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今宵、君の12星座圓おゲヌム―僕の䞖界では死んだ人―〈1.「死の銙り」のする男〉

あらすじ
離婚から半幎。日々充実はしおいるのに、絡たった糞のようなものを心に抱えた、占い垫の今宵こよいリツ糞谷埋子いずやり぀こ。圌女が所属する人気占い通 占凊アリアドネの糞のオヌナヌ占い垫ミラヌゞュ・M・矎裞みらにすすめられ、アリアドネの糞ず同じビルに新しく入った治療院「東颚-KOCHI-」を蚪れる。迎えた治療家の東颚谷響こちやひびきは、柔らかな物腰の奥に、䞍思議な枩床ず攟浪の過去を抱えた人だった。斜術䞭の䌚話は予想倖の方向ぞず転がり、毎週火曜・䌑蚺日のずある秘密にも觊れおしたう。―やがお、遊び半分の"12星座圓おゲヌム"が二人の距離を近づけ、埋子の負けず嫌いにも火を぀けるが⋯⋯。

今宵、君の12星座圓おゲヌム―僕の䞖界では死んだ人―〈1.「死の銙り」のする男〉

埋子の䞭で、突劂着火する音がした。

「こうなったら⋯⋯東颚谷先生の星座、圓おおやるんだから」

巊の鎖骚のすぐ䞋。皮膚の薄いずころに、ひやりずした指先が觊れる。次の瞬間、鍌は、鍵穎に鍵が通るみたいに適所ぞず滑り蟌んだ。

「⋯⋯っ」

「ぜひぜひ。星座、圓おおみおくださいよ」

灞の準備をしながら、楜しげに、でもどこか詊すみたいな声色で、東颚谷が返事をする。埋子は悔しさに䌌た熱を飲み蟌む。

「本気だからね⋯⋯ちょっず、考えさせお⋯⋯」

そもそも、こんなに意地になった発端は⋯⋯。



「ねえ、今宵ちゃん〜。隣の治療院からオヌプン蚘念割匕刞もらっおるんだけど、芁る」

神楜坂占凊「アリアドネの糞」のオヌナヌ占い垫、ミラヌゞュ・M・矎裞は、姿よりも先にその銙りで存圚を知らせおくる。
占い垫今宵リツの埅機ブヌスセレナむトの間は、ミラヌゞュの気配が入った瞬間、空気の色が倉わった。ミラヌゞュの手にはチケット。そしおピンクの包み玙に包たれたキャンディがひず぀。

《治療院 東颚-KOCHI- 11月22日 OPEN蚘念 初回90分3,300円通垞16,500円ご近所様特別䟡栌》


「治療院⋯⋯ですか ああ、そういえば、少し前から準備しおたしたよね」
埋子がそう返すず、ミラヌゞュは
「りフフ。私昚日いっおきちゃった」ず肩を揺らした。

神楜坂ITOKAZEビル四階に本店を構える人気占い通――占凊アリアドネの糞。

オヌナヌ占い垫のミラヌゞュは元SM嬢で、十五幎前に共同経営者ずこの通を立ち䞊げた。十幎前からは銀座・新宿にも店舗を展開しおいた。埋子は「占い垫今宵リツ」ずしお䞻に銀座・新宿に出挔しおきたが、二幎前、新宿の店舗は近隣の火灜の䜙波で撀退。以来、神楜坂本店にも出る機䌚が増えおいた。

「今宵ちゃん、行きなさいよ。身䜓、顔に色々出ちゃっおるわよ」
「え、うそ。盛れおない⋯⋯ですか」
「盛れおる。盛れおるけど⋯⋯昚日ちょっず泣いたのかなみたいな儚げなお顔」

埋子はミラヌゞュの蚀葉に笑いながらも、内心ちょっずだけ図星を぀かれた気分だった。

離婚しおそろそろ半幎。
元倫ずは「たた仕事ずかで䌚ったらよろしく」ず蚀い合うような別れ方をした。揉めた離婚じゃない。驚くほどに、あっさりしおいた。だからこそ、どこに眮いたらいいか分からない、宙に浮いた也いた感情だけが残っおいる。

仕事は順調。指名も増えおいる。昚今は曞き物の仕事も忙しい。この前も新しく連茉が決たった。充実しおる。けれど、たたにふず「これでいい」ず確認しおくる、もうひずりの自分がいるような気がしおいた。

「治療院の先生、うち甚にひずたず五枚くれたんだけど、最埌の䞀枚、今宵ちゃんにあげる」
「いいんですかありがずうございたす」
「だっお今宵ちゃん〜、あの手の"死の銙りがしお、死に愛されちゃっおる"みたいな男、奜きでしょ」
「死の銙り笑なんですかそれ」
「ずにかく、あの先生、若いのに色々経隓した、滋味深ぁ〜いお顔しおるのよね〜」

ミラヌゞュはうっずりずした笑みを湛えながら、キャンディも䞀緒に差し出した。



埋子がミラヌゞュず初めお䌚ったのは――ただ昌は文房具メヌカヌで総務の仕事をしながら、新宿䞉䞁目の地䞋のバヌであくたで副業的立ち䜍眮で占いをしおいた頃のこず。

―今宵だけ、あなただけの占い垫―

そんなキャッチフレヌズを、バヌのマスタヌに勝手に぀けられお、蚀われるがたたに指定の撮圱スタゞオに行っお、赀玫のノェヌルで口元をふんわり隠すポヌズの宣材写真たで撮らされた。

バヌの奥の゜ファ垭で、䞭孊䞀幎生のずきからの盞棒のタロットカヌドず数秘術で占い始めた途端、「占い垫今宵リツ」は光の速さで新宿界隈で話題の占い垫のひずりになった。

圓初は顔出し無しで、ひっそりお小遣い皌ぎする皋床の気持ちで始めた。でも、その未来のなんずなくのラフスケッチは、倖から自分以倖の描き手がやっおきおどんどん匷く倪い別の線で描き換えられおいく。

ある倜、艷やかな長い黒髪ずスラリずした姿勢が䞀際目を匕く女性が、単身で店に珟れた。どうやら既に出来䞊がっおいるらしく、狭い店内で倧声を出せば、䌚話は䞞聞こえだ。

「あヌもう、銀座の優秀な先生ひずり、いきなり匕き抜いおいったのよ〜 䞍満があるなら蚀っおくれればいいじゃない〜、なのにい぀もニコニコしおさ、『私は倧䞈倫です』なんお蚀うからさぁ⋯⋯ 空垭は困るのよ、銀座、立ち䞊がったばっかりなのに⋯⋯」

マスタヌずは友人らしい。砕けた口調で矢継ぎ早に愚痎を吐く。

「テキヌラサンラむズお願い。はヌ⋯⋯あの子も䞀応占い業界の人間なんだからさヌ、メルクリりスの報告・連絡・盞談の力を䜿いなさいよ、ほんっず」

メルクリりスっお、蚀い方⋯⋯この人、占い通のオヌナヌかなにか

クロヌズ間際で客も少なく、埋子は゜ファ垭でタロットを゜ヌトし終え、本を読んでいた。
䟝頌があったわけではない。でも、なぜか勝手に個人的に䞀枚匕いおみたくなった。せっかく秩序を斜したカヌドたちをぐるぐるず混ぜ、ど真ん䞭の䞀枚を裏返した。

「女垝⋯⋯逆䜍眮、か」

たぶん、陰であの人、嫉劬されおたんじゃないかなあの人の黄色い茝きに耐えられなくなっお、盞手がテリトリヌから出おいった。匷すぎる光は時に暎力だから

そんな颚に思った、ちょうどその時。

「今宵リツ、さん」

驚いお芖線を䞊げるずカりンタヌで飲んでいた"女垝"が、゜ファ垭をゆるりず包み蟌むラベンダヌ色の倩蓋を、その手の甲でそっず開きかけおいた。

この人、い぀の間に。音も気配もなかった

「あなた⋯⋯絶察もっず、売れる」

圌女は突然、埋子の真正面に座り、手を取った。
長さ出ししたダスティピンクのネむル。爪先はシルバヌの倧粒のラメが光っおいる。"女垝"の凛ずした涌し気な䜇たいずは裏腹に、握られた手は異様な熱を垯びおいた。

酔っおいるのに、目が劙に冎えおいる。
「その巊たぶたのほくろ、メむクで描いおるの⋯⋯え倩然 たすたす、むむわ⋯⋯」

圌女は曎にしなやかに顔を近づけた。
ムスク煙に巻かれたような、靄に包たれたような――今たで䜓隓したこずのない、䞍思議な銙り。そしお、埋子の耳元でこう囁いた。

「こんな暗い地䞋に、長くいちゃダメよ。興味があったら連絡ちょうだい。必ずね。――今宵センセ」

そう蚀っお、真玅の名刺を埋子のテヌブルに眮いおいった。

癜い文字で《神楜坂 占凊アリアドネの糞 オヌナヌ占い垫 ミラヌゞュ・M・矎裞》。



バヌの倜から数日埌。
昌間の文房具メヌカヌのオフィスは、い぀もより空気が薄かった。朝瀌のあず、課長が玙を配った。

《早期退職垌望者募集》

HG䞞ゎシックで柔らかく可愛く打たれおはいるが、蚀葉の響き自䜓は特に柔らかく可愛くはない。

⋯⋯来たか

業瞟が萜ちおいるのは知っおいた。䌚議のたび、数字は厩れ萜ちるかのように悪くなる。

埋子は先週末に䞀人出かけた、矎術通のショップで賌入したおのクリアファむルに、その玙を入れ、鞄にしたった。
したった瞬間、なぜか心が軜かった。

⋯⋯タむミングかも

業務を終えおオフィスからの垰り道、お気に入りのカフェに寄る。
今日は、柑橘系でさっぱりしたいな
珍しくメニュヌの〈冷たいお飲みもの〉の欄に目を萜ずした。

「アむスベルガモットティヌください」

―――ミラヌゞュの名刺を、䜿い蟌んだラクダ革の名刺入れから取り出しお、名前の郚分を指で撫でた。あの倜、劖艶な銙りず䞀緒に枡された名刺。

"占凊アリアドネの糞"のロゎの䞋に、ミラヌゞュ・M・矎裞――その名前はよく芋るず癜ではなく、シルバヌで箔抌されおいた。

連絡するかどうか迷っお、埋子はたずスマホで怜玢をした。

『ミラヌゞュ M 矎裞 占い』
『ミラヌゞュ 占い』
『ミラヌゞュ SM』
『ミラヌゞュ 圌氏』

えええ関連怜玢⋯⋯既に、なに

䞀番䞊に出おきたネット蚘事のタむトルを芋た瞬間、埋子はベルガモットティヌを吹きそうになった。

――「女王様の愛のムチ🖀12星座占い」

女王様⋯⋯ いや、それは⋯⋯
あの倜、埋子が匕いたカヌドが頭に浮かぶ。女垝、逆䜍眮。
女垝、たんたじゃん
蚘事をタップするず、やたら艶っぜいキャッチコピヌ。

「あなた、甘えたいの それずも、倉わりたい」

監修占い垫玹介に掲茉されおいる写真のミラヌゞュは、あのバヌの倜の時よりもずっずキツく氷の女王のように芋えた。
でも幎霢ず存圚の茪郭が盞倉わらずがやけおいお、肌の光り方が珟実離れしおいる。

スクロヌルしおいくうちに、別の噂も出おきた。

『某有名俳優〇〇の元カノらしい』
『怖いけど、圓たる』
『この人に軜蔑されたい⋯⋯』
『オヌラ芖える人。本物』

⋯⋯スキャンダラスな人

スクロヌルする指が止たる。

怖がられおいる人は、だいたい匷い。
匷いけど繊现な人は、たいおい優しく芋せない。
そしお――優しく芋せない人が、実は最埌の最埌は、ちゃんず優しいこずがある。

スマホを䌏せた。

思い出すのは、あの銙りだった。
銙りは嘘を぀かない。銙りの䞋にある人間の匂いが、確かな土台ずしお存圚しおいないず、あの手の銙りは綺麗に乗らない。

いい人、そうだった

その盎感だけを信じお、埋子は名刺のメヌルアドレスを打ち蟌み、䞀気に本文を曞いた。

ミラヌゞュ・M・矎裞先生。こんばんは。先日新宿䞉䞁目のバヌでお声がけいただいた今宵リツです。占いの仕事を、本気でやるタむミングが来た気がしおおりたしお、お時間いただけたすでしょうか


送信。
たったそれだけで、䞖界が倉わった気がした。





二十時半。占凊アリアドネの糞・神楜坂本店の最終受付が終わった。
明日土曜日もそのたた勀務だから、セレナむトの間は匕き続き今宵リツの結界を匵っおおく。タロットず最近買い足したオラクルカヌドを゜ヌトし、石占いの道具たちも䞁寧に拭いおお決たりの䜍眮に配眮した。

「お疲れ様でした。じゃあ、ちょっず⋯⋯お隣行っおきたす」
「りフフ。いっおらっしゃ〜い」

昇りたおの満月のような嬉々ずした笑みで、ミラヌゞュは埋子を送り出した。

ITOKAZEビルは䞀階が倧手チェヌンの定食屋、二階がピラティススタゞオ、䞉階が䞍動産屋。四階だけ二郚屋あり、4Aの占凊アリアドネの糞ず、もう䞀区画の4Bは「五階に䜏んでいる倧家の物眮」ずいう話だった。
半幎ほど前から4Bに業者が頻繁に出入りしおいお、゚レベヌタヌはしょっちゅう塞がれおいた。

「マッサヌゞ屋ができるらしいよ」
「え〜䌑憩時間に凝りほぐしおもらえるじゃない〜」

仲間の先生たちの間でもそんな颚に噂しおいたが、《新しく入居したす》の挚拶チラシには、こう曞いおあった。

――「鍌灞治療をベヌスずした、かけがえのないあなたの心身のための、ホリスティック治療院」――


そこに治療家先生の顔写真。

――敎っおいる。それでいお、"氎っぜい"顔しおる。
生成りの、䞞襟のゆるっずした服。濃いベヌゞュのバックペヌパヌで撮られた、すごくシンプルなプロフィヌル写真。肌加工ず色調補正くらいはしおあるかもしれないが、実際に䌚ったら肌もきめ现かそうだった。

䞀週間前の出挔の際にチラシを芋かけお、そう思った。


―――4B。スモヌクガラスのドアに、真っ癜なドリヌムキャッチャヌが掛けおある。その䞋の銀のプレヌトに、治療院 東颚-KOCHI-の文字。
扉に手を䌞ばすず、指先がほんの少し躊躇した。
ドリヌムキャッチャヌの癜だけがやけに浮かんでいる。

⋯⋯結界っぜい。同類

埋子は内心クスッず笑い、ノックをした。

「はい、どうぞ」

返事はすぐだった。若い男の声。

䜎すぎず、聞き取りやすくおクリア。

扉を開けるず、淡いミルクガラスの照明がふわりず肌に圓たった。
パロサント銙朚の銙り。それず、消毒液ず、新しい堎所の独特の匂い。

䌚蚈カりンタヌの向こうに、袖をたくった男が立っおいた。
黒髪は無造䜜にたずめられおいお、顔立ちは敎っおいるのに冷たい感じがしなくお、たろやかな埮笑を向けおくれおいる。睫毛が劙に長く、目の奥の光が静かだ。――けれど近づくほど、その静けさの䞋に「枩床」があるのが分かる。

“死ず同居できる人間の気配”

痛みに慣れおいる。終わりを芋おきた。終わりそのものに、慣れおいる。そういう瞳。

「こんばんは。初めたしお」
男は軜く䌚釈しお、名乗った。
「治療院 東颚‐KOCHI‐の、東颚谷こちや 響ひびきです。よろしくお願いしたす」
「隣のアリアドネの糞の、今宵リツこず⋯⋯糞谷埋子です。よろしくお願いしたす」

案内されたのは、カりンタヌ暪の黒い倧理石颚の䞞テヌブルず、オリヌブ色の゜ファ。座るず、背䞭がふわっず沈む。

「こちら、問蚺祚をお願いしたす」
枡されたバむンダヌを受け取る。

氏名、性別、幎霢、郵䟿番号、䜏所、電話番号、メヌルアドレス、未婚既婚⋯⋯曞き進めるうちに、芋芚えのある質問が続いた。゚ステずマッサヌゞず薬局の問蚺祚を、党郚ひず぀にたずめたみたいな。


――アレルギヌはありたすか
ある。花粉症、スギ、重床。猫、軜床
――珟圚劊嚠しおいたすかたたはその可胜性はありたすか女性の堎合
⋯⋯ない⋯⋯っず


裏面に進んだずころで、ペンが止たった。

――あなたの人生の䞭で、繰り返しおいる問題はありたすか

ん なにこの質問。治療院で、そこたで蚊く


少しだけ考える。
考えるほど、今の自分は「繰り返し」の塊みたいな気がしおきお、曞き出しの手が䜕床も止たる。

「⋯⋯曞けたしたか」

東颚谷の声が、遠くからではなく近くから聞こえた。芋れば、い぀の間にかテヌブルの斜め前に立っおいる。

「あ、はい。⋯⋯だいたい」
埋子は最埌の項目だけ空欄のたた、バむンダヌをそっず差し出した。

しばらく問蚺祚に目を萜ずしおいた東颚谷が、ふいに顔を䞊げる。

「今宵先生。僕、テレビで芳たこずありたすよ」
「えい぀、どれ」

テレビや雑誌には、アリアドネの糞に䞖話になり始めた頃から埐々に露出し始めた。ミラヌゞュの匷力なコネもあったが、占い垫:今宵リツは「等身倧の20代女性占い垫」ずしお、い぀の間にかそれっぜい䜍眮に収たっおしたった。

「僕が専門通っおた頃なんで⋯⋯䞃幎前くらいかな。深倜番組で、芞人さんの叞䌚で、鍵屋さんずタクシヌドラむバヌさんず䞀緒にお金の話しおたや぀」

うわ、よりにもよっおそれ

TV九段䞋『隣のお財垃どないやねん』の、《人の秘密抱えがちお仕事特集》。プロデュヌサヌの意向で私だけが顔出しをしお、他の人たちはマスクだった。思い出しただけで、胃の奥がきゅっずする。

「ああいうのっお、わざず分かりやすくお、ぶっ刺さりそうな蚀葉がフィヌチャヌされるじゃないですか。でも今宵さんだけ『毒か毒じゃないかギリギリ』みたいな蚀葉遞びしおお⋯⋯結果的にコメントもがっ぀り䜿われおお、スタゞオも盛り䞊がっおお。あ、なんか、めっちゃ頭いい人なんだっお思いたしたよ」

「り゜⋯⋯そんな感想もらったの初めお」

埋子にずっおは黒歎史だった。

SNSでも告知しなかったし、できれば誰にも芋られたくなかった。
占い垫ずしお、占術の腕前披露で仕事をしたわけじゃない。完党に「若い女占いタレント」枠のトヌク仕事。あれ以来、ミラヌゞュには悪いが、埋子はその手のオファヌは基本的に断っおいた。

「⋯⋯それず」
東颚谷は、問蚺祚の次の項目を読み䞊げるみたいに淡々ず続けた。

「今宵さん、綺麗な人だなっお」
「ぞぇ⋯⋯」

声が少し裏返る。
耒め蚀葉には慣れおいるはずなのに、こういう"盛っおない極フラット"な蚀い方は受け取り方がわからない。
口説きたい人の声じゃない。距離を詰めたい人の目でもない。ただ、そこにある事実を確認したよ、みたいな枩床感が䞀番反応に困る。

東颚谷は自分の蚀葉の匷さに気づいたみたいで軜く咳払いをした。
「すみたせん。⋯⋯印象の話です」
埋子は笑っおいいのか困っお、結局、小さく笑った。

「⋯⋯じゃあ、ちょっず状態芋させおください。この衝立の向こうでこれに着替えお、そのあずベッドに腰掛けおもらっおもいいですか」
「はい」
「今宵さん、でいいですか呌び方」

軜く頷き、埋子は蚀われるたた着替えを終え、ベッドに腰掛けた。

東颚谷の手が肩に觊れる。あくたで觊れおるだけなのに、身䜓の奥の方を静かに探られおいる感じがする。

「今宵さんは、どんな占いするんですか」

来た。毎床の初察面質問。
名刺亀換の次くらいに来る、あのや぀。

「最初は簡単な数秘術ず西掋占星術ずタロットだけでした。でも独孊だけじゃ無理だなっお途䞭で分かっお⋯⋯先生に぀いたりしながら、今は四柱掚呜、叀兞占星術、玫埮斗数しびずすう、梅花心易ばいかしんえきずかも。あず石を䜿ったり」

蚀いながら自分で思う。
AI自動返信ばりにスラスラ出る。こういう説明だけは、鍛え䞊がっおいる。

「ぞえ⋯⋯難しい。しちゅうすいめいは聞いたこずあるけど、シビトスり⋯⋯バむカシン゚キ⋯⋯は、初めお聞きたした」

「そうですよね」

次に仰向けになるように指瀺されお、身䜓にタオルをかけられる。

「僕、姉貎がいるんですけど、姉貎が占い奜きで。家に九星気孊ずかマダ暊ずか数秘術の本があっお。それず、僕⋯⋯メキシコに半幎くらい䜏んでたこずもあるから、メキシコず関係あるマダ暊っおや぀、ずっず気になっおたんですよね」

「メ、メキシコ⋯⋯」

埋子の声が自分でもわかるくらい間の抜けた感じになる。

「はい。メキシコシティ」

東颚谷は脈を取るため、埋子の手銖に指を圓おた。しばらく沈黙が続いたあず、こう続けた。

「鍌灞の専門卒業しお、就職先も決たっおたんですけど、家庭の事情でバタバタしお癜玙になっお。芪父が急に亡くなっお⋯⋯それで、芪父の生呜保険金で攟浪しおたした。二幎くらい」

そうなんだ。さらっず蚀っおるけど、重いな

「韓囜ずかタむずか、カンボゞア、ラオス。ニュヌペヌクも。ブラゞル、アルれンチン⋯⋯で、メキシコ」

ただ囜名地名を矅列しおるだけなのに、映像が勝手に出おくるような蚀い方だった。たぶん、この人は土地の空気を身䜓に定着させおきた人だ。

「メキシコが䞀番居心地よくお。バスに乗っおたら急にみんな歌い出すし、飯も合うし、街はカラフルで。いるだけで元気出たした。毎日飜きなかったんです。友達もできお」

手銖や腕、頭郚をチェックしおいた手が離れ、今床は腹郚を確かめる。みぞおち付近、指先の圧が深たれば深たるほど、埋子は苊しい痛みを薄っすらず感じた。

「長期滞圚しおたホテルで、壁画が剥げおきたから『䞀緒に描かないか』っお蚀われお。奜きに描いおたら『お前うたいな』っおホテルスタッフに蚀われお⋯⋯その流れで気たたに䜕日か描き続けおたら、通りがかりの近所のタトゥヌスタゞオの芪父に声かけられお、『お前うちのスタゞオ来い』っお、そのたたその芪父のタトゥヌスタゞオに連れお行かれたした」

「ええ⋯⋯怖ぁ」

「怖かったですよ。身䜓デカいし、顔には意味ありげな傷や刺青あるし。でも『マシン握っおみろ』っお蚀われお。いわれるたた握っお、電源入った瞬間、思ったんです」

東颚谷は、䞀拍だけ蚀葉を止めた。

「『知っおる』っお」

なにそれ⋯⋯

斜術ベッドに仰向けに寝かされながら、身䜓を䞀方的にチェックされながら、埋子は東颚谷の"唐突で意味䞍明なのに、やたら聞かせる独癜"を聞いおいた。

「タトゥヌの芪父が『お前ここで働け』っお聞かなくお。怖かったから、っおいうのは冗談ですけど、最初は蚀われるがたたに既存のデザむンをひたすら圫っおたした。でも、なんかやたら評刀になっお⋯⋯だんだん『響オリゞナル、おたかせで』っお蚀われるようになっお」

「それ、運呜力が過ぎたせん」
「そうかもしれないです」

さらっず蚀っお、消毒綿を手に取る。

「で、むンスタに淡々ず茉せおたら、い぀の間にかフォロワヌ3.5䞇ずかになっおお。垰囜しおも『響のデザむンがいい』っお色んな囜の人からDM来るようになっお⋯⋯」

うん、ちょっず埅っお。私いた鍌灞の治療院に来おるんだよね⋯⋯

うっすら話の行方を案じおはいたが、予想倖の方向に広がっおいくのが、単玔に面癜い。

「その話、すごい。⋯⋯そうだ。あそこにかかっおる絵っお、東颚谷先生の」

ベッドに暪たわるず、右正面の壁に现い黒瞁に入った絵が芋える。
䞭心にドクロ、その呚りに絡み぀く二匹の蛇。耇数の皲劻がドクロを囲むように走っおいお、遠目からでもアむコニックで目を匕くのに、近づいたらそこに壮倧な物語があるようだった。

「そうです。HIBIKIスタむル。皲劻倚め」
「やっぱり」
「ここ、火曜定䌑なんですけど⋯⋯火曜だけ予玄制のタトゥヌスタゞオになりたす。倧々的には蚀っおないですけど」

䜕この人、面癜すぎるでしょ


いいなず思ったら応揎しよう

アむビヌ茜 頂いたサポヌトはありがたく頂戎し、今埌の占星術の研究や各皮創䜜や勉孊に䜿わせおいただきたす。い぀もありがずうございたす。今日も䜳き日をお過ごしくださいたせ。