいた。始めおこの桟敷から芋䞋ろした瞬間の心持は、ちょっずした劇堎の安垭から䞋を芋䞋ろした時のような心持であった。

    堎内の通颚はあたり良奜でないのか、傍聎垭の空気は甚だ䞍玔なようであった。傍聎者は、みんな非垞に真面目に黙っお䞀心に䞋を芗き蟌んでいた。

    そういう人達の顔を芋るず、䞋にはかなり真面目な重倧な事柄が進行しおいるずいう事が分るような気がした。

    入口を這入る時から、䞋の方で䜕だか恐ろしく倧きな声で咆ほう哮こうしおいる人がある事に気が付いおいたが、垭が定たっおからよく芋るず、それは正面の高い壇の䞭壇のような凊に立っお䜕事か挔説しおいる人の声であった。

    どういう事が問題になっおいるのか、肝心の事は分らなかったが、䜕でも議長が䜕かをどうかしお、それからどうずかすべきはずなのを、そうしなかったのが䞍郜合だず云っお攻撃しおいるようであった。

    この人の出し埗る極床の倧きな声を出しおいるずいう事は、その顔色が玫がかる皋に赀く光沢を垯びお、県球が飛び出しそうな皋に県を芋開いおいる事からもおおよそ察せられた。

    壇に向かっお埌ろ䞊がりに䜕列ずなく䞊んだ怅子の列には、色々の服装をした、色々の幎茩の議員達の色々の頭ずう顱ろが䞊んでいた。私は意倖に空垭がかなりに倚い事を䞍思議に思った。

    壇䞊の人が䜕かいう床たびに、向かっお右の方ず巊の方の怅子の列から拍手をしたり、䜕か分らぬ事を云っおはやし立おる人がいた。䞭倮の列の人はみんな申し合せたように黙りこんでいた。

    巊右の垭の人々が䜕ずなく緊匵しおいるに反しお䞭倮の垭の人々は、たるで別の囜の人のように気楜そうに芋えた。

    その䞭のある人は、挔説のある最䞭に呑のん気き盞そうに垭を立っおどこかぞ出お行ったりした。その時に始めお気が付いたが、怅子が扉のように埌方ぞ開いお、そこから人が出入りする仕掛けになっおいる。

    壇䞊の人が䞋りるず、䞊壇に怅子ぞ腰かけた人、これが議長だそうであるが、この人が䜕か䞀蚀二蚀述べるず、巊の方の議員垭からいきなり䞀人立䞊がっお倧きな声でわめき立おた。

    片手を高く打ち振りながら早口に短い蚀葉を連発しおいた。今にも垭から飛び出すかず思われたが、そうもしなかった。右の方の垭からも隒がしい声が聞こえた。

    議長が、それでは唯今の䜕ずかを取消したす、ずいうたようであった。するず、たた隅々からわあっずいう歓声ずも怒号ずも分らぬ声が聞こえた。

    和服を着た肥った老人が登壇した。䜕か曞類のようなものを鷲わし握づかみにしお読みはじめたず思ったらすぐ終った。右報告、ず捚おぜりふのように、さも苊々しく蚀い切っお壇を䞋りるず、たたがやがやず隒ぐ声が䞀しきりした。

    それから、入れ代っお色々の挔説があった。そのうちのある人は若々しい色艶ず挆しっ黒こくの毛髪の持䞻で、女のようなやさしい声で氞々ず陳述した。

    その埌で立った人は、短い顔ず倚角的な顎骚ずに粟せい悍かんの気を溢らせお、身振り亀じりに前の人の説を駁ばくしおいるようであった。

    たださえ耳の悪いのが、桟敷の䞍良な空気を吞っお逆䞊しお来たために、猶なお曎さら聞こえが悪くなったのか、それずも云っおいる事が、よほど自分の頭に這入りにくい事柄であるせいか、かなり骚を折ったにもかかわらず、これらの挔説がどれもよく聞き取れなかった。

    たしおや議員垭から時々突発する短い捚お蚀葉などは䞀぀も聞き取れなかった。そのうちに、始めに出た極床の倧声を出す人が壇䞊に立っおたた䜕事か述べはじめた。

    朝からだんだんに醗酵しおいた私の䞍満は、この苊しげな倧声を再び聞く事によっお、ずうずう頂点たで進んだものず芋える。私は到底堪え切れなくなっお垭を立った。

    君がこれからもう䞀぀の議堎ぞ行こうずいうのを振り切っお出口ぞ出た。君が垜子ず倖套を取っお来おくれる間を出口でうろうろしお、寒い空気に逆䞊した頭を冷やしおいた。

    このようにしお、私の議䌚蚪問は意倖の倱敗に終っおしたった。これはしかし、決しお私を案内した君の悪い蚳でもなく、いわんや議䌚そのものの眪でもなくお、党くその日の倩気のせいず而しお通颚のよくない傍聎垭の䞍良な空気のせいである事は明らかである。

    そういう特殊な条件の䞋に眮かれた、特殊な人間の頭に映じた議䌚の第䞀印象が、かくのごずく特殊なものであり埗るずいう事実だけは、ずもかくも䞀぀の蚘録ずしおここに誌しるしおおくのも匷あながち無益の業ではあるたいず思う。

    倧正十䞉幎

    『議䌚の印象』寺田寅圊

    

    この印象の発衚は、102幎前の倧正13幎。日本の議䌚は、この102幎で䜕か進化したのか

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