
区役所に行かなきゃなんない
区役所に行かなきゃなんない。めちゃくちゃめんどくさい。
こどもを私の戸籍に入れるための手続きをしなければならないのだ。
1月に離婚届を出して、3月にこどもとふたりで札幌に引っ越してきた。
何度も役所へ行った。
離婚届をもらって、離婚届を出して、わたしだけの新しい戸籍を作って、その戸籍謄本を取って、児童手当や諸々の手続きをして、転居届を出して、
それから札幌で転入届を出して、住民票を取って、また戸籍謄本を取って、裁判所に提出してしばらく待って、
それでやっと、「あなたの新しい戸籍にこどもを入れて同じ名字になっていいですよ」の許可が出た。やることが多すぎる。
あと1回区役所に行けば、離婚に伴う事務作業がやっと一区切りつく。
あと1回。
わたしの住んでいるマンションから区役所は、微妙に遠い。徒歩だとたぶん、30分くらい。うちに車はないし、駅からも遠い。自転車なら10分くらいだけど、行きは下り坂で楽なぶん、帰りはずっと上り坂になる。
「天気のいい日に行こう」と思っている。今日も少し考えていた。朝、カーテンを開けながら「今日行けるかも」と思った。空は明るかった。でも、まだ空気はひんやりしているし、風も強そうだ。GW明けで仕事も溜まっていたし、なんとなくやめてしまった。
そういう“なんとなく”で、もう2週間くらい経ってしまっている。
「戸籍」という響きが、ただ紙を1枚出すだけなのに、なんだか重めの気持ちにさせてくるからダメなのかもしれない。区役所って毎回すごく並ぶし。
紙に書かれた番号で呼ばれるのをじっと待って、それで、呼ばれたらすぐ終わる。わりとドライな対応をされたりする。座っている人たちはみんな少し疲れている。楽しいことは何もない。豊平区役所のいいところは隣にココスがあって寄って帰れるくらいだ。
札幌に引っ越してきてまだ一週間くらいの頃、こどもを後ろに乗せて、15分くらいかかるショッピングモールまで行ってみたことがある。こどもが1歳になった時に買った電動自転車。かなりガタが来ているが、まだ現役だ。
4月頭、雪が解けたばかりの道はアスファルトがぼこぼこで、めちゃくちゃ走りづらかった。まだ寒かったし、途中でちょっと後悔した。でも、わたしがこどもの頃に住んでいた街の近くを、「この病院昔来たな」とか「この道なんか覚えてる!」とか思いながら走るのは、少し楽しかった。
ショッピングモールで回転寿司を食べて、クレーンゲームで遊んで、100均で買い物をして、さて帰ろうとなった時、電動自転車のバッテリーが残り少ないことに気づいた。14%。帰りはずっと上り坂だ。
10、9、8%…
減っていく数字を、私は大声で読み上げた。こどもは後ろで笑っていた。
「ママがんばれー!」
そうね、ママがんばらないと。
坂の途中でバッテリーは無情にも0パーセントになり、ペダルは信じられないくらい重くなった。必死で帰った。娘は最後まで降りて歩く気配すら見せなかった。足は二日後まで筋肉痛でパンパンだった。
区役所に行けば、いろんなことが片付くらしい。戸籍とか、名字とか、そういう表面的なことが、一応。生活は何も変わらないけど。
一生懸命自転車を漕いで、行ってこようと思う。
できれば、晴れた気持ちのいい日に。