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明ける

    空だけはもうあかるい。

    閉めわすれた遮光カーテンの隙間から、
    絶望が差し込んでいる。

    時計を見やる。

    ──4時53分。


    一歳児が座っている影。
    おもちゃをいじくる音。
    ……どうも、機嫌はよくないらしい。

    身体中の水分が足りない。

    にもかかわらず、膀胱ばかりが重い。


    たちあがればいい?


    いいや、たった瞬間に、
    均衡が崩れることを知っている。



    ……この子は、
    横にいさえすれば、よく眠る。

    きっと、ありがたい、こと。


    寝かしつけがうまく行った日に許される
    深夜の自由時間は、

    しかし、何をするかまでを
    自由にさせてはくれない。


    なにも成せなかったような気分の慰めに、
    暗闇で往生際も悪くかじりついたスマホの、
    その光こそが、
    己の眼を灼いたのだ。

    蝋でも垂らされたかのよう、重たいまぶた。
    なかば手探りで子へ触る。



    そばいにれば、崩れない。


    ただ

    はなれれば、


    泣くかもしれない、

    怒るかもしれない。


    ──あるいは、
    まったくご機嫌のまま、なのかも、しれないが。


    想像が、私の行動を殺す。

    妄想とも呼べる思考が
    足にまとわりついて、動けない。


    水を飲みたい。

    排泄をしたい。


    ただ、それだけだというのに。


    許されない。

    いや、
    それを自分に許す余力が、ない。


    まだ、朝だというのに。

    一般的には、一日がはじまる輝かしい時間なのに。


    目覚ましのアラームまでは、まだ遠い。
    動かねばならない刻限は、まだ。


    幼児の侵攻を阻むためのソファに、
    沈む旦那の足先がのぞく。


    跨げば起こす。

    ……起こせば、面倒だ。


    またひとつ、塞がった。




    あきらめて起き上がる。


    まだ春先。
    幼児を抱けば、冷えていた。

    毛布を使って抱えなおし、


    放心。


    不機嫌な喃語を、
    乳房でふさぐ。

    鼻からの呼吸音と、喉のなる音。


    手癖でやわらかな髪を撫でつければ、
    やがて寝息。


    冷え切っていたふくよかな足先が、
    ぬくもりを帯びる。


    トイレまで、もうしばし。

    先が見えるから、もうしばしだけは。



    ──朝。

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