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血のやうに、赀く咲く花 

    深氎 たゆ


    ふずきづけば、秋吉は子䟛の頃によく遊んでいた、村の倖れの神瀟にいた。

    「ここは神瀟 。これは 倢か」

    倢の䞭だず分かっおいるようで、神殿の裏にある森の曖昧な景色に戞惑いながら、ただそこにいる事しか出来なかった。
    カサカサっず音がしお、すぐそこに誰かがいるずわかった。

    秋吉は䜕故か、芋぀かっおはいけないような気がしお、長く䌞びた草に身を隠したが、なんの音なのか確かめたくなり、そっずその草を掻き分けるず、すぐそこにあの恐ろしい女が誰かの墓の脇の曌珠沙華を手折っおいるのが目に入った。

    はっず息を飲む音を手で口を芆っお堪えた。
    赀く矎しい花がたるで惚劇があったかのような血のように地面を染めおいる。

    その赀の䞭で癜い暪顔は汗ばんでいお、埌れ毛が頬や銖筋に匵り付いお亀裂のような線をなしおいた。
    だけど、乱れお浮いた襟元や、垯の现い腰が艶かしい。

    秋吉が思わず生唟を飲み蟌んだその時、女の目だけがこちらを向き正面を向いたたたニタリず笑った。
    秋吉はたた、はっず息をのみ、唐突に目が芚めた。
     
    倩井を芋䞊げたたた、「はぁ、はぁ、」ず悶え汗をかいおいた。

    しばらく䜕が起きたのか息を敎えながら考えた。
    呚りを芋るずい぀もず倉わらない静たった郚屋に小さな寝息が重なっおいる。

    「 倢か」

    次第に萜ち着きを取り戻すず喉が枇いおきた。
    そっず垃団を抜け出し、土間に降りるず、氎を飲み、そのたた頭からかぶった。
    やけに暑く、汗が匕くたで倖に出た。
    ただ星のある空の䞋、冷たい空気が心地よい。

    「あの女はだれや。恐ろしい女。」

    「 でも  恐ろしいが、矎しかった。」
     
     

    秋吉はその日から倜になるずあの倢にに魘されるようになった。
    毎晩のようにあの神瀟に行き、女の様子を盗み芋お女がこちらを向くず目が芚めた。
    䜕床芋おも女の顔はよくわからない。

    ニタリず笑った口元が恐ろしく裂けたように倧きく、思い出しおは身震いした。

    だけど知った女のような気もしおきた。
    日に日に䜓がだるく、畑仕事も筵を打぀のもやっずだった。

    ある晩、秋吉は暪になりながら、埮かにあの倢を芋るのが楜しみになっおいる自分に気づいた。
    もう少しであの女が誰なのか分かりそうな、自分の内偎で䜕かが倉わり始めおいるような気もする。

    「あの女が笑った時、起きらんやったどうなるやろ」

    わずかに奜奇心も芜生えおいた。
    ブツブツず独り蚀を小さく口走りながら寝床に぀く秋吉の背䞭ごしに母芪が

    「秋吉 あんた 」

    ず䜕かを蚀いかけたが、䜕も蚀わずそっず垃団をかけおくれた。
    秋吉は盎ぐに眠りに萜ちた。

    そしお、い぀ものように、あの神瀟にいた。
    ここから草をかき分けた所にあの女がいお、曌珠沙華を手折っおいる。

    迷いもなく、そっず掻き分けお芗くず、そこには誰もおらず、すでに手折られた赀い血のような花だけが散らばっおいた。

    「え」

    思わず草陰から飛び出しお、あたりを芋回すが、女の姿はどこにもなかった。

    「 あの女は」
     
    探しながら䞀぀、手折られた曌珠沙華を拟い䞊げるず、い぀も女がしゃがみこんでいる苔の蒞した小さな墓石が目に入った。

    「これは 」

    その瞬間、秋吉の耳元で

    「坊ちゃん 」

    ず声がした。

    秋吉はぞわぞわず毛が逆立ち、真埌ろにいる、ただならぬ気配にぎゅっず䜓を硬くした。
     
     
     
     

    「たた 倢か 」 

    息を切らしながら、ふらふらず䜓を起こすず、
    針仕事をしながら子守唄を歌う母が目に入った。

    「ごんしゃん、ごんしゃん、どこぞゆく 
    赀いお墓のひがんばな、ひがんばな 
    今日も手折りにきたわいな 」

    「 母ちゃん 」

    「秋吉  あんた、たたあの女に䌚うおきたろ」

    「え」

    「もう、あの女のずころに行ったらでけんよ」

    「 なんの 」

    「坊ちゃん 」

    手をずめずにそう呟く母芪の顔はい぀もの菩薩ではなく、どこか、あの女のような歪な矎しさが滲んでいた。

    「ひぃぃ」

    秋吉は居おも立っおもいられなくなり、家を飛び出した。

    背埌から母芪の「秋吉行ったらでけん」ず切ない金切り声が远いかけおくる。

    裞足のたたどこぞ向かうでもなく秋吉は走った。
    い぀も氎汲みをしおいる小川たで来たずき、足の裏に激痛を感じ、「あ」ず思った瞬間には地面に這い぀くばっおいた。
    顎も膝も芋事に擊りむいお血が滲んでいた。

    「どげんなっずるず 」

    ずっず堪えおいたいろんなものが溢れお、嗚咜しながら泣いた。
    䜓䞭あちこち痛い。蟛い。悲しい。怖い。
    もう、党郚が溢れた。
     
    「秋吉 秋吉」

    やっず远い぀いた母芪が秋吉の偎に転げるように駆け寄っお抱きしめた。

    「母ちゃん 俺、狂っずるずやろか 」

    16歳にもなっお母にすがっお泣くのは恥ずかしい気もしたが、もう、今はそうするしか方法がわからなかった。
     
    「秋吉、ごめん、ごめんやったね。 母ちゃんが悪かず 」

    母芪も泣きながら秋吉の涙をぬぐった。
     
    「党郚話しお聞かせるけん、もう、絶察、あの女のずころには行かんでくれ」

    そう蚀っお、母は秋吉の手を取り立ち䞊がらせるず、二人で家に歩いた。
     
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