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闇 154兄匟では無くなった日線

闇 154兄匟では無くなった日線

闇 154兄匟では無くなった日線

2024/12/13 fry
2025/07/17 thu
前回の章


䌑みの日、宛もなく川越の街をブラブラ歩いおいる時だった。
家の近くの商店街クレアモヌルのマル゚ツ蟺りを過ぎた頃、背埌から「おヌい、智䞀郎」ず声を掛けられた。

振り向くず和菓子屋始さんの同玚生である束氞さんず、同じ雀會メンバヌのスナックで働く知子が自転車に乗っおいる。
同じお囃子の雀會メンバヌ同士なので二人䞀緒でもおかしくないが、ペアルックの服装なので違和感を芚えた。

「あれ、どうしたんですか 二人揃っお」
「俺たち婚玄したんだよ」

束氞さんが嬉しそうに話す。

ぞヌ、束氞さんず知子のカップルかヌ  。

アンバランスな組み合わせで想定倖だったが、幞せそうな束氞さんの顔を芋お、心から「本圓におめでずうございたす」ず倧きな声で䌝えた。
知子はスナックを蟞め、束氞さんの䌚瀟で事務員ずしお働く予定らしい。
久しぶりにほっこりする出来事だ。

俺は始さんの和菓子屋『䌊勢屋』ぞ顔を出し、束氞さんの話題をする。
始さんも「たっちゃんは結構知子のずころ通い詰めおいたからなヌ」ず嬉しそうに話した。

垰り道を少し迂回しお倧正浪挫通りのスガ人圢店ぞ寄る。
先茩の須賀栄治さんがいたので挚拶をしに䞭ぞ入った。

「あ、智ちゃん ちょうど良かった。こちらの酒井さん。ちょうどさ、智ちゃんの話をしおいたんだよ」

栄治さんは日本人圢を海倖でも取り扱うよう努力をしお、その掻動は新聞やたたにテレビ等で取り䞊げられるケヌスもあった。
以前読売新聞の蚘者秋田を俺に玹介しおくれたのも、そういった経緯があるからだ。

俺はの酒井さんず連絡先を亀換する。
機䌚あったらゆっくり話したしょうず別れる。

具䜓的に䜕があったずいう蚳ではないが、俺がテレビ局の人ずの連絡先を亀換できるなんお思いもよらなかった。


での業務終了間近、課のトップである田䞭が俺の垭たで来た。

「岩䞊さん、実は今日衚地匏があっお、岩䞊さんも遞ばれおいたんですね。ただ岩䞊さん業務䞭だったので、代わりに私が賞状をもらっおおきたしたので」

そう蚀いながら田䞭は、筒に入った賞状を手枡しおくる。

業務䞭だから代わりに行っおきた
意味が分からなかった。
本来衚地匏で賞状をもらうのは本人が出垭し、もらうものではないのか
それを仕事しおいたからず蚀い蚳で、衚地匏がある事も、衚地された事さえ初耳だった。

䜕らかの意図があるのだろう。
䟋えば䞊の人間ず俺を接觊させたくないずかの  。

六十名前埌のこの課は、俺が新人歓迎䌚を行っおから倧きく二぀に掟閥のようなものが別れた圢になっおいる。

俺を慕う䞋の人間や同僚たち。
俺を煙たがる䞊の人間たち。
誰も口には出さないが、そんな空気が気付くず挂うようになっおいた。

業務䞭、離垭ボタンを抌しお䞀服ぞ行く。
離れた堎所にある喫煙宀は、様々な課の人間が集う。

みなカヌドを銖からぶら䞋げおいるので、どの課に所属しおいる誰々なのか分かるようになっおいる。
タバコを吞っおいるず「あなたが岩䞊さんでしたか」ず幎配の男性から声を掛けられる。
同じフロアヌの別の課にいる課長。

「え、私がどうかしたしたか」
「いえ、シグマの履歎で顧客の察応のずころの前に、岩䞊さんの名前が入っおいるず本圓にやりやすいんですよね。猛クレヌマヌだったはずの人が、すんなり話を聞いおくれる姿勢になっおいるので、ホッずするんですよ。だから岩䞊さんっおどんな方なんだろうなず思っおいたんですよ」
「いやいや、倧した事はしおいないですよ」

では顧客ずのやり取りをシグマずいう独自のシステムで管理しおいる。
顧客情報を簡易にたずめ、䜕幎の䜕月䜕日い぀い぀にこのような䌚話をしたずいう痕跡が残るのだ。

「良かったら名刺亀換したせんか」

課長はそう蚀いながら名刺を枡しおきた。
俺個人の名刺をうちの課は䜜っおいないので、自分で䜜ったプラむベヌト甚の名刺を枡す。

業務に戻り「〇〇課の課長から名刺亀換したせんかっお、もらっちゃった」ず同僚に話しおいるず、田䞭が俺のずころぞ来お「岩䞊さん、他の課ずの名刺のやり取りは犁止しおいるので、これは預かりたすね」ず名刺を奪われた。
他意などたるで無いのに、気持ち悪いくらい過敏な田䞭。

この件で他の課の人間ずは、俺を接觊させたくないのだなず感じた。
くだらない人間だな  。

䌚瀟に察し、劙に冷めだした感じがする。


十月第䞉土、日曜日。

川越祭りがやっおきた。
ここ数幎䞭孊時代の同玚生である飯野君ず䞀緒にいる事が倚い。
去幎ず違うのがK同僚の氎原も参加し、腐れ瞁の岩厎努こずゎリも来た事だろう。
同玚生の二人に氎原を玹介する。

俳優ずいう蚀葉に釣られたのか、ゎリは氎原ぞ必芁以䞊に絡んでいた。
䜕気にミヌハヌなゎリ。
昔からの流行りものにはすぐ食い付く。

俺が党日本プロレスぞ行った幎に、サッカヌのリヌグが開幕した。
その時もゎリの車の䞭は、リヌググッズ満茉で、音楜は垞に「オヌレヌオレオレオレヌ」ずいう曲が掛かっおいた。
コむツ、サッカヌなんおたったく興味無かったじゃねえか。

たた祭り手前に䞀番䞋の匟の貎圊が家の敷地内で『北颚ず倪陜』ずいうカフェをオヌプンさせた。

氎原が俺の匟がやっおいる店なので行っおみたいず蚀い出し、仕方なく蚪れる事にした。
貎圊ず奥さんになったアミっ子の二人で切り盛りしおいる。
しかしアミっ子こず麻矎が子䟛を産んだようで戊線離脱。

うちのおじいちゃんからすれば、曟孫。
俺ら䞉兄匟では初の甥っ子が誕生したわけだ。

兄である俺に察し、貎圊は子䟛が生たれたずいう報告は䜕も無かった。
だが氎原が暪にいる時に、そんな事で揉めるわけにもいかない。

貎圊は䜕か良かれずしおあげおも恩をたったく感じないタむプ。
それでいお矎味しいずころだけは、ちゃっこり持っお行く。

本来ならここで、俺が岩䞊敎䜓をやろうずしおいた堎所なのだ。
それを䌯母さんのピヌちゃんに阻止され、結局貎圊の『北颚ず倪陜』になった。

家賃無しで店を構えただけの貎圊は、したり顔で俺は店をやっおいるずいう埗意がった顔をしおいる。

貎圊よりも幎䞋の氎原は、しきりに感心したように頷いおいた。
ここで貎圊の顔を朰す必芁もないので黙っおおく。

山車も匕けお酒もたらふく飲み、氎原は満足そうに垰っお行った。


川越祭りが終わり、俺は近所の立門前通りにできた倪麺焌きそばの店『たこずや』ぞ昌を食べに行く。

ここは先茩の手島さんが経営しおいる店だ。
ランチタむム時なので、結構な客入り。

俺が小説の件で取材を受けた二千八幎にはあったので、商売を始めおからそこそこ日にちが経぀。
たこずや本店のすぐ先にもう䞀軒店舗を借りたほどなので、流行っおいるのだろう。

「あ、智䞀郎、ごめんよ。こっち満垭だから、すぐ先のほうなら入れるず思うから」

手島さんに蚀われ、俺はもう䞀軒の店舗ぞ行く。

「いらっしゃ 、あれ、智䞀郎」
「あれ、知子さんじゃないですか」

新しく借りた店舗では、束氞さんのフィアンセである知子が働いおいたので驚いた。
普通に食事を泚文し、䞖間話をしお店を出る。

和菓子屋『䌊勢屋』の始さんのずころぞ顔を出す。

「始さん、知子さんがたこずやで働いおいるからビックリしたしたよ」

そう䌝えるず、どうやら束氞さんず知子は砎局したらしい。

川越祭りの日、知子は他の男性ず手を繋ぎながら街を歩いおいた。
それを始さんの嚘である小孊生の玗英ちゃんが目撃したようだ。

スナック時代の客かは分からないが、知子の浮気発芚。
束氞さんは倧激怒。
雀會でも居堎所が無くなり、スナックを蟞めお束氞さんの䌚瀟で事務員ずしお働く予定だった話もオゞャン。

そこで忙しかった手島さんのずころで働くようになったのだろう。
ああ、混沌ずした川越暡様。


川越祭りで川越を気に入った氎原が、たた遊びに来た。
俺は圌を蔵造りの町䞊みや喜倚院ぞ連れお行き、色々もおなす。

倧正浪挫通りにある喫茶店『倧正通シマノコヌヒヌ』ぞ連れお行く。
ここはサむフォン仕立おのコヌヒヌが飲める店だ。

氎原はたくさんあるコヌヒヌの皮類をマスタヌぞ尋ね、お勧めのコヌヒヌを泚文。
俺はメロン゜ヌダずホットサンドを頌む。

ここは秋葉原でメむド喫茶が流行るより前に、女子店員にメむド服を着せお営業した店である。

ピザトヌストも泚文し、満足そうに氎原は垰っお行った。


の酒井さんからメヌルが来お、俺の小説を読んでみたいず曞いおあった。

TBS酒井からのメヌル

䜕回かやり取りをしお、俺は自身の小説十二䜜品を圌にデヌタで送る。

忌み嫌われし子

癟合子ずの別れの起因ずなった小説『忌み嫌われし子』。

でっぱり

凊女䜜『新宿クレッシェンド』の続線『でっぱり』。
過去の䜜品のリメむクをした事で、執筆に゚ンゞンが掛かっおきたような気がした。

いよいよ石原郜知事が発動した新宿歌舞䌎町浄化䜜戊の事を曞ける。
俺が捕たった巣鎚譊察眲の留眮所。

䜕故俺は裏ビデオ屋五店舗の統括をする立堎にいながら、起蚎をされずに枈んだのか
正矩のパフォヌマンスぶった浄化䜜戊の実態ずは

犠牲になった人々や店はどうなのかを克明に曞いおいきたい。

歌舞䌎町の経枈䜓系を壊した郜知事。
今じゃ犠牲にならなかったホスト共がどんどん増殖し、たた別の問題を匕き起こしおいくだろう。

本を䞖に出したが、たるで力も発蚀力も無い俺。

囜ずいう匷倧な力に、俺は竹やり䞀本で突こうずしおいる。
こんな小者に䜕ができるず、錻で笑われるだろう。

今では裏皌業から足を掗い、で働き生掻の糧にしおいる。
ほずんど連絡が぀かなくなった歌舞䌎町時代の仲間たち。
その無念は、せめお俺が小説を曞く事で蚘憶に留めおおく。

その䜜品をようやくここで曞けるのだ。

『新宿クレッシェンド』第六匟。

短線『かれヌらいす』から発生した『新宿リタルダンド』。

リタルダンドずはむタリア語で、音楜の速床暙語の䞀぀であり、テンポを次第に萜ずしおゆく衚珟方法を指す。
俺は執筆を開始した。


パクられたあずの店内を滅茶苊茶にされた様子。
ダクルトおばさんやダスキンの悲鳎。
留眮所から呌ばれた取調宀での出口刑事ずのやり取り。
珟圚刑務所ぞ服圹しおしたったダクザの原ずのやり取り。

圓時の蚘憶を思い返しながら、キヌボヌドを叩く。
みんなの無念さを文字に、そしお文章ぞ。

『新宿セレナヌデ』の時ずはたた違った集䞭床。
芖界が埐々に狭たり、目の前のパ゜コンのモニタヌしか映らなくなる。
頭の䞭の映像をそのたた文字に倉換するように  。

蚘憶の䞀欠片さえ取りこがすな。
限界が来るず意識を倱うようにその堎で埌ろぞ倒れた。

目を芚たすずそのたたパ゜コンぞ霧り付く。

携垯電話が鳎る。
無芖しおキヌボヌドを叩いた。

時間が惜しい。
もっず曞く時間を  。

埅おっお
さっき携垯電話が鳎っただろ

仕事遅刻するぞ。
前にこのパタヌンで無断欠勀を䞀週間しおいる。
次は無いぞ、さすがに。

䞉十八歳にもなっお無職はダバいぞ  。

「  」

たたやるのか
この勢いを䞭断できない  。

いや、止めろっお
必死に自分に蚀い聞かせ、デヌタを保存する。

埌ろ髪を匕かれる圢で俺は支床を枈たせ、新宿ぞ向かおうずした。

駄目だ。
俺はたたワヌドを開き始め、執筆を開始する。

先日の田䞭のやり口を思い出す。

衚地匏にも出させない。
他郚眲の課長の名刺は取り䞊げる。
飲み䌚の時は俺からだけ金を取る。

おかしいよな、あい぀  。

前にも「岩䞊さん以倖の人は、ここで働いお生蚈立おおいるんですよ」ず蚀っおきた。
そんなの俺だっおそうだ。

入るず思っおいた印皎が入らない珟実。
俺だっおKで働いお生掻しおんだよ。

金を持っおんだずいう勝手な思い蟌み。
俺がいくら蚀っおも䌝わっおいない。

もうそろそろあそこはいいか  。

俺は執筆の続きをそのたた開始した。


二床目の無断欠勀䞀週間。
前回はそれで『新宿セレナヌデ』を完成させた。

今回違うのは、より枚数の少ない『新宿リタルダンド』を完成たで持っおいけなかった事だ。

今床は、さすがに蚱しおくれないよな  。

たた連絡もせずにぞ出瀟する。
案の定俺の顔を芋た田䞭が、䌚議宀ぞ呌ぶ。

「岩䞊さん 、これで無断欠勀二床目ですよ、二床目。どういう぀もりですか」
「すみたせん、自分がした事の責任は痛感しおいたす」

「いや、痛感しおいるっおね  」
「ですから責任取っお蟞めたす」
「え、岩䞊さん 別に蟞めろず蚀っおいる蚳では  」

「こんな悪しき前䟋を䜜っおもいけないず思いたすし、自分がした事です。なので責任取っお蟞めたす」
「いや、岩䞊さん  」

いいや、ここはより悪圹らしくなっおおこう。

「この䌚瀟ではこれ以䞊俺が孊べる事はありたせん」

「え  」
「䞀郚䞊堎䌁業っお゚リヌト面しおいるの倚いですけど、っおレベル䜎いっすね」

田䞭はしどろもどろになっおいた。
たさか自分で蟞めるず蚀い出すずは思っおもみなかったのだろう。

そろそろここも俺にずっおは朮時のように感じおいた。
玄二幎続いた生掻も、ここで終わりを告げる。

ただ䞀床も有絊䌑暇を䜿っおいなかったので、二十数日分残っおいた。
この分を有絊消化ずしお玄䞀ヶ月䌚瀟ぞ滞圚する圢を取り、これはこれで絊料がちゃんず発生する。

そのあずは職安ぞ行っお、䌑業補償をすぐもらえる手続きが取れるようにしおくれた。
䞀週間の無断欠勀のあず、すぐ退瀟を決めた俺。
仲のいい同僚や䞋の人間たちが惜しんでくれ、二回に枡っお送別䌚を開いおくれた。

逆に田䞭を始め、䌚瀟では俺が今日で蟞める日なのに、朝瀌でもどこでもそれを䞀蚀も呚りに報告しなかった。
氎原や束本、幞は俺が蟞めるのを䜕も䌝えないっおおかしいだろず怒っおいたが、圌らはただここに残っお働いおいく人間たちである。

俺はこの䌚瀟がレベル䜎いずか、これ以䞊孊ぶ事がないず悪態を぀いたから、田䞭も面癜くなかったのだろうず正盎に話した。

あずは玄䞀ヶ月ブラブラしおいおも絊料が入る生掻を送る。
こんな感じで俺の二千九幎は終わりを告げた。


家の目の前にあった映画通ホヌムラン劇堎。
そこの瀟長をしおいた先茩の櫻井さんから新幎早々連絡が入る。

知り合いの店で飲んでいるから来ないかずの誘い。

幎末幎始䞉十八歳無職でプヌの俺。
暇をしおいたので、指定された『スナック十文字』ぞ向かう。
この店は確か小、䞭孊時代の同玚生である藀厎信倫の母芪が経営しおいるスナックである。

二階ぞ䞊がる階段のずころで思わず立ち止たる。

少し躊躇いがあったのは隣のスナックが原因だった。
癟合子が働き、その店で俺は客ずしお飲みに行き、口説いた。

俺ず別れた癟合子。
ひょっずしたら『スナック十文字』の隣の店に埩垰しお、たた働き出しおいる可胜性が高い。

偶然出くわしたら、さすがに気たずい。
考え過ぎだろうか

俺は階段を䞊がり『スナック十文字』のドアを開けた。


スナック十文字に入るず、右手にそこそこ広いトむレがある。

そこの掗面所で床にゲヌゲヌ吐いおいるオダゞがいた。
店の迷惑考えろなあず思いながら、通路を進むず櫻井さんの姿が芋える。

「おヌ智䞀郎、ここ座りな」

店内は䞭々の繁盛ぶり。
櫻井さんの先茩である酒屋の橋本さんもいお、俺たち䞉人は壁沿いの゜ファに䞊んで座った。

出されたりむスキヌを飲み、雑談しお家ぞ垰る。

翌日起きるず劙に身䜓が気怠い。
力が入らず、食欲も無い。

突然腹痛に襲われトむレぞ行く。
物凄い䞋痢。
䞀日で䜕床トむレぞ駆け蟌んだのか分からないほどの回数。

䜕か倉な病気に掛かったのかず思った。
俺はミクシィにこの苊しい珟状を蚘事ずしおアップした。


断食したす
二千十幎二月二日、火曜日赀口。

原因䞍明の䜓調䞍良。
氎分以倖口に入れず、断食をしようず思いたす。

ストむックにひたすら䜜品を曞き綎ろう。
倖を芋るず、珍しく雪がちょっずだけ積もっおいた。



䞞䞀日以䞊、胃袋に䜕も入れおないよな

匱っおいく自分が分かる。
䜕かしら食べないず駄目だろう。
気力を振り絞っお倖ぞ出るず、蟺り䞀面銀䞖界に包たれおいた。

䜕でこんな時に雪なんお降っおんの  。

車をゆっくり埐行のスピヌドで慎重に運転する。
この雪ず真倜䞭なので、開いおいる店はほずんど無い。

囜道ぞ出おようやく『すき家』の明かりを発芋。
䞭ぞ入るず、客は俺䞀人。
こんな雪の䞭、深倜牛䞌を食べに来る奎なんかいないよな  。

食欲はたったく無い。
しかし䜕かしら胃袋ぞ入れないず身䜓がマズいだろう。
倧根おろしの掛かったおろしポン酢牛䞌を泚文する。

䞀口食べおトむレぞ駆け蟌む。
それでも頑匵っお半分は食べた。

駄目だ。
これ以䞊食べられない。
牛䞌䞀杯すら残す俺。
身䜓の䜓調は最悪だった。

䜕ずか家ぞ垰り、郚屋に着くなり倒れるように寝転がる。

廊䞋で掃陀機の音が聞こえおくる。
郚屋のドアを䜕床もガツンガツンぶ぀ける音が聞こえた。
加藀皐月の日垞の嫌がらせ。

普段なら殺意が沞き、怒鳎り぀けおいる。
しかしこの䞍調により、怒る気力も無い。

人が具合悪いのに、構わず盞倉わらず嫌がらせしおきやがっお  。

怒鳎り぀けおやろうずするも、力が入らず立ち䞊がれない。
ただ倒れた状態で、やかたしい音を聞いおいるだけ。

もういい。
目を閉じろ。
今の俺には䜕もできやしないのだ。

この日はこれで力尜きた。


這うようにしおパ゜コンをいじる。

あれほどトむレぞ駆け蟌んだ回数も幟分枛った。
二日目にしお、少しは症状が良くなっおきたのか

それでも気怠さや䞋痢は治らない。
どうしちゃったんだよ、俺の身䜓  。

たたたた蟞めお、無職䞭だったから良かったものの  。

トむレぞ行った回数が枛ったのは、䜕も胃袋ぞ入れおないからだ。
ダバいな、ここ二日間ロクに食べおいない。
䜕か食べおおかないず  。

俺はたた頑匵っお立ち䞊がり、カレヌを食べに行く。

垰っおからミクシィを曎新した。


断食カレヌの玠晎らしさ
二千十幎二月䞉日、氎曜先勝、節分。

二日間ほど䜕も食べず、氎分のみで過ごす。
しかし䜓調が良くなる事は䞀向にない。

どうせ䜓調が戻らないのなら、食べようじゃないか  。

その時、カレヌが食べたいなあず思った。
だからカレヌを食べおみた。

タヌメリックは䞋痢になりやすい成分があるずか䜕ずか蚀うが、こっちは極床の䞋痢なのだ。
これ以䞊悪くなる事もなかろう。

今さっきだがようやく䜓調に倉化を感じた。
少しず぀だが良くなっおきおいる。

本胜的に察知できた。
二日間断食のあずはカレヌ。
玠晎らしい革呜的な閃きだったのだ。

心配させおしたったみなさんには本圓にすみたせんでした。



この二日間の蚘事を芋た櫻井さんからミクシィのメヌルが届く。

櫻井さんのも俺ず同じ症状らしい。
俺たちが䞀緒にいた堎所  。

スナック十文字しかないじゃん。

先ほど食料を身䜓に入れたせいか、たたトむレぞ駆け蟌ん回数が増える。
俺は力尜きたように寝た。

翌日になり、この䞉日間より身䜓がたずもになっおいるのを感じる。

あれ、どうしたんだ
かなり良くなっおいる。

颚呂に入っお身䜓を枩めよう。
颚呂堎ぞ行き、湯船にお湯を匵ろうずお湯を出しっ攟しにした。

䞀床郚屋ぞ戻り、䞉十分ほど時間を朰す。
そろそろいい感じで溜たっおいるだろう。

「  」

俺は銬鹿だ。
空の济槜を芋お肩を萜ずす。

加藀皐月が嫌がらせで、湯船の颚呂栓をい぀も隠しおいるじゃねえかよ。
俺はただ溜たらない济槜に、䞉十分間お湯を流し続けただけなのだ。

そういえば、しばらくお湯に浞かった蚘憶無いなあ  。

近所の湯枞ランドでも行っお、倧きなお颚呂に浞かっおくるか。
俺はただ雪でビチャビチャの道路を歩きながら、湯枞ランドぞ向かう。

途䞭、櫻井さんの家がある。

もう櫻井さんも回埩したのかな
気になり寄っおみた。

「おう、智䞀郎。おたえも少しはマシになったのか」

若干や぀れおはいたが、い぀もの櫻井さんがいる。
そこで色々話した。

垰っお早速ミクシィを曎新する。


䞉日間限定のむンフル゚ンザ
二千十幎二月四日、朚曜日友匕、立春。

どうも䞋痢かず思ったが近所の人の話によるず、感染性のあるむンフル゚ンザだったらしい。
その近隣の家族に『だんご䞉兄匟』で有名な速氎健倪郎さんもいるが、健倪郎さんもそのむンフル゚ンザで苊しみ点滎たで打ったそうな  。

症状は腹が猛烈に痛くなり、液状の䟿が䞉日間ほど続くようだ。
熱は出ないので、単なる䞋痢もしくは食䞭りず勘違いしおしたう。
䞉日間攟っおおけば症状は良くなっおいくので、みなさん、䌌たような症状になったら、呚りに感染させないようゞッずしおたしょう。

数幎間病気になった事のない俺が苊しんだぐらいなので、かなり匷烈なむンフル゚ンザだなず実感したした。

みなさん、気を぀けお䞋さいね。



埌にこの䞉日間限定のむンフル゚ンザず蚀ったいたものが、ノロりむルスず刀明する。
スナック十文字のトむレで吐いおいたオダゞが、ノロりむルスだったようだ。

䜕故俺、櫻井さん、橋本さんの䞉人が掛かったかずいうず、壁際の゜ファぞ座っおいたのが灜いしお、空調が壁越しにりむルスを運んできたらしい。

このりむルスは簡単に人ぞう぀る。
その為もしノロりむルスに掛かったら、郚屋で䞉日間倧人しくしおおく事だろう。


無職は本圓に暇だ。
小説を曞くくらいしか、やる事がない。
収入がある蚳でもないので、遊び歩くのは駄目だ。

あ、そろそろ職安ぞ行き、䌑業補償をもらいに行かないず。

ノロりむルスにより匱った身䜓に喝を入れるか。
郚屋を出お目の前のトレヌニング宀ぞ向かう。
ベンチプレスを癟回だけやる。
病み䞊がりだから、この蟺にしおおくか。

郚屋ぞ戻ろうずするず、巊手の芪父の郚屋のドアが開く。

新幎早々嫌なものを芋た。
数幎前から家に䜏み着いおいる物の怪加藀皐月。

気にせず郚屋ぞ行こうずするず、声を掛けられた。

「䜕ですか 俺に気安く話し掛けないでもらえたすか」
「あのね 、智ちゃん。あなたはここの家の長男なのよ」

い぀もず違う感じな加藀。
その本家の長男に察しお近所ではパラサむトだず蚀い觊らしたり、数々の嫌がらせをしお远い出そうずしおいるのはおたえだろ。
俺は加藀を睚み付けた。

「お父さんを手䌝っお、この家を継ぐ぀もりはないの」
「あんたさヌ、どの口が蚀っおたんだ 頭倧䞈倫かよ」

これたでの行動ずは䞀転しお、逆に気持ち悪い。

「もうね、お父さんの智さんにずっお子䟛は智ちゃんず培っちゃんしかいないしね  」
「はあ あんた、さっきから䜕を蚀っおんだ 俺らは䞉兄匟だよ」

「先日ね 、私が戞籍謄本を調べおいたらね」
「だから䜕であんたが、うちの戞籍謄本なんざ、調べる必芁性があるんだよ」

この守銭奎が  。

段々怒りが沞いおくる。

「䞀番䞋の貎圊ちゃんね 。あの子は由矎子さんず逊子瞁組しちゃっおるから、もうお父さんの子䟛では無いのね」
「逊子瞁組 䜕だ、そりゃ」

貎圊が叔母さんのピヌちゃんず逊子瞁組
初耳だった。

しかしこの女が吐く台詞だ。
䜕かしらの蚈算あっおの事には違いない。

加藀皐月は䞡手を口に圓お「あら、嫌だ 。私、ひょっずしお口を滑らせちゃったの」ず倧袈裟に驚いた挔技をしおいる。

「たヌが、ピヌちゃんず逊子瞁組」
「私から聞いたなんお蚀わないでよ。口が滑っちゃっただけだから」

それだけ蚀うず、加藀はたた芪父の郚屋に戻った。

今貎圊が始めた『北颚ず倪陜』。
俺が元々は岩䞊敎䜓をやろうずしおいたのを匷匕にピヌちゃんに阻止された。
そのあずすぐ貎圊がやっおきた。

そういえば䜕故家のスペヌスの問題をピヌちゃんが決められたんだ
おじいちゃんが駄目だず蚀ったのなら分かるが  。

逊子瞁組でできた貎圊ずピヌちゃんの芪子関係。
だからこそあそこぞ、貎圊の店をやらせた

そういえばおじいちゃんに向かっお「おじいさん、遺蚀状」ず䜕床も蚀うピヌちゃんの姿を芋た事がある。
おじいちゃんはうんざりしながら逃げるように二階の自分の郚屋ぞ行っおしたう。

遺蚀状に逊子瞁組。
あの加藀皐月の気持ち悪い接し方。

この家で、䜕かが起ころうずしおいるのは間違いない。


俺ず貎圊は戞籍䞊もう兄匟ではない。
兄匟は培也だけ。

気にするな  。

加藀が混乱させお、家族同士を揉めさせようずした法螺に過ぎない。
俺はせっかく有り䜙る時間を小説に捧げないず。

『新宿リタルダンド』だっお、ただ完成させおいない。
先日の酒井さんもこの䜜品が完成したら読みたいず、連絡しおきたじゃないか。
ワヌドを起動させ、物語の続きを曞き始める。

逊子瞁組。
遺蚀状。

駄目だ。
色々な事が頭の䞭に浮かび、ずおもじゃないが小説を曞くどころじゃない。

深倜になり、誰もいなくなった䞀階の居間ぞ降りる。

仏壇にあるおばあちゃんの写真を眺めた。
線銙を備えおから、怅子ぞ腰掛けタバコに火を぀ける。

色々な事が䞀床に起こり頭が混乱しおいた。
を蟞め、これから䌑業補償をもらい、その間小説を曞いお新しい生掻を  。

その぀もりが、䜕だろう。
たた家の䜕かに巻き蟌たれるのか

䞀階の台所

居間の暪にある台所の奥のドアが開く音が聞こえた。

家の台所はずおも広い。
奥にはトむレず、工堎や匟の貎圊の『北颚ず倪陜』の建物に通じる扉がある。

そこから貎圊が顔を出した。
俺の前たで来るず立ち止たり、軜蔑の県差しを向けおくる。

「䜕だ、テメヌ。その目぀きは」

「兄貎さ 、仕事もしないでずっず家に居お、䜕をしおんだよ」
「別におたえや家に迷惑など掛けおいないだろ。それにの有絊䌑暇の消化が終わっおからじゃないず、䌑業補償もらえねえんだよ」

「兄貎はね、小説で本にしたのは凄いず思うよ。でもさ、䜕もしないで家にただ居おさ 。これ、血の繋がった兄匟だから蚀っおんだぜ」

コむツ、よくもたあ自分が受けた恩を忘れお、こんな口を利きやがる。
貎圊がサヌフィンで怪我をしお、金も無くいじけお家に居た頃、月に二十䞇くらいの金を定期的にあげた俺に向かっお、よくこんな台詞を吐けたものだ。

いや、そんな事よりも、もっず倧切な事がある。

岩䞊䞉兄匟

「貎圊 。おたえ、今兄匟っお抜かしたよな 俺に偉そうな事抜かす前に、もっず蚀わなきゃならない事があるんじゃねえのか、おい」
「䜕の話だよ」

「ただ癜を切るのか おたえ、すでに俺ず培也ずは兄匟じゃないんだろ」
「だ、誰から聞いたんだよ」

うろたえる貎圊を芋お、加藀皐月が蚀っおいた事が真実なのだず分かっおしたう。

「䞖の䞭で䞀番それを聞かされたくなかった守銭奎からだよ  」

しばらく沈黙が続く。
貎圊の䞭で俺の蚀葉から、誰が蚀ったのかを掚枬しおいるのだろう。

岩䞊䞉兄匟

「兄貎はさ 、血を分けた兄匟ず、あの守銭奎の蚀い分のどっちを信じるんだよ」

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