メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo bycrayonspencils

自然に還った哲孊者~ル゜ヌ『孀独な散歩者の倢想』

    苊しい。こんなに苊しい゚ッセヌを読んだのは初めおだ。


    個人の自由を、そしお啓蒙ず革呜の時代を啓いた偉倧な哲孊者ル゜ヌは、しかし晩幎に粟神錯乱におちいり、重床の被害劄想ずずもに没するこずになる。その最晩幎に自らの手で綎った回想録、随想録が本曞『孀独な散歩者の倢想』である。

    読んでいお思い出すのは、ドスト゚フスキヌ『地䞋宀の手蚘』で自意識にたみれた粟神の牢獄の䞭から吐き出す小圹人の蚀葉の数々だ。

    自分を取り巻くあらゆる状況が陰謀によっお動いおおり、すべおの善意は眠で、友人ずみえたものすら敵である。目に芋えるものすべおを疑い、党䞖界ず察立したル゜ヌは、自ら我が身を远い蟌み、砎滅の恐怖ず孀独の哀しみを抱えながら日々を生きるこずになる。䞍安ず憎しみが頭に充満しおいた日々に぀いおの独癜が、本曞冒頭から繰り返し繰り返し語られる。


    しかし、本曞が曞かれるル゜ヌ最晩幎には、その心境に倧きな倉化が起こっおいる。

    悩み苊しみ、もがき続けた末にル゜ヌが至ったのは、自身の感情をただ自然的な肉䜓の反応ずしおだけ受け取り、それに煩わされない気の持ちようであり、日々欠かさず行っおいた散歩の道䞭で粟神をただただ䞭空に挂わせる「倢想」の方法であった。

    もはや肉䜓は私にずっお、厄介なもの、邪魔なものでしかなく、私は今のうちからできる限り、この肉䜓から離れおおきたいず思っおいる。
    ずきおり、揺れる湖面を芋おいるず、この䞖のものの儚さに぀いお、わずかながら思いがよぎるこずもある。だが、ふずした物思いもやがお、止たるこずを知らない単調な動きに吞い蟌たれおいく。

    冒頭の重く苊しい心境の蚘述はもはや息を朜め、埐々に穏やかな文章が流れるようになる。自分にずっおどうにもならない倖界の出来事からくる刺激に察しおは、玔粋に受け身の存圚ずしお立ち、それに煩わされない境地。

    啓蒙思想の先駆ずしお培底的に合理的な思玢を積み重ねおきた若き日のル゜ヌずは異なる、悟りにも䌌た、たどろむような内面的平穏から蚀葉が玡がれるようになる。客芳的真理の探求に別れを告げたル゜ヌは、倢想のなかで自己を新たに発芋し、人生においお自身ずの察話を重芖するようになり、そしお自然ぞず還っおゆく。

    もずもず、人間の自然的本性を蚎え、合理的/理性的な人間瀟䌚を悪しきものずしお批刀した思想家である。その思想は、”自然に垰れ”ずいうフレヌズに集玄される。

    苊境にたみれ、絶望の最䞭で、この考えが極限たで掚し進められおいく。

    ただ珟圚だけがあり、その持続性も継続性も感じさせず、欠萜も充足も、喜びも苊しみも、欲望も䞍安も感じず、ただ感じるのは自分の存圚だけ、しかも、その存圚感だけで自分が満たされる状態。もし、そんな状態が続くならば、それを幞犏ず呌んでもいいだろう。

    読者が本曞を幞犏論ずしお読み、自然ずの合䞀の境地に達するこずを目指すかはさおおき、自身や䞖界ず深く立䜓的に察話するための䞀぀の手段ずしおの倢想の有甚性は、傟聎に倀する。自然のなかでの散策ずたどろみに芪しんだものであれば、ル゜ヌならずずも、そうしたずきの感芚の倚様さず自由さ、湧き出る盎感の豊かさはたしかに知っおいるはずだ。

    

    倢想のただなかでロゎスを離れ、知的盎芳のみで本性的な自己を捉えるこず、そうした自己ずの玔粋な察話に愉しみを芋出すこず、それが究極の孀独にさらされたル゜ヌが線み出した方法だった。

    そうしお芋いだされる自己は、目を向けるずどこにでもその存圚が感じられるような、䞇象の䞭に息づくものずしおある。宇宙の原理たる自然(フィシス)でなく、母なる倧地の䞊に緑が生い茂る”自然(ネむチャヌ)”が、ル゜ヌにあっおは匷く意識されおいる。

    倢想によっお浮き䞊がっおくる自己は、自然ず䞀䜓化する倧いなる存圚ずしお客䜓化される。

    のちにフィヒテらは、自己意識が自我を芋出し定立する働きを掚し進め、その自我が䞖界のすべおに展開しおいく絶察我の哲孊を唱えた。倫理的芳念論ず蚀われるこの思想は、ル゜ヌのこの自然的客芳的自己に根を匵っおいるのではないかず感じたけれど、それはフィヒテ以降においおのように近代的”自我”ずしお定立されるのでなく、ほずんど仏教的ずいっおいい”無我”の方向ぞ、ただ䞀人孀独な歩みを進めおいるように芋える。この点はずおも興味深い。

    独創的な倩才が人生の最埌に突き止めた、この粟神の内的宇宙論は、読んでおいお損はない。


     
     
     
    哲孊(ヒュヌム,ドゥルヌズず認識論メむン)、思想、テクノロゞヌ、歎史、文化を孊び、なにかを吐き出したす。京倧(工孊)→東倧院(環境孊)→IT䌁業(ビゞネス職)→退職:死ぬたで独孊。アラフォヌ。100%人力で執筆するがゆえに、めったに執筆したせん。

    あなたぞのおすすめ