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Photo byp_d_magazine

栗の木

    朝の散歩の途中、畑に植えられた一本の大きな栗の木に満開の花が咲いていて、思わず立ち止まった。夏が来たと思った。

    栗の木が一番栗の木であることを主張しているのは、花の時期だと思う。
    黄色がかった白色のさながら毛虫のような花が、緑色の葉っぱの間からうわっと垂れ下がる姿は、初夏の緑の中で一段と目立つ。においは少しツンと刺激があり、お世辞にも「いい香り」ではないが、ほのかに栗の実の雰囲気が感じられる。

    朝見つけた木はそれはそれは大きく立派で、花の重みで枝がしならんばかりだった。立ち止まって鼻をひくつかせてみたが、距離があるからかはたまた風がなかったからか、あのツンとしたにおいは感じられなかった。
    しかしその花の見事さは、私に懐かしい記憶を思い出させるのに十分だった。

    小学校へと向かう通学路に、栗畑があった。
    栗の花の時期は周りの果樹園の緑も濃く、ひときわ栗の花の色が映えた。
    朝靄と、涼しい風と、栗の花のツンとしたにおい。その下を歩く私は水着を入れたビニールバッグを持っていたっけ。
    まだ初夏が確かにあった時代の記憶だ。

    学校が好きでなかった私にとって、朝は毎日憂鬱だったはずなのだが、不思議と爽やかな記憶として今日の私には思い出された。

    遠く離れた故郷を思いながら、私は再び歩き出す。
    涼しい風が私たちの間を吹き抜けた。

     
     
    ちくわとプリンを愛するアラサー。 双極症、過敏性腸症候群などいろいろ通院中。 昔の思い出や最近の出来事を綴ります。

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