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恋する女は嫌いだ【アマノ文筆クラブ】

    夏目瀬石

     恋する女は無数にいるはずだ。

     でも。

     誰一人、僕を狙っていない。


     女性が、恋をするということ。
     それは、僕から遠ざかるということ。

     恋する女は嫌いだ。



    「──あの娘は肉食系なんだってさ! 男なら、誰でもいいらしい!
     俺たちのことも、世話してくれるかも知れないな!」

     鼻息荒く、そう言っていた古い友人。
     どうやら、彼女の厄介になったらしい。
     近づこうとはしていた。しかし、結果が出るまで、実に早いことだ。

     友人はべつにイケメンではないし、勉強も運動もパッとしない。
     つまり。つまりだ。意味するところ……。

     彼女のほうでは、本当に誰でもいいということなのか。


     改めて、彼女を眺めてみる。
     スタイルが良いのだ。顔が小さく、すらりと伸びる手足で頭身が高い。
     特にウエストはぎゅっと締まっている。体格は全体的に華奢な印象でもあるが、腰のラインなどは大きく豊かな曲線を描いている。

     一瞬とはいえ、友人は、あれを自分のものにしたのか──。

     どんなふうにしたんだろうか。彼女の反応はどうだったんだろうか。

     知りたい。
     秘密の、その瞬間の彼女を知りたい。
     そして叶うならば、それを独占してしまいたい。


     自分でも知らないうちに、僕は彼女に近付いていた。
     彼女は振り向いた。驚いた表情をしたが、僕の意図は察したようだ。

    「──?」

     彼女は何も言いはしなかった。ただ、首を傾げただけだ。
     僕は頷いた。それが精一杯だった。

     彼女は自分から腰を寄せた。そして、初めての感覚に僕が没頭しているうちに、その腕の、緑色の鎌でがっちりと僕をつかまえた。



     ──穴兄弟、という言葉はあるらしいが。

     これじゃあ、友人とは「腹兄弟」だな。


     ……というのが、薄れる意識の中で僕が最期に考えたことだ。




    完


     参加させていただいたのはこちら。

     
     
     
    なんとか生き延びてきた氷河期世代。いろいろものを書いてきたけれど、そろそろ小説も書いてみようかな。

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