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恋愛万事塞翁が馬【矢沢先生】②

    柊くんに差し出された折り畳み傘をみて、合点がてんがいった。
    朝礼の時のあの反応、それに今、カバンを不自然にもっていたこと。

    「先生は今日、傘を忘れたんでしょう?」
    「ええ、そうだけども――」
    「僕はなんとか帰れますし。それに先生は……二人分、特に大事でしょう」
    私の返答を終わらせぬまま、柊くんは畳みかけるように続けた。
    いつもより饒舌じょうぜつな様は、有無を言わさず私に受け取れという意思すら感じる。

    なるほど、そうきたか。

    私を慮おもんばかってくれる生徒の、この優しい気持ちを受け取らねば、逆に申し訳ないというものだ。

    ――ありがとう、といって傘を受け取ろうとした瞬間、廊下の向こうからの来客に気が付いた。

    「星野さん?どうしたの?」
    尋ねる私に星野さんはワタワタと走り寄って、傘を差し出してきた。

    「先生、この傘、使ってください……」

    揃いも揃って、なんなのだろう。
    降りしきる雨の中、二人が傘を渡してくるなんて――私はいい生徒に恵まれたようだ。

    「でもそれじゃああなたが――」

    そこまでいうと、私は気づいた。
    星野さんの傘を手にとる。
    「ありがとう。それじゃあ、あなたの傘を借りるわ。これで”ちょうどいい”みたい」

    私の言葉に、柊くんは瞬時に反応した。
    みるみるうちに顔が赤くなり、私の思惑をくみ取ったようだ。

    肩を叩き、優しき男子生徒へ心からのエールを送る。


     
     
     
    note開始:2022/07/10  いろんなことに興味を示す変人 めちゃくちゃ読みました、満足 ※図書館メイン 【ステータス】 名前:いわのり 性別:女 職業:兼業主婦(子1有)

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