
【パン屋の香り】1年ぶりの仕事
この感覚、久しぶりだ。
でも、不思議と自然に体が動く。
昨日まで当たり前にこの場所にいたような気もする。
5年以上やっていたこの仕事は、自分が思ってた以上に体に染み付いているようだった。
1年ぶりにこの場所に帰ってきた。
1年前、乳がんになったことをきっかけに思い切って仕事を辞めた。
私は、ベーカリーカフェで接客の仕事をしていた。
昔からパン屋が大好きだ。
初めてアルバイトを始めたのは高1の春。
記念すべき初バイトは、地元で昔から通っていた個人経営のパン屋でやると決めていた。
その後、大学生になってからも4年間デパ地下のパン屋で働いた。
何故だかパン屋に惹かれてしまうのだ。
ケーキ屋にはない、パン屋ならではの香り、温かさ、ちょっといびつで愛らしい感じ。
パン屋の雰囲気は、ほっこりして癒される。
そして、社会人になってからもまたパン屋で働きたくなって、他の業界で働いた末にまたベーカリーカフェで働くことになったのだ。
パン屋の仕事は、想像しているよりも大変だ。
もちろん、パンを作る仕事はもっと大変だけれど、パンを売る仕事も想像以上に体を使うことが多いし、私が働いている店はカフェも併設しているので、結構広い。
ほっこり、癒されるのイメージ以上に仕事はハードだ。
その場所で私は社員として、また店長として働いていた。
元々、進んでリーダーシップを取るタイプでもない。
正直、自分が店長に向いているなんて思えたことは一度もなかった。
スタッフ同士の揉め事、お客様からのクレーム、お店を運営することの大変さを痛感しながらも日々奮闘していた。
そんな時に、乳がんが見つかった。
自分が病気になるなんて、これっぽっちも想像したことがなかった。
そして、1年間仕事を離れた末、またベーカリーカフェでアルバイトをさせてもらうことにしたのだ。
違う仕事をすることも考えたけど、やっぱりこの仕事が好きだった。
そして、もっと接客を頑張ってみたいと思った。
長らく接客の仕事をやってきたのだけど、本当の意味で接客の楽しさをまだまだ分かってないような気がしたのだ。
社員で働いていた時は、とにかくスムーズにお店を運営することばかり考えていた。
だから、自分が接客している時も頭では違うことを考えてたり、周りのスタッフの様子を気にしたり、純粋に目の前のお客さんのことだけを考えて接客することが出来ていなかった。
きっとそれは、お客さんにも伝わってしまっていたように思う。
1年間、仕事から離れてみてサービスを提供する側から完全に受ける側になった。
その時に訪れたカフェで笑顔が素敵な店員さん、業種は違えどいつも会うたびに声をかけてくれて元気をくれた看護師さん、素敵だなぁと感じる瞬間がたくさんあった。
そして、自分もあんな風に誰かの心に残る接客がしたいと思うようになった。
新たな気持ちで、またこの場所での仕事がスタートした。
【パン屋の香り】では、ベーカリーカフェで働く私が接客の中で感じたことなどを綴っていこうと思います。