メインコンテンツへスキップ
見出し画像

失業王子はシンデレラを探す


    あらすじ

    理恵子はコンビニスイーツ開発の責任者。仕事に追われる中、近所のコンビニで「王子」と名乗る金髪の青年と出会う。彼は自分をシンデレラの王子だと言い、夢とトキメキを届ける役目を失って現実世界に迷い込んできたという。奇妙な同居生活の中で、理恵子は彼とともに「トキメキとは何か」を探しながら、新作スイーツの開発に挑む。おとぎ話と現実が交差する中で、理恵子は忘れていた感情を取り戻していく――。


    1
    理恵子はコンビニのスイーツ制作部門の責任者だ。
    この春の人事で抜擢された。
    元々は栄養士だった。
    パティシエになる事も考えた。
    けれど、お手頃価格でトキメクようなお菓子を沢山の人に食べてもらいたい。
    そう考えると、コンビニスイーツを作る方が自分のやりたい事に合っている気がした。
    面接でも一貫して自分の夢を語った。
    大手コンビニチェーンに採用されたのは、単純に栄養士の肩書きよりも、大学のネームバリューで登用されただけかもしれない。
    それでも構わない、と思った。
    自分の目的が達成出来るなら、過程の評価などなんでも良かった。
    使えるものは何でも使う。
    夢を実現させる。
    そう思って入社してから今までがむしゃらに働いてきたのだ。
    あれから数年。
    責任者への抜擢は嬉しかった。
    より一層、自分の夢へと近づける。
    しかし、管理職の仕事は想定以上に厳しかった。
    コストカット。
    原料費。
    製菓の過程。
    今まで以上に考えなくてはならない事が増えて、疲弊してきた。


    2
    今日も一人、試作室で残業する。
    10種類のクリーム
    5種類のスポンジ
    様々な産地から取り寄せたイチゴ
    原料費を抑えるために試作を重ねている。
    もう暫く生クリームなんて見たくない。
    ラーメン食べたい。
    塩が私を呼んでいる。
    そう思ったが、生クリームを試食するしかなかった。
    10種類食べてもどれも同じ味。
    最近はどれを食べても二流の味のような気がしてきた。
    美味しくない。
    それ以上につまらなかった。
    仕事が。
    トキメクお菓子を作るはずだったのに。
    作る工程は、全くときめかなかった。
    むしろ、何かが擦り減ってきているように感じた。


    3
    その日も仕事の帰り道、家の近所のコンビニに寄る。
    日付がもうすぐ変わりそうだった。
    仕事帰りに自分が関わったお菓子を見る。
    昔は、かなり嬉しい瞬間だった。
    自分の作ったお菓子が店頭に並ぶ。
    時々、自分で買ってみる。
    疲れた体に幸せと達成感が染み渡るようだった。
    今は、どうなんだろう。
    自分の作ったお菓子が美味しそうに見えない。
    原価が頭を過ぎる。
    試作室での甘ったるい砂糖の匂いを思い出して吐きそうになる。
    もう、罰ゲームに近かった。
    それでも、コンビニに行く事がやめられない。
    習慣だった。
    それ以上に、今日のツマミと缶ビールが欲しかった。


    4
    お気に入りの缶ビールと砂肝のごぼう炒めをツマミに選び、レジに向かう。
    レジに行って、ギョッとする。
    いつものオバサンの店員ではない。
    それはいい。
    金髪がいる。
    おまけに碧眼だった。
    背が高い。
    イケメンだ。
    思わず名札をチェックする。
    『おうじ』
    名前まで、王子なの?
    とりあえず、見た目はおとぎ話の王子様だ。
    理恵子と目が合う。
    にっこりと微笑んでくれる。
    「お決まりですか?素敵なお嬢さん」


    5
    しゃべり方まで王子とか、ヤバくない?
    理恵子は心の中でツッコむ。
    しかし、バター臭い顔の割に日本語が流暢である。
    どこかの頭のイイ大学の留学生なのかしら?
    え?実は超絶優良物件?
    レジまでの数歩の間、理恵子は無表情を装い、レジカゴを格好良く持って颯爽と歩いたが、頭の中では意味不明な事を高速回転で考えていた。
    「お会計をお願いします」
    財布を見るフリをして、イケメン店員『おうじ』を観察する。
    よく見ると、ただのコンビニのストライプの制服を着ているだけだった。
    けれど、『おうじ』が着ると高級ブランドの新作のような爽やかさである。
    「678円です」
    「電子決済で」
    財布を見ていたのに、電子決済。
    怪しく思われないかしら。
    理恵子は内心の焦りを悟られないように必死だった。
    「ありがとうございます。
    また来てくださいね、素敵なお嬢さん」
    笑顔で言われた。
    冷静に考えると、コンビニ店員としては怪し過ぎだ。
    けれど、イケメンは得である。
    怪しささえも気にならない。
    理恵子はイケメンを観察しに毎日コンビニへ行く事にした。
    自分のお菓子は思考の彼方へと消えていた。


    6
    理恵子は久々に仕事がしんどくはなかった。
    とはいえ、仕事に集中しているか、と言えばそれは違った。
    頭の中は『おうじ』99%、残りの1%でタスクを処理していたに過ぎない。
    だめだ、今日は早く帰ろう。
    帰ろうと思って、ふと気づく。
    あんまり早く行っても、『おうじ』がいないんじゃないか。
    結局、もう一仕事片付ける事にした。
    仕事への情熱があろうとなかろうと、仕事は片付く。
    いつもの帰宅時間に近づいてくる。
    また、つまらぬ仕事を片付けてしまった。
    頭の中で決め台詞を吐いて、いそいそと帰り支度を始める。
    今日の本当の仕事はこれからだ。


    7
    今日も理恵子は『おうじ』を観察する。
    くしゃみをしている。
    イケメンや
    くしゃみをしても
    またイケメン
    脳内川柳が流れる。
    今日、ちょっと肌寒かったしな。
    理恵子の川柳の寒さと良い勝負だ。
    春先は寒暖差が激しかった。
    明らかに東洋人では無さそうだし、極東の気候に慣れないのかしら。
    『おうじ』がバックヤードに戻る。
    ジャケットを羽織っている。
    真っ白なジャケットだ。
    コンビニのストライプのシャツに合わせるとタキシードのようでもある。
    タキシードみたいって言うか、あれ、本物のタキシードなんじゃないの?
    よく見ると『おうじ』のズボンも白だった。
    上下合わせると舞踏会帰りのようである。
    コンビニにタキシードを着てくる男って、なんなの?
    理恵子にはよく分からない。
    そして、そのタキシードは少し薄汚れていた。
    両肘が擦り切れているのか、花柄の当て布が当ててあった。
    靴も汚れている。
    それでも、『おうじ』はタキシードがよく似合っていた。
    タキシードが制服みたいだわ。
    理恵子は思った。


    8
    ダメだ、気になり過ぎて仕事に集中出来ない!
    事もないんだけど。
    どんな時でも、仕事は進む。
    理恵子の特技だ。
    それでも気になるものは、気にはなる。
    今日、話しかけてみようかな。
    けど、何を?
    何が一番気になるんだろう。
    今日の仕事はいよいよ集中出来なくなってきた。
    無意識に処理すべき仕事だけが減っていく。
    『おうじ』に何を質問するかで頭がいっぱいだった。


    9
    何を聞くかは、もう決めていた。
    今日の理恵子はいつもと違う。
    颯爽と、レジまでの距離を歩く。
    購入商品をレジ台に下ろしつつ、質問する。
    「あの」
    「どうされました、素敵なお嬢さん」
    「タキシードお好きなんですか?」
    聞いた。
    聞いてしまった。
    なんて答えるのだろう。
    『おうじ』は少し困ったように微笑んでいる。
    「好き、と言いますか。
    これ以外、着る気になれませんで」
    「そうなんですか?」
    「一言では説明出来なくて。
    お嫌ではなかったら、一度、私の話を聞いていただけませんか」
    ナンパしたら、ナンパ返しに遭ったわ。
    これ、ナンパなのかしら。
    こうして、理恵子は『おうじ』の話を聞くことになった。


    10
    『おうじ』と会う時は、理恵子が一番好きなスイーツ店に行く事にした。
    『おうじ』はあまり飲食店に詳しくない気がしたからだ。
    どういうわけか、イケメンてグルメな感じがしないのよね。
    理恵子の自論だ。
    根拠は特にない。
    速水もこみちはイケメンだが、理恵子の中で彼はイケメンではなく、オリーブオイル男枠だ。
    イケメンにグルメはいない。
    『おうじ』のシフトが入っていない時間帯。
    理恵子の休みの日。
    土曜日の昼間に会う事になった。
    『おうじ』は言っていた。
    「夜の8時ぐらいから働くのが好きなんです。
    舞踏会に行く時間ですから」
    浮世離れした男である。
    だから、タキシードで出勤するのかしら。
    よく、職場の服飾規定に抵触しなかったわよね。
    まあ、コンビニ店員の私服だし、誰も文句は言わない気もするが。
    それ以前に、『おうじ』が悲しそうに微笑んで、タキシード以外は着る気がしない、と言えばどんな人間でも説得されてしまいそうだ。
    たとえ、人事の服飾規定担当者でも。


    11
    土曜日がやってくる。
    その日は朝早くから目覚めてしまった。
    いつも、休日は昼過ぎまで寝ているのに。
    三時間以上かけて着る服を吟味する。
    理恵子はいつもスーツしか着ない。
    それもパンツスーツだ。
    足が綺麗に見える。
    それ以上に機動力が高い。
    休日もジーパンが好きだった。
    最近流行りのバレルタイプも購入したし、
    何十年も前に流行した古代遺産のスリムタイプも時々履く。
    着ないともったいないし。
    ジーパンと言えど、ひと財産注ぎ込んだ物もあった。
    理恵子にとって、ジーパンは作業服ではなくおしゃれ装備の一つだった。
    だが、しかし。
    今日は。
    今日だけは。
    ジーパンおしゃれ装備では済まされない。
    相手はタキシードを愛する男なのだ。
    理恵子も淑女に見える服で挑む必要がある。


    12
    クリーム色の生地に水色のレース模様がプリントされたワンピースを選んだ。
    レースがプリントなのが面白い。
    そう思って、購入した。
    かろうじて、友達の結婚式に行っている感じがしない。
    ここが重要だった。
    大人のワンピースは下手をすると、ただの披露宴出席者に成り下がる。
    そういえば、結婚式ラッシュ終わったな。
    一時はご祝儀地獄に陥っていたが、そのブームが去った。
    結婚適齢期が過ぎていく。
    そうは思いたくなかった。
    このままでは、理恵子は12月25日の夜のケーキ。
    売れ残り突入だ。
    しかし、今日。
    再び、理恵子は販売商戦に乗っているのかもしれない。
    けど、これってデートなのかしら。
    乙女の疑問を残しつつ、時間は迫ってくる。
    戦の始まりだ。


    13
    『おうじ』とはいつものコンビニ前で待ち合わせた。
    約束の時間の10分前に来てしまった。
    少し早過ぎたかな。
    そう思ったが、『おうじ』はもう来ていた。
    春の暖かい日差しの中、
    『おうじ』はタキシードを着て佇んでいる。
    時々、『おうじ』を観察する女性達がいる。
    やっぱり、目をひくイケメンよね。
    それは間違いない。
    しかし、その割に『おうじ』は景色に馴染んでいた。
    コンビニの横の公園に植っている、
    大きな桜の木を『おうじ』はまじまじと眺めている。
    桜の花はもう散っていた。
    「遅くなってすみません」
    理恵子は声をかける。
    『おうじ』は振り向いて、にっこりと微笑む。
    「ちっとも遅くありませんよ、綺麗なお嬢さん。
    お約束の時間には、まだ余裕があります」
    綺麗なお嬢さん、に変わったわ。
    内心の歓喜を隠しつつ、澄まして理恵子は答える。
    「けど、もう待って下さってたんでしょう?」
    「女性をお待たせするものでは、ありませんから。
    それに、こちらの木を拝見していたんです。
    私の故郷ではあまり見た事がありません。
    とても、いい香りで素敵な木ですね」
    葉桜でも桜って分かるなんて、木に詳しいのかしら。
    ちょっとした隙間時間でも世界の美しさを楽しめる『おうじ』。
    彼の性格を体現しているようだった。


    14
    「ご予約の佐伯様ですね。ご案内します」
    黒いベストとスカートのウェイトレスが案内してくれる。
    お菓子だけではなく軽食やアルコールも提供してくれる。
    少し大人のスイーツ店だ。
    「窓際のお席をご用意しました」
    理恵子はウェイトレスに椅子をひかれて座る。
    『おうじ』は自分で椅子をひいて座った。
    「女性に椅子をひかれるのは慣れませんね」
    『おうじ』なら言いそうね。
    理恵子は思う。
    メニュー表が運ばれてくる。
    「この他に、季節限定メロンのヴェリーヌが今の季節、ご用意してございます」
    壁に立てかけられた黒板に季節限定のメニューが記載されていた。
    「決まりましたら、こちらの鈴を鳴らして、お呼び下さい」
    ウェイトレスが去っていく。
    「日本語のメニュー、大丈夫ですか」
    「あ、はい。問題ありません」
    『おうじ』は日本語を読む事も不自由しないようだ。
    ホントに日本語に違和感無いわよね。
    違和感があるのは、見た目の方だ。
    日本語堪能な金髪イケメン。
    少し異様だった。


    15
    理恵子はコーヒーゼリーを選んだ。
    お気に入りだった。
    この店では、少しリキュールが入っている。
    大人の味だ。
    プライベートでまで生クリームを食べたくないわ。
    ここの生クリームが美味しいのは知っていた。
    けど、コンビニの商品と比較してしまう。
    この味は、コンビニでは再現できない。
    そう思ってしまう。
    しんどかった。
    今日は純粋に楽しみたい。
    ゼリーは良い。
    甘さが強くない。
    特にコーヒーゼリーは苦味もある。
    そして、ゼリーはコンビニオリジナルスイーツには選ばれない。
    一番、仕事から自由だった。
    『おうじ』はメニュー表をくまなく見ている。
    どれにしようか真剣に悩んでいる。
    「いちごのショートケーキ。
    初めて聞きました。
    ミルフィーユ。
    女性の前で食べるには勇気が必要です。
    モンブラン。
    少し季節外れですね」
    何やら、ブツブツと吟味している。
    そういえば、“ショートケーキ”と言って、この形を思い浮かべるのは日本人だけらしい。
    日本では定番だが『おうじ』には馴染みが薄いのだろうか。
    「ショートケーキは日本では定番よ。売れるわ」
    理恵子が口を挟む。
    「決めました」
    『おうじ』が顔を上げた。


    16
    『おうじ』が鈴を鳴らす。
    ひどく手慣れた手つきのように思えた。
    用事があると、誰かを呼ぶ。
    そんな人種に見えた。
    ウェイトレスがやって来た。
    「私は季節限定メロンのヴェリーヌと紅茶をストレートで」
    やっぱり、限定物って強いわよね。
    理恵子は思う。
    しかし、それだけでもないような気がした。
    『おうじ』は、もっと素敵な物を見ているような気がした。
    最近、理恵子が忘れている何か。
    「お嬢さんおすすめのショートケーキも捨てがたいのですが、季節の香りを感じたくて」
    『おうじ』は理恵子に断りをいれる。
    気にしなくていいのに。
    「お嬢さんは何になさいますか」
    「私はコーヒーゼリーとブレンドコーヒー」
    コーヒー尽くしだ。
    甘さからの逃避行だ。
    二人の注文が終わる。
    ウェイトレスが水を置いていく。
    そして、理恵子は向き直った。
    「どうして、タキシード以外着る気がしないの?」


    17
    『おうじ』は水をひとくち含んで話し始めた。
    「私は…
    本業はシンデレラの王子なのです」
    『おうじ』は王子だった。
    やっぱりな。
    そんなワケあるか。
    理恵子の一人脳内ツッコミ大爆発である。
    「つまり…
    Prince Charmingってこと?」
    「そう呼ぶ方もいらっしゃいますね。
    私には過ぎた名前ですが」
    王子様は少し、悲しそうに微笑む。
    そういえば、シンデレラはどこに行ったんだろう?
    「シンデレラは?」
    「そこが一番の問題でして」
    王子様はポツリポツリと話し始めた。
    「舞踏会の夜に魔法使いが来なかったんだそうです。
    理由は分かりません。
    あれ以来、私達の王国では、魔法使いを見た者も魔法の気配を感じた者もいません。
    それも問題ではあるのですが…
    シンデレラは、ああ見えて強い女性なんです。
    魔法使いが来ないなら、自分でドレスを作ろうと思ったそうです。
    けど、ドレスを作って思ったんだとか。
    わざわざ、舞踏会に行かなくても、ドレスを売ってしまえば、生活出来るんじゃないかって。
    それで、ドレスを作って生計をたてるうちに、すっかりそれが本業になって事業が成功してしまったんです」
    王子はそこで、また水を飲む。
    そこから先は聞くまでもない気がした。


    18
    理恵子はそれでも聞いてしまった。
    「王子様…
    貴方、つまりは、シンデレラにフラれたの?」
    王子様は答えた。
    「私達は、出会う事すらありませんでした。
    恋も始まらない。
    フラれるところまでもいっていない気がします」
    自分でトドメを刺したよ、この人。
    理恵子は思う。
    結構、冷静なんだな。
    「それで、王子様はどうしてまた、日本のコンビニ店員を?」
    「私は、言ってみれば女性に夢とトキメキをお届けするのが仕事なんです。
    けれど、シンデレラは自分で夢を掴んでしまった。
    こんな私でも、まだ夢やトキメキを届けられないか、と思いまして。
    フラフラしていたら、ここにいました」
    王子様は、王子を失業して、家出したらしい。
    今度、本屋でシンデレラを読んでみないと。


    19
    「夢とトキメキには、やっぱりタキシードなの?」
    「そういう訳ではないんですが。
    このタキシードで舞踏会に行く予定だったのです。
    シンデレラが自分の人生を歩んだ事は、素晴らしい事だと思うのです。けれど、舞踏会は私にとって夢とトキメキを届ける場所でした。その舞踏会が開かれなかった」
    つまり、王子様が届けるべき夢とトキメキが行き場を失くした、ということだろうか。
    「タキシードは王子様にとって象徴なのね」
    「そうかもしれませんね。私一人が舞踏会の夜に取り残されているのかもしれません」
    舞踏会に来ないシンデレラ。
    開かれない舞踏会。
    来ないシンデレラを待つ王子様。
    トキメキよりも切なさが募る話だった。


    20
    「それで、王子様はこれからどうするの?」
    「どうしましょうか。
    私にもよく分からないのです。
    どうすればいいのか。
    今の時代、女性は私などいなくても立派に生きていける気がしてきて」
    王子様がそうつぶやくと、真っ白のタキシードがいよいよ薄汚れていく。
    理恵子は驚いて目を見張った。
    魔法!?
    自信を失くすと魔法が解けるの?
    理恵子は慌てて言った。
    「そんな事ない!
    王子様は必要!
    めっちゃ必要!!」
    「そうでしょうか?」
    王子様の自信喪失は根深いようである。
    「そうだ!
    私の企画、手伝ってよ」
    こうして、王子様は理恵子の仕事に巻き込まれていった。


    21
    「今度、夏のオリジナルスイーツを作らないといけないの。コンビニの。
    あ、私ね、コンビニのスイーツ担当なんだけど」
    理恵子が捲し立てる。
    「コンビニのスイーツを作っておられるんですか?」
    「そうなの」
    「それで、いつも真剣にスイーツを見つめていらっしゃったんですね」
    王子様は、にっこりと微笑んだ。
    花が綻ぶような華やかな笑顔だ。
    私って、そんなに真剣にスイーツ見てたのかな。
    その笑顔を見ながら、ぼんやりと思う。
    「私でも、お手伝い出来る事があるなら、是非、協力させて下さい」
    「王子様って、どんなオヤツ食べるの?」
    「オヤツですか?」
    「そう。王子様ってどんなオヤツ食べるのかな、と思って」
    「そうですねぇ。フルーツは多かったですね。他はフィナンシェとかも好きでしたが」
    思ったよりも地味だった。
    「基本的にコンビニスイーツより、少量だと思います」
    「そうなの?」
    「はい。基本的にメインの食事の邪魔にならない量で、栄養の補助の目的が大きかったと思います」
    思ったよりも、実用的だった。
    コンビニスイーツは、若い女性なんかは、ご飯代わりにしている人もいるかもしれない。
    「なんか、コンビニスイーツとは目的が違うのね」
    「それは、そうかもしれません」
    「けど、王子様が食べるような素敵なイメージが欲しいのよ」
    シンデレラの王子様が食べる。
    そのキャッチコピーだけでも食べたい気がする。
    「まずは、お菓子の事を調べてみるのはどうですか」
    「本屋さんにでも行ってみる?」
    「お付き合いしますよ」
    二回目のデートの約束だった。


    22
    本屋へと一緒に行く。
    建前としては、夏のスイーツ企画、手始めに製菓の専門書を見に行く事。
    本音は、絵本コーナーのシンデレラだった。
    本当に、シンデレラの王子様がその辺出歩いてる、なんてあり得る?
    半信半疑だ。
    しかも、コンビニ店員やってるなんて。
    冷静に考えると、おとぎ話の住人が現実にいるなんてあり得ない。
    しかし、『おうじ』には、妙な説得力があるのも事実だった。
    落ち込んだだけで、タキシードが物理的に汚れる、とかある?
    それもまた、説明がつかない。
    しかも、その後、『おうじ』が微笑むと、タキシードは少し輝きを取り戻した。
    とりあえず、絵本のシンデレラを見たら、何か分かるんじゃないのかしら。
    そして、本屋に向かう事にした。


    23
    本屋に行っても『おうじ』はイケメンだった。
    男性ファッション雑誌のモデルよりもイケメンなんじゃないかしら。
    『おうじ』自身は本屋が珍しいようだった。
    上品に歩いているが、視線がさまよっている。
    そして、女性誌のコーナーの前を通った時だった。
    「シンデレラ…」
    『おうじ』が青ざめて、つぶやいた。
    「え!どこ」
    「この方です」
    『おうじ』が指差した方を見る。
    「この人、最近有名になったデザイナーの新出麗子じゃん」
    女性ファッション雑誌の独占インタビューだった。
    目立つ位置に平積みにされている。
    『デザイナー新出麗子、ウェディングドレスからデイリーファッションにも進出!独占インタビュー』
    見出しにはそう書かれている。
    しかし、理恵子は気づいた。
    新(シン)出(デ)麗(レ)
    「ラ」は、どこにいったの?
    女性雑誌の特集記事を立ち読みしてみた。
    『これからの時代、王子様を待っていても誰も助けてくれません。自分から動かないと』
    『新出さんは、自分から動いたと?』
    『はい。結果的には待つよりも、自分から動く方が私には合っていたみたいで。夢もトキメキも自分の力で掴める事に気づきました』
    これは。
    今さら、王子様の入る余地は無いわね。
    理恵子は思う。
    落ち込む『おうじ』には悪いけれど、これは、理恵子にもチャンスがあるのではないか。
    そう思う事をやめられなかった。


    24
    タキシードがまたくすんでる。
    おうじ、こと王子様は新出麗子、ことシンデレラの記事を見つけてから、少し元気がないようだ。
    『おうじ』が王子様なのは、やっぱり本当っぽいのね。
    理恵子は特に言葉をかけなかった。
    私は、王子様がシンデレラにフラれた事を喜んでいるんだもの。
    理恵子が下手に慰めるのは、嘘くさい気がした。
    代わりに、仕事の話をする。
    「夏の期間限定スイーツなんだけど、そもそも何を作るかが決まらなくて」
    王子様は我に返ったようだ。
    「今日は、理恵子さんのお仕事のお手伝いでしたね。
    全力でお手伝いしないと、私が私ではなくなりますね」
    タキシードの輝きは、あんまり変わらない。
    それでも、理恵子の前で他の女性の事で落ち込む事をやめてくれたのだ。
    王子様も大変ね。
    理恵子は少し、同情した。
    けれど、悪い気はしなかった。


    25
    製菓の専門書コーナーに行ってみる。
    クリーム
    生地
    焼き菓子
    専門書ともなると、菓子になる以前の説明が並ぶ。
    「お菓子も奥が深いのですね」
    王子様は、もう目の前の出来事に夢中になっているように見える。
    落ち込んでいないわけではないのだろう。
    けれど、目の前に素敵な物があると、どんな時でも集中できる。
    こういうのって、育ちの良さって言うのかな?
    よく分からない。
    けど、なんにせよ、王子様らしくて彼の長所だと思った。
    「なんかさ、暑い夏にワクワクして、トキメキがあって、美味しいお菓子が作りたいんだけどさ。
    結局、なんなの、それは?
    って、なっちゃうのよね。
    値段の問題も考えないといけないし」
    理恵子は気が重くなってくる。
    今日の理恵子は桜色のワンピースを着ていた。
    理恵子の桜色までくすんできそうだった。
    「悩んでいる時は、考えるよりも手を動かす方が建設的な事もありますよね」
    「まあ、そうなんだけどさ。試作は疲れるし、何よりも甘いお菓子は食べ飽きちゃって」
    最近は、お菓子の匂いを嗅ぐのも嫌になってきている。
    「オーソドックスなお菓子は食べ飽きたという事ですか?」
    「そうかもしれない」
    定番のお菓子は研究し尽くしたつもりだ。
    本屋に並んでいる専門書の類は、似たような本ならほとんど目を通したと思う。
    傲慢になるつもりはない。
    まだ、改善の余地はあるのかもしれない。
    けれど、理恵子の情熱の方が尽きそうだった。
    「私の実家に来てみますか?」
    製菓の本から少し目を離し、王子様が思案しつつ提案した。
    「実家?」
    「はい。一応、お城ですので、珍しいお菓子もあるかもしれません」
    「え。いいの?」
    「はい。理恵子さんのお役に立てるのなら、帰ってみる価値があると思います」
    おとぎの国のお城に招待されたわ。
    冒険が始まった。


    26
    決行日は二日後だった。
    「満月の夜にいつものコンビニに来てください」
    直近の満月は二日後だ。
    「満月の夜は魔力が満ちるのです。
    その時に、おとぎ話への入り口が開きます」
    最早、信じるも信じないもなかった。
    行ってみれば、全てがわかる。
    それに尽きた。
    当然、仕事どころではない。
    けれど、仕事のために行くのである。
    何が作りたいのか。
    安くて
    美味しくて
    満足感があって
    トキメキがあって
    ワクワクする
    そんなお菓子。
    なんだ、それは。
    具体的なのは、安さと美味しさぐらいのものである。
    とにかく、手を動かす。
    後は、月が満ちるのを待つだけだった。


    27
    月明かりの下に王子様がいる。
    これで、ガラスの靴があれば完璧ね。
    月明かり程度だと、タキシードのくすみもよく分からない。
    完全無欠の王子様に見えた。
    「お手をどうぞ、綺麗なお嬢さん」
    今夜の理恵子は仕事帰りだ。
    ドレスアップのしようがなくて、いつものパンツスーツである。
    せめて、中のブラウスはシフォン生地で胸元に大きなリボンがある物を選んだ。
    ドキドキしながら、王子様の右腕に自分の左手を添えてみる。
    こんなに古風なエスコートをされるのは、初めてだった。
    日常的にはありえないわね。
    けれど、非日常だからこそ良かった。
    胸が高鳴る。
    お姫様になった気がする。
    王子様に導かれて、コンビニの隣の公園の中を歩いていく。
    公園の中の大きな池のほとりまでやって来る。
    水面には満月が反射して、幻想的な光景だった。
    「ここの池を利用して、城に帰ります」
    「飛び込むの?」
    恐る恐る理恵子が聞きます。
    「正確には、飛び込む訳ではありません。
    入り口として利用するだけです」
    意を決して、池に足を踏み入れる。
    側から見たら、ただの入水自殺ね。
    そして、理恵子は池に吸い込まれた。


    28
    気がつけば、ファンシーな空間にいた。
    いつ、池の中に入ったのかも分からない。
    振り返ると黄金の装飾の重厚な姿見が置いてあった。
    左手の先には王子様がいた。
    タキシードはいつの間にか光り輝き、幾つもの勲章がぶら下がっている。
    「この鏡?」
    「この鏡を通り抜けてきました」
    「魔法の鏡なの?」
    「そういう訳ではありません。外の世界を見てみたい、と思えば扉は開かれます」
    「結構、いい加減なのね」
    「都合が良いところがあるのが、おとぎ話ですから」
    王子様がウインクする。
    こういう仕草の男って、元々は胡散臭くて嫌いだったんだけどな。
    王子様がやると様になる。
    何より嫌味が無かった。
    本物の王子様の本領発揮だ。
    「まずは、厨房に行ってみましょうか」


    29
    「チーフシェフを呼んでもらえますか」
    厨房に入るなり、王子様は指示を出す。
    その場にいたシェフ達がざわついている。
    「陛下達にお知らせしなくていいのか」
    といった声も聞こえてくる。
    そりゃ王子様の家出だもん、みんな知ってるわよね。
    理恵子が厨房内を観察していると、一際背の高いコック帽を被った男が急ぎ足でやってきた。
    こういうところが、いちいち、おとぎ話よね。
    実際、背の高いコック帽なんて現実では、それこそファンタジーだった。
    「殿下…お帰りになられたので」
    「父上と母上には、内密に」
    「そう言われましても」
    チーフシェフは熊のような大男だった。
    その大男が困りきった顔をしている。
    中間管理職はどこも大変よね。
    理恵子は同情する。
    「では、私が逃げ出した後で報告して下さい」
    より一層、チーフシェフが困っている。
    このままでは、埒が開かない。
    「あの、よろしいでしょうか」
    理恵子は口を挟む事にした。


    30
    熊男は理恵子に向きなおり、今度は目と口を最大限に開いている。
    なかなかに感情表現の豊かな人物である。
    「私、佐伯理恵子と申します。
    王子様には、いつもお世話になっております。
    先日、私の仕事の夏の季節限定スイーツ企画に行き詰まっていたところ、こちらの職場をご紹介いただきまして。
    もし、ご迷惑でなければこちらでのスイーツ制作を見学させていただきたいのですが」
    そう言えば、名刺忘れたわ。
    基本的に内勤職のため、持ち歩く習慣が無いのだ。
    熊男は、まだ衝撃から立ち直れていない。
    「殿下…
    ワシが言うのも僭越ですが、二股は良くないと思いますぜ」
    「チーフ。
    シンデレラは現実世界で服飾デザイナーとして成功していたよ」
    熊男、第二の衝撃である。
    「では、殿下はシンデレラの嬢ちゃんにフラれたんで?」
    「私達は出会ってすらいないのです。
    フラれる、という表現は非常に遺憾です」
    コホン。
    理恵子は咳払いをする。
    「それで、スイーツ見学を」
    「おっと、いけねぇ。
    おーい、誰かパティシエ呼んで来い」
    そうして、今度はパティシエが犠牲になった。


    31
    結論から言うとおとぎの国のスイーツ見学はほとんど役に立たなかった。
    まず、道具が勝手に走る。
    材料が勝手に混ざっていく。
    パティシエが指示すれば、勝手に形を作っていく。
    製菓の自動化ロボットで真似できる範疇じゃないわね。
    「私の魔法は特別、菓子作りに特化しておりますから。白雪姫のアップルパイにも負けない自信があります」
    パティシエが自信を持って説明する。
    魔法ってなに?
    私の会社でも使えるの?
    それである。
    そして白雪姫がアップルパイを作る事も気になった。
    「あちらの国では、王子様との出会いのきっかけが毒林檎だ、という事で毒林檎の毒を魔法で中和して作ったアップルパイは、とても縁起が良いのですよ」
    そんなことある?
    白雪姫って、結構、メンヘラなのかしら。
    そんな事を思いながら、パティシエのお菓子作りを見学していた。
    久々に、クリームの香りも焼き菓子の甘い匂いも美味しそうだと思った。
    そして食べてみると、どれも飛び切り美味しかった。
    せめて、どのくらいのコストがかかるのか調査しようと思った。
    「このお菓子の原価率はどのくらいですか」
    「げんかりつ?何ですかなそれは?」
    「原材料がどのくらいの金額なのか、という事ですが」
    「金?金と菓子を交換したがるものがいるのですか?」
    王子様が説明してくれる。
    「おとぎの国ではお金の概念が無いのです。
    基本的には、強く願えばなんでも手に入るので」
    めちゃくちゃである。
    そして、ものすごく納得した。


    32
    現実のコンビニスイーツにはならなくても、おとぎ話のお菓子が美味しいのは事実だ。
    香り高い紅茶。
    贅沢で美しいお菓子。
    マカロン。
    シュークリーム。
    ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家も、同じように作られるのだろうか。
    パティシエに聞いてみる。
    「お目が高いですね。ヘンゼルとグレーテルの魔女は有名なパティシエールでして。毎年、メルヘンお菓子コンクールでの受賞常連メンバーの一人です」
    あのおばあさん、ただの人喰い魔女じゃないんだ。
    「ただ、彼女は優勝には至らない欠点がありまして…」
    「欠点?」
    「はい。お菓子のカロリーが異様に高いのです。まあ、子供を太らせて食べるためのお菓子ですので。味は間違いないのですが」
    怖すぎる。
    いろんな意味で。
    しかし、おとぎの国にもコンクールがあるのが少し世知辛い。
    理恵子も社内コンペが待っていた。


    33
    結局、振り出しに戻った。
    何を作ればいいんだろう?
    よく分からないままである。
    パティシエの極上のお菓子と香りの良い紅茶に囲まれて、理恵子は苦悩する。
    けど、まあいいか。
    今は、考えるよりも楽しみたい。
    もういっそ、何もかも投げ出して、パティシエの弟子になれないだろうか。
    理恵子が甘い夢の中に現実逃避をしていると、
    現実世界へ呼び戻すおとぎ話の住人の声がする。
    「理恵子さん」
    おとぎ話のクセに現実に戻さないでよ。
    そう思うが、優雅に返事をする。
    「どうしたんですか。王子様」
    「そろそろ、現実に帰りませんか?」
    いや、現実に思考はかえっていますが。
    「母がお茶会から帰って来る時間なんです」
    「お茶会?」
    「はい。ハートの女王のお茶会です」
    「え?アリス?」
    ハートの女王は不思議の国のアリスの登場人物ではなかったか。
    「母は、最近の女性は押しが強くないといけない、と思っているみたいで、ハートの女王のお茶会に勉強に行っているのです」
    「はあ」
    おとぎ話の世界の女性の価値観が変わりすぎてついていけない。
    現実世界の女性よりも自立心が強くて勤勉なんじゃないのか。
    私と役割、交替してほしい。
    切実だ。
    「それで母が最近、押しが強くなってきまして」
    「お母さんに押し負ける前に現実に逃避行したいのね?」
    逃避行って、普通は夢の国の専売特許だと思っていた。
    けれど、理恵子も鬼ではない。
    実家のめんどくささには覚えがある。
    「分かったわ。早く帰りましょう」
    こうして、理恵子の冒険譚はあっさりと終わりを迎えた。
    実家の居心地の悪さによって。


    34
    黄金の装飾の姿見のある部屋まで王子様と足早に歩く。
    お城の侍従や侍女達が王子様を見て、まず驚く。
    次に、理恵子を見て二度驚く。
    みんなチーフシェフと同じ反応ね。
    自分が見せ物パンダになった気分である。
    気を紛らわそうと、王子様に話しかける。
    「王子様のお母さん?王妃様?は、どんな人なの?」
    「母ですか?母は、先代のシンデレラなんですよ」
    「は?」
    「現実世界の人たちは、シンデレラのお話は永遠だと思っておられますけど、おとぎ話の世界では繰り返されているのです」
    初耳である。
    「私の実家は代々、シンデレラの舞踏会を開くのが習わしでして」
    「はあ」
    「だから、シンデレラのお話は時代によってマイナーチェンジがあるでしょう?」
    確かに。
    特に義理の姉の扱いとか。
    「時代に合った変更があるのは、おとぎの国も変化するからなんです」
    しかし、シンデレラが来ない王子様。
    未だかつてない変更である。
    「母は、結構オーソドックスなシンデレラだったのだと思います」
    オーソドックスなシンデレラ。
    結構、良い響きだ。
    金髪
    碧眼
    王子様を待つ可憐な少女。
    それが、子育ての末にハートの女王の薫陶を得る。
    「ないわー」
    「理恵子さん?」
    「せっかく、可憐でお淑やかなシンデレラがハートの女王になっちゃうなんて」
    「父も手を焼いてるんです。
    まあ、そんなわけですから、早く帰りましょう」


    35
    王宮の鏡を通り抜けて、コンビニ横の公園の池のほとりに戻って来る。
    随分、長い時間が経過したように感じたが、現実では時間が経過していないようだ。
    おとぎ話の定番よね。
    しかし、これからどうしよう?
    ふと、王子様に声をかける。
    「王子様はこっちでは、どこで生活してるの?」
    「月が美しいので、そこのベンチの上で」
    優雅に言っているが、実態はただのホームレスであった。
    タキシードが薄汚れていたのは、王子様の気持ちの問題だけではなさそうだ。
    「私の夢をかえせ」
    地の底から声が出そうである。
    「すみません。けれど、こちらには戸籍も何もありませんで」
    確かに、その問題もあった。
    「仕方ないわね。とりあえず、ウチに来て。変な意味じゃないからね」
    そう言いながら、理恵子の頭の中は、妙な期待で爆発寸前であった。
    え!
    うれし、恥ずかし、ドキドキイベント多発フラグ発生!?
    とりあえず、考えている事が恥ずかしかった。


    36
    夜のショッピングモールを王子様と駆け抜ける。
    21時まで営業している二○リに行くためだ。
    間に合った。
    新学期が始まり、少し時間が経ったこの季節。
    一人暮らし向け寝具セットは安売りシーズンのはずである。
    割引きされてるわね。
    理恵子は値段を確認する。
    「現実世界には、こんなにコンパクトな寝具があるのですね」
    居候のクセに図々しいコメントである。
    しかし、金髪の王子様の寝具が割引布団セットなのは少し切ない。
    シーツだけ少し素敵な物を準備してみた。
    布団を持って帰るのは少し大変だった。
    けれど、王子様が運んでくれる。
    「女性に大きな荷物は持たせられません」
    せめて、シーツだけは理恵子が持った。
    王子様だって、別に力仕事なんてあんまりやらないでしょうに。
    けれど、コンビニで働く王子様なのだ。
    案外、慣れているのかもしれない。
    ようやく、理恵子のマンションにたどり着く。
    「お邪魔します」
    王子様が家にやって来た。


    37
    「靴を脱いで、このスリッパを使って」
    かろうじて置いてある来客用スリッパを出す。
    王子様は何もかもが珍しいようだ。
    スリッパですらマジマジと眺めている。
    少し広めの1DKだ。
    ダイニングとキッチンの間を仕切ろうと思えば、引き戸を閉める事も出来た。
    内装は、白と黄緑色で統一されている。
    部屋の中があんまりメルヘンなのって落ち着かないのよね。
    日本人の感覚だと、理恵子は思っている。
    シンデレラ城への憧れはあるけれど、実際にベルサイユ宮殿の中で眠れ、と言われると発狂する。
    その程度には、メルヘン内装が苦手なのだ。
    王子様には地味に感じるかしら。
    「理恵子さんらしい部屋ですね」
    そうかしら?
    「スッキリして、居心地がいいです」
    やわらかい表情で王子様が微笑む。
    ヤバい。
    強烈なメルヘンを家の中に引き入れてしまった。
    私、今夜、眠れるかな。
    初夏の夜は長い。


    38
    「今日は、もう寝ましょう」
    朝から仕事に行き、おとぎの国のシンデレラ城へお菓子見学に行って、二○リへ行って、今に至る。
    ヘトヘトだった。
    王子様の布団を広げて、シーツをかける。
    少し重厚な若草色のシーツ。
    王子様の金髪に似合う気がした。
    「綺麗な色のシーツですね。理恵子さんのお部屋によく合っています」
    「王子様がここに寝るのよ」
    「ありがとうございます」
    そう言えば、王子様のパジャマを買い忘れた。
    もういい。
    あとは、ア○ゾンがある。
    ネット通販に頼めばなんでも届けてくれる。
    とりあえず、一刻も早く、ベッドに滑り込みたかった。


    39
    翌朝は幸い、土曜日だった。
    ゆっくり眠れた。
    王子様がいてドキドキして眠れないか、と思ったのに。
    王子様よりも疲労の方が強かったようだ。
    なんとなく、がっかりする。
    「おはようございます」
    朝日の中に、タキシードの王子様が立つ。
    タキシードのくすみが、少し取れたのかな。
    ちょっとだけ、嬉しくなる。
    王子様は自信を取り戻しているのだろうか。
    「おはよう。朝ごはんはバタートーストでいい?」
    時間の無い理恵子の朝食はシンプルだ。
    どうかすると、食べずに職場に向かう事も多い。
    「はい。バターの香りが大好きです」
    にっこりと王子様が微笑む。
    金髪が溶けたバターみたいね。
    朝食の準備をした。


    40
    王子様が理恵子の家に来て、一週間が経過した。
    王子様はコンビニバイトのシフトをお昼枠に変えた。
    「理恵子さんと同じリズムで生活したいので」
    顔がニヤけるのを誤魔化すのに苦労した。
    朝、一緒に家を出る。
    コンビニで別れる。
    夜、理恵子がコンビニに寄る。
    王子様を回収して家に帰る。
    なんか、新婚夫婦みたいだな。
    ふと、思って、慌てて否定する。
    いやいや、結婚とか、別に期待してないし。
    そんなんじゃないし。
    そもそも付き合ってないし。
    一体、誰に言い訳をしているんだ、理恵子。
    しかし、王子様は予想はしていたが、生活能力は皆無であった。
    お皿を洗うと、皿を割る。
    洗濯をする時に洗剤を入れ忘れる。
    最初はちょっとイラッとした。
    ある時は、ちょっとした買い物にコンビニまで行ってもらったら、一時間以上帰って来ない。
    どうしたのか、と思って見に行ったら公園に寄り道していた。
    「王子様、大丈夫?」
    「ああ、理恵子さん。見てください。ツバメの巣があって。ヒナが餌を食べているんです。可愛いですね」
    理恵子は野鳥が大嫌いだった。
    世の大半の感染症は渡り鳥が運んで来ると思っている。
    妊婦にハトは天敵だと聞く。
    食品関係の仕事をする理恵子も同様だった。
    「ほら、おいで」
    ツバメを肩に乗せている。
    鷹匠か。
    ツバメで?
    野鳥が気持ち悪くて戦慄する。
    だいたい、現実の身分的にツバメは王子様自身である。
    「理恵子さん?」
    「ごめん。鳥、苦手なの」
    しかし、雨に濡れた子犬のように悲しそうな目で見られるとそれ以上何も言えなかった。
    何より、イケメンの情けない顔を見ると全てが許せる気がした。
    なんか、イケナイ扉を開きそうな気がする。
    さすがに、杞憂である。
    そして、王子様との生活は何より楽しかった。
    ニュースを見ても、真剣に同情する。
    雨が止んでも、本気で喜ぶ。
    王子様が微笑むと、スズメとハトがいつもよりも近寄ってくる気がする。
    鳥フンの被害はあまりありがたくないが。
    王子様って、こういうところよね。
    理恵子の日常生活におとぎ話が息吹き始めた。


    41
    理恵子が王子様との同棲生活に浮かれている間にも時間は過ぎていく。
    気づけば、季節限定、夏のスイーツコンペの締め切りが近づいていた。
    ヤバい。
    どうしよう。
    自分がトキメいている場合ではなかった。
    トキメキを商品化しなくては意味がない。
    おとぎの国のパティシエを各工場に一人配置案。
    最早、アイディアがバグり始めた。
    何がいいんだろう?
    理恵子、ピンチである。


    42
    ため息をついてコンビニに向かう。
    王子様はいつもと変わらず、キラキラしている。
    最近はタキシードがかなり白くなってきた。
    もっとも、夜はタキシードをきちんと脱いでパジャマで眠っているところも大きいが。
    「どうされました?」
    王子様が理恵子を心配する。
    「いや、前も言ったけど、夏のスイーツ企画がね」
    「そう言えば、それが理恵子さんと私の実家に行ったきっかけでしたね」
    そのとおりだ。
    しかし、王子様はどうして、理恵子に色々話したり、実家に連れて行ってくれたりしたのだろう?
    これが、ただただトキメキを運ぶ自分の仕事を全うしたかったから、なんて言われたら、理恵子は恋も仕事もペシャンコになるだろう。
    どうして、私?
    聞きたいような
    聞きたくないような。
    人間、他にやらなくてはいけない事がある時ほど、別の事にも気をとられる。
    王子様の顔をマジマジと見つめてしまう。
    「王子様はさ。あの時、どうして私を助けてくれたの?」
    聞いてしまった。
    「理恵子さんは、いつもコンビニで真剣にお菓子を見ていました。
    そして、誰よりもトキメキを知っている。
    けれど、誰よりもトキメキが分からなくなっている。
    そんな顔をしていて、なんだかほっとけなかったんです。
    気になって」
    王子様の顔は、いつもと変わらない。
    優しい微笑みだ。
    トキメキ。
    「そう!シンデレラよ」
    理恵子は思わず叫んだ。


    43
    「シンデレラ?新出さんがどうされたんですか?」
    「新出さんの事じゃないのよ。みんな、誰でもシンデレラなのよ。魔法とガラスの靴を待ってるの」
    「魔法とガラスの靴?」
    「そう。どんな人でもシンデレラになるお菓子を作るのよ」
    「素敵ですね。それなら、みんなにトキメキが戻るかもしれない」
    「そう!」
    とにかく、家に帰って試作する事にした。


    44
    深夜営業のスーパーに繰り出して、ゼラチンと寒天を全種類購入する。
    砂糖も数種類揃えた。
    キュラソーもいくつか購入してみる。
    理恵子のマンションのキッチンでゼラチンの配合比率、寒天と混ぜた場合、食感、硬さ、味、匂い、全て記録していく。
    翌日、会社の3Dプリンターでお菓子の型を制作してみる。
    久々に日付が変わるまで残業した。
    王子様には合鍵を渡し、先に帰ってもらうように伝えておく。
    「私に何か、お手伝いできる事はありませんか」
    理恵子は王子様の目を見て、真剣に答える。
    「王子様には、試食をお願いしたいの。
    この商品のイメージは、王子様が一番よく知っているはずだから」
    「そうかもしれませんね」
    王子様はいつもの優しい笑顔で微笑んだ。


    45
    試作品1号は型から外す時に崩れた。
    試作品2号は色が濁っていた。
    試作品3号。
    三度目の正直で形にはなっていた。
    香り高いマリアージュフレールの紅茶と合わせる。
    王子様に出してみた。
    「うーん…紅茶の方が美味しいです」
    試作品4号。
    「香料くさいです」
    試作品5号。
    「味にトキメキがありません」
    試作品6号。
    「食感が納得出来ません」
    試作品7号…
    このように、試作は何度も行われた。
    王子様はいつまででも試食を続けてくれた。
    イマイチの評価を出しつつも、出したお菓子は全部食べてくれた。
    「理恵子さんのトキメキのカケラですから」
    言う事がいちいち、王子様だった。
    まあ、王子様なんだけど。
    けれど、また行き詰まる。
    何がいけないのかな。
    理恵子はぼんやりと王子様を眺める。


    46
    日本のマンションにやって来たシンデレラの王子様。
    今ではすっかり、正座が板についた。
    紅茶だけではなく、日本茶も嗜む。
    好き嫌いが無いので、最近は蕎麦を音をたてて啜る技も習得した。
    王子様は洋風だけではないのよ。
    そう。
    和風の食材も混ぜてみればいいんじゃない?
    理恵子はインターネットでくず粉とこし餡を取り寄せてみた。


    47
    くず粉の扱いはめんどうくさい。
    必ず加熱して糊化させる必要がある。
    そこにゼラチンや寒天を混ぜてみる。
    いくつか試作してみた。
    手応えを感じたところで、餡子のデコレーションをつけてみる。
    白餡に色粉を混ぜて、華やかな色合いにする。
    これでいいわ。
    今度は、一保堂の煎茶を合わせてみた。
    王子様に出してみる。
    「どうかしら?」
    理恵子がドキドキしながら尋ねる。
    口からトキメキがこぼれ落ちそうだった。


    48
    「これは…」
    王子様が目を見張る。
    「本当に、シンデレラのガラスの靴ですね」
    「だって、トキメキと言えばガラスの靴よ」
    簡単な事だったのだ。
    難しく考え過ぎた。
    夏なんだから、冷菓の方が食べやすい。
    生クリームにこだわる必要はなかったのだ。
    糊化したくず粉にゼラチンと色粉を混ぜていく。
    砂糖は和三盆糖を使用した。
    特製の靴型にゼリー液を流し込む。
    靴のデコレーションに練り切りの技術を応用した。
    くず粉とゼラチンの靴の表面に桜色の白餡でレース模様を描いていく。
    桜の香りも少しだけ混ぜておく。
    本物の桜の葉を使用したので上品な香りに仕上がっている。
    王子様は煎茶を啜りながら、ガラスの靴を食べていく。
    「とても美味しいです。
    食感が今までで一番神秘的です。
    味も香りも、今までで一番、ガラスの靴です」
    王子様に食レポの才能は無いようだった。
    けれど、一番よく出来ている事は伝わってきた。
    「そう。完璧な一品なの。けどね。量産は無理だと思うのよ」
    理恵子は少し疲れていた。
    ここまで頑張ったのに。
    王子様はにっこり微笑む。
    「それで、いいんです。
    だって、ガラスの靴は本来私だけの物ですよ」
    そして、またウインクした。


    49
    理恵子はフリーズした。
    再起動に3秒ほどかかった。
    「え?王子様だけのもの?」
    「はい、そうです。そして、理恵子さんのガラスの靴は、私がもう食べてしまったので、他の人が探す事は出来ませんよ」
    理恵子は今度こそ恥ずか死んだ。


    50
    「ええと。私のガラスの靴は王子様に差し上げます」
    「はい、そうして下さい」
    「けどさ。けど、私の仕事は、みんなにトキメキを届ける事なのよ」
    「それは、私の仕事でもありますね。本当は」
    「だからさ。量産型のガラスの靴も必要なのよ」
    「それは、バレンタインデーの義理チョコみたいな物ですか」
    「そう。なのかな?」
    「お中元とかお歳暮の感覚と聞きましたが」
    「うん。なんか、トキメキから遠ざかってた気がする」
    「それなら、理恵子さんのお仕事のお手伝いをしなくてはいけませんね」
    「うん?お願いします?」
    なんだか、煙に巻かれたような気がする。
    とにかく、仕事は終わっていない。


    51
    義理チョコのイメージのトキメキ。
    そもそも、義理チョコってトキメクんだろうか?
    義理チョコよりも自分へのご褒美チョコよね。
    ご褒美チョコなら、義理チョコよりも高い物を買うかもしれない。
    だって、義理って、ホントに義理だもんね。
    それなら、価格帯は500~800円ぐらいでも成立するかもしれない。
    くず粉は捨てられないわよね。
    あの食感は捨て難い。
    けれど、本物のガラスの靴を成形するのは量産型では難しい。
    あきらめるしかないだろう。
    けど、あの形を捨てるのもったいないな。
    他の人にも、あのトキメキを感じてほしい。
    理恵子が王子様にガラスの靴を渡した時のような。
    思い出して、顔が熱くなる。
    顔を赤くしながら、ふと思う。
    そうよ。
    みんな、誰かのシンデレラで、誰かの王子様かもしれないじゃない。
    その特別な一瞬は、私達だけのものではないんだわ。
    理恵子は思いつく。
    ただし、有料だけどね。


    52
    量産型ゼリーの試作に取り掛かる。
    ガラスの靴の立体は複雑だ。
    全てゼリーで作ろうとすると量産型では無理がある。
    ガラスの靴のイメージが伝わればいいのよ。
    理恵子は、割り切った。
    正面から見た時にガラスの靴ならいいのだ。
    背面は、薄く模様の入ったチョコレートの壁を作ることにした。
    チョコレートはホワイトチョコをカラフルに染める。
    華やかに模様が入る、ガラスの靴の容器の出来上がりだ。
    これなら、正面がどこなのか設定できる。
    ガラスの靴は、寒天を型抜きする事にした。
    再び、王子様にチェックしてもらう。
    「これは、いただくと嬉しいお歳暮、いえ夏だからお中元ですね」
    それって、トキメキになるのかな。
    思い出してみる。
    実家で母がお中元を選ぶ時。
    ちょっと特別な夏のお菓子がカタログに並ぶ。
    「理恵子、これ自宅用に一つ頼もうか?」
    お中元にもお取り寄せ枠があった。
    あのお菓子が届く時、少しワクワクした。
    そうね。
    お中元にもトキメキはあるのかも。
    理恵子はお中元枠として採用された事に納得した。



    53
    ゼリー液が固まる様子をぼんやりと眺める。
    冷蔵庫に並ぶ量産型ゼリー。
    量産型トキメキって何よ?
    少し思う。
    けど、理恵子はおとぎ話じゃない。
    現実には資本主義の荒波に立ち向かって行く。
    それでも、有料でトキメキを売り捌くのだ。
    恋人は本物のおとぎ話だけどね。
    それで充分だった。


    54
    昨日の夜は王子様にも手伝ってもらって量産型ゼリーを30個量産した。
    普通の透明なカップに入ったくず粉のゼリー。
    桜の香りがする薄い桜色だ。
    その中央に少し、濃い紅色のガラスの靴が見える。
    ここは寒天で出来ており、さくらんぼの味わいだ。
    役員に量産型ゼリーを配り、パワーポイントの資料が映し出されたプロジェクターの前で理恵子が説明する。
    「こちらが夏の企画商品、シンデレラのガラスの靴のゼリーです。価格は650円を想定しております」
    「少し、価格が高いのでは」
    「ご指摘ありがとうございます。商品コンセプトとして、自分へのご褒美のイメージを想定しております。ご褒美スイーツであれば、このくらいの価格でも購入されるかと」
    「ご褒美だと、ガラスの靴のイメージからズレるのでは?」
    「その場合は、こちらの企画商品がございます」
    理恵子はとっておきの本命ガラスの靴ゼリーを見せる。
    「こちらは完全受注生産で受け付ける仕様です。商品コンセプトは特別な日に、特別な人への贈り物」
    誰もが、少し見惚れている。
    「ちょうどカミさんの誕生日が近かったんだ。とりあえず、ボクが注文しようかな」
    辛口の常務が、そんな感想をもらす。
    「早速のご注文、ありがとうございます」
    コンペでの反応は上々だ。
    常務の奥さんにもトキメキが届くといいわね。
    理恵子は今日もコンビニへ行く。
    王子様の勤めるコンビニへ。


    55
    むかし、むかし、あるところにおとぎの国のお城がありました。
    お城のプレイルームで王様は王子様に昔話をしていました。
    「これがね、私と理恵子さんの出会いなんですよ」
    「そうなの?じゃあ、ボクは舞踏会を開いた方がいいの」
    「どちらでもいいんですよ。
    貴方は貴方の思う方法でシンデレラを探せばいいんです」
    「そうなの?」
    けれど、まだ5歳の王子様はシンデレラよりも怪獣に夢中のようです。
    時々、シンデレラの絵本を開いてみて下さい。
    登場人物が変わっているかもしれませんよ。
    そう、今度は貴方がコンビニで王子様と出会うのかもしれません。

    #創作大賞2026 #お仕事小説部門

     
     
    関西在住。医者。 殿ちゃんと姫ちゃんの母。 家族と病院の人間観察を書いています。

    あなたへのおすすめ