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現金な奴【アマノ文筆クラブ】

    夏目瀬石

     我が帝国にはカネがない。行き詰まった、格好だけの大帝国。

     もはや、どうにもならぬ。
     禁じ手を使うことにした。
     悪魔召喚。


    「──皇帝陛下。よくぞ、儂を呼んでくださいました。
     我が献案さえ取り入れてくだされば、帝国の財政など、たちどころに解決が能いまする。」
    「言え。」
    「引き換えに、頂戴したいものが……。」

     ……条件は、飲むしかあるまい。


     悪魔、メフィストフェレスが言うには、我が帝国に金の貯蔵が大量にあることにしろ、というのである。

    「そんなものは無い。」
    「それで、まったくかまいませぬ。肝要なのは、ここから。
     金と交換ができる、『交換券』をお作りなさいませ。
     交換できる金の重さを書くのです。
     そして、皇帝陛下の印をお打ちになられませ。」
    「たわけが。交換に来たらどうする。」
    「ハッハッハ。来ませぬ。
     ──面倒で御座いますゆえ。
     それより先に、人々は交換券を、金と同じ価値に扱って通貨にいたしまする。
     それが、便利で御座いますゆえ。」
    「⋯⋯。」

     ──なるほど。格好だけの大帝国には相応しい方法やもしれぬ。


    「お取り入れくださいまするか。
     ハッハッハ。
     帝国の再興、祝着至極に存じまする。
     では、支払いをいただきますぞ。」

    「よろしい。『交換券』にて、すべて支払う。
     金と同価値じゃ。我が印を打ってやるぞ。」

    「なんと──!
     皇帝陛下。
     ……貴方様も、ゲンキンな方でございますなあ。」




    完


     参加させていただいたのはこちら。
     オチはオリジナルですが、紙幣の話は原典があり、ゲーテ『ファウスト』です。現代社会は悪魔の発明の上に乗っかっているのですなあ。

     
     
     
    なんとか生き延びてきた氷河期世代。いろいろものを書いてきたけれど、そろそろ小説も書いてみようかな。

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