
🐴 Aussie オーストラリア、馬と暮らした物語<8>🐴
【第8話】芝生の家との出会い
—プールの向こうに、緑が広がっていた。—
家探しは、Realestate.com.auというサイトから始まった。
検索窓に入力したのは、「horse」「paddock」「stable」の3つ。それだけで、候補はぐっと絞られた。馬が飼える家というのは、それだけで特別な条件なのだと、改めて思った。
いくつかヒットした物件を、週末ごとに見て回った。
どの物件も敷地は広かった。パドックが作れそうな土地も十分にある。ただ、居住する家がどれも古くて、気持ちがなかなか動かなかった。
第2話で書いた「クジャクの住む家」も、このとき見に行った物件のひとつだった。クジャクが庭に住みついているというのは確かに面白い。でも、家そのものには縁を感じなかった。
すでにパドックの跡がある物件もあった。かつては馬がいたのだろう。でも今は草がぼうぼうと茂っていて、ここを整地するのは大変だ——そう思うと、足が止まった。
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諦めかけていたある日、新しく開発されたエリアの入り口に、一枚の看板を見つけた。
区画を紹介する看板だったが、そこに描かれていたのは、馬に乗った人の姿だった。
「ここだ!」

直感だった。さっそくそのエリアへ車を走らせた。ところが、まだ家が建っていない状態で、区画を販売している段階だった。さすがに今から家を建てるのは無理だ——そう思いながら、近くを車でゆっくり走らせていた。
そのとき、「For Sale」の看板が目に入った。
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その家の前に立ったとき、まず目に飛び込んできたのは、広くて美しい芝生だった。
バックヤードにはユーカリの林が続いていて、「ここなら馬も飼えるかもしれない」—そんな予感が、じんわりと広がってきた。
さっそく不動産会社に問い合わせ、「条件は馬が飼えること」と伝えた。すると、近くに馬を飼っている家があること、さらに近所にRDA(Riding for Disabled Association・障害者乗馬協会)があることもわかった。馬が暮らすエリアだと確認できた。
RDAとは、馬の持つ力を活用して、障害のある方々の健康や自信を高める支援をする場所だ。後に、Rinaがボランティア活動を行うことになる場所でもある。
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オープンハウスの日、門は開いていた。
しばらく進むと、中央に大きな木がある緑の芝生の上に、すでに車が何台か駐まっていた。「この家、何台とめられるんだろう?」——それが正直な第一印象だった。

ドアも開いていて、中に入るといきなりリビングだった。正面には4枚並びの大きなガラス窓が開け放たれていて、その先にプールがあった。キラキラと水面が光り、「うわ~!」とても素敵な空間だった。
プールの奥には、バリ風の屋根付き木陰スペース。両サイドに大きな木が2本。さらに奥へと、あの芝生が続いていた。
あまりに緑が美しくて、ここにステーブルとパドックを作るのが惜しいほどだった。
プールのあるリビングから広がる緑の芝生を見て、気持ちはもう決まっていた。
その場で申し込みをしてしまった。
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引き渡しまでの間に、前の住人からローンモーイングカーの使い方、イリゲーション、プールの管理方法を教えてもらった。
ローンモーイングカーとは?
Lawn(芝生)をmowing(刈る)する車の事らしい。この美しい芝生を保つために、伸びた草をカットする必要がある。その時に登場するのがこの車だ。私の思っていた手で押して動かすお手軽タイプでは、到底この庭の芝はカットできない。これを使った庭のお手入れは本当に苦労した。

続くイリゲーションとは?
Irrigation(散水)とは、庭に水を撒くためのシステムを指す。乾季と雨季が繰り返されるこのエリアでは、雨季には芝生がぐんぐん伸び、乾季には水が必要となる。そのために、地面の下に穴を掘り、パイプを通して、タイマーで決まった時間に自動的に水が散水される仕組みらしい。前のオーナーが自分で作ったそうだ。さすが、オージー!なんでも自分で作ってしまうのだ。それを可能とする道具や材料を扱う心強いホームセンターが存在する。「Bannningsバニングス」である。後に、頻繁に通うことになる。

プールの管理方法?
水面がキラキラ光輝いていたプール。これも管理が必要で、常にある一定の水質に保つために、定期的に薬剤を投与するらしい。水を少し汲んで、プール関係を扱う業者に調べてもらい、必要なものを購入。後でわかったことだが、バニングスにも「Pool Salt」として売っていた。
さらに、常に水が循環するように、プール脇に設置されているポンプを動かし続ける。たまに、水面や排水溝に葉っぱが溜まるのをすくいとる作業も必要だ。

今から思えば、あの芝生やプールを保つためには、いろいろと大変な作業があったのだが、この時は、新しい事への挑戦に心が躍っていた。
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引っ越しは、業者を使わなかった。自分たちで車に荷物を積んでは、40分の距離を何度も往復した。日本から来るときに必要最低限のものしか持ってこなかったし、マンションは家具付きだったので、大きな荷物はほとんどなかった。
あの美しい芝生の家に住むのだ——それだけで、すべてが前向きになれた。
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