好きに生きてろ、この指が見えてっか?
酒の彼方からこんばんは。もう今日はダメだ、ダメ。数日前に楽器と使わなくなったPCをトレードした。自分の確認不足と状況が悪かった、とても弾ける状態ではないアコギだ。せっかくだから修理したいと思って相談してみるも滅、このネックの亀裂は紳士淑女の皆々様の深淵に届くほど深く大きい。
致命傷の向こう側、楽器に命はある。命とはなんだ。誰を引用するでもなく自分の言葉で書けば「命とは命の隣にあるもの」とでも書いておこう。それが無機物であろうが有機物であろうが関係ない、好きなものに命はある。そう思いながら全然知らないスナックのババアに3割も飲んでない水割りを永遠に注ぎ足されて続けた。アホか、ぐいっと飲み干す時間を私くれ。
ありえない雨の中、五千円かけてタクシーで帰宅した。アホみたいに飲んでどうでも良かったから路上の車通りが出来ないところで仰向けで雨に打たれていた。ショーシャンクごっことかそんな軽いものじゃない、泥酔者が大雨の深夜に路上に落ちている。空を見ていた。
気が済んだから家に帰ってぐっしょり濡れた靴下も服も雑に脱いで洗濯かごに入れて、髪の毛がへばりついて不愉快だった。アイデンティティになりかけているロングヘアを今ならハサミを入れられる気がすると思った頃には意識を飛ばして眠った。
起きたら濡れた鞄が掛け布団に乱暴に投げられていて不愉快だった。何も楽しくない、自分にスキルがあれば直せた。有識者からの助言、楽器の命は終わってしまう。安物だからと粗雑に扱う気もないんだ。でもな、新品は流通してないみたいだから状態の良い同じ個体を買った方が早くて遥かに安い。色々考えている。ケースに直したまま状態をもう一度確認する度胸がないまま日が過ぎた。
雨に打たれながら寝た夜のせいで風邪をひいた。夏風邪はバカがひくらしい、つまりそう言うことだからどうでも良い。馬鹿ついでに修理依頼をかけてみようか。
アコースティックギターってなんだよ、と思わず突っ込みたくなる。弾き語りがしたい訳でもないしエレキの方が数倍好きだ。それでいいのか?目の前のこいつはどうしたらいい。
ケースにいれられて横たわる姿はまるで棺のようだ。酒を注いでくれないか、私は面白いことがしたい。夏の空はまだ来ない。海へ、山へ、川へ。今年の夏が亀裂の入ったアコギと共に始まろうとしている。