
【連載】テレワークが地球を軽くする 第4回|組織から生まれるエコアクション
第4回|組織から生まれるエコアクション
― テレワークGXが育む従業員エンゲージメントという力
こんにちは。日本テレワーク協会(JTA)主席研究員の中村幸弘です。
これまでの連載では、テレワークを通じて「個人」「家庭」「暮らし」から始まる脱炭素の姿を見つめてきました。
第4回となる今回は、視点をぐっと広げて「組織の中から生まれる脱炭素文化」について考えていきたいと思います。
企業や自治体が取り組む脱炭素経営(GX)は、設備投資や制度改革だけでなく、働く一人ひとりの“想い”と“参加”があって初めて前に進みます。
本当に組織を変えるのは、人の力なのだと、私はこれまでの経験から強く感じています。
「サステナビリティ経営」の違和感と、見えてきたもの
私がドコモで経営企画部・サステナビリティ推進室にいた頃、
サステナビリティレポートやマテリアリティの策定、ESG経営のKPI作成、社会貢献活動に携わっていました。
当時、日本企業では “SDGsの何番に取り組んでいます!” といった
「外向きのアピール」が先行しがちで、どこか形式的に見える場面に違和感を覚えたことがあります。
一方、海外企業――特に B Corp(Benefit Corporation) の認証を持つ企業は、
パーパス(存在意義)と従業員の幸福を軸に、
「企業としてどんな社会価値を生むのか?」を真剣に問い続けています。
パタゴニアやユニリーバのような企業が象徴的です。
彼らは“利益の最大化”より“社会価値の最大化”を優先し、
その中心に常に 従業員エンゲージメント を据えています。
社員が誇りを持って働けるか
社員が社会に貢献できる実感を持てるか
行動が企業文化として根付くか
この土台が整っている企業は、結果的に脱炭素経営も自然と進みます。
自発的な力が組織を変える ― ドコモ「カボニューアンバサダー」
私自身が強く学びを得たのが、ドコモ時代に企画した 「カボニューアンバサダー」 という取り組みです。
これは「カーボンニュートラル」をテーマに、
社員一人ひとりが日常のエコアクションを宣言し、
仲間に広げていく“自発性を重んじたプロジェクト”でした。
最初は約100人ほどの参加から始まりましたが、
数年で1000人近いムーブメントに成長しました。
その顔ぶれは本当に多様でした。
営業、マーケティング、経営企画、新入社員、ベテラン社員、子育て中の社員、そして管理職クラスまで
環境アクションは本来の業務とは関係がありません。
それにもかかわらず、世代・部署を越えて多くの社員が参加し、
楽しみながらエコアクションを続けていく。
そこにはやはり、
「自分の行動が社会の役に立つ」という感情が、人を動かす
という本質的な力がありました。
さらに、こうした行動が日常の中に広がっていきます。
家族と気候変動について話してみた
家庭の電力契約を見直してみた
在宅勤務の日に地域清掃に参加した
などなど、これはまさに、従業員エンゲージメントを“文化として醸成する”実践そのものでした。
エコアクションが生む「働きがい」と「ウェルビーイング」
脱炭素経営は、CO₂排出量削減という数値の話だけではありません。
むしろ、社員の中から生まれる ポジティブな感情 が、持続可能なGXの中心になります。
誰かのためになっている実感
社会とつながっている感覚
仲間と取り組む誇らしさ
自分の行動が未来を変えるという手ごたえ
こうした感情は、働きがいやウェルビーイングに深く関わります。
テレワークやハイブリッドワークは、その感情を育む“余白”をつくります。
通勤時間が削減された分、地域活動や家庭でのエコアクションに時間を使える。
その一つひとつが企業価値へと還元されていく。
GXとは「システムの更新」ではなく、「企業文化のアップデート」である。
私はそう実感しています。
これからのGXは、従業員が主役になる
組織の脱炭素を本気で進めるには、
トップダウンだけでなく、ボトムアップの仕組みが欠かせません。
アンバサダー制度(内発的リーダーの育成)
社内SNSでのエコアクション共有
テレワークを活かした地域参加
ソーシャルワークやプロボノ活動の後押し
自発的プロジェクトを支える文化と制度
これらはすべて「人間中心のGX」を実現する仕組みです。
テレワークGXとは、働く人が自分らしく社会に関われる環境を整えること。
それが企業の競争力、持続可能な未来、そして地球の未来につながっていきます。
脱炭素経営は人の成長指標
脱炭素経営は、経営指標ではなく “人の成長指標” でもあります。
一人ひとりの行動が企業文化を変え、社会を動かす。
その第一歩として、テレワークは大きな可能性を持っています。
次回は、海外企業に広がるB Corpや“パーパス経営”に触れながら、
「人を中心に据えたGX」の未来を探っていきたいと思います。

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中村幸弘/JTA主席研究員
研究テーマ:脱炭素、ウェルビーイング、関係人口、防災、女性の活躍推進
プロフィール