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店舗を閉めながら、会社を強くする。

    撤退は負けではない。と言いたい。でも正直、負けた気もする・・・・・

    選択と集中、というより、分別と運搬だった。

    美容室、エステ、まつエク、成人式、物販、EC、AI動画、そして最近では酵素風呂まで。
    自分で書いていても思う。
    何屋なんだ、うちは。
    美容会社です、と言えば美容会社なのだが、やっていることを並べると、もはや美容業なのか、便利屋なのか、修行僧なのか分からなくなる。
    スタッフは多くが女性。私は美容師出身の経営者で、20年以上この仕事をしている。
    20年以上やっていると、周りからはたまにこう言われる。
    すごいですね。
    安定していますね。
    順調ですね。
    いやいやいやいや。
    順調に見えるのは、表に出していないだけである。
    裏側はなかなかすごい。
    朝からスタッフのLINEを見て、昼には銀行残高を見て、夕方には店舗の売上を見て、夜には求人応募を見て、寝る前にはAIに動画広告のプロンプトを作らせている。
    そして翌朝、思う。
    昨日の俺、何をやっていたんだ。
    経営というのは、もっと格好いいものだと思っていた。
    スーツを着て、会議室で資料を見ながら、今期の戦略は、市場環境を踏まえて、などと言うものだと思っていた。
    現実は違う。
    この返金どうしますか。
    このスタッフが辞めたいそうです。
    このお客様が怒っています。
    このエアコン、誰が外しますか。
    この備品、どこの店舗が欲しいですか。
    HPB、いつ消しますか。
    経営者というより、もはや大人の後片付け係である。




    撤退は、選択と集中というより、分別と運搬だった

    特にこの1年は、いくつかの店舗を閉める決断をした。
    美容室やエステを経営していない人からすると、店舗を閉めるというのは、ただ売上が悪いから閉める、という単純な話に見えるかもしれない。
    でも実際は、そんなに簡単ではない。
    店舗にはスタッフがいる。
    お客様がいる。
    契約がある。
    回数券がある。
    機械がある。
    家賃がある。
    有線がある。
    ALSOKがある。
    そして、謎に大量のタオルがある。
    美容業界をやっている人なら分かると思うが、閉店作業の最後に出てくるタオルの量は、もはや軽いホラーである。
    このタオル、こんなにあったっけ?
    ある。
    なぜかある。
    どこからともなく出てくる。
    店舗撤退という言葉だけ聞くと、少しビジネスっぽい。
    選択と集中。
    不採算事業の整理。
    経営資源の再配分。
    言葉にすると格好いい。
    しかし現場でやっていることは、この棚いる、この椅子どこに持っていく、この機械、誰が運ぶ、このお客様への対応、どうする、である。
    選択と集中というより、分別と運搬である。




    撤退は負けではない。と言いたい

    それでも撤退は必要だった。
    経営者として一番やってはいけないのは、感情だけで続けることだと思っている。
    もちろん愛着はある。
    その店舗を作ったときの思いもある。
    スタッフと頑張った時間もある。
    お客様に喜んでいただいた記憶もある。
    だからこそ、閉めるときはしんどい。
    でも、しんどいからといって、見ないふりをしてはいけない。
    数字が悪い。
    人が育たない。
    採用が難しい。
    現場の負担が大きい。
    お客様への価値提供が弱くなっている。
    そういう現実が見えているのに、まあ、なんとかなるだろう、で続けるのは、優しさではない。
    それは、未来の誰かにツケを回しているだけだ。
    撤退は負けではない。
    と言いたい。
    でも正直に言えば、撤退は負けた気もする。
    悔しい。
    情けない。
    なんでこうなったんだと思う。
    もっと早く手を打てたんじゃないかと思う。
    経営者なので、最後は自分の責任だ。
    スタッフのせいにしたくなることもある。
    環境のせいにしたくなることもある。
    コロナのせいにしたくなることもある。
    求人難のせいにしたくなることもある。
    物価高のせいにしたくなることもある。
    実際、全部少しずつ本当だ。
    でも、それを全部並べたところで、銀行残高は増えない。
    これが経営のつらいところである。
    正論を言っても、売上は上がらない。
    愚痴を言っても、予約は入らない。
    スタッフに熱く語っても、明日いきなりリピート率が80%になるわけではない。
    むしろ熱く語りすぎると、スタッフが静かになる。
    こちらは熱血ドラマの主人公のつもりで話しているのに、相手の顔を見ると、完全に夕方のニュースを見ている顔をしている。
    あ、これ届いてないな。
    と思う瞬間がある。
    でも、それでも伝えなければいけない。




    頑張っていることと、成果が出ていることは違う

    美容業は、技術職であり、接客業であり、感情労働であり、教育業でもある。
    髪を切る。
    まつ毛を整える。
    体をケアする。
    肌をきれいにする。
    表面的にはそういう仕事だが、実際にお客様が求めているのは、それだけではない。
    自分に自信を持ちたい。
    疲れた自分を整えたい。
    もう少し綺麗でいたい。
    誰かに大事に扱われたい。
    そういう気持ちがある。
    だから、技術だけでは足りない。
    お客様の悩みを聞く力。
    今のままだとどうなるかを伝える力。
    続けることでどう変わるかをイメージしてもらう力。
    次回予約の意味を自然に伝える力。
    こういうものが必要になる。
    ところが、これをスタッフに伝えるのが難しい。
    お客様に危機感を持ってもらおう、と言うと、脅せという意味ではない。
    やらないと大変ですよ、と怖がらせろという意味でもない。
    でも何も伝えなければ、お客様は変わらない。
    美容室で言えば、髪の悩みは一回で全部解決するわけではない。
    エステでも、体は一回で別人になるわけではない。
    まつエクも、継続してきれいな状態を作ることに意味がある。
    だから本当は、プロとして未来を伝えなければいけない。
    でも現場ではこれが難しい。
    スタッフは頑張っている。
    それは分かっている。
    でも、頑張っていることと、成果が出ていることは違う。
    ここがいつも難しい。
    頑張っています、と言われる。
    分かる。
    頑張っているのは分かる。
    ただ、会社としては売上が必要で、リピートが必要で、お客様満足が必要で、次回予約が必要で、口コミが必要である。
    頑張ったのでOKです、と言いたい。
    人としては言いたい。
    でも会社は、それだけでは続かない。
    一方で、数字だけを見て詰めれば、人は疲弊する。
    ここが経営の嫌らしいところだ。
    優しくしすぎると組織がゆるむ。
    厳しくしすぎると人が離れる。
    任せすぎるとズレる。
    口を出しすぎると育たない。
    ではどうすればいいのか。
    今のところの答えは、毎日、ちょうどいいところを探し続ける、である。
    なんとも格好悪い答えだ。
    ビジネス書ならここで、組織を飛躍させる3つの法則、みたいなものが出てきそうだが、残念ながらそんな便利なものはない。
    あるのは、日々の確認と、面談と、LINEと、数字と、ため息である。




    AIは、経営者の頭の中を映す鏡だった

    最近、そこにAIが加わった。
    AI。
    この言葉だけ聞くと、なんだか未来感がある。
    私も最初は、AIを使えばいろいろ楽になるのではないかと思っていた。
    動画も作れる。
    画像も作れる。
    文章も作れる。
    広告も作れる。
    スタッフへのフィードバックも整理できる。
    営業トークも分析できる。
    すごい時代になった。
    実際、かなり使っている。
    美容室の広告動画を作るために、AIで画像を作る。
    髪質改善の動画台本を作る。
    40代女性向けの悩み訴求を考える。
    朝、髪が決まらない女性の画像を作る。
    うねり、パサつき、艶髪、半個室、カウンセリング。
    気づいたら私は、夜中にAIに向かって、もっと高級美容室広告っぽく、自然光で、日本人女性で、9対16で、文字なし、ロゴなし、と言っている。
    昔の自分が見たら、たぶん言う。
    お前、何屋になったんだ。
    でもこれが今の経営だと思う。
    AIは魔法の杖ではない。
    むしろ、使ってみると分かるが、AIはなかなか面倒くさい。
    一回で思い通りにはならない。
    モデルさんの体がシャンプー台にめり込んでいたりする。
    日本語がむちゃくちゃな動画が出てきたりする。
    なぜか高級感を頼むと、全員が海外セレブみたいになったりする。
    美容室の広告なのに、どこかホテルの朝食会場みたいになったりする。
    AIに頼んだはずなのに、結局こちらが細かく指示する。
    違う。
    そこじゃない。
    もっと自然に。
    顔が怖い。
    手が多い。
    日本語がおかしい。
    気づくと、AI相手に新人教育みたいなことをしている。
    しかし、これはこれで面白い。
    なぜなら、AIを使うことで、自分の頭の中が整理されるからだ。
    どんなお客様に届けたいのか。
    何に悩んでいる人なのか。
    どんな言葉なら届くのか。
    どんなビジュアルなら伝わるのか。
    自社の強みは何なのか。
    逆に、何が曖昧なのか。
    AIは、こちらの曖昧さをそのまま返してくる。
    適当に頼めば、適当なものが返ってくる。
    具体的に頼めば、少し良くなる。
    こちらの考えが浅ければ、浅いものが返ってくる。
    つまりAIは、経営者の頭の中を映す鏡のようなものだと思う。




    言語化できていないことは、外には出ていかない

    これはスタッフ教育にも近い。
    ちゃんとやって、では伝わらない。
    何を、いつ、どのレベルで、なぜやるのか。
    そこまで言語化しないと伝わらない。
    AIもスタッフも同じ、というと怒られるかもしれないが、少なくとも経営者側の課題は同じだ。
    自分が言語化できていないことは、相手には伝わらない。
    撤退も、AIも、スタッフ教育も、やっていることの根っこは同じだと気づいた。
    閉める基準を言葉にできていないから、決断が遅れる。
    求める成果を言葉にできていないから、人に伝わらない。
    AIに頼みたいことを言葉にできていないから、変な画像が返ってくる。
    全部、同じ穴だった。
    だから私は、迷ったらまず、自分の頭の中を言葉にすることから始めている。
    経営者はよく、なんで分からないんだ、と思う。
    でも本当は、分かるように伝えられていない、だけのことも多い。
    もちろん全部がそうではない。
    何回言っても伝わらないこともある。
    こちらの期待と、相手の働く目的がズレていることもある。
    会社は成長したい。
    本人は安定して働きたい。
    会社は売上を上げたい。
    本人は無理なくやりたい。
    このズレはある。
    このズレを無視して、みんなで頑張ろう、と言っても、どこかで噛み合わなくなる。
    だから最近は、会社側の期待をもっと明確にしなければいけないと思っている。
    何を評価するのか。
    どんな成果を求めるのか。
    どのレベルなら給与が上がるのか。
    どのレベルなら役職を任せられるのか。
    ここを曖昧にしたまま、もっと頑張って、と言うのは、経営者の甘えでもある。
    優しさのつもりで曖昧にしていることが、あとで不満になる。
    これは痛いほど感じている。
    人を大事にしたい。
    でも会社も守らなければいけない。
    スタッフの生活も大事。
    でも会社の利益も大事。
    お客様に喜んでもらいたい。
    でも赤字では続けられない。
    当たり前のことなのに、現場にいるとすぐ難しくなる。




    キラキラした業界ほど、裏側は地味である

    美容業界は、華やかに見える。
    艶髪。
    美肌。
    まつ毛。
    痩身。
    半個室。
    高級感。
    癒し。
    リラックス。
    言葉だけ並べるとキラキラしている。
    でも裏側は、かなり泥臭い。
    求人が来ない。
    スタッフが育たない。
    お客様が戻らない。
    口コミが下がる。
    広告費が上がる。
    家賃は待ってくれない。
    機械のローンも待ってくれない。
    キラキラした業界ほど、裏側は地味である。
    でも、私はこの仕事が嫌いではない。
    むしろ、まだ面白いと思っている。
    なぜなら、美容業は人が変わる瞬間に立ち会える仕事だからだ。
    髪がきれいになって、表情が明るくなる。
    体が軽くなって、笑顔になる。
    まつ毛が整って、自信が出る。
    スタッフが成長して、お客様から指名される。
    できなかったことができるようになる。
    そういう瞬間を見ると、やっぱりこの仕事には価値があると思う。
    だからこそ、会社を強くしたい。
    ただ店舗を増やしたいわけではない。
    もちろん売上は伸ばしたい。
    10億、100億という目標もある。
    でも、そのためにはまず、今の会社を作り直さなければいけない。
    撤退もその一つ。
    評価制度もその一つ。
    スタッフ教育もその一つ。
    AI活用もその一つ。
    新しいブランド作りもその一つ。
    全部つながっている。
    外から見ると、バラバラに見えるかもしれない。
    美容室をやって、エステをやって、まつエクをやって、酵素風呂を考えて、AI動画を作って、noteを書いている。
    自分でもたまに思う。
    落ち着け。
    でも、これは迷走ではなく、模索だと思っている。
    たぶん。
    いや、たぶんでは困るのだが。
    でも少なくとも、止まってはいない。




    経営は、毎日小さな失敗を拾い続ける作業だ

    経営者として一番怖いのは、失敗することではない。
    失敗を見ないふりして、何も変えないことだ。
    店舗を閉めるのはしんどい。
    スタッフと向き合うのもしんどい。
    お金のことを考えるのもしんどい。
    自分の判断ミスを認めるのもしんどい。
    でも、それをやらずに会社が良くなることはない。
    会社は、社長の都合のいい妄想では良くならない。
    現実を見るしかない。
    数字を見る。
    人を見る。
    お客様を見る。
    自分の弱さを見る。
    そして、次の一手を打つ。
    それの繰り返しだ。
    最近よく思う。
    経営は、格好いい成功物語ではない。
    むしろ、毎日小さな失敗を拾い続ける作業だ。
    落ちている問題を見つけて、拾って、片付けて、また歩く。
    すると少し先に、また別の問題が落ちている。
    たまに、問題ではなくチャンスが落ちていることもある。
    でもだいたい、最初は問題の顔をしている。
    撤退もそうだった。
    最初はただの痛みだった。
    でも今は、会社を作り直すきっかけになっている。
    AI活用もそうだった。
    最初は便利そうな道具だった。
    でも今は、自分の考えを整理する鏡になっている。
    スタッフとのズレもそうだった。
    最初は腹が立つことも多かった。
    でも今は、会社の期待値を言語化する必要性に気づかせてくれている。
    つまり、問題は全部、次の課題を教えてくれている。
    そう考えると、少しだけ救われる。
    いや、実際の現場ではそんな綺麗なことを言っていられない日もある。
    腹も立つ。
    落ち込む。
    愚痴も出る。
    もう知らん、と言いたくなる。
    でも、翌朝にはまた考えている。
    どうすれば良くなるのか。
    次は何を変えるのか。
    誰に何を伝えるのか。
    どの店舗を伸ばすのか。
    どの事業に投資するのか。
    どの人に任せるのか。
    結局、まだ諦めていないのだと思う。




    経営者は、ずっと完成しない

    美容会社を20年以上続けてきて分かったことがある。
    経営者は、ずっと完成しない。
    会社も完成しない。
    組織も完成しない。
    スタッフ教育も完成しない。
    自分自身も完成しない。
    だから面白い。
    そして、だから苦しい。
    今、私は店舗を閉めながら、会社を強くしようとしている。
    これは一見、矛盾しているように見える。
    でも、そうではない。
    閉めることで見えるものがある。
    手放すことで残るものがある。
    失敗を認めることで、次の形が見える。
    撤退は、終わりではない。
    会社を作り直すための、かなり痛い棚卸しだ。
    できればやりたくない。
    でも、やらなければいけない時がある。
    そして、やるなら次に活かすしかない。
    私はまだ、会社を大きくしたいと思っている。
    綺麗事だけではない。
    正直、悔しさもある。
    見返したい気持ちもある。
    もっとできるはずだという思いもある。
    でもそれ以上に、この会社で働く人が、もう少し誇れる会社にしたい。
    お客様に、もう少し価値を届けられる会社にしたい。
    自分自身も、もう少し納得できる経営者になりたい。
    そう思っている。
    そのために、今日もまたLINEを見る。
    売上を見る。
    面談する。
    スタッフに伝える。
    AIに変な画像を直させる。
    そして、また少し会社を前に進める。
    経営とは、華やかな戦略発表ではない。
    たぶん、毎日の地味な修正だ。
    少し間違えて、直す。
    また間違えて、また直す。
    たまにうまくいって、すぐ調子に乗り、また問題が出る。
    その繰り返し。
    笑えないことも多い。
    でも、少し笑いながらやらないと、続けていられない。
    だから今日も、私は思う。
    大変だな、経営って。
    そして同時に、こうも思う。
    でも、まだ面白いな。



     
     
    見切り発車で事業を増やし、エステ5店舗を閉鎖。 社員70名の会社を経営しながら、今も週1で現場に立っています。 失敗・撤退・人の問題・お金の苦しさまで、きれいごとなしで書きます。 小さな会社の経営者、店長、これから事業を始める人へ。

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