
随想 晩秋の明
秋の炉をくべるも知らぬ稚児の手よ
◇
処暑を過ぎると夜分には、秋の虫の声が聞こえます。
もうすぐ木立に色がつこうかという頃に、私は一つの寂寥を抱くのです。
あなたが私の元を去り、もう十三年。
あなたの最後を見送るとき、頬を伝う秋雨の冷たさに、私はあなたとの会話を思い出しました。
私があなたになぜ鬘をつけているのかと問ったとき、あなたは涙を流して私を抱擁しました。
私を満たしたあの抱擁は、涙を流すあなたにとって、どんな意味があったのですか。病も告げず、去ることを選んだあなたの心境は、幼い私には解することのできぬものでした。
私は今でも、不意にそのことを思い出し、幼さゆえに無辜としてきたことに心を痛めるのです。