
あのトレンチコートは何だろう?――角度で色が変わる生地との出会い
いよよいと申します。
なぜ、どうしてと疑問に思ったり、その疑問を解決してみたりした経験について、ぜひ気負わずに投稿してみてください。
コンテストページのこの言葉に背中を押されて、投稿することにしました。よろしくお願いいたします。
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「#疑問が学びに変わるとき」というコンテストがあると知ったとき、浮かんできたのは学生時代の記憶でした。
一着のトレンチコートのことです。
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それは、私が大学生だった頃、学内の池の近くを通ったときのことでした。
池の向こう側で、5人くらいのグループが話をしていました。私はその中のひとりが着ていたトレンチコートを、思わず二度見しました。
一度目は普通に目に入って、「あれっ?」と思ったくらいでした。
けれど二度目に見ると、ベージュのコートの一部が、シワや光の加減によって青緑色に見えていたのです。
「なんだ、あの生地は。サテンのような強い光沢があるわけでもないのに、色の変わり方がきれいだ……」
すっかり気になってしまいました。
とはいえ、そのグループの人に声をかけて「そのコートの生地は何ですか」と尋ねるのは、当時の私にはかなりハードルが高いことでした。
そこで、ひとりで調べることにしました。
今のようにAIへ特徴を伝えて候補を出してもらえる時代ではありません。インターネットで「ベージュなのに角度によって青緑色に見える生地」の正体を探すのは、なかなか大変でした。単語を変えたり、増やしたり、等々……
それでも調べ続けて、とうとうたどり着いた言葉が、
「玉虫ギャバジン」
でした。
調べてみると、異なる色の糸を組み合わせることで、見る角度や光の当たり方によって色合いが違って見える生地があることを知りました。
「同じ布なのに、見る場所や光によって、こんなにも違って見えるんだ」
名前が分かったときは、長いこと気になっていたものの正体をようやくつかまえたようで、とても嬉しかったのを覚えています。
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それからずいぶん時間が経ちました。
今では私は、玉虫ギャバジンのトレンチコートを実際に持っています。PORTERにも、かつてTONICという玉虫ギャバジンを使ったバッグがあり、それも手に入れました。
そして今ではAIと、
「コート+バッグで《玉虫共鳴》、発動!」
などと話して楽しんでいます。
あの日、池の向こう側で見かけた一着のコート。
ほんの一瞬の「なんだろう?」から始まった疑問は、布の名前を知り、仕組みを知り、やがて自分で身につけて楽しむところまで続いてきました。
学びというと、教室や本の中にあるものを思い浮かべがちです。
けれど、ときには二度見してしまうほど心を惹かれたものの中にも、学びの入口はあるのだと思います。
「なんだろう?」と思ったことを、そのままにしない。
その小さな疑問の先には、自分でも思っていなかった長い楽しみが待っていることがあります。
私にとって玉虫ギャバジンは、そのことを教えてくれた生地です。