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【R102】入社1ヶ月で感じた“説明できない違和感”

    事務員A


    彼が入社して、最初の1ヶ月は大きな問題は起きなかった。

    少なくとも「事件」と呼べるようなものはなかった。
    だが、空気が変わった。

    最初の違和感は、ほんの些細なことだった。

    経理業務に必要なシステム権限の設定が、まだ完全に整っていない場面があった。
    ベンチャー企業ではよくある話だ。
    人の入社とIT設定のタイミングがズレることは珍しくない。

    だが彼は、静かに怒った。

    「つまり、やらなくていいってことね」

    周囲は一瞬、意味がわからなかった。

    彼は続けた。

    「権限を与えないってハラスメントですよ。いじめですよ」

    その場の空気が凍った。

    誰も、彼を攻撃したつもりなどなかった。
    単なる準備の遅れだった。

    だが彼の頭の中では、
    “手違い”ではなく“意図”に変換されていた。

    そして彼は、少しずつ周囲に語り始める。

    「こういう扱いされると、やる気なくすよね」
    「前の会社ではこんなことなかった」

    それは怒号ではなかった。
    むしろ、静かな不満の共有だった。

    だがその“共有”は、
    **周囲を巻き込む“空気の汚染”**でもあった。


    この頃から、管理部門のメンバーの口数が減った。

    彼と話すと、何かが起きる。
    地雷を踏むかもしれない。

    だから皆、慎重になった。

    話しかける前に言葉を選ぶ。
    依頼をする前に文面を何度も確認する。

    たった一人の入社で、
    心理的安全性が目に見えない形で削られていった。


    さらに特徴的だったのは、彼の話題の中心は常に「自分」だったことだ。

    「俺は昔は〇〇だった」
    「前の会社ではこうだった」
    「あいつは仕事ができない」
    「俺が改善した」

    彼の語りは、
    常に“自分が正しく、他人が劣っている”構図だった。

    最初は「自信のある人」だと思った。
    だが次第に、それは**“他人を下げないと自分を語れない人”**だとわかっていく。


    この段階では、まだ誰も“問題人物”とは言わなかった。

    だが、ほぼ全員が同じ感想を持ち始めていた。

    「…話しづらい」

    この言葉が組織に広がったとき、
    崩壊はもう始まっている。

    それは大声ではなく、
    静かな違和感から始まるのだ。

    (続く)

     
     
     
    上場企業CFO|元アルバイト→ブラックベンチャー責任者→IPO→億り人 M&A実務経験多数|不動産×株×FCでFIRE設計中| 表に出ない現実の構造を当事者視点で発信|教科書ではなく現場の意思決定を|CFO×投資家×事業家の複業実践者

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