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「I.N.T.」の公開と辞任について

「ゲームゼミ」主筆のJiniです。

この度、わたしが編集長およびディレクターとして準備を行い、斉藤大地氏が代表を務める株式会社ワイソーシリアスがリリースする、デジタルメディア「I.N.T.」を公開することになりました。

ロゴ:菅原ヒロト(femt)さん

「I.N.T.」は今やゲーム産業が経済的、社会的、政治的な様々な要因から自由な創作が脅威に晒されている中で、クリエイター当事者へ直接取材を重ねることにより、クリエイターの尊厳や情熱あるいは作品の美や価値について広めることを意図したメディアです。

記事は数万字にわたるインタビューのみで構成され、ほとんどのインタビューにおいてわたしは企画・取材・編集を担当しています。

特に日本人として初めて『Baldur’s Gate 3』のディレクターSwen Vincke氏に単独取材を申し込むことに成功し(わたしが個人的に3か月以上Larian側と交渉しました)、2時間近くにわたって非常に興味深い話を聞かせて頂いたのは強く印象に残っています。この他、『Unpacking』『Cult of the Lamb』『Thronefall』『Slay the Princess』などといった伝説的なインディーゲームの開発者にもお話をお聞きしました。

もう一つ注目していただきたいのが、「I.N.T.」のウェブデザインです。「ゲームクリエイターの創造性を引き出すインタビュー専用サイト」という目的のため、わたし自らウェブデザイナーおよびディレクターとしてゼロから設計しました。

わたしはデザイナーとしての経験は多くありませんが、これまで多くの美術館や海外旅行を通じて養った美意識を、エンジニアやデザイナーの方々と自分オリジナルのサイトにデザインとして盛り込んでいく作業は楽しかったです。以下はこだわりポイントです。

トップページはインタビュイーの「表情」をパララックス表現と折衷して強調することにより、ダイレクトに彼らの人間性へとアプローチするよう意図しました
各言語ごとにフォントはこだわり、余計な装飾を廃することで数万字に及ぶインタビューの可読性を追求しました
サイト下部にはインタビューごとの印象深い言葉を引用するコーナーを用意し、インタビュイーの方々の発言から逆引きしてインタビューを探せる工夫をしました

もちろん、文筆家、通訳、翻訳家、写真家、さらに実装のお手伝いをいただいたリュウズオフィスの方々、そしてもちろん取材させていただいたインタビュイーの皆様の才気あふれる尽力によって、「I.N.T.」は従来のゲームメディアとは全く違ったジャーナリズムを提供できました。この場を借りて、お礼申し上げます。


INT編集長の辞任について

以下の内容は、わたしの弁護士と斉藤氏との間で法的な同意を得た上で、公開しています

以上が「I.N.T.」の発表および紹介となるのですが、わたしは、当初予定されていた「I.N.T.」編集長の立場を既に辞任しております。一体なぜ?と疑問を抱かれると思うので、こちらの経緯についても順を追って説明します。


まず「I.N.T.」の前身として、「Indie Intelligence Network」という企画がありました。こちらは斉藤氏が2023年に企画したもので、それから1年かけて世界各地へ取材を重ね、12本以上のインタビュー記事を作成しました。

ただ、「Indie Intelligence Network」の記事は日・英・中・韓の4か国語に翻訳したものを、それぞれ4か国のメディアに掲載するという企画だったにもかかわらず、日本を除く他国のメディアからは掲載を断られてしまい、記事は存在するものの掲載先が見つからないという状況が続きました。

そこで、わたしは2024年12月に、「Indie Intelligence Network」の記事を掲載するメディアであると同時に、従来の企画や哲学を根本的に見直し、よりゲーム開発者の立場に寄り添ったメディアとして「I.N.T.」を企画しました。これ以降は斉藤氏だけではなくJiniとの共同出資となり、2025年4月の公開を目標にサイト構築を行いました。


ですが、公開の直前となった4月、斉藤氏がプロデュースを行う『NEEDY GIRL OVERDOSE』の企画・シナリオを担当したにゃるら氏によって、「I.N.T.」プロデューサーである斉藤氏がパワーハラスメントに関与したことを想起させるポストがXに投稿されました。

わたしは立場上この問題の真実について判断できなかったものの、当初からインディーゲーム文化への「恩返し」を掲げて「I.N.T.」を作ったこと、そして昨今特にゲーム業界で問題視されているレイオフやハラスメントといった問題を「I.N.T.」が助長しかねないこと、「I.N.T.」の読者を混乱させ取材関係者の方にもご迷惑をおかけすることを鑑み、斉藤氏にはにゃるら氏との係争が解決することを期待して公開を延期、以降はサイトのブラッシュアップに務めました。

ところが問題が解決することはなく、それどころか、2025年8月にはにゃるら氏のポストに加え同じく主要開発者であったとりい氏(kinakobooster氏)によっても、斉藤氏によるパワーハラスメントや給与未払いを指摘するポストが投稿されました


この時点で、わたしはすでに取り返しがつかないほど問題が深刻化したことを鑑み、改めて「I.N.T.」公開を、当事者間で問題の解決ができるまで延期することを斉藤氏に申し上げました。

しかし、これを聞いた斉藤氏は強く反発し、わたしの意志とは無関係に、日本語版を除いて「I.N.T.」を公開したいという点を強調するようになりました。このため、わたしは弁護士のサポートを受けながらサイトの公開について協議を重ねましたが、斉藤氏の公開する意志を変えるには至らなかったため、最終的に編集長としての立場を辞任することを決断するに至りました。(なお本件は合意により解決しております)

よって、以降「I.N.T.」の運営およびコンテンツにわたしが関わることはありません。そのうえで個人的な意見となるのですが、今後も斉藤氏が開発者との問題と向き合うことなく「メディア」を続けることについて、わたし個人は賛同いたしません。また、開発者の方々との問題が解決されることも、引き続き望んでいます。


最後に

「I.N.T.」編集長の立場を辞することになりましたが、「I.N.T.」で掲げた開発者の尊厳や情熱についてインタビュー・批評を通じて継承し、ひいては彼ら彼女らの立場を少しでも向上させたいという想いは、今や使命感に近しいものとなって胸に抱いています。

また自己資本で運営しているインディペンデントなメディア「ゲームゼミ」を通じた持続可能な批評活動や、東京藝術大学では学生たちに現代ゲームの可能性について伝えていきます。さらに今月には海外に向けた新たに独立系批評メディア「Interacrit」を開設し、インタビュー活動も継続発展させていく所存です。また今回の経験を通じデザインについても強い関心を持つようになりました。

今後とも、変わらぬご支援ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。


Jini


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