
50歳、初めての選挙。私はまだ、母に謝れていない

これまで一度も、選挙に行ったことがなかった
日本のために汗をかいてきた人たちに、まずは謝りたい
本当に、すみませんでした。
2025年7月。
私は人生で初めての投票に行った
1週間前まで、誰に、どの党に入れるか悩み抜いた
けれど、「比例代表」の欄には政党名ではなく、絶対に「個人名」を書く。それだけは最初から心に決めていた
きっかけは、母だった
私と同じ日にスマホデビューした母は、今ではレシピを検索して手際よく料理をこなすほど、ネットを使いこなしている
最近のテレビはつまらないと言うので、YouTubeを見られるようにしてあげた
私の影響もあったのだろう。母はいつしか、政治系の動画を熱心に見るようになっていた
新しく立ち上がった、あの勢力
そのリーダーの演説を見て、母は静かに涙ぐんでいた
その瞳は、夕日のようなオレンジ色に染まっていた。
*
母と一緒に投票所へ向かい、一票を投じる
その帰り道、ふたりでラーメンを食べた
「投票行って外食」
あのフレーズを、一度やってみたかった
なんてことない一杯が、その日は妙に身体に染みた
それまでは、ただの「特番で番組が潰れる、邪魔な日」でしかなかった選挙の夜。
テレビをつけると、私が名前を書いた人の当選が決まっていた
画面の中では、司会者風の男が「将来世代の負担になるじゃないですか」と詰め寄る
弁護士風の男が「今、国債を発行したら大変なことになる」と、苦り切った顔をする
本気で言っているんだろうか
テレビはいつだって、失言を引き出そうと必死だ。
けれど、今まで全く興味がなかった国会中継が、今は面白くて仕方ない
「消費税ニキ」が、鮮やかに切り込んでいくからだ
裏側を全部分かっていて、国民を騙そうとする財務官僚は「預かり金的性格を有する税です」と壊れたレコードのように繰り返す
全部分かっていて、とぼけ続ける大臣は「消費税相当額です」と、申し訳なさそうな顔で答える
そこへ、消費税ニキがビシッと引導を渡す
「消費税は、欠陥税制である」
痛快だった。
画面の中の熱狂を眺めながら、私はふと、あの日食べたラーメンの味と、帰り道の情景を思い出していた
夕日に染まった母の横顔は、あの演説を見たときと同じ、温かなオレンジ色をしていた
*
50歳を目前にして、初めての投票
この歳まで無関心だったことは、正直言って恥ずかしい
けれど、それが私の真実だ
自分でも身勝手だと思う
でも、これほど無関心だった人間に、一歩を踏み出させた「消費税ニキ」は、本物だったのだと信じたい。
学生時代、ヤンチャばかりして学校に何度も頭を下げに来させた、あの頃
「卒業したら親孝行」なんていうのがセオリーなのに、私はずっと、自分勝手に生きてきた
大切なことに気づくのが、私はいつも遅すぎる
自分でも呆れてしまう
横を歩く母に、心の中で語りかける。
お母さん、ごめんな。
今まで、ずっと待たせて。
そして、これからの日本のために、もう少し一緒に頑張ろうな
私の一票は、ちっぽけかもしれない
けれど、あの日母と歩いた道のように
日本の未来もまた、希望のオレンジ色に満ちているはずだ
きっと。
